寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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はじめて評価10をつけていただけて目を疑ったり、お気に入り数が激増してたり…
昨日いったい何があったんでしょう!?
このタイミングで更新ペース遅くするのってもしかして大顰蹙…?

そう感じてしまったビビりの作者はなんとかもう1話だけ作れました。これで更新ペース落とす慈悲をください…

旧作キャラ周りはどうしても独自設定が多くなってしまいます。受け入れていただけると良いのですが。


第11話 適材適所

覚醒魔法が作動し目を覚ます。

 

「…夢幻館、か」

 

俺の肉体に睡眠は必要ないのだが、精神を休ませるために睡眠は重要だと認識している。攻撃系魔法を除けば今でも魔法に関してトップクラスに入ると自負している俺は、睡眠魔法と覚醒魔法を自身に時間差で行使することで効率の良い睡眠を取ることにしている。

 

「さて…まずは状況を知ることからだな」

 

追手のことを知りたいが…しばらくは大人しくすべきだろう。今俺が知るべきは夢幻館修復の状況だな。

 

 

 

「おはようございます」

「おはよう、エリー。くるみは…種族的にまだ起きてないか」

「ふふ、そうですね。まだまだ先ですよ起きてくるのは」

 

あてがわれた部屋から出て入り口に向かうと、エリーと顔を合わせた。

 

「それで、俺は何をすればいい?」

「えっ、もう手伝ってもらえるの?」

「そりゃ、いつまで居られるかわからないし、最悪巻き添えにしてしまうからな…

今のうちにこき使ってくれ。その方が俺の気も晴れる」

「そこまで気にしなくてもいいのですけれど…」

 

遠慮しなくていいんだが…エリーとくるみはある意味俺より過酷な立場に置かれてると思うぞ。

俺は終わりがもう近くに見えてきた逃走。だが、エリーとくるみは終わりの見えない労働だ。精神的には、俺の方が楽だろう。

 

義理を果たさなければならない俺は、必ず終わりが来ることを知っているのだから。

 

「無茶振りを終わらせようとしてるんだから、使えるものはなんでも使え。いや、本気でそうしないと永遠の労働になるだろう?」

「あはは、そうですね…でも、私たちも少し気が楽になったんですよ。豹さんがまたここに来てくれるまでに幽香と直接話せまして」

 

なぜか苦笑しながらエリーが言葉を続ける。

 

「しばらく離れていたうちに、太陽の畑に小屋が建てられていたそうです。最初に見つけた時、案の定幽香は憤慨したようですが…名前すら伝わっていない人間の男が、幽香がいない間に畑を整備するための道具をまとめていた小屋だったそうです。向日葵たちが言うには、あの畑の美しさに心奪われて手の空いた時に整備しに来ていたって」

 

ああ…妹紅から聞いた覚えがあるな。危険だから止めろと言っても聞かない、園芸趣味の男がいるって。

 

「彼が老いてからは体力が厳しくなり来なくなってしまったそうですが…それを向日葵たちが残念がっていて。それを聞いた幽香がその小屋を大掛かりに改装させて、そこにしばらく落ち着くことにしたから夢幻館の修復は急がなくていいと」

 

フラワーマスターが玄武の沢に乗り込んで河童を数人拉致した事件の真相はこれか…

 

「ここを元に戻さなくていいとは言わないんだな」

「幽香は夢幻館も気に入っていたことは本当ですから…もう少し手心を加えてほしいとは思いますけどね」

 

はじめて会った頃とは違う、無理のない笑顔をエリーが見せる。

 

「私たち妖怪の寿命は長いですから、急がなくていいのなら、少しずつ進めればいい。

私もくるみも、幽香と暮らした夢幻館には思い入れがありますから。他にやりたいことがあるわけでもないですし、二人で無理しない程度にやっていきます」

「そうか…なら主との関係に俺が口を挟むべきじゃないな。そこまで信頼関係を築けているのは、素直に羨ましい」

「そうでもないです。もし幽香と再会できたときに、もっと無茶なことを言われたらくるみと一緒に逃げてましたもん。豹さんという頼りになる人と出会えたんですから」

「盗賊紛いのことをしようとした不審者を頼りにするなよ…」

 

本当にこの二人の警戒心は薄すぎる…俺のような厄介者を逆に頼るとか人を見る目も曇っている。フラワーマスターさん、早く部下を回収した方がいい。

 

 

 

 

 

話を終えるとエリーは夢幻世界に向かっていった。あの世界の主である悪魔の協力で魔界に出て資材を調達しているらしい。そのうち紹介すると言われたが…俺が逃亡中なの忘れてないよなエリー。魔界と繋がりのある悪魔とか、俺の過去の悪行知ってる可能性あるんだが…

 

「…まあここに置いてくれてる時点で文句は言えない。始めるか」

 

エリーから頼まれたのは修復魔法による内壁の補修だった。なるほど、死神のエリーと吸血鬼のくるみじゃ種族的に修復魔法は不得手だろう。特にエリーの種族、アンクゥは新築の家屋に入った最初の者を狩るらしく、新築を好む種族が修復魔法に適性があるはずもない。

 

初対面の際に俺が二人に伝えたのは…まずは夢幻館が幻想郷で建てられたのか、外の世界から幻想入りしたのかを調べる。建てられたのであれば誰の手によるものなのかを調べてその種族に頼む。

幻想入りしたのであれば原形をとどめた瓦礫は回収して修復魔法で再利用する。木っ端微塵になったり消滅した部分に関しては代用できる資材が手に入るか調べる。まずこの2点どちらかを確認してみろ…だった。

隠れ家を素人知識で継ぎ接ぎし強化魔法で固定するという建築を実行した俺のアドバイスなど間違いだらけのはずだが、何から手を付ければ良いかすらわからずにいた二人にとっては十分すぎる救いだったらしい。

 

調査の結果、夢幻館は館が幻想入りしたパターンらしい。そもそも再建出来そうな種族に伝手がない二人は修復魔法で戻せそうな瓦礫を集めつつ、建築資材を運び込めそうな知り合いを当たっていたそうだが…

 

「修復魔法がうまく扱えずなかなか作業が進まなかった、と。俺が提案した方針だが、これだけ巨大な屋敷に取る手段じゃないよな普通…」

 

俺の隠れ家は俺一人安全に休めるスペースさえ確保できればよかったから、俺の魔力で家自体を強化・補強するという荒業を使ったのだが…これだけしっかりした造りの巨大な屋敷を残骸を再利用して強化・固定魔法で支え続けるってのは、上手くいくかどうかやってみないとわからないんだよなあ。まあ一応、前例として増築を繰り返したせいで不格好かつ不安定な俺の隠れ家が千年以上崩れずにいたから、恒常的に魔力を補充できれば大丈夫なはずではある。

 

(エリーとくるみは二つ返事だろうが、館の主は魔力を提供してくれるか…?)

 

彼女ほどの大妖怪が魔力を使ってくれれば問題は無いんだが、その場合ここに来てもらう必要がある。となると俺の存在を大妖怪の一人が知ることになるわけで…

 

(…今考えても仕方ない。二人の努力を無駄にしないよう、俺が直せる分だけでも元に戻そう)

 

 

 

 

 

「こんにちはー豹さん…って凄い!もうこんなにきれいになってる!?」

 

くるみが起きてきたということはそれなりの時間は経ったか。太陽の光が届かないここで昼夜はあまり関係ないだろうが、くるみは基本午前中は活動しないらしいからな。

 

「博麗の巫女とあの魔法使いが暴れたと聞いたからもっと酷いかと思ってたが、予想よりは修復できる部分が残ってたからな。元々ここを建てた者が良い資材を使ってたんだろう」

「いやそっちじゃなくて!割と大きな瓦礫から集めましたけど、どれがどこの瓦礫なのかすらわからないのがほとんどだったんですわ!それを一日もせずにここまできれいに復元出来るなんて…」

「まあ、目立たないよう潜伏してた都合で魔法に関してはかなり研究できた。攻撃魔法以外ならほとんどこなせる自信はある」

「ほんと凄いですね…それなのに攻撃魔法からきしダメって不思議でしょうがないです」

 

…まあそうだろうな。なぜなのかは簡単な理由なんだが…あまり話したいことじゃない。

 

「とりあえずこのあたりの瓦礫で反応したのは戻したが、まだ反応がないのもかなりある…これがどのあたりの残骸か見当はつくか?」

「たぶん2階部分ですかねー。この辺りはまだましで、幽香の寝室だったあたりはほぼ消滅しちゃいましたから」

 

修復魔法で再現できなくなるのは消滅したり木っ端微塵になった場合だ。気化して固形を失ったものは流石に無理で、あまりに細かく砕かれたものも爆風などで飛ばされてしまうと集合させようとも届かず拾えないのだ。

 

「そうなると1階の天井部分を先に戻したいところか。一端放置、だな」

「いや~…これ私たち豹さんに対価に合った恩返しできる気しないですね…」

「俺の追手に敵視されるリスクを負ってくれただけで十分だ。むしろこれぐらいやらせてくれ」

 

追撃戦に巻き込まれたらそんなこと言えなくなってしまうだろうしな…そんなことを考えていると、不意にくるみが核心を突いてきた。

 

「なんだか申し訳ないですね…攻撃魔法がダメなら、いざという時の戦力にぐらいなれるかもと思ってましたけど。

豹さんとやりあう相手じゃ、私じゃ時間稼ぎにしかならなさそうです」

 

…甘く見ていたと言うしかないだろう。俺の平和ボケは本当に深刻らしい。

 

「攻撃魔法を使えないっていう豹さんを相手にしても、私がかなう気がしない…負けないことは出来ても、絶対に勝てない気がする」

 

これは、下手に隠さない方がいいか。

 

「…正直言って、驚いた。そこまで正確に見抜かれるとはな…

たしかに、俺はくるみに勝つことは出来なくとも、絶対に逃げ切れる。それは言い切れる」

「ですよねー。私はエリーの腕がなまっちゃうぐらい門番の仕事してましたから、明らかな格上はなんとなくわかっちゃいます」

 

戦闘経験、か。今の平和な幻想郷や魔界じゃ、なかなか得られない経験。これほどの猛者であるくるみを一蹴したというのだから、やはりあの巫女と魔法使いは凄まじい。まだ幼いとすら言える年齢で、あれだけの実力を誇るのだから。

 

「だからこそ、巻き込まないようにはするが…無理かもしれない。そうなったら、これだけは守ってくれ。

命は捨てるなよ。俺のような老害のために徹底抗戦なんてするな…悪党なのは俺の方。投降すれば身の安全は保障してくれるさ」

「老害って…ここの修理屋さんとしてずっと住み込んでほしいぐらいなのに!そんなこと言わないでくださいよー」

 

こんな俺でも、まだ役に立てる。

ここまで追い込まれてもそう思ってしまうあたり、俺は本当に未練がましい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やはり、見当たりませんね」

 

エリー。少なくとも人里の人間であれば難なく見つけられるであろう洋風の名前。そこから考えるとおそらくは妖怪…しかし幻想郷縁起にそんな名は無かったはず。念のため調べ直しても見つけられなかった。

 

(ですが、それもそのはず。これに名の挙がるほど有名な妖怪や神々のところへ、追い込まれた豹さんが逃げ込むとは思えない)

 

となると…気は進まないですが、真っ先に訪ねるべき相手は―――――

 

「行きましょう。孤独を紛らわせるため…私にしかできないことをするために」

 

一日遅れながらも、幻想の中で忘れられた少女…冴月麟も動き始める。




次の更新は火曜日に間に合わせます。
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