寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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価値ある武器の元ネタはこのお話に関わりません。二次創作ゆえのお遊びだと見逃してください。
元ネタがすぐにわかる読者様とは話が合うと思います。


第14話 勇者行為はほどほどに

豹さんのおかげで夢幻館再建の希望はかすかに見えてきた私たちですが、前途多難なのはあまり変わりません。私は海向こうの生まれ…幻想郷に古い知り合いなんていないのです。

 

そんな状況で専門外のお仕事…半壊したお屋敷の修復なんて命じられても出来ることなんてほとんどなくて。外の世界への出入りに厳しい制限がある以上、私とくるみが頼れる伝手はもう二人しかいなくて。

幽香と真正面から戦える、私なんて相手にされなくても仕方ない強大な悪魔。でも、私たちに協力してくれました。豹さんに対してもですが、私とくるみは貰った恩を本当に返せるのか…不安になります。

 

「お帰り。…相変わらず収穫はなさそう」

「それは仕方ないですよ…巫女たちが大暴れしたから幻想郷に入ること自体リスクと考えてしまっていて、資材を運び込むというだけでも及び腰になってしまってますから」

 

夢幻世界に戻ってくると、夢月さんがお迎えしてくれました。お姉さんの幻月さんは割とインドア趣味で、この変化の少ない夢幻世界のご自宅で過ごすことが多いそうですが、夢月さんはそれほどのめり込めないらしく退屈しのぎとして私に付き合ってくれたりします。

 

「まあ、今となっては普通の魔界人や悪魔じゃ自殺願望でもないと幻想郷に出ようなんて思わない。仕方ないわ」

「スペルカードルールが出来てから、命の危険はだいぶ少なくなっているんですけど。でもそれが魔界に伝わってないですからね…」

 

実際私とくるみは危ないところでしたし。今思えば、よく無事に済みましたね私たち…

 

「でも、今日はなんだか楽しそう。何かあった?」

 

う、そんなにわかりやすかったでしょうか。

 

「はい。再建のアドバイスをして頂いた方が、わけあって修復も手伝ってくれることになったんです」

「へえ…無茶なこと言う奴と思ったけど、本気だったんだ。少し気になるわ」

「夢幻館に来てもらえれば、会ってくれると思いますよ。しばらくは滞在してくれそうなので…

ただ、魔界から逃亡してるそうですので、幻月さん以外には漏らさないで下さいね」

 

そう言うと、真面目な表情で返されてしまいました。

 

「匿ってる逃亡者を他人に会わせちゃダメでしょ」

「し、しかたないじゃない…私が夢月さんに隠し事が出来るはずないですもん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

方針が決まって、出発しようとしたところで。

 

「あ、そうだ。危険物をまとめて封印してあるって言ってた地下室、調べてく?

わたしも入ったことないからちょっと気になるの」

 

とカナが言い出した。私も蒐集家として興味が沸いたので、見ていくことにする。その途中で思い出したのが。

 

「そういえば、上海。豹にあっさり捕まったようだけど、戦闘自体はどうだったの?」

 

バタバタしててこんな重大なことも聞いてなかった。私も冷静になれてなかった証拠ね…

 

「…情けない話ですが、戦闘にすらなりませんでした…

人里では屋根伝いに駆け抜けていった豹さんですが、人里を抜けたら地面に着地したので私とはかなりの高低差ができたんです。なので少し速度を上げようとしたら、急に反転して私に突進してきて…私は慌てて戦闘態勢に入ろうとしたんですが、それもフェイントだったみたいで。空間魔法で背後に回られて捕まってしまいました…ご主人様とのパスも空間魔法を行使することによって、私の背後の空間ごと切られてしまったみたいです」

 

なるほどね…少なくとも空間魔法においては私より上。逃げに徹されると厄介だわ…これも対策を考える必要がありそうね。

 

「ここよ。危なさそうなものは全員で警戒しながら調べましょ」

 

 

 

私も地下室の存在は知ることができていましたが…地下室というより地下倉庫といった方が正確なのでしょう。人形なので小さい私はともかく、ご主人様たちは窮屈そうにしています。

 

「…豹はどうやってここを作ったのかしら。地上に家を建てるより、地中にこんな空間を作って崩落しないように固定する方がよほど難しいと思うのだけれど」

 

ルナサさんが土汚れを掃いながら疑問を口にします。

 

「元々はスキマ妖怪に危ないものを預かってほしいって頼まれたときに、それを隔離するための部屋として造ったって聞いたわ。豹が土のゴーレムを地下の土を使って創造して、スキマ妖怪がそれによって地下にできた空洞を能力でこの形に整える。そうしてできた空間を部屋としてお家と同じように豹の魔力で強化・固定したんだって。豹はよくそんな方法思い付くよね~」

「考え付くことも実行して成功することもすごいわ…そしてそのゴーレムがおそらくこの4体。部屋の支柱として再利用するだけでなく、侵入者に反応して動き出すと地下室ごと崩落して危険物諸共に生き埋め、と」

「…カナがこの家の魔力を掌握していなかったら、私たちもそうなってたのね。逆に言うと、それだけ危険なものがここにあるの?」

 

それを、私は知っています。

 

「はい…一番奥に封印されている頭蓋骨が、そうです。あれだけは、そのままにしておいてください」

「う…」

 

ルナサさんが後ずさりました。私も…あれは怖いと感じます。

 

「…立派な角のある頭蓋骨、か。私もアレに関わりたいとは思わない。調べるのは手前の方だけにしましょう」

 

本当に、豹って何者よ…とご主人様の口から言葉が漏れます。

…今の私は、ご主人様よりも豹さんのことを知っています。でもそれは、この家で過ごした優しい豹さんのことだけ。紫さんのような大妖怪からこれだけ頼りにされている理由などは何もわかりません。

 

私が受け継いだこの記憶と想いに応えるためにも、ここに何か豹さんの手がかりがあればいいのですが。

 

「でも、あれと対になるような位置に置かれてる杖に違和感を感じるのだけれど…あの杖、それほど古いものでは無いわよね?」

「うん、あれはここにある中では一番新しいわ。アリスは吸血鬼異変の時はもう幻想郷にいた?」

「いえ、そんな異変知らないわ。私はレミリアの起こした紅霧異変が解決されて少ししたぐらいに魔界から移住してきたのよ」

「…吸血鬼異変も、レミリアの起こした異変よ。でも、紅霧異変とは比べ物にならないほど幻想郷へ与えた影響は甚大だった。スペルカードルールが制定されたきっかけの異変と言えば、大事件だったのがわかるわよね?」

 

ルナサさんが説明してくれましたが…私も知りませんでした。物凄いことがあったんですね。

 

「…レミリアがそこまで幻想郷を変えていたのは驚きだわ。もう少し早く動いてくれてれば、魔界の大惨事もなかったのかしら…」

 

ご主人様は魔界にやってきたあの4人を止められなかったことを、まだ悔やんでいるのですね…

 

「吸血鬼異変の時にはもうわたしはここに引っ越してたんだけど、豹があの異変の当日このお家を留守にしてたのよ。私の知る限り、異変が起きてから解決されるまでの間に豹がこのお家から外に出たのはこの1回きり。

その時に持ち帰ってきて、ここにしまい込んだのがあの杖よ。だから一番新しいけれど…」

「戦利品を利用して封印を強化した可能性があるのね。正直興味があるけれど、豹本人に確認するまでは止めておきましょう」

 

そうして、手前の方にあるものを調べ始めたのですが。

 

「これ、花火?なんでこんな厳重に保管されてるのかしら」

「その、ご主人様…大江戸ちゃんたちで麻痺してないでしょうか。普通の花火でも、引火したら大惨事です」

 

ご主人様が不安になる反応を見せたり、

 

「あれ、この笛は飾らずに中の見えるケースにしまい込まれてるのね。何か魔力が残ってたりするのかな~」

「…それ、下手に触らない方がいいわよ。仕込み笛だわ…楽器じゃなくて暗器として使い込まれてるから、ケースに見えるそれがそもそも封印してる道具で、出した途端に呪われるなんてこともありそう」

「怖い!ルナサがいなかったら危なかったね…」

「カナがこの家の魔力を掌握したのであれば、これぐらいは気付けると思うのだけれど…

そもそも楽器を模してなかったら私じゃ気付けなかったはず。本当に大丈夫なの?」

 

この家に一番詳しいはずのカナさんが一番不用意だったり、

 

「………」

「ご主人様、魔導書を読み込むのはまたの機会にしていただけませんか…」

 

思っていた以上にご主人様にとって宝の山だったりしたようで、魔導書を読みふけってしまったり…

そんな中、私自身も。

 

「あれ…この刀は…?」

 

私が受け継いだ記憶の中で、一番不思議な表現をされていたものを見つけてしまいました。

 

「…上海?何か見つけたの?」

「あ、ルナサさん。この日本刀なのですが…」

「え?日本刀がここにもあったの?」

 

ルナサさんとカナさんも興味を示してくれました。ご主人様は…

 

「………」

 

だめそうです…少なくともあの魔導書をキリの良いところまで読み終えないと満足してもらえそうにないです。

 

「昨日わたしが使ったやつとは別のだね。ここにあるってことはいわゆる妖刀なのかな?」

「いえ、そうではないと思います。この日本刀なのですが、私が受け継いだ記憶の中で紫さんに不思議な呼ばれ方をしていたんです」

「八雲紫の言葉だと、裏どころかいくつも意味がありそうで理解するのが難しそうだけれど…なんて呼ばれていたの?」

「『滅びた未来でも朽ちることのなかった名刀・夜叉』…どういう意味なんでしょう」

「…わからないわ。言葉の意味はわかるのだけれど、それが真実だとすると未来の刀ということ?」

「そもそも、日本刀って今でも打てる鍛冶師は少ないって話じゃなかったっけ?なのに未来の刀って…」

 

真実でしたら、とても貴重な逸品なのでしょうけれど…

 

「胡散臭いわ…」

「胡散臭いね」

 

ルナサさんとカナさんの感想がぴったり一致してしまいました。

 

\ホラーイ/

そしてその隣に置いてあった剣には蓬莱が興味を持ちました…こちらは両刃のソードです。蓬莱は主にサーベルやソードを扱いますから気になるのはわかるんですが、日本刀とは違う意味でなぜここにあるんでしょう?

 

「こっちは西洋の剣だね~、でも並べてあった日本刀が妖刀じゃないならこれも呪われてるわけではないのかな」

「…鞘になにか彫られてる。―――ヘルゲ、かしら」

「この剣の使い手だった人でしょうか?」

「それかこの剣を打った鍛冶師さんかなあ?」

\……/

 

ゴリアテちゃんも興味があるようで蓬莱と一緒に持ち上げようとしています。でも私たちが扱うにはどちらもサイズが合いません。あまり触らない方がいい気がしますが…ご主人様は止める気が無いようですし、私が止めないといけませんね。

 

 

 

結局、豹さんにつながりそうなものは見つかりませんでした。もしかして、これも豹さんによるカナさんを利用した足止めの一環だったのでしょうか?

だとすると、私たちは見事に引っ掛かってしまったことになります。こんなことで私は豹さんに会えるのか…不安になってしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、豹さんって私たちが思ってた以上に裕福だったんですねー」

 

食事を終えてすこぶる上機嫌なくるみにとうとう突っ込まれた。

 

「…裕福だからこんなにアクセサリや宝石持ち出せたわけじゃない。今回みたいな状況になった時のために、全部俺の魔力を付与済だ…換金用にするつもりだったのは否定しないが、どれも俺が逃げ延びるために使い出はある。逆に言うと俺の隠れ家にあったもので売り物になるのは、こいつらぐらいしかなかったんだよ」

 

ちなみに食事とは俺からの吸血である。よく考えずとも夢幻館が半壊してから吸血なんて滅多にできなかっただろうから、行動に影響が出ない程度という条件で飲ませてやった。宿賃代わりと思えば安いだろう。

なおくるみいわく「美味というより珍味。悪くないです!」だそうだ。どう反応してほしかったのだろうか。

 

「そうなんですか…ちょっと残念。あまり計算とか得意じゃないからエリーに任せてますけど、ちょっと資料見せてもらってびっくりしたんですよ。建築って凄いお金かかるんですね…」

「だからこそ俺は自分の隠れ家をやっつけ仕事で自作したからな。加えて言えば、館が幻想入りしたということはおそらく人間たちの手で建てられたものだろう。魔力を一切使わずに職人たちが築き上げた大洋館…人間たちからすれば莫大な時間と資材、そして資金と労力が使われて建築されたはずだ。それを魔界の資材で修復しようとする…業者にとっても相当な無理難題だろう。だいぶ吹っ掛けられても仕方ない」

 

言葉にすると本当に無茶振りだな…俺一人手伝ったぐらいでどうにかなるもんじゃないだろこれ。

 

「しかしそうだな…一度放棄したと見せかけて戻るという手もあるか」

「はい?」

 

そもそも隠れ家をそう扱う気だったのだ。ならここも…保険にさせてもらうか。

 

「くるみ、これを夢幻館に置いといてくれるか」

「え?…腕輪ですかね、これ」

「ああ、俺の使い方の問題でアクセサリとしては使ってほしくない。簡単に言えば使い捨ての空間魔法の出口にする。だからある程度広い場所…正門の裏とか無事に残っている屋上あたりに盗まれないよう固定しておいて貰いたい」

「あ―なるほど…それなら豹さんがやってくれて大丈夫ですよ。どこに付けたか後で私たちに教えてください」

「いいのか?ならそうさせてもらう」

 

一応、地下室にもそれなりに価値のある刀とか剣もあったんだけどな。武器はそれを使いこなせる相手に渡したい…そう考えると俺が換金に使うぐらいならカナに回収させて使い手を見つけてもらう方が武器として本望だろう。カナがそこまで考えてくれるかはわからないが。

 

「ただいま、くるみ………―――っ!?

え?え!?豹さんもうここまでやってくれたの!?」

 

エリーも帰ってきたようだ。置き場を確認してもらうか。




次の更新は火曜日の予定です。
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