寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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お待たせしました。

アンケートに回答いただけた読者の皆様、ありがとうございます!
…回答数ゼロだったらどうしようとか思ってましたので。ただ、予想外に拮抗してて別の意味でどうしようになりそうですが(汗)

来週末に締め切って8月頭に結論を出そうかなと思います。


第154話 数を減らす中間層

「―――なら、逮捕すべきはあなたたちよね?」

「返す言葉も無いが、あたしゃ悪霊だよ?素直に捕まるとでも思ってるのかい?」

 

この雪の中わざわざ上空の私に声を掛けてくる奴なんていないだろうと、あまり得意じゃない探知魔法を広げてたんだが。こういう時に限って絡んでくる変人もいるんだよねえ。今は幽香(本命)の動向に集中しときたいんだが、人里の人間では五本の指に入るだろう実力者のこの警官は片手間で相手するにはちょいと骨が折れる。だから仕方なく情報収集も兼ねた話をしたんだが。

 

「そうですねえ、悪霊相手に物理的な牢屋は意味が無いですよねえ」

「ハッ、私をぶち込めるもんならやってみな。逆にアンタをあの世にぶち込んであげるわよ」

「たしかに私でも返り討ちにされかねないけど…もっと捕まえたい巫女が出てきたわね」

「うげ、小兎姫」

「あん?なんでアンタがいるんだ?」

 

追い返すより先に霊夢と魔理沙が戻って来た。結局最後まで粘られたかい。

 

「では逮捕です!あなたはしばらく牢屋で大人しくしてもらった方が幻想郷の平和に貢献できますから!」

「魅魔、どこまで話したのよ!?」

「魔界に関してまでだよ。まあ、コイツの言うことも間違っちゃいない」

「でもそれは私たちが許さないってな!邪魔するってんならスペルカードルールで相手するぜ!」

「―――とは言っても、ここじゃ人里に被害が出かねないわ。それに三連戦なんてただの無謀。惜しいけど、これから大荒れになりそうな以上私も消耗は避けたいし、見逃してあげるね」

「ま、こっちとしてもそれがありがたいな。魔界だけじゃなく、幻想郷にも放っておけないのがいるしねえ…

それこそ、思いっきり人里に入り込んでるあの花妖怪から先にとっ捕まえるべきじゃないのかい?」

「今日に限っては幽香さんが騒ぎを起こすことは無いですから。急に雪が降りましたからね、人里に来たのは雪に対する処置が必要な花絡みでしょう。

というか、今の幽香さんは花が絡まなければ騒ぎを起こしませんから。そっちの魔法使いの方がよほど余計な仕事を増やしてくれますしねえ」

「何言ってんだ。私が人里に迷惑をかけることなんて滅多にないぜ」

「霧雨道具店のご主人からで「悪い霊夢。後は頼んだぜ!」

「あ、待ちなさい魔理沙!」

 

…やれやれ、私を放って博麗神社に帰っていくとは。

まあ、あの霊夢と魔理沙すら関わりたがらない人間なのは納得できるから仕方ないか。

 

「まあ、言っても無駄でしょうが…人里の平和を乱すような真似をしたら私は遠慮なく政治的に動きますからね。弟子の管理はしっかりしてくださいよ?」

「ふん、余計なお世話だね。アンタこそ余計な首を突っ込んで、魔界を刺激するんじゃないよ?」

 

政治的にと付けてる時点で管理者連中に伝手があるってことなんだよねえ。だから余計なことはしないだろうが、状況次第ではコイツも魔理沙を狙ってくるってことだ。この辺りの中間層が動き出す前に、カタを付けなきゃならないか。

 

(博麗神社に帰るのであれば、今日はもうお守りはいらないだろうね。それじゃ私は明羅と呪珠を回収してから戻るとするかい)

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか勇儀が地上に出向いてくるなんてね。豹に関しては私の見る目の無さが浮き彫りになってしまったかしら」

「どうだかねえ、私と萃香は喧嘩を買わせに行ったからこそ紫に邪魔されたわけだし。華扇なら豹と手合わせぐらいならやれるんじゃないのかい?」

「…まあ、こうなる前なら相手してくれたかもしれないわね。もっとも、私は勇儀と萃香が取り逃がしたんじゃなくて紫が匿ったんだと思い込んでたから興味がなかったのだけど」

「もったいないよまったく。あれだけ楽しめる喧嘩相手なんざそういないってのに」

「今の私は茨華仙よ。修行はともかく喧嘩はしないわ」

「やれやれ…萃香はああだし華扇がこうだから私が地底の元締めなんてやる羽目になってんだよなあ。なんだかんだで一番損したのは私な気がするよ」

「ふふ、ご愁傷さま。満場一致で面倒見のいい勇儀が適任と言われるように振舞ってたのが悪かったのよ」

 

妖怪の山に位置しながら、ほとんどの住人が目にしたことが無い茨華仙様のお屋敷。それもそのはず、私のようにかつての茨華仙様を知っている妖怪の山の住民はここには無暗に近付かない。

萃香様・勇儀様と並ぶ四天王の一員…かつて奸佞邪智と称された最上位の鬼。それを知る者はそれだけ長くここ妖怪の山に住んでいるか、その事実を知ることが出来るような実力者だけ。そしてこの事実を知らない下級妖怪ではお屋敷まで辿り着けない。

 

鬼でありながら、策を弄することも厭わなかった四天王の一角―――その印象が強過ぎるので、今目の前で交わされている穏やかな会話が逆に恐ろしく感じてしまうのですが。

 

「でも、一つ不可解だったことの答えを連れて来てくれたのは助かったわ。何故地獄の閻魔様が急に介入してきたのか…久侘歌が動いていましたか」

「私が関わることになったのは偶然ですが、四季様にとっては私の通常業務より優先すべき案件だったようですので」

「そうでしょうね…人里に直接乗り込める魔界人が、地獄に乗り込めない道理は無い。状況の推移は把握しておくべきと考えるのは妥当」

 

そして今の言葉で理解できたのは、地獄の閻魔様さえもがこの一件に関与し始めたということ。庭渡様だけでなく、四季映姫・ヤマザナドゥ様本人も動いていたということです…!

 

「ただ悪いのだけど、私も豹の居場所は知らないわ。それに摩多羅隠岐奈が暗躍し始めたせいで紫に余裕がなくなったのも悪い方向に向きかねない…勇儀は、どういう立場で動いてくれるのよ?」

「決まってんだろ?私は豹と再戦出来りゃそれでいい。魔界に連れ帰られるとそれが出来なくなるってんなら、引き留めるしかないだろうよ」

「…まあ、そうなるわよね。でも摩多羅隠岐奈のような手合いからすれば勇儀は最も扱い辛い相手、対抗手段として適任か」

「あん…?何をごちゃごちゃ言ってんだい?」

「勇儀、少し時間を貰える?私が把握できている限りの情報と、酒とつまみは出してあげるから」

 

 

 

勇儀様がお酒を断るはずもなく、方術によって隠されている茨華仙様のお屋敷でお話を聞かせていただけることになりました。本来であれば私のような下っ端天狗が入れるような場所ではないのですが、勇儀様と庭渡様の道案内役として納得して頂けたようで。私にも状況を教えてくれるようです。

 

「それでは、話を始める前に…犬走椛と言いましたね。案内役の貴方はどこまで豹のことを理解しているのですか?」

「私は三日前にアリスさん・ルナサさん・カナさんが妖怪の山に訪れてから、豹さんの足取りを追うために情報交換を行っています。皆様に比べれば縁は薄いのですが、私自身も豹さんにお世話になった身になりますので」

「…成程。勇儀と閻魔様が動くだけの情報を提供したのが椛でしたか」

「今ここにいる中でヒョウと最も親しいのが椛なのは間違いありません。茨華仙様がどう動くにしろ、椛の持つ情報は重要になるでしょう」

「天魔と龍には私が話を付けといたから気にしなくていいさね。それにしても酒もつまみもこれだけ溜め込んでる仙人様とはねえ!隠す気あるのかい華扇?」

「屋敷ごと隠してるわよ、余計なお世話。

では、椛の知る豹に関しての情報を聞かせなさい」

「どこから話せば良いのでしょうか…

あまり時間は無いので簡潔にまとめますと、三日前に豹さんの動向を調べるためにアリスさん・ルナサさん・カナさんが雛さんを訪ねて来たのです。その際に私も情報交換する相手と認めていただきまして、昨日・今日と続けて打ち合わせをしました。

ただ、今日からはアリスさんが魔界から侵入してきた豹さんの妹のユキ、魔界神のメイドの夢子と合流してしまっています。ですので豹さんを幻想郷に留めるために力を貸してくれるのは、ルナサさんたち楽団の皆様に豹さんの隠れ家を守るカナさんと上海。それに単独行動をせざるを得ない雛さんに、この時期は力を失ってしまっているリリーぐらいでしょうか」

「その夢子とユキとはアリスも交えて八雲紫と会談しに出向いていたわ。私と閻魔様もその会談に参加してきたけれど…彼女たちはそれほど警戒しないで大丈夫でしょう。交戦することで幻想郷と魔界の危うい均衡を崩すことを理解していて、それを防ぐべく会談を求めて来たようですから」

 

このあたりは皆様に聞いた通りですね。幻想郷と魔界の戦争は誰も望んでいない…そこは共通しているということです。

 

「なんだい、喧嘩を買ってはくれないのかい?魔界人なんて滅多に見ないんだ、豹以外の相手ともやり合ってみたいところなんだがねえ」

「出来ればその戦闘意欲を魔界人じゃなく魅魔か風見幽香に向けてもらいたいわ」

「お、そいつら相手なら暴れていいんだね?」

「ええ、特に風見幽香に関しては優先的に勇儀が止めてほしいわ。魅魔はあれで霊夢と魔理沙――特に弟子と認めた魔理沙には甘い。だからある程度は自重するでしょうけど…風見幽香は自重する理由も行動を制限する相手もいないのよ。そういう意味で、幻想郷とも魔界ともある程度距離がある勇儀は問題なくぶつけられる貴重な実力者。

彼女相手なら勇儀も楽しめるでしょうしね」

「華扇がそこまで言うたあ、相当骨がある奴ってことかい!楽しみが増えたねえ!」

「…たしかに、今の状況において《風見幽香を誰が止めるか》というのは選択肢の少ない懸念事項。勇儀さんという想定外の強大な戦力は最適な配置になりますものね」

「勇儀にお願いしたいのはそれだけでもないのよ。勇儀と久侘歌は摩多羅隠岐奈のことを知っているかしら?」

「あん?最近聞いた気がするが…」

「この前の異変で吸血鬼を地底に連れ出した、幻想郷の管理者の一人ですよ勇儀さん」

「ああ、そういえばそんな名前だったな!で、そいつがどうしたよ?」

「どうやら紫が私にも伏せていたところで、隠岐奈と豹で確執があったようです。隠岐奈は完全に豹を敵視していて、『紫を完全に敵に回してでも、この異変で終わりにする』と紫に言い切りました。

そして、そのために霊夢たちを利用する方向に動いてきた。紫が秘匿し過ぎたことで、霊夢は豹より隠岐奈を信じて動いてしまった」

「そんな…!?」

 

とてもまずいことになってしまっています…!博麗の巫女が豹さんを攻撃するのは、幻想郷と魔界にとって最も避けたい事態のはず。それなのに、管理者が豹さんを切るためだけに博麗の巫女を利用しているということです!

 

「あー…紫が博麗の巫女を切れるはずがない、それを利用すれば豹を追い出せるってことか。

相変わらず管理者共は好きになれないねえ。コソコソと策を巡らして何が楽しいんだか」

「楽しんでいるわけではないわ。戦力を減らさずに問題を解決しようとするのであれば策を打つのは当然のことでしょう?相変わらずこの辺りは萃香以上に頑固よねえ勇儀は」

「悪かったね、こればっかりは性分なんだよ。だが、それこそ紫に任せておきゃあいいんじゃないのかい?」

「その紫が『こうなった以上私に肩入れしないでいいわ。貴方が最善とする方向に動いて頂戴』なんて私に言って来たのよ。紫はこの件に関して冷静になり切れないと自覚してる…つまり悪手を打ちかねないってことだわ。

そうなった場合、紫と隠岐奈を私一人で抑えるのは無理なのよ。だからしばらく私と協調して動いてもらえる仲間が必要になる…勇儀、お願いできないかしら?」

「華扇がこんな素直に私に助力を求めてくるなんてねえ…

ま、いいだろう。豹を追い出そうとしてる以上、隠岐奈とやらに手を貸す気は無い。華扇は豹をこっちに留まらせる方向に動いてくれるってことだね?」

「確約は出来ませんが。幻想郷で引き続き庇護するにしろ魔界に追放するにしろ、その前に勇儀と一戦交えさせるという条件は確実に飲ませましょう」

「その言葉忘れるんじゃないよ?それじゃ、話を続けな」

 

―――どうやら、茨華仙様も豹さんと勇儀様の再戦を止めてくれはしないみたいです…私は豹さんに負担を強いてしまうようですね…

直接謝罪することと、その後の治療ぐらいは手伝わせてもらえるように同行し続けることぐらいしか出来ないようです。でも、それだけでも良しとしなくてはならないのでしょう。

 

(幻想郷の管理者直々に、豹さんを追放しようと動き始めてしまった。

 でも、勇儀様と茨華仙様ならある程度管理者にも抵抗できる。

 それなら私が為すべきは、お二方が豹さんの援護になるように動いてもらうこと…!)

 

庭渡様も含めて、私ごときの要望に沿って動いてくれるような方ではありませんが。案内役として、ある程度誘導することぐらいは出来る。

いえ、してみせなければなりません。雛さんにカナさんやルナサさん、上海やリリーまでもが豹さんのために動いているのですから、私も豹さんのためになるよう動かなければ…ただの役立たずで終わってしまいます!

 

「…茨華仙様。私はその隠岐奈様に関してほとんど無知なのです。教えていただけませんか?」

 

まずは敵の情報だけでも、聞かせてもらいましょう。

特別編と本編の進行、どちらを優先した方がいいでしょうか?

  • 特別編で状況把握したい
  • 本編早く進めて
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