寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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旧作キャラ以外にも独自設定をガッチリ入れていくスタイル。


第126話 妖精の縁、神々の縁

「…あれ、豹よねたぶん。どうやったのかしら~?」

「私にわかるわけないじゃん…ホント、ヤバかったんだ豹…」

 

霧の湖はすぐそこってあたりで、白黒の魔法使いのマスタースパークらしき極太レーザーが2発撃たれたのをキャッチ出来たわ~。もしかしてと思ってリリカと二人で探ってみたら、狙われてたのはカナと上海。慌てて援護に向かおうとしたのだけれど…

 

「空間魔法が得意って聞いてるけどさ、自分が移動するんじゃなくてカナと上海を捕まえるために使ったってことだよね?一気にあのスキマ妖怪と繋がりがあるってのに説得力が増したわコレ」

「いつの間にかいなくなってるのも納得ね~。あんな風に使いこなせるなら私たちが気付けるはずないもの~」

 

そして逃がしたことを理解したのか、極太レーザーを撃ってた2人がこっちに向かってきてるのよね~。もっとも、ちょっと進行方向はズレてるから私とリリカを狙いに来たわけではなさそうだけど…

 

「絡まれちゃうと困るわね~。私たちは予定通り行きましょう!」

「りょーかい!」

 

 

 

 

 

―――そして辿り着いた霧の湖。面倒な氷精はいないと手間がかからないんだけど~…

今日は運がいいみたいで、あの氷精より先に会話のできる相手を見つけられたわ~。

 

「あら、この時期にお客様なんて珍しいですね」

「お、人魚じゃん。これはラッキーだわ」

「こんにちは~!ちょっと手を貸してもらえないかしら~」

 

淡水人魚の…わかさぎ姫だったかしら~?霧の湖を棲み処にする妖怪で、歌うことを楽しむことが出来るから何度か私たちのライブに来てくれてるのよね。時間にあまり余裕が無いから助かったわ。

 

「私が手伝えることでしたら大丈夫ですよ。何でしょうか?」

「翠髪サイドポニーの大妖精の居場所を知らないかしら~?ちょっと話を聞きたくて」

「え、大ちゃんですか?もう冬ですので家で大人しくしてると思いますが」

「あ、そーなの?ちなみに場所ってわかるかな?

あの邪魔くさい氷精は相手にしたくなくてね、案内してもらえればついてくからさ」

「その…わたしに何か?」

「「「あら?」」」

 

噂をすれば影、だったかしら?その妖精本人が水汲み用らしきバケツを抱えて、木々の間から顔を出してたわ~。

 

「あ、いたいた!アンタちょっと付き合いなさい、手荒な真似はしないからさ!」

「リリーが『霧の湖の大ちゃんに聞いて』って言ってたのよ~。

 ノエルちゃんって、知らないかしら?」

「――っ!リリーちゃんが、ですか。

 わかりました。でも少し事情がありますので…

 わかさぎ姫さん、もしもチルノちゃんが戻って来たら、少し遊んであげてもらえますか」

「あら…大ちゃんがチルノちゃんに隠し事は珍しいですね。

 構いませんけど、喧嘩はだめですよ?」

「大丈夫です、チルノちゃんのためですから。こちらへどうぞ」

 

 

 

「それで、ノエルちゃんっていうのはどんな子なのかしら~?」

 

この子の家に案内されて、さっそく用件を切り出す。妖精の家だけあってちょっと狭いけど、実体を持たない騒霊の私たちだから昨日の隠れ家一部屋ギュウギュウ詰めよりは余裕があるわ~。

 

「わたしがノエルです。

 チルノちゃんを守るために、命名という呪いをかけられたのがわたし…ノエルです」

 

…そしていきなりとんでもない答えを返してきた。呪いって、どういうことかしら…

 

「う、ううん?それはつまり豹がアンタに呪いをかけたってこと?」

「…はい。ですが、呪いといっても私にわるいことが起きるものではないんです。

名前を持っていないわたしに命名という呪いをかけることで、私の自己意識を強化する。それによって、わたしはチルノちゃんの強さに近付くことが出来ました」

「え~っと、つまりノエルって呼べばいいのかしら?」

「はい…ただ、そう呼ぶのは豹さんのお友達の前でだけにしてください。

 …特に、チルノちゃんを知ってる人の前では大妖精か大ちゃんでお願いします」

 

どういうことなのか全然わからないわね~。となると先にそこを聞かなきゃダメかしら。

 

「どうしてそんなことになったのかは聞いていいのかしら~?」

「………チルノちゃんがまた突っ走っちゃって、それを豹さんが返り討ちにして。

――豹さんが、二度と向かってくることの無いように…チルノちゃんの全ての記憶を奪おうとしたんです。

チルノちゃんがわたしのことを忘れてしまう、そんなことはイヤだったから。豹さんに謝って、必死に泣きつきました。豹さんと一緒にいたリリーちゃんも豹さんに頼み込んでくれて、チルノちゃんの記憶を奪うのは止めてくれたんです」

「あー…言われてみればあのウザい氷精は豹にとって厄介極まりないか。つーか豹は呪いなんてシロモノまで扱えるっての?ホントとんでもないじゃん…」

「はい、豹さんはわたしとリリーちゃんにとって魔法の師匠ですが…恐ろしい人です。わたしたち妖精に優しくしてくれるのが不思議なぐらいの。

チルノちゃんの記憶を奪うかわりに、わたしに出した条件が『命名という呪いを受け入れることによって、チルノちゃんが豹さんを探すのを力尽くででも止める』だったんです。

わたしはそれを受け入れて…自己意識や記憶というものがはっきりするようになったんです。それからリリーちゃんと一緒に魔法の修行をつけてもらっていました」

「そういうことね~…氷精は実力行使で黙らせてもムダ、何度でも絡んでくる。それなら氷精の保護者を押さえてしまえばいいってワケね~」

 

妖精に優しくしているのにもちゃんと実利的な面もあったってことだわ~。あの鬱陶しい氷精を妖精仲間に止めさせる…それも呪いを使い手駒にするという方法で。制御できない相手なら、制御できる相手を使えばいい。利用できるものは全て利用する…魔界神の護衛だったということを、ここに来て私もようやく実感できた。

 

「それで、その豹が隠れ家から逃げちゃってるのよ~。ノエルのところには来ていないかしら~」

「そうなんですか!?見ての通り、わたしのお家は豹さんを受け入れるには狭いんです。それにチルノちゃんや他のお友達が来ることもあるので…わたしのところに逃げてくるってことは無いと思います。

わたしを頼るならリリーちゃんを頼ると思いますが…リリーちゃんからわたしのことを聞いたということは、リリーちゃんも知らないってことですよね?」

「そーなのよ、だからノエルを探しに来たってワケ。

だからもし豹の居場所見つけたら、私たちかリリーに教えなさい。紅魔館じゃない方の廃洋館はわかる?」

「あ、よく音楽が聞こえるお家ですね。わかりました、ここからそんなに遠くないので大丈夫です」

「よろしくね~」

 

まあ情報無しなのは予想通りね~。ただ氷精の関係でノエルを頼ることもないだろうってことはわかった、それだけでも収穫だわ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

秋農園。妖怪の山のふもとで秋姉妹が営む農園で、妹である豊穣神の能力は秋の作物にしか作用しないそう。そのため収穫を終えたこの時期は少し寂し気な風景になってしまっているけれど…そのおかげで目的の神々はすぐに見つけられたわ。

 

「少し時間いいかしら?」

「うん?げ、厄神…

冬になって気落ちしてるのになんでこんなのが出向いてくるのよ…」

「穣子、いくらなんでも失礼よ」

 

すっかり沈みきった豊穣神の妹が不満を隠してないわね。まあ、秋が終わると毎年こんな感じだし、この農園に私の厄が溜まってしまうのは避けたいのもあるでしょうから仕方ない。

 

―――妖怪の山において、人里に近い存在の一つがこの神である姉妹。本命ではないのだけれど、相手にしても危険は少ないことと、私の家から比較的近い位置にあることが真っ先に向かった理由。

 

「素直に喋ってくれればすぐ終わるわ。

 豹の情報を天狗に流したのは貴方たち?」

「――!」

「はあ…?誰よそいつ」

 

妹の方は無気力なまま返事をしたけど、姉の方が表情を変えた。

 

「聞かせてもらいましょうか」

「………穣子、ちょっと離れるわ。すぐ戻る」

「へ?あれ?ちょっとお姉ちゃん!?」

「あまり多くの耳には入れたくないのでしょう?付いて来なさい。

 穣子はそのまま作業を続けておいて。後で最低限は教えるわ」

 

そのまま人目を避けるよう農園を離れていく。さあ、何を知っているのかしらねこの神は。

 

 

 

「まず前提条件を確認させなさい。ヒョウというのは、魔界人のヒョウのことですか?」

「…ええ、その通りよ。貴方、豹に感付かれずに調査できるような力を隠していたのね」

 

いきなり核心を突いてきたわ。つまり、この神は相当な実力を隠していた…上手く逃げ切る算段も立てておかないと!

…と内心焦ったのだけれど。続いて出てきたのは完全に予想外の言葉で。

 

「私は八百万分の一の神でしかないわ、そんな力なんて持っていないわよ。

ただ、私の能力を有効利用できる強大な相手からは価値を見出されているわ…その中に魔神・神綺がいる。彼のことで知っているのは、彼女から聞いた名前だけです」

「なっ…!?」

 

そして全く想像していない方向で驚かされることになったわ。

この神は、魔界神と面識があるということ…!

 

「だから、天狗に情報を流すなんてことはしてないわよ。それこそ私の方がヒョウという男のことを知りたいぐらい…あの規格外な魔神に睨まれるのは困ってしまうわ」

「…何故、と聞いてもいいのかしら?」

「私は紅葉の神にして、寂しさと終焉の象徴…私一人では紅葉にしか作用させられないし、穣子と二人揃ってもここ幻想郷の秋を司るのが精一杯。

だけど、八雲紫や神綺といった規格外の相手であれば…【終焉の象徴である(わたし)】の能力を都合良く引き出すことが出来るのよ」

「―――っ!?」

 

とんでもないことを平然と話す秋静葉。この言葉が真実であれば…!

 

「そう不安にしないでも大丈夫よ。私の能力なのだから、無理に引き出そうとすれば私の方がもたないし、そうなった状況で能力が暴走なんてしたら目も当てられないことになる。

八雲紫は【私の限界という境界を操る】ことで有効利用したのだけれど、労力と私の弱さと引き出した力の制御が予想以上に酷かったらしくて『次の機会は無いことを願うわ』なんて言って来たし。神綺に至っては協力させられてからしばらくは魔界で静養する羽目になったしね」

「魔界に滞在したことまであるの…どちらにしても驚愕の事実なのは変わらないわね…」

「これでも神の一柱ですから、弱いとはいえそれなりの交友はあるんですよ。いざという時には魔界を頼っても嫌な顔をされない程度には。

もっとも、魔界より居心地の良い幻想郷という場所にいるのでその機会は無いでしょうけどね」

 

軽い気持ちでここに来てしまったけれど、思っていた以上に重い事実を突き付けられてしまったわね…!

でも、私も退けない。豹のことを知らないのであれば、最低限の情報だけで乗り切らないと。

 

「そう…なら私の早とちりだったわ、ごめんなさいね。

でも、一つ忠告しておくわ。豹は今幻想郷に居て、魔界からの追手が昨日侵入している。私は豹に魔界へ帰ってほしくないから追っているけれど…巻き込まれたくないなら下手に動かない方がいい。

私のことは話してしまっていいけれど、魔界と接点があるなんてことは隠した方がいいと思うわ」

「ちょ、ちょっと待って!?そんな大事になってるの!?」

「ええ、それに今の話を聞く限り魔界神も助けてくれそうなのでしょ?

それなら、介入しようとせずに傍観した方がいいと思うわ。どう転がろうが貴方は勝ち馬に乗れるのだから」

「そ、そうするわ…出来れば私のことは隠してよ?私も聞かれない限り何も教えないから」

「私が貴方と魔界のことを話すことに何の利益も無いわよ、安心しなさい。

 それじゃ、失礼するわ」

 

そのまま飛び立って次の目的地を考える。残りの候補は二つなのだけれど…

 

(にとりは玄武の沢に居ない場合、他の河童に見つかると私が動いたことが河童全体に広まるのよね。潜伏したい豹のことを考えると、椛に頼んでにとりの所在を確認出来てから訪ねるべき。

それなら…本命に向かうしかないわね)

 

私一人で向かうのが危険なのはわかってるけど、もう覚悟は決まってる。

 

「行きましょうか…守矢神社に」

 




ノエルの由来はそのままチルノから。チ→エにして並べ替えただけです。
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