それと、とうとうUAが10万に届きました。この作品を楽しんでもらえている読者の皆様、ありがとうございます。
「利益なら一晩ここに置いてもらえるだけで十分だ。それこそ俺を庇護することで君が不利益を被るぞ…
悪いことは言わない、俺を引き込むのは止めておけ」
この邪仙を俺の言葉で退かせるのは難しいだろうが、実力行使に出れば無人であるはずのここに足を踏み入れた者がいることを察知されるリスクがある。だからこそ言葉を返すのだが…
「おや…?本当に素晴らしい方ですね。私の思考誘導も暗示も全く効果がありませんわ。
防護術を作用させているわけでもないようですし…これが貴方の能力ですのね」
ダメだ、この邪仙最初から首を縦に
(むしろ俺の危うい状況を話せば豊聡耳神子の方から避けようとするか?極論だがあの聖人さえ俺との距離を取ってくれれば、仙界勢力が俺に警戒を向けることは無いはず。実利的かつ打算的な政治家なら魔界を敵に回すことは避けたいだろうしな)
そう動いてくれりゃこの邪仙個人との付き合いだけで収まる可能性もある。そうなれば逆に豊聡耳神子から優秀な道士を一人引き抜くという勢力弱体化が狙える…もっとも、こんな取り扱い要注意な存在を俺が使いこなせるはずもないから、上手く押し付ける相手を探す必要が出てくるが。
…そう俺の中で選択肢が増えたところで、逆に彼女が条件を出してきた。
「ウフフ…そう簡単に靡いてはくれないようですので、取引をいたしませんか?
貴方の名はお聞きしませんし、ここに潜むことも隠しましょう。
その代価として、貴方の子供を頂けませんか?母体は私が見繕いますので」
「」
不覚にも絶句しちまった。聞いていた以上に倫理観がブッ飛んでるな、この邪仙…!
「ここ幻想郷の実力者は女性に偏っていますわ。住民の男女比自体が崩れているというわけではないのにも関わらずです。だからこそ、その力を伏せている貴方は【稀少な実力者である男性】。
ここ数年は養小鬼の補充に難儀しておりますのよ。特に質の良い材料はなかなか見つからず…でしたら最初から質が良くなるように産み出せばよいのです」
「…実力者である俺の子供が、実力者にならないこともあるだろ?」
「力無き男性の子供よりはずっと有望ですわ。ですがそのお答えですと、肯定的にはなって頂けないようですわね…
男性の貴方は快楽を得るだけで済みますのに、何がご不満なのでしょう?
もしや、お相手に私をご所望ですか?」
「それはとても魅力的な誘惑だがな、俺には君の戦力を強化させるわけにはいかない理由があるんだよ。
君は豊聡耳神子の協力者だろう?俺は彼女を危険視する側の立場だ。俺の子供を材料として求めるのであれば、仙界との縁を切ってくれ。それが絶対条件だ」
「あら、それは…本当に私が考えていた以上に貴方は重要人物だったようで。
今はまだ豊聡耳様との協力関係を切ることは出来ませんの。残念ですが、交渉決裂ですわね…」
「だが、俺もわざわざ事を荒立てるつもりはない。代価が必要ならここを離れよう」
「いえいえ、私としても貴方と敵対することは避けたいですわ。どうぞご自由にお使いくださいませ。
代価は貴方とここで知り合えたことで十分ですもの…用意が整いましたら、また私から貴方の元に伺いますわ。その時まで、ご壮健であられますよう」
予想よりはずっとあっさり去って行った。諦めてはいないようだったが。
…動揺しかけたから割とストレートな断りの入れ方になっちまったが、結果オーライだったらしいな。神綺様と紫さんに迷惑をかけることになりそうだが、彼女の行動指針は利己的…引き際を弁えているタイプだ。魔界や八雲が本気で潰しにかかるような行動は自重するはず。豊聡耳神子の傘下からまだ離れられないのであれば、魔界と幻想郷の上層部相手に大きく動くことは無いだろう。
(逆に言えば、俺相手になら派手に仕掛けてくる可能性もあるってことだがな)
そうなったらその時だ。常識や倫理観の基準が俺と異なる彼女の行動は予測が難しい―――それなら動かれてから臨機応変に対応する方が俺には向いている。予測を外してから軌道修正するのはあまり得意じゃない…攻撃魔法というハッキリした弱点を持つ俺は、力押しが出来ないのだから。
余計な追手を増やしてしまったことに変わりは無いが、ひとまずは次の行動を考えることに集中できるだろう。ここに留まっていられる時間は長くない…手早く最適解を出さないとな。
「じゃ、私は上空で待つよ。必要になったら魔理沙が呼びに来な」
「了解だぜ魅魔様!」
「ま、知らない可能性もある以上仕方ないわね」
人里を魅魔を連れて歩き回る気は無かったから、稗田の屋敷まで飛んできたのだけど。魅魔は最初から姿を見せる気はないみたいで、口を割らない限りは雪に紛れて待つとか言い出したわ。ま、私が悪霊を連れて来たとか人里で広まるのも嫌だし、好きにさせておきましょ。
正門前に降り立つと、帰るらしい小鈴ちゃんとそれを見送りに来たらしい阿求が丁度外に出てくるところだった。門番に呼び出させる時間が省けたのは運がいいわ。
「って、あれ?霊夢さんに魔理沙さん!」
「え?この時間にこの天気なのにここに来るなんて珍しいですね。何か急ぎのご用でも?」
「おう、ちょっと人探しをしててな」
「阿求、豹って魔界人についてなんか知らない?」
「「えっ!?」」
当たりみたいね。この反応なら情報があるのは間違いない。
「あまり長々と話す気はないけど、寒いから中には入れなさい」
―――というわけで稗田の屋敷に入ると、阿求は真剣な表情になってお茶まで出してくれた。それも神社に置いてあるのよりずっといいお茶…いいご身分よねえ阿求は。
「霊夢さんも魔理沙さんも、豹のことを調べてるってことは…
あいつを退治してくれるってことですよね!?」
「最低限魔界に追い返すまではやるけど、紫や華扇がうるさいからいつもみたいには動けないのよ。だからこんなところまで話を聞きに来たわけ」
「合図が出たら豹を一気に狙うって方針にはなってるんだけどな。それまで大人しくしてるってのも私らしくないから、情報だけでも集めようとここに来たんだぜ」
「ね、これなら私も話を聞いても大丈夫でしょ!この話私にも教えなさい!」
「はぁ…注意喚起のために名前だけ教えたのが完全に裏目に出たわ…」
ホント小鈴ちゃんは懲りないわね…まあ、今回は
「小鈴じゃ何の役にも立たないんだけど、人里での伝令役ぐらいは頼めるか…
霊夢さん、私の知る限りのことを話しますので、一つ私個人からの依頼を受けてもらえませんか!?
豹に囚われてしまった、麟さんを助け出してもらいたいんです!!」
「麟?誰よそいつ」
これは余計な仕事を増やしちゃったかしら?聞き覚えの無い人の救出とか、私に向かない仕事なんだけど。
ま、私を使って楽しようとしてるあの神に押し付ければいいか。
「私も聞いたことないぜ。誰だ?」
「…魔理沙さんは、吸血鬼異変で行動を共にした麟さんを…まだ思い出せませんか?」
「待て。そいつはあの時のことを知ってるってのか!?」
魔理沙がお茶を溢しかねない勢いで立ち上がる。危ないわね!
「落ち着いてください魔理沙さん。その返しで状況が全く変わっていないことはわかりました。
麟さんは、あの異変で魔理沙さんに同行していたと私は聞いています。ですが、魔理沙さんが
ですから、麟さんを敵視するのは止めてください」
「…つまり、忘れられているだけでそいつ自身は覚えてるんだな?」
「おそらくは」
「………ねえ、阿求。
もしかして…楽器屋の麟姉さんのこと?」
「っ!?まさか小鈴、覚えてたの!?」
「阿求から名前を聞いたらね…何か引っかかった気がしたのよ。
それで今、こうやって文字にしてみたら…思い出せた」
そこには阿求が使っていたらしき筆と紙に、冴月麟と書かれていた。
…その三文字に至るまでに、りんやら麒麟やら五月やら…いろいろと書き殴って総当たりしたような感じだったけど。
「小鈴、本気でまずいわよ。麟さんのことを思い出せるって…
一度忘れられた麟さんのことを思い出せたのって、妹紅さんや茨華仙様に八雲藍といった錚々たる面子だけ。小鈴は確実に人間から逸脱しつつあるわ」
「し、知らないわよー!それを言うなら阿求だって人間とは言い切れなくなるじゃない!」
「あー、今のは聞かなかったことにしてあげるから話を進めてくれない?私は豹ってのがどんな奴なのか聞きに来ただけだから、余計な仕事増やしたくないのよ。その麟ってのも聞かなかったことにしてもいいわよ?」
「待ってください霊夢さん!豹を追うのであれば、麟さんは霊夢さんたちの前に立ち塞がってしまうんです!麟さんを救うためにも、麟さんの置かれている状況は説明させて下さい!」
「あー、つまり豹は麟ってのを忘れないでいられる能力持ちで」
「それに麟ってのが縋っちまったけど、そいつはとんでもない悪党だったってことだな?」
「そうなんです!人里に迷惑をかける妖精を追い出すことを悪だとして私を脅してくるような奴が、人里のために活動なんてするわけがない…!麟さんだけじゃなく、慧音さんや妹紅さんまで上手く言いくるめられてたせいで大っぴらには出来なかったんですが、博麗の巫女が退治するだけの理由があるのでしたらお二人も納得してくれるはずです!」
「たしかに、プリズムリバー楽団の裏方なんて結構有名でもおかしくない。それなのに私も全然知らないってことは、意識的にコソコソ隠れてたってことにもなるわけね」
私が思ってたよりも阿求は豹の情報を持ってたわ。人里でそれなりの実力者だった麟ってのを八雲の名の下に、自分の傍へ連れ去った悪党。妖精なんかのために稗田の屋敷に単身潜入して阿求を脅迫して来るような危険人物。
「そういえば、春告精に魔法を教えてたとか言ってたわね。わけわかんないことすると思ったけど、妖精を手下にしてなんか企んでたってことか」
「妖精はごく一部を除けばバカばっかだしな。ちょっと優しくしてやれば簡単に懐いてくる…隠れて過ごしてる奴が使い捨ての下っ端にするのには丁度良かったわけだ。
――それを口実に阿求への脅しに使うとは、なかなか悪知恵は働く相手ってことになるぜ、霊夢」
「そうなんです。そんな危険人物の傍にいては、麟さんも共犯者として見られてしまう…
だからこそ、霊夢さんと魔理沙さんが麟さんを相手にしたら、多少強引にでもいいので人里に連れ帰って来てもらいたいんです!このまま豹の傍に居てしまえば、麟さんは確実に巻き添えになってしまいます。人里にいる頃にお世話になった身として、放置なんて出来ないんです!」
「今さら思い出した私が言っても身勝手にしか思われないでしょうけど、私も麟姉さんには帰って来てもらいたいです。どうか、お願いできませんか!?」
好き勝手言ってくれるわね…肝心な問題を無視して言ってくれてる。
「それが出来るならついでにやっても良かったんだけど、一番厄介なところを忘れてるわよ?
私が今聞いた麟の話を覚えてられるとは思えないんだけど」
「「あっ」」
「おい、気付いてなかったのかよ」
声を揃えて気付いた二人を見て魔理沙も呆れてる。でも丁度いいわね。
余計な仕事を増やさない理由に出来るわ。十分有用な情報を貰えたから、切り上げちゃっていいわね。
「もし忘れないで覚えてたらやってあげるけど、期待はしないでよ?」
「そうだな。私も覚えてたら生かして連れ帰る理由にはなるが…忘れてたらいつも通りの対応するだけだぜ」
「そんなー…」
「…でも、どうしようもなくない?阿求」
「そういうことよ。それじゃ、邪魔したわね。
色々教えてくれて助かったわ」
これ以上引き留められる前に屋敷を出る。魅魔を関わらせずにこれだけ話を聞き出せたんだし、雪の中飛んできただけの価値はあったわ。
さっさと帰って夕飯とお風呂の支度をしないと。ぐずぐずしてると野良妖怪に絡まれる時間になるしね。
通算UAが10万を超えたので、特別編をねじ込もうかなあと迷っています。
感想も読んで頂けている読者様は把握できていると思いますが、旧作キャラを書きたいというのが投稿し始めた理由の一つなのに本編で名前すら出せそうにない旧作キャラがいるんですよね。なので特別編の進行役にしてしまうという荒業を使おうと考えているのですが…
そもそも特別編に需要なんてあるのか?という心配もありまして。
なのでアンケート機能を使ってみようと思います。単純に特別編という名の状況・設定説明になるのですが、読者の皆様に需要はあるのかの判断基準にさせてもらおうかなと。あまり需要が無さそうな場合は本編完結後に後日談として入れようと考えていますので、ご協力いただけると幸いです。
それに並行して、何か知りたいことなどあれば感想欄でのアンケート行為はNGなので活動報告を質問箱扱いで使ってもらえると助かります。本編と直接関係ないことでも、特別編の中身を厚くするネタに使わせていただきますので歓迎です。
それと、リアル都合が立て込んでしまいまして…申し訳ありませんが来週火曜日の更新は休ませてください。
次の更新は7/20(木)になります。
特別編と本編の進行、どちらを優先した方がいいでしょうか?
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特別編で状況把握したい
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本編早く進めて