寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により 」 の消し忘れを修正…した直後に 。 の入れ忘れを修正しています。いつも以上に迅速なご指摘でした(言い訳出来ない推敲不足)。
いつも助かっています、ありがとうございます。


第144話 繋がるのは、相手も同じ

神奈子様の言った通り雪が降り始めています。秋が終わった途端に初雪が降るなんて、幻想郷に来てからは初めてです。神奈子様も諏訪子様も寒さが苦手なので、しばらく怠惰な日々を送ることになってしまう分私が精力的に動かなければなりません。

 

(ついこの前の石油騒ぎは、神奈子様直々に動いていただきましたから…今回は私が頑張らないと!)

 

核融合炉が地底にある関係上、私が相互不干渉違反を破ることを避けるために神奈子様が動いてくださった面もありますが。相変わらず霊夢さんも魔理沙さんも地底に行ってたそうなので今更な気がするんですよね…神奈子様が私の身を案じてくれているのは分かっていましたから、お言葉に従いましたけれど。

 

(それにこの異変、霊夢さんと魔理沙さんに動いてほしくないそうですからね。

となれば私か咲夜さん、妖夢さんに鈴仙あたりへ話が行くはず。この中で一番出し抜くのに苦労する相手と協調すれば、情報収集の効率化と抜け駆け防止の一石二鳥です!)

 

そういうわけで私が向かっている先は永遠亭です。今回の異変の中心になっているのは魔界だそうですので、幻想郷の住人から情報収集しても大した情報は無いでしょう。でしたら私たちのように幻想郷へ移住してきた人から話を聞けばいい。月と魔界に関係があるかどうかなんて知りませんけど、鈴仙本人はともかく八意先生であれば何か知っていてもおかしくないですから。

 

…魔界であればレミリアさんの方が詳しいことを知っているような気もしますが、咲夜さんはともかくあのレミリアさんが私に情報を簡単に渡してくれるとは思えないんですよね。神奈子様からも諏訪子様からも強く念押しされたのが【魔界の住人が相手であれば、スペルカードルール無しの戦闘になる】…つまり生死を賭けた戦いになるということ。

 

さっきターゲットの尻尾を掴めましたが、聞いていた通り逃げることが最優先なようで私に向けて攻撃してくることはありませんでした。ですが逆に言うと、小手調べの通常弾だったとはいえ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ほぼ無傷で逃げ切れるほどの相手です。弾幕ごっこなんて遊びの気持ちじゃ捕まえるどころか攻撃を当てることすら出来ないってことです。

 

(あれほどの相手に消耗した状態で挑むのは無謀でしょう。となると交戦が避けられないレミリアさんより、交戦しても交渉次第で治療までやってもらえる八意先生の方が安全です)

 

そして残りの候補は妖夢さんですが…幽々子さんは流石に紫さんの親友だけあって、正確な情報を渡してくれない可能性があります。それに冥界はともかく魔界の情報を持っている可能性は低いでしょう。なら話を聞きに行くのは最後で十分です。

 

そんな事を考えながら人里に着きましたが、迷いの竹林を抜ける必要があるのでまずは妹紅さんを探さないといけません。この雪の中竹林で迷子はちょっとシャレになりませんからね。

なので地上に降りずに上空からそれらしき反応を探していたのですが―――先に鈴仙の反応を見つけられました。というか…これって人里の外れで別の妖怪2匹と話し込んでるんですかね?明らかに人目を避ける位置です。だからこそ山から人里に向けて飛んできた私がすぐ見つけられたわけですが。

 

(なら直接鈴仙に話しに行きましょうか。家にいない妹紅さんを探すのは大変ですし)

 

 

 

 

 

「だーかーらー!サリエルってのが本当ならほっとけないでしょ!!」

「本人じゃないなら気にしなくていいじゃない。下手に刺激する方がお師匠様に迷惑よ」

「貴方の言うこともわかるけどさあ、名前が出たことだけでも八意様に伝えるべきよ?そこまで私達を永遠亭に入れたくないわけ?」

 

…どうやら兎同士でお話し中ですね。行商姿の鈴仙は話を切り上げたがってるように見えますし、割って入って抜け出す理由になってあげましょうか。

 

「見つけました!鈴仙、ちょっと時間を貸してもらいますよ!」

「って、早苗?私に用なんて珍しいわね」

「…げ、山頂の神社の巫女じゃん。貴方、コイツと知り合いだったの?」

「私は巫女じゃなく風祝です。ちょっと鈴仙を借りますよ!

 豹って魔界人を探すのに手を貸してもらいますので」

「ヒョウですって!?」

 

…あれ?鈴仙に絡んでる方の兎が反応しましたね。これは意外なところで収穫があるみたいです!

 

「豹について何か知っているんですか!?教えてもらいましょう!隠すと言うなら力尽くです!!」

「待って待って!教えるけど、その話を八意様にも伝えて!!

 鈴仙、いいでしょ!サリエル本人じゃなくても、魔界が動いてるのは間違いないわ!!」

「………仕方ないか。月どころか魔界とも全く関係ない早苗から同じ名前が出るのは、偶然では片付けられないわ。

早苗、悪いけど永遠亭まで付き合って。清蘭と鈴瑚も案内するけど…帰るときにお師匠様から口止め用の投薬されるぐらいは覚悟しなさいよ?」

「「えっ」」

 

はい、都合よく話が進みましたね!思っていたより話は広まっているようですが…そこは私の手回しでどうにかなる範囲じゃないので、気にしないでおきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、なんで私まで出向かなきゃならないんだい?」

「阿求が口を割らなかった場合の交換条件よ。魅魔はまだ幻想郷縁起に書かれてないでしょ?

豹のことを吐かせる代わりに、魅魔の情報を阿求に渡すわ」

「………魔理沙、これ受けちまって平気なのかい?」

「大丈夫だと思うぜ。マズいことがあれば管理者共が内容の添削してるみたいだしな」

「仕方ないねえ。ついでだ、明羅と呪珠も回収しておくか」

 

紫が霊夢を説得しようと博麗神社まで来てたが、霊夢は結局追い返したぜ。このあたりは日頃の行いだな。

いつもいつも煙に巻くような態度でいるから肝心な時に信用されない、いい気味だ。

 

「じゃ、人里に行くわよ!雪の中飛び回りたくなんかないけど、あの神の言いなりなんてごめんだからね!」

「おう!情報収集ぐらいやっても文句は言わせねえ!」

「やれやれ、今でも私がお守りしなくちゃならないとはね。

 手元から放すのが早過ぎたかい」

「誰のお守りよ!!」

「私は歓迎だぜ!魅魔様から学べることはまだまだ沢山あるからな!」

 

ああ、懐かしい感じだぜ…忘れちまったはずなのに、こんな感じだった気がする。

私の格好は変わっちまったけど、私が靈夢と絡む時の魅魔様はこんな風に、少し後ろで動いてくれてた気がする。

 

雪の降りしきる空を飛びながら、私は思い出せない過去を重ねることで…浮かれてしまってた。

―――あの頃は、スペルカードルールなんて無い【闘い】だったことを忘れて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――だから、私は豹って奴のことは何も知らないよ。ただ、この様子だと雛もそのうち私のところに来そうだなあ。椛、先に雛に私は何も知らないって言っておいてくれない?」

「わかりました、私からお伝えしておきます」

 

こいしさんは地上の知り合いを当たってみるということで何故か人里の方へ飛び去ってしまいました。どうして地底の妖怪であるこいしさんが人里に伝手があるのかとも思いましたが、教えていただいた《無意識を操る程度の能力》によって幾度も地上に出ていたことによるものだと納得することにしました。

 

…こいしさんほどの実力者が人里に侵入しているという事実は、私が知っていいような情報ではない気もしますが。

 

「しかし、あの狐は何を企んでたんだろうねえ。豹の写真を印刷してどうするんだか」

「少なくとも私や守矢の風祝はヒョウの容姿の情報を何も知りませんでした。そして彼が潜伏していたことと、その管狐が恨みを持っていたということを考えると…その印刷した写真を有力勢力に送りつけるつもりだったのではないでしょうか?守矢神社に渡している時点で、飯綱丸様の命を無視して動いていることになります。

潜伏中のヒョウにとって最も避けたいのは自身の情報の流出。となれば、その管狐自身が手を汚さずとも彼を追い詰めることになります」

「あー…たぶんそれ当たってるよ。私が印刷した後、別の河童も印刷頼まれたって言ってたわ。

天狗の部下らしく陰湿な手を使うもんだ」

 

そして私は勇儀様と庭渡様に従いにとりさんのところに来たのですが、予想通り豹さんに関してにとりさんは何も知りませんでした。

…そのかわり、飯綱丸様と菅牧様が本気で豹さんの追放を望んでいることが確信できるお話を聞けました。特に菅牧様…まさか飯綱丸様の命に背く行動を取っているなんて思いもしませんでした。おそらく、我々天狗に豹さんのことを広めてはいませんが…守矢の風祝やにとりさんといった妖怪の山の住人には豹さんの存在を広めている。目撃証言が上がれば上がるほど、豹さんは逃げ道を失うのですから。

 

「なるほどねえ…あの神社は近いし真っ先に情報を渡してもおかしくはないが、ここのところ増えてきた戦力持ちの奴らにも写真をバラ撒いて豹の敵を増やそうとしてたってことか。ちなみに印刷を頼まれたのはいつなんだい?」

「一昨日だよ。それで印刷し終えて渡したのが昨日のお昼過ぎで、別の写真も頼まれたって聞いたのは今朝だから…配って回ったとしてもたぶん私が印刷した写真だけ。それも昨日の午後から動いたってことだから、あの神社には確実に渡してることを考えても多方面に飛び回るような時間はまだなかったんじゃないかな?

あの管狐なんだかんだ大天狗の腹心として有名だし、それなりに仕事もあるはずだしね」

「それなら、昨日の午後と今朝の動きを知ることが出来れば…!」

「いえ、それを調べても遅いですよ椛。敵対するかどうかは関係なく、ヒョウの容姿を知られてしまっただけで彼女の目的は果たされています。

私達がすべきはヒョウの捜索。それこそ彼女によって初めてヒョウの存在を知るような方々が、彼の居場所を知る可能性は低い…潜伏しているのでれば、有力者との接触は避けるはずです」

「久侘歌の言う通りさ。豹とは殴り合う前に少し話をしたけど、今も紫の庇護下にいたんなら、他の有力者に靡くような奴じゃなかったからね。それこそ紫なら信頼できる有力者には豹のことを教えて手回ししてるんじゃないかい?少なくとも、冥界の亡霊姫は豹のことを聞いてるだろうさ」

「…たしかに、その通りですね。優先すべきは豹さんです。

 そうなると、私の当てはもう先ほど話した皆様だけになってしまうのですが…」

 

どうやらアリスさんたちとルナサさん、それにカナさんたちはまだ帰って来ていないのです。なのでこれから話を聞きに行くとすれば、メルランさんとリリカさんになりますが…

 

「それじゃ、次は華扇のとこに寄らせてもらっていいかい?今の華扇なら紫から豹のことを聞いてても不思議じゃないからね」

「茨華仙ですか。たしかに、今の彼女であればこういった重要機密を握っている可能性はありますね」

「それに、勇儀様でしたら茨華仙様の協力を得ることも…!」

「そういうことさ。椛、案内は頼んだよ?」

「はい、お任せください!」

「ま、私はこれ以上関わる方が危険だと思うから深く首は突っ込まないけどさ。神社からの協力要請は今更断れない。早苗に協力するのは見逃してよ?」

「ああ、お前さんにも事情があるんだろ?好きにしな。

 ただ、次があったらまた手を貸しなよ?」

「わかってますって、勇儀さんを敵に回したくないし。でも、なるべく私の関与は伏せてくださいよ!」

 

そう返してにとりさんは研究に戻って行きました。私としてもにとりさんにあまり迷惑をお掛けしたくありません。私たち白狼天狗に実験として試作品を回して頂いたりしていたので、私が抜けた後の同僚たちの力になってもらいたい…私たち下っ端天狗に助力してくれる方は貴重ですから。

 

「それでは、こちらへ。茨華仙様のお屋敷までご案内します」

 

雪の積もり始めた玄武の沢を離れます。茨華仙様のお屋敷は辿り着くのが困難な場所なのですが…勇儀様がいる以上茨華仙様が迎え入れてくれるはずです。

それに…茨華仙様であれば、豹さんと勇儀様の再戦を止められるかもしれません。協力していただけると良いのですが。

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