寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第150話 一度別れて入れ違い

フラワーマスターが予想以上に魔界で警戒されていたことと、マイという方の暗躍が魔界にとって早急に動くだけの理由になっていることで、私たちへの追及はそれほど深くならずに済みそうですね…!魔界神様直々に尋問されることになるなんて思ってもいませんでしたが、今までの内容だけなら豹さんに影響は出ないでしょう。

 

(後は、アリスさんたちをなんとか誤魔化せば幻月さん、夢月さんとサリエル様が豹さんの保護に動いてくれるはずです。今の時点で、豹さんが幻想郷に留まるための最上の選択…!)

 

現状、豹さんが八雲からの支援を受けるにはその繋がりを隠すための中継点が必要になります。そして私やルナサさんでは力不足である以上、夢幻館の皆様の協力は必須。定期的に連絡を取る手段さえ確立できれば、紫様と藍様に幻月さん・夢月さん・サリエル様で協力体制を築くことが出来ます。これだけの戦力であれば、魔界の皆様とも言えど実力行使で豹さんを連れ帰るのは難しくなるでしょう。

 

(なにより、神綺様も交戦は避けたいと考えてくれています。つまり私たちから手を出しさえしなければ自重してくれるということです。これはユキさんと夢子さんも同じ…それこそ私たちは魔界人を攻撃しようとする幻想郷の住人だけを注意するだけで済みます)

 

その要注意人物たちがとても強大な相手なのが問題ですが、魔界の皆様まで加わる三つ巴になってしまっては私などでは何もできなくなってしまいますし…豹さんが逃げ続けるのにも限界があるでしょう。そういう意味でも神綺様と繋がりがあるサリエル様、そのサリエル様と豹さんを繋げようとしている幻月さんが私たちに協力してくれるのはこの上ない幸運です。私たちに不足している【戦力】と【魔界の情報】を埋め合わせてもらえる…いえ、埋め合わせるどころか私たちの代わりに豹さんを守っていただけるのです。

戦力に劣る私たちが捨て駒のように扱われても、豹さんを守る戦力に影響は出ないということなのですから。

 

「これで話は終わりなのです?ならあたいからお願いがあるのです。

さっきリィスが話した通り、あたいは魅魔様の弟子でもあるのです。まあ、豹の扱いに関して相容れないのでサリエルについて来たわけなのですが…

最初に直接アリスとやらの家に送るとか言ってたのです。ですがあたいがそこに突然戻ったら魅魔様と魔理沙に見つかるのです。なのであたいは幻夢界に送るべきなのです」

「あ、そうなの?でも幻夢界にはパッと出口を作れそうなのがないのよねー…

ルビーちゃん、里香ちゃんを幻夢界のゲートまで送ってもらえる?それで悪いんだけど、ルビーちゃんが帰ってくるまでツララちゃんはルイズちゃんと一緒にここにいてもらえないかな?私たちにお客さんが来ちゃったらお仕事中って伝えてもらうだけでいいから!」

「ここに来れるなんて滅多にないから、いいよ。待ってる」

「私も構いません。でも急いだほうが良さそうですね…

 里香さん、でしたか?今すぐご案内しても大丈夫でしょうか?」

「むしろそうしてほしいところなのです!あたいがここにいたところで何の情報も渡せないのですぅ」

「それでは、私は先に里香さんを送ってきますね。神綺様」

「うん、お願い!」

「そういうことなのです。あたいに対する細かい指示はリィスに伝えておくのです!」

 

―――そう言い残し里香さんはルビーさんに連れられて一足先に出て行きました。なんというか、本当に研究者気質な人なんですね。自分のこと優先で全体行動は避けたがる…リィスさんがいてくれて助かったようです。

 

「それじゃ、他のみんなはそのままアリスちゃんのお家に送ればいいかな?」

「…ええ。夢幻館に向かう途中でアリスたちと通信したのだけど、目的を果たした後でまた情報交換するという話になっているわ。

豹を何処に落ち着かせたいのかは相容れないけれど、豹が原因で幻想郷と魔界を戦争状態にするわけにはいかない。そうなってしまえば()()()()豹を受け入れなくなってしまう…

だからまだアリスたち…いえ、神綺様と今ここで直接話せた以上【魔界】を相手にしていると思って良いのかしら?」

「うん!そもそも夢子ちゃんが認めてくれてたらそれが【魔界の意思】だと考えちゃって大丈夫だしね!」

「なら、そう考えさせてもらうわ。

今はまだ、私たちは魔界と完全に決裂するわけにはいかない…八雲紫はともかく、豹を良く思っていない幻想郷の管理者や大妖怪もいる。そいつらからすれば私たちはむしろ《幻想郷の敵》なのよ」

「わたしはただ豹をお家に帰らせたいだけなんだけど、それすら認めたがらない奴もいるみたいなの。豹を魔界に追い返すべきだって。

…でも、神綺たちならそいつらを利用できるでしょ?」

「『敵の敵は味方』という考え方ですが、神綺様たちにそう動かれてしまうと私たちではとても太刀打ちできないんです。豹さん諸共叩き潰されてしまいます…

ですからこそ、神綺様やアリスさんたちとはまだ繋がっていたいのです。私たちが先に【豹さんの敵】に捕まってしまえば…豹さんは私たちを助けるために動いてしまう。

―――ですが、()()()()()()()()()()()()()()()()。そう考えてもいいのですよね?」

「それはもちろん!ヒョウくんが自分を赦してさえくれれば、魔界に帰ってくることになんの問題も無いんだから!」

「……………はぁ」

 

…マイさんが小さくため息をついているのが気になりましたが、私ではそれがどういう感情なのかを推測することは出来ないでしょう。ですが、神綺様は確実に豹さんの味方になってもらえる。それだけわかれば、私には十分です。

 

豹さんが魔界に帰るというのであれば、私もそれについていくだけなのですから。

そういう意味では、私はルナサさんたちより里香さんに近いのでしょう。

 

「それじゃ、今日のところはここまでにしましょうか。

みんな、色々話してくれてありがとうね。ヒョウくんが幻想郷で変わらずに過ごせていたことを教えてもらえただけでも、ここまで来てもらってよかったわ!

たぶん明日には私も幻想郷に行けるから、その時にゆっくりお話ししましょう!」

「………神綺様?これから連中を排除するのですが、その後始末も終わらせてくださいね?」

「わかってるわよマイちゃん!だから私も手伝うわ!」

「うわー、神綺様とサリエル様とマイとサラで出発ですか?強硬派が可哀そうに思えちゃうわね」

「いいのよルイズ。あいつらよりヒョウさん一人の方がずっと魔界のために動いてくれるから」

「そういうことになるそうだ。少し時間を取らせてしまったが、神綺と直接話したことで魔界側はそれほど問題ないというのが理解できたはずだ…それも含めて、話をしてきてくれ。

私はまだ、幻想郷に侵入したことを知られるのは不味いだろうからな」

「はい。お先に失礼しますね、サリエル様」

「じゃあ、みんなアリスちゃんと夢子ちゃんとユキちゃんによろしくね!

上海ちゃん、家の中に飛ばしちゃっても平気かな?」

「あ、念のためにゲートを開くのは玄関前にしていただけますか?

ご主人様たちがまだ帰り付いていない状況で、私と神綺様はともかく他の皆様が入ってしまうと妹たちは侵入者と判断してしまうかもしれませんので」

「あ、それもそっか!なら玄関先に―――っと」

 

話を続けながら片手間で幻想郷に繋がるゲートを創っています。とても親しみやすく対応してくださいましたが、神綺様はまごうことなき魔界神…異界間移動するためのゲートをこんな簡単に創り出してしまうなんて。本当に、友好的な対応をしてもらえたのは幸運でしたね…。

 

「…あれ?アリスちゃんがいない?夢子ちゃんとユキちゃんは居るのになー…

それにお客さんも一人来てる?ルナサちゃんに似た魔力だけど…」

「もしかしてメルランかリリカかしら?色は違っても私と似た服装であれば私の妹よ」

「ここから魔力を探ってるだけだし、家の外だから姿は見えないのよー。

でもルナサちゃんの妹ってのはしっくりくるわね。ならこのまま帰ってもらっても大丈夫かなぁ?」

「うん、少なくともアリスの家の周りは安全そうなんだよね?

ユキと夢子とはもう話してるから、大丈夫だよ!」

「それこそ、アリスさんが一人で行動しているのであれば何か理由があるはずです…!私たちも早く合流した方が良いのではないでしょうか!?」

「たしかに…!里香さんには私からサリエル様の指示をお伝えしますので、皆さんは幻想郷をお願いします!」

「そうね、私たちは幻想郷の連中を相手することが出来ないわ。あんたたちでどうにかしておいて」

「私たちがかなう相手じゃないけど、全力は尽くすわ。

 カナ、麟、上海。帰りましょう」

「はい!」「OK!」

「わかりました!

 神綺様、失礼します。どうか…ご主人様と豹さんをお願いします」

「うん!任せて上海ちゃん!」

 

…神綺様のその返答は、私たちにとっては歓迎できないことでもありますが。

豹さんを守ってもらえることに間違いはありません。それなら、今は感謝しておきましょう…!

 

魔界に侵入して、無事に幻想郷に帰ることが出来た。そして、神綺様は状況次第で()()()()()()()()にはなってもらえるということがわかりました。

少なくとも私にとっては、とても都合の良い回り道だったと言えるでしょう。

 

ルナサさんに続いて、私、カナさん、上海ちゃんとゲートに飛び込みます。

 

「じゃあねー!次は幻想郷で会いましょ!」

 

後ろから相変わらず敵意のまったくない、神綺様の声が聞こえました。

 

 

 

「これでいいのよね、サリエル?」

「ああ、私が夢幻姉妹に頼まれたことはこれで済ませた。さっき言った通り、手を貸そう―――

 …む?幻月か?」

「ふえ?…あ、ホントだ。どうしたのかなー?」

 

どうにか伏せたいことは伏せたまま麟たちを幻想郷に帰すことは出来た。そして私に多数の捨て駒を差し向けた黒幕と、その理由があっさりマイから語られたことで私が次に為すべきことも決まったのだが…

ここに来て幻月が一直線にパンデモニウムへ向かっている。何かあったということだ。

 

「どうする?私が話を聞いておいて、神綺達は準備を整えてもらってもいいが…」

「ううん、このタイミングで幻月ちゃんがここに来るなんて放置は出来ないお話だもん。私とサリエルで聞きに行きましょう。

マイちゃん、サラちゃんは準備を進めておいて!ルイズちゃんはツララちゃんとお留守番お願い!」

「「「「はい!」」」」

「リィスも手伝ってやれ。私とリィスは身一つで動けるのだからな」

「わかりました!」

 

 

 

 

「―――サリエルもここにいたのは助かりました、移動する手間が省けます。神綺、あなたに頼みたいことがあります」

「うん、幻月ちゃんが大急ぎで真っ直ぐパンデモニウムに来てくれた時点でマズいことなのよね。何があったの?」

「サリエルからある程度の事情は聞いていると判断しますよ。

幽香がヒョウに目を付けてしまいました。私と夢月で抑えるつもりではいますが…魔界が暴走しないよう先に手を打ってもらえますか?」

「「―――ッ!?」」

 

神綺の読み通り、途轍もなく厄介な状況になってしまっていた。

マイが即座に強硬派の排除に踏み切っていたことは、我々にとって理想的な展開だったようだな…!

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