寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により155話の「茨歌仙」を修正してます。またやらかした…夏バテ気味なのを実感しました。
いつも迅速な報告助かっております。ありがとうございます。


第156話 情報の統合

神綺様の創ったゲートに飛び込んだ先はアリスの家の玄関先。予想外にも程がある邂逅だったけれど、結果的に私達にとっては良い方向に向かったと言えるわよね。これからアリス達とも情報交換するのだけれど、魔界で話したことまでを隠さず話せばいいという基準ができた。私が言えた立場じゃないけど、カナも上海も腹芸には向かないからハッキリとした基準が作れたのはプラスになる。麟に押し付ける負担はだいぶ減ったと思うから。

 

私に続いて麟・カナ・上海と着地するのと同時に、ドアを開いてリリカが出て来たわ。

 

「ルナ姉、無事よね!?」

「なんとかね…メルランは?」

「アリスと夢幻館に――って、えぇ…?」

「…兄さんは相変わらず、妹と認めた相手には甘過ぎるなぁ…」

「否定できないけど、昨日のことを棚上げにしてユキが言うのもどうなのよ」

 

ユキと夢子も続いて外まで出て来たけれど、案の定というか…上海の黒翼に目が行くわよね。神綺様や夢幻姉妹すらこの魔力翼には興味を持ったのだから。

 

「夢子さん、ユキさん。色々とお話ししなければいけないことが」

「ええ、神綺様がここに送ってくれたのでしょう?」

「…夢子もやっぱりすごいんだね。わかっちゃうんだ」

「むしろ神綺様ぐらいだよ、ここに異界に繋がるゲートを創れるのなんて。

アリスが不意を打たれたりしないように、空間魔法が展開しづらい位置にこの家を置いたんだからね」

「それってさ、この家建てたの魔界神ってことだよね?

いや、ホント私逃げちゃダメ?どんどん話が怖くなってんだけど」

「…少なくとも、明日までは付き合いなさい。それ次第で、リリカが神綺様を頼るって手も使えるかもしれないから」

「そうね。神綺様なら先輩と親しいリリカなら保護してくれると思うわ。

 ―――それで、貴方が麟ね?」

「はい、先ほど人形越しにお話はさせていただきましたが、あらためて。

 冴月麟です。豹さんには弟子のように接してもらっています」

「うん、よろしくね!

 アリス!カナたち帰って来たよ!」

 

露西亜人形(マトリョーシカ)に向けてユキが呼び掛けると、すぐにアリスから返答があった。

 

『って、まさかと思ったけど母さんが送り帰してきたわけ!?』

「ええ…直接神綺様と話して来たわ。夢幻館に向かってるのよね?」

『あ、姉さんも無事だったのね!アリス、戻った方がいいわよね~?』

『そうね、一度合流――ッ!?』

『えっ…!?アリス、もしかして!?』

『くっ、夢幻姉妹のどっちかに目を付けられた!?』

「ッ!夢子、どっち!?」

「夢月ね…!上海、夢幻姉妹と話は出来たの!?」

「はい!ご主人様、通信は切らずに夢月さんにその人形を…」

『聞こえてるよ、上海ね。全員無事に戻ったの?』

 

それに最高のタイミングで夢幻館側も動いてくれたみたいね…!夢月がアリスと合流してくれたよう!

 

「うん、なんとか無事にわたしとルナサ、上海ちゃんに麟さんは戻って来れた!」

『そう。それで、人形遣いがアリスで、あなたは?』

『メルラン・プリズムリバーよ~。姉さんがお世話になったみたいで~』

「夢月、状況把握したいわ。アリスと一緒にこっちまで来れる?」

『夢子もそっちにいるのね。いいよ、私も話したいことが出来たから。

 ただ、釣りたい相手がいるから少し時間は貰うけど』

『それは、我々のことか?』

『あれ、思ったよりずっと早く出てきた。

 何かあったってこと?』

『そういうことだ…アリス、悪いが私も情報交換に参加させてもらうぞ。他の管理者に介入されないよう、夢月の監視役として見られる必要もあるからな』

 

そして新たに聞こえた声の主…藍まで合流してくれた。つまり、豹を幻想郷に留めようと動いてくれてる八雲と夢幻館に連絡の必要が無くなるということ。豹が私たちに通信する前に情報を共有できるのは助かるわ…!

夢幻館から魔界に向かうことになったときはどうなるかと思ってたけれど、私たちにとってはこれ以上なく好都合な結果になったみたいね。

 

「頼むわ。アリス、こうなった以上今更でしょうし…夢月と藍も連れて来て」

『…自己紹介は移動しながら済ませましょうか。案内するから、ついてきて頂戴』

『いや、アリスが協力してくれればスキマで一気に飛べる』

『八雲紫の式は伊達じゃない、か。流石というほかないわね…

 ―――これでいいのかしら?』

 

アリスと藍のやり取りが聞こえたと思ったら、私たちが出たらすぐに閉じてしまったゲートからほとんど離れていない位置にスキマが開かれて。アリス・夢月・メルラン・藍がアリスの家の玄関先に降り立った。

 

「…言った途端に、神綺様並に空間魔法を使っちゃうんだもんね。やっぱり幻想郷の実力者は規格外だなぁ」

「幻想郷に来て即座に豹の元に飛んだユキには言われたくないんだがな…」

「………上海。ものすごい方法って、こういうこと?」

「はい!魔界で戦闘になってしまいましたが、豹さんとユキさんの魔力だけ使ってご主人様の魔力を温存することも出来ました。ですので問題は無いと思いますが…」

「…豹のことを私はまだ甘く見過ぎてる気がしてきたわ。

でも、問題がないのなら後にしましょう。夢月と藍が合流してる状況なんてもう作れないでしょうし、中に入って話すわよ」

 

 

 

 

 

「―――という状況になったわ」

 

とりあえず夢幻世界から魔界で起きたことを簡潔に説明したのだけれど…

 

「…やっぱり、サリエル様も来ちゃうかぁ…」

「最適解ではあるけど、後始末のことも考えなさいよマイ…」

「どうするのよこれ…管理者の干渉不可避じゃない」

 

やっぱり二人ともアリスの姉なのね…アリスと並んで頭を抱えてしまったわ。

 

「…私も頭が痛いが、先に知れただけまだマシだ。今の夢月のように、即座に私か紫様が動けば他の管理者からの干渉は防げるからな。少なくともサリエルの侵入に際し、隠岐奈様に先手を打たれる可能性を潰せたと思えば悪くない」

「隠岐奈?誰よそいつ」

「当面の問題になる、紫様と同格の管理者だ。夢子達と別れてから紫様に動向を教えてもらったが、完全に決裂してしまった…今後、幻想郷の管理者としての対応は取れなくなると思ってくれ。紫様と隠岐奈様の方針が完全に衝突している以上、幻想郷上層部として一致した行動が取れなくなった」

「…待って。麟から少し聞いてるけど、その隠岐奈ってのはたしか豹を…!」

「そういうことだ…隠岐奈様は豹の排除を古くから主張していてな。今回の一件で確実に終わらせると紫様に言い切り、紫様が豹を切らざるを得ないように動かすため…霊夢を引き込んだ」

「「「「なっ…!?」」」」

 

私とカナ・麟・上海が揃って反応してしまったわ。それはつまり、状況次第で八雲紫が豹を切り捨ててしまうかもしれないということ…!

 

「…八雲は豹を切る。それを伝えに来たわけ?」

 

私たち同様に今この事実を知ったらしい夢月が敵意を隠さずに藍を睨むけれど、それを覚悟していた藍は動じずに。

 

「切りたくないからこそ、私が今ここにいる。

中立を保つ必要がある八雲だが、魔界ではなく幻想郷の対立軸相手であれば動けるんだ。だからこそ、情報を共有させてくれ…!豹を守りたいのは、私も紫様も同じなんだ」

「…へえ、こんな簡単に頭を下げるんだ。

 わかった。私も八雲視点での情報は欲しいし、今はまだ協調してあげるよ」

「助かる。

では、聞かせてくれ…風見幽香は、何故動いた?」

 

…話に聞いていたより、夢月はずっと穏健派って印象ね。これも豹の影響なのかもしれない。

軽く話を聞いただけでも、豹は変わらず…夢月に対しても兄として振舞っていたようだから。

 

「エリスがやってくれたのよ。幽香に《エリーとくるみがヒョウに誑し込まれた》って教えたせいで、幽香はヒョウを【知らないところで部下を口説き落とした気に食わない男】と認識した。それでエリーとくるみにお仕置きをするためにヒョウを狙うって宣言しに来たのよ」

「ッ!?最悪だ…!

よりによって、あの傘持ち妖怪が兄さんを…!」

「…待て、エリスというのは豹が話していたサリエルの傍仕えの悪魔か!?」

「えっ、そいつ天界から降りてすぐ屋台襲撃した後でそんな事もしてたっての!?ヤバい奴じゃん!」

「…!そういうことか…!」

「イメージより底意地が悪かったんだねあのフラワーマスター。エリーとくるみへのお仕置きで豹を狙うって…」

 

夢月が予想以上に不味い状況になってるのを教えてくれたことで、皆が様々な反応を上げてしまってるわね。これは軌道修正しないと…と思っていると、こういったことに慣れている藍がすぐに動いてくれて。

 

「すまない、まずはエリスと幽玄魔眼の動きを整理させてくれないか?どうやら、この二名に関しては私が一番情報を持っていないようなのでな」

「いいでしょう、私達も話を聞いただけだしね…侵入に関して情報を持ってるメルランかリリカ、お願いできる?」

「それじゃ私が説明するわ~。まず、このエリスと幽玄魔眼は昨夜天界経由で幻想郷に侵入したみたい。これは椛さんが千里眼で目撃してくれてるわ~」

「…先輩に侵入を察知されないためでしょうね。妙なところで知恵の回る…!」

「それで、その後ミスティアの屋台にいた兎妖怪を襲撃したそうなんだけど~。

その時、【えりとくるみ】って名乗ったそうなのよ~」

「―――そういうこと、『エリーとくるみの名前をエサに使う』って。

ホント、エリスは幼稚なくせして妙に小賢しいのよ」

「その後、あのフラワーマスターに告げ口しに行ったってことになるみたいね~。

でも、サリエル様は豹のことを悪く思ってないのよね?幽玄魔眼もそうだけど、どうしてエリスは豹を敵視してるのかしら~?」

「エリスは元々兄さんのことを嫌ってるから…

兄さんは護衛として【いざとなれば真っ先に命を捨てる】のはブレないから、特別な相手と結ばれることを全く考えてない。そのせいでエリスから見るとサリエル様を弄ぶ女誑しにしか見えないの。ここに関しては妹のわたしもフォロー出来ないからね…正直に言って、兄さんが不覚を取るとしたら妹扱いで我慢できなくなった子に後ろから刺されるってパターンが一番ありそうだと思ってるし」

「…そうですね、人間の小娘でしかない私でもそう思います。そうならないように私も豹さんの後ろを守れるぐらいにはなりたいですが…」

「麟も中々容赦ないのね…

でも、さっき藍が教えてくれたことと合わせて考えると…」

「ああ、おそらくエリスと幽玄魔眼は隠岐奈様と接触したのだろう。そしてそれを隠岐奈様が利用し、風見幽香を動かしたのだろうな…」

 

―――ここに来て、状況が急激に悪化してるのね…!なんとか今夜だけでも凌ぎ切って、夢幻姉妹とサリエル様の助力が欲しいのだけれど…!

 

「それに、余計な追手も増えてしまっていてな…

守矢神社の東風谷早苗と、地底の妖怪である星熊勇儀、それに古明地こいしも豹を追い始めている」

 

藍のその言葉に、全員がハッとして視線を向ける。

 

「…まさか、地獄の閻魔が会談に介入してきたのは」

「アリスはそこまで読めているか。どうやら一昨日ルナサ達が接触した庭渡久侘歌は四季映姫に報告を上げたらしく、彼女の他に星熊勇儀と古明地こいしが動いてしまったようだ」

「椛さんが私とカナさんを逃がしてくれたときの方ですよね?」

「そうだ。どうやら椛はしばらく彼女たち二人と行動することになったようで、少なくとも私が確認して以降妖怪の山の各所を移動している。この様子を見る限り、椛を案内役として連れ出したのだろう。

…逆に言えば、椛が豹に協力的なことを考えればむしろ我々の味方に付けられるかもしれん…魔界に帰すことは拒否するだろうから、夢子達の味方にはならないだろうが」

「つまり摩多羅隠岐奈と違って、先輩の敵にはならないと?」

「敵にはならないが、豹の負担にはなるだろうな…星熊勇儀の目的は間違いなく豹との再戦。一度豹と戦えばしばらくは協力してくれるだろうが…まず逃げ切られた勝負を付けることが必要だろう」

「なるほど、私と似たタイプってことね」

「…それって、夢月も再戦希望ってこと?」

「安心していいよ。豹が落ち着ける逃げ場を確保するまでは待ってあげるから」

「ありがとう夢月。兄さんを気に入ってくれたんだね」

「ええ、私もそう簡単にヒョウを逃がす気ないから」

 

…私ではとても止められない相手が、豹との再戦を強く望んでいる。

麟みたいに癒しの力を持っているわけでもないし、私が役に立てることなんてあるのかしら…

 

「だが、東風谷早苗は警戒が必要になる。橙に誰と合流したのかを探りに行かせてるが、この先情報を伝える機会があるかは不透明だ。襲撃されたのがちょうどここにいる皆が白玉楼と夢幻館にいた時間で、確認した橙とあうんから聞いた話になってしまうが…聞いておいてくれ」

特別編と本編の進行、どちらを優先した方がいいでしょうか?

  • 特別編で状況把握したい
  • 本編早く進めて
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