寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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気付いた限りの茨歌仙を茨華仙に修正してます。予測変換頼りはダメですね(汗)


第119話 増援到着

「―――そのまま先輩は魔界に帰らなかった。そして一昨日、アリスの目撃情報をルイズが伝えてくれたことで私とユキが先行して迎えに来たわ」

「先行してって何よ。まさか魔界神もこっちに来る気だっての?」

「霊夢、神綺はたびたび魔界から幻想郷に来ているぞ。気付いてなかったのか?」

「はあ!?どういうことよそれ!?」

 

退屈そうに煎餅をかじりながら話を聞いていた霊夢だけれど、夢子が反乱の顛末を語り終えると言葉尻に素早く反応した。でもそれも即座に藍が指摘を加え話を遮る。

 

「あの魔界神は過保護だから、私の様子を見に来てるのよ。不定期ではあるけれど、紅茶を出して軽く会話をすれば満足して帰るから私も放置してるわ」

「…魔界神ともあろうものが、それだけのために幻想郷に侵入していると?」

「神綺様は兄さんを誰よりも信頼してた。その兄さんが姿を消したことを知ったら、しばらく暴走状態に陥っちゃったの。止められるだろうサリエル様も一緒にね。

また暴走するわけにもいかないし、同じ苦しみを味わいたくないからこそアリスとの繋がりを大切にしてるだけ。幻想郷に迷惑はかけてないでしょ?」

「ええ、私も直接釘を刺しに出向いたけれど…本当にアリス以外には見向きもせず帰って行ったわ。それは茨華仙も証明できるわよね?」

「そうね、私は数回侵入を見逃していたようですが、紫に話を聞いた後は警戒の目を向けていましたから。貴方は信じられないかもしれませんが、間違いなく魔界神は幻想郷に対しての敵対行為はしていません」

「なんで私に話が来ないの」

「霊夢も気付いて放置してると思ってたのよ。もう少しこういった方向の修行もしてほしいわ」

「…ふん」

 

不満しかない顔で隣に座った茨華仙の煎餅を奪って頬張る霊夢。物凄く悲し気な反応をしたのを見かねたのか、その隣のユキが自分の煎餅を器ごと茨華仙に回し彼女が機嫌を直して一礼する。相変わらず過ぎるわね霊夢の傍若無人は…

 

「わかりました、魔界神の目的に関しては信じましょう。ですが今、もう一つ聞き捨てならない名前を出しました。

サリエル…かつて月を支配していたと言われる大天使の名前です。まさかその当人が魔界に存在するということですか?」

 

流石は地獄の裁判長、西洋の大天使のことも知識として持っていたのね。永遠亭絡みのことはなるべく伏せておきたかったけれど、仕方ないか。

 

「そうだよ。そもそも月からサリエル様を救出しに向かったのが兄さんだから…サリエル様も兄さんの帰りをず~っと待ってる」

「その話、もう少し詳しく聞かせなさい。まさかとは思うけれど、月の敵対者に八意永琳という名はありましたか?」

「先輩がサリエル様を迎えに行った際、月側から貰った情報があったわ。

 八意永琳・綿月豊姫・綿月依姫・稀神サグメ。この4名に注意しろ、と」

「はあっ!?あいつらとやり合ったってのヒョウとかいう男は!?」

「…なんで今を生きる人間の巫女があの連中のことを知ってるのかも気になるけど、兄さんには関係ないから横に置いとくね。

わたしも途中から兄さんの助けに向かったんだけど、後少しでも神綺様の応援とサリエル様の目覚めが遅かったら兄さん諸共やられてた。辛うじて生き延びたとしか言えない」

「………どうやら、私が想像していた以上に重大な存在だったようですね。

八雲紫、貴方はこのことを知った上でかの者を庇護していたのですか?」

「いいえ…月との因縁を知ったのは今が初めてよ。永遠亭絡み…正確には月が少しでも絡む案件に関しては、豹は絶対に協力してくれなかった。第一次月面戦争に際して協力を求めた時に『月の連中は俺の事を知っている可能性がある。今後も俺の力が必要になるのであれば、今回は見逃してくれ』って頭を下げられたから…何も聞かずに八雲の隠者として幻想郷の維持に尽力してもらっていたわ」

「…萃香と勇儀が取り逃がしたと聞いた時は、貴方が助けたと判断していましたが。

 もしや、彼は本当に独力で逃げ切ったということですか?」

「その通りよ。私は豹が逃げ切った後に、私の屋敷でしばらく匿っていただけ。

 月の賢者たちから逃げ切れたのであれば、鬼の四天王から逃げ切れたのも納得ね…」

「…ふざけんじゃないわよ。とんでもない面倒事じゃない」

 

流石の霊夢も豹の戦歴で危機感を持ったようね。月で痛い目を見たと軽く聞いているから、名前の挙がった中に霊夢を追い返した相手が入っていたのかもしれない。

 

「そう、とんでもない面倒事なのよ…豹の件は。

 そして、ここからが霊夢も関係してくるわ。聞き流さずしっかり聞きなさい」

「まだあるの…お茶のおかわりよこしなさい」

 

はぁ…霊夢は本当に、相変わらずね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここです。中に気配はありませんが…油断はしないように」

「ラジャ。椛さんは周りを警戒してもらえる?屋内ならわたしが力尽くでどうにかできるから」

「わかりました。リリーも私の傍で待ちなさい」

「わかったのですよー」

「では、私が扉を開けますね。カナさん、お願いします」

 

椛さんの案内で雛さんの教えてくれた小屋はすぐに見つかったわ。言ってた通り外から見ると廃屋にしか見えないけど…僅かに豹の魔力を感じる。ここに居たってことは間違いない。

 

「おじゃましま~す」

 

入ってさっそく使えそうなモノを動かせるようにチェック。でも今この小屋が【家主】と認めてる相手はいないみたいで、あっさりわたしが乗っ取れちゃった。だから危険は無いと判断できたから、みんなを呼ぶ。

 

「だいじょうぶ、もう安全!椛さんとリリーも、一度中に来てもらえる?」

「わかりました」

 

上海ちゃんと椛さんとリリーも小屋の中に入って来たから、気になるモノを見せることにする。

 

「豹が居たのは間違いないね。豹の魔力が残ってるのがいくつかあるわ。

え~っとね、たぶんあの辺の魔力を帯びてるのはアリスの人形と同じ通信具かな?椛さん、繋がる先に心当たりある?」

「…この小屋は『地底へ続く洞穴の監視小屋』。私も詳しいことは知らないのですが、無許可で地底に向かう者を強制退去するために使われていたと聞いています。そう考えると、おそらく繋がる先は地底の有力者…私たちが迂闊に接触を持とうとすると相互不干渉違反となってしまうかもしれません。下手に使おうとしない方がいいでしょう」

「そうなのですかー。リリーが足を引っ張ってしまうので、そっとしておいた方がいいとリリーも思うのですよー」

「ですが、私たちがこの小屋に侵入したことが察知されてしまっている可能性もあります。向こうから接触があれば、私が対応します…ボディが小さいから、監視網を潜り抜けられたという体で誤魔化しましょう」

「わかった、頼むね上海ちゃん。後は、これなんだけど…」

 

床下の隠し棚に豹の魔力が残ってる何かがあるんだけど、ちょっと重いんだよね。この先戦闘の可能性がゼロじゃないから、みんなにも引っ張り出すのを手伝ってもらいましょ。

 

「床下にこんなスペースが…!カナさんがいなければ見つけられなかったですね」

「カナさんがいれば屋内の伏兵など意味を為さないということですか…戦において地の利は重要ということを、こういった形であらためて思い知らされるとは思いませんでしたね」

「すごいのですよー!何かあるのですか?」

「うん、わたしの力だけだとちょっと重すぎてね…せーので持ち上げましょ!」

「「「「せーのっ!」」」」

 

う、やっぱり重い。でもこれに豹の魔力が残ってるんだよね。それに豹はこの小屋に来るとき一人だったはず…つまり豹1人でこの重たいのを持ち運んでたってことになるわ。やっぱり豹は凄いね。

持ち上げて床に置いて眺めてみるけど…

 

「これは…近代兵器の一種でしょうか?にとりさんに聞いてみれば詳しいことがわかるかもしれませんが」

「でも、これに豹の魔力が残ってるのよ。そのにとりさんってのと豹に面識があるかってわかるかな?」

「いえ…ですが豹さんが河童たちと関わることに利は無いと思いますので、関係ないのではないかと」

「―――もしかすると、夢子さんが話してくださった里香という戦車技師の方が関わっているのではないでしょうか?」

「あ、そうかも!でもそうなるとこれから豹を追うためには里香さんって人と会わなきゃならないか~」

「それじゃあリリーたちが持っていくのは止めた方がいいですよね?とっても重いので、持ち運ぶだけでも大変なのですよー」

「そうですね、そうなると隠し棚に戻しておいた方がいいかもしれません。にとりさんあたりに見つけられてしまうと、研究のために回収されてしまうかもしれま―――っ!?」

「っ!?これは!?」

 

言葉の途中で、椛さんと上海ちゃんがなにかに気付いたみたいだけど…って!?

ものすごく強い妖気がこっちに向かってきてる!?

 

「これは、勇儀様!?どうして地上に!?」

「えっと、この強いのと椛さん知り合いなの!?」

「知り合いどころか、飯綱丸様よりも立場が上だった方です…!今は地底に向かった妖怪の元締めをしていらっしゃるはずですが、どうして地上に…!?」

「地底ですか!?もしかして、私たちが顔を合わせてしまうのは危険なのでしょうか!?」

「勇儀様はなによりお酒と喧嘩を楽しむ方です。私はともかく、カナさんと上海の強さを見抜いてしまうかもしれません…!

私が足止めしますので、カナさんと上海は夢幻館に向かってください!私とリリーなら見逃してくれると思いますので!!」

「っ!カナさん、椛さんにお任せしましょう!豹さんと無関係な方に捕まってしまう時間なんてないです!」

「そうだね!ごめん椛さん!明日また情報交換に来るわ、その勇儀様ってのはおねがいね!」

「うう、リリーはまたお役に立ててないです。ごめんなさいなのですよー」

「気にしないでリリー!無事でさえいてくれればそのうち力になってもらえるから!」

「そうです。今は椛さんと一緒に、無事に逃げることを優先してください!」

「リリーを守り切るぐらいはやってみせます!カナさんと上海も、お気をつけて!」

 

椛さんに後を任せて、小屋から上海と一緒に飛び立つ。このまま夢幻館に向かっちゃいましょ!

 

 

 

「ありゃ、この小屋に白狼天狗がいるなんて珍しいじゃないか。何かあったのかい?」

「リリーがここに逃げ込んで身動き取れなくなってしまっていたようですので、これから家に送り届けるところだったのですが…勇儀様は、地上に何かご用なのでしょうか?」

 

なんとか勇儀様がカナさんと上海に気付く前に離脱できたようです。一番避けたい状況にはならなかったようですが…私はここからが正念場。

 

「もしかしてその声は椛ですか?これは幸先が良いですね!」

 

…と思ったところで、勇儀様の後ろから庭渡様が顔を見せてくれました。

 

「うん?幸先がいいってのはどういうことだい久侘歌?」

「ヒョウという者の存在を私に教えてくれたのがこの椛ですよ。ですので、勇儀さんにとっても都合の良い相手となるはずです」

「そうなのかい、たしかに好都合だねえ。それじゃあ椛、豹について知っていることを教えな?」

 

なんて事でしょう…勇儀様を地上に出向かせてしまったのは、他でもない私でした。

 

 

 

 

 

「―――椛さんが上手く対応してくれたようです!勇儀様という方の足が止まりました!」

「よかった~、流石は椛さん!わたしたちはこのまま夢幻館へゴー!!」

 

これで一安心でしょうか?足を止めてから気付いたのですが、一昨日お話しした久侘歌さんの反応も一緒にあります。私たちが別れた後に椛さんもお話ししていたそうですので、交戦になることは無いと考えて良さそうです。

 

「それじゃ、上海ちゃん。先導よろしくね!」

「はい、こちらです!」

 

カナさんに頼まれた通り、昨日夢幻館まで足を延ばした私が前に出ます。カナさんも後に続いてくれました。

 

―――ここで一安心してしまうことが、私の経験不足。

()()()()()()()()()()ということを、安堵によって失念してしまったことで…先制攻撃を許してしまった。

 

「――ッ!?」

「え…カナさんっ!?」

 

前方下側から放たれた熱線に、カナさんが巻き込まれ―――いくつもの鳥の形をした光のようになり…散ってしまいました。

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