寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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皆様アンケートへのご協力ありがとうございました!

特別編も需要がないわけではないようですが、まずは完結を優先しようと思います。ただ質問は活動報告や感想に書いていただければお答えしますので、疑問点などありましたらそちらにどうぞ!


第158話 錯綜するは妖怪の山周辺

「あ、勇儀さーん!手伝ってほしーな!」

 

勇儀様と茨華仙様にお伝えしたところ、全員で接触するべきということになりこいしさんと合流しました。そこにいらっしゃったもうお一方は…

 

「あら、能楽師が何故ここに?」

「む、山の仙人。無関係でもないから、話を聞いてもらえます?」

「あ、お姉ちゃんも手伝ってくれるの?助かるー」

「ほー、面霊気とはこれまた面白い奴を連れてきたねえ。華扇も知ってるのかい?」

「ええ、十分な戦力になるわ。合流して正解だったようね」

 

面霊気…あまり聞かない種族ですが、たしか付喪神の一種だったでしょうか。どうやら茨華仙様とも面識があるようで、友好的に接してくれるのは助かります。

 

「一応自己紹介はしておこうかい。私は星熊勇儀、地底の鬼さ」

「地獄の関所の番人を務めている庭渡久侘歌です」

「犬走椛です。それで、貴方は?」

「秦こころです。こいしが人探ししてるとかで巻き込まれた面霊気です」

「巻き込まれたのは私の方じゃないかなー?あの死体が話しかけてきたのこころの方だし」

「ああん?死体に話しかけられたって…どういうことだいそりゃ」

 

勇儀さんが思わずといった感じで返していますが…本当にどういうことでしょうか?

死体に話しかけられた…?

 

「霍青娥、知ってます?」

「あの仙人ですか?名刺を受け取る程度の付き合いはありますが」

「青娥のお気に入りに宮古芳香という蘇生された死体がいます。そいつが久しぶりに姿を現したんですが、

 

『侵入された―、なんで無視したー』

 

なんて絡まれまして。

どうも近くにいた私が《夢殿大祀廟に向かった男を止めなかった》って青娥に吹き込まれたようです」

「…男?まさか!?」

「私が見かけたのは姿を隠す魔法を使って命蓮寺から飛び去った金髪黒服の男しかいないけど、それがこいしの探し人だったみたいで」

「でもさっき簡単に逃げられちゃったからねー。勇儀さんたちにも手伝ってもらう方がいいと思って戻って来たの!

早苗はちょっと目的が違うみたいだし、頼るなら勇儀さんかなーって」

「でかしたこいし!こんなに早く足取りを掴んでくるとはねえ!

華扇、手伝いな。豹の空間魔法による脱出を止めることは出来なくても、時間稼ぎの妨害なら出来るだろ?」

「…そうね、どう転がろうと豹本人と接触できるのであれば動く価値はある。ただ、強引に妨害を抜けられる可能性も考慮すると、距離を操れる小町の協力も欲しいわ」

「でしたら、私が小町さんを説得するのに茨華仙様も同行して頂けますか?茨華仙様と小町さんがいれば後から追い付くことは難しくないでしょうし、何より勇儀さんと茨華仙様が合流して動いていることを誤魔化せます。

―――話を聞く限りですと、ヒョウであればこれだけの戦力が集中していることを把握できているでしょう。全員で向かうと追い込む前に逃亡してしまうのではないですか?」

 

庭渡様も流石は神の一柱なのですね…!集めた情報だけで豹さんがどう対応するかの予測を立てています。そしてそれは私からしても【豹さんならそう動く】と思えるもの。

この状況で、私が最大限豹さんの援護になるような動き方は…!

 

「庭渡様の予想通りだと思います。ですので、()()()()使()()()もらえませんか?」

「囮?どういう意味ですか椛」

 

ここにいる皆様の中では一番参謀役に近い茨華仙様が反応してくれました。これなら、上手く乗ってもらえるかもしれません。

 

「私一人であれば、豹さんは即座に逃走を選ぶより情報を得るために接触してくれる可能性があると思うんです。私は一昨日からリリーと行動を共にする時間が長かったので、リリーを連れて脱出した豹さんなら協力者として見てくれているはず…私が単独行動しているのであれば、接触する価値があると見てもらえるのではないかと」

「あれ、そうだったんだー。でもそれなら、豹が油断してくれるってことだね♪」

 

豹さんがこの程度で油断するなんて思えませんが、今の状況であれば私一人であれば接触してもらえるでしょう。そして、私以外と合流するのを豹さんが避けたいのであれば―――()()()()()()()()()()()()()()もらえばいい…!

 

「はい。ですのでその…夢殿大祀廟という場所に私一人で先行。皆様は一度分散して侵入口近くに再集結していただくというのが、豹さんが緊急脱出してしまう可能性を一番小さくできると思うのですが」

「成程。豹だけであれば良い手ですね…となると問題は、霍青娥がどのような目的で動いているかですが…」

「こういった策は私に聞かれても困る。華扇がわからんのならお手上げだろうよ。

こころって言ったかい?その青娥ってのはどんな奴なのさ」

「よく知らない。でも仙人じゃなくて邪仙で通ってますので、私からは関わろうとしてません。ある意味親みたいな相手の居る仙界にいるようですけど、あまり関わりたいと思える場所でもないので」

「親、ですか?

…ああ、そういうことですか―――って、そう繋がるとしたら…!」

 

こころさんの返しに茨華仙様が何か気付いた様子ですが…私が聞き返す前に茨華仙様は即座に指示を出しました。

 

「椛、その案採用です。ですが、私の悪い予想が当たっているとすでに罠が仕掛けられている可能性がある。

ですので私と久侘歌は小町を連れ出してから向かいますが、勇儀は椛に途中まで同行しこいしとこころを連れて侵入口で待機しておいて。椛一人で動くのは夢殿大祀廟へ続く洞窟からだけにしなさい…そこでなら何か起きても、勇儀達と豹で椛の救出に動けるから」

「ああん…?罠ってどういうことだい華扇?」

 

茨華仙様の悪い予想は、私が思っていた以上に深刻なもので。

 

「霍青娥…いえ、正確には彼女を麾下に置いている豊聡耳神子がですが。

 ―――摩多羅隠岐奈と繋がっている可能性がある。秦河勝という繋がりでね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃまずは…鍵山雛って言ってたっけ?そいつのところまで案内お願い」

「わかった。でも雛の家は妖怪の山にあるから天狗に絡まれる可能性が高い…実力行使に出れず私が対応することで待たせてしまうことになると思う。そこは悪いけれど納得して」

「それは仕方ないよ。まだ私が派手に目立つのもマズそうだし」

 

ある意味私たちの切り札とも言える夢幻姉妹、その妹の夢月と共に雪の降る幻想郷を飛ぶ。そろそろ夜と言える時間だから、余計な野良妖怪が絡んでくる可能性もゼロではないけど…初雪にしては思ったよりも強いこの空模様ならそれほど警戒しなくても大丈夫かもしれない。それこそ冬支度をしていない家であれば慌てるぐらいには雪が積もり始めているのだから。

 

「――?向かってる方にあった強い反応が二手に分かれた?」

「え?」

 

夢月がそう漏らしたから、飛行しつつ私も探知魔法を広げてみたけれど…

 

「…人里方面に向かっている中に椛が居る?」

「椛?さっき話に出てた天狗のこと?」

「ええ…気になるけれど、夢月を人里に近付けさせると八雲以外の管理者も黙ってない可能性があるわよね?」

「そうだね。私が逆の立場だったら相手させるために出向くよ」

「…交戦前提なのは置いておかせてもらうわよ。だから雛と会って用件を済ませてから私たち何人かで向かっておくわ」

「頼むわよ…って、こっちに向かってきてるのもいる?」

「…というかこれが雛よ。私に気付いて向こうから来てくれたみたいね…天狗に余計な情報を与えたくなかったし助かるわ」

 

その展開した探査魔法で雛が私たちの方に出向いてきてくれたのがわかったわ。天狗のテリトリーに踏み込まずに用件を済ませることが出来るのは助かるわね。

 

「ルナサ、私に用かしら?」

「そうよ、いくつか伝えないといけないわ。まずは…」

「はじめまして、私は夢月」

「…あなたが。

はじめまして、私は鍵山雛。見ての通り厄神よ」

「聞いてたの。ヒョウから?」

「ええ、豹を魔界に返さない方針で動いてくれているって」

「そう、なら話が早い。

サリエルが、雛も集団行動できるようにするために連れて来いって言ってる。付き合ってもらうよ」

「…は?」

 

雛が唖然としてるわ。まあ、それはそうよね…

 

「少し補足するわ。サリエルは私たちのように西洋出身であれば、すぐに思い浮かぶレベルの大天使」

「…ええ、豹から少し聞いてる」

「サリエルは癒しの天使、白魔導士系の魔法はお手の物。雛と直接会えば厄から守る手段を編み出せるって言ってる」

「私たちは人手が少しでも必要だし、雛も単独行動では出来ることに限界があるでしょう?

 信じて会ってみてもらえないかしら」

「――信じられなくても会いたいわ。私は寂しがりやだから。

 ついて行けばいいのかしら?」

「フフ、素直で助かるわ。でも少しだけ遠回りさせなさい。

ルナサ、とりあえずヒョウの隠れ家まで案内して。その途中で覚えておいた方がいい場所だけ教えてくれたら、夢幻館に雛を連れて行くわ。サリエルも一度戻って来るって言ってたし」

「わかった。私も夢幻館までは同行するわ…

帰り道も雛と一緒で厄を防げるかの実証が出来るから」

「そこまでやってくれるんだ。ならそうして」

「豹の隠れ家なら私も知ってるわ。そのサリエルに会うまではルナサと夢月に厄が移ってしまうから、急ぎましょう」

 

そう返して真っ先に豹の隠れ家に向かう雛。まあ、こうなるのも仕方ないわね…

 

(麟といい雛といい、豹はどんどん依存させていくわね…私が言えたことではないけれど。

ユキが呆れてるのも仕方ないのね)

 

「行くよ、ルナサ」

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、豹と顔を合わせたことは無いということじゃな?」

「そうよ。というか文が追い付けない相手を私が捕まえられるわけないじゃない」

「ふむ…となるとあの小娘が儂に無駄足を踏ませるよう誘導しよったか。いい度胸をしとるわい」

 

響子を送るついでに姫海棠はたてとやらを呼び出したが、その結果がこれとはのう。こやつが豹に取材したというのは出任せ、念写で写真を撮ることに成功しただけだそうじゃ。儂らが情報不足ということを理解しておったから、完全な虚報ではなく情報を持っておる相手に向かわせて時間稼ぎしたということじゃろう。

 

「ただ、もう一つ情報は持ってるわよー?飯綱丸様から幻影の裏方を嗅ぎ回ることは止められてるけど、すでに持ってる情報を流すなとまでは言われてないわ。

…条件次第では、教えてあげてもいーけど?」

「ほう、この儂と取引する気かの?」

「それだけの価値がある相手なのがわかっちゃったからねー、豹って奴は。

アンタ達が豹と接触できたら、私も呼んで欲しいのよ。さっき連れて来てた山彦…幽谷響子って言ってたっけ?アイツを呼び出し役として私のとこに寄越すだけでいーからさー!

ひと段落したら記事にしても問題なさそうだし?文を出し抜くチャンスだしね」

 

ふむ…如何にも天狗らしい理由じゃのう。それに妖怪の山に伝手を作れるのであれば悪くはないか。

魔界神とやらに恩を売っておくという意味でも、情報はあるに越したことはないからの。

 

「良いじゃろう、じゃが豹とやらが全く縁の無い命蓮寺を頼る可能性は零に近いのは理解しておるのじゃな?」

「当たり前よ、というか山の外との繋がりじゃ文に敵わないしー。こういう味方が作れるなら私にとっては得しかないわ。この一件以外でも今後情報交換できる相手なんて、なかなか作れないんだから」

「現金な奴じゃ。まあ良いじゃろう…もう一つの情報とはなんじゃ?」

「一昨日の朝の時点だと、豹は明羅と里香って人間のところにいたわよ。そしてこの二人は白黒の魔法使いの関係者。だからアイツも情報を持ってるかもしれないわー。

あと、明羅の庵はこのあたり。この地図はあげられないから、足を延ばす気ならちゃんと覚えといて」

「ほう、これはたしかに価値のある情報じゃな。

これだけでも知れれば十分じゃ。儂の元に奴が来るとは思えんが、万に一つが起きたら響子を呼びに行かせてやるわい」

「ふふーん、交渉成立ね!今後は上手く付き合えると助かるわ!」

「儂も利用させてもらうがな。ま、しばらくは付き合ってやるかの」

 

出し抜かれたとはいえ、妖怪の山という閉鎖的な勢力に伝手が作れたのじゃ。儂直々に動いた意味はあったわい。

豹とやらの件が一段落しても、この繋がりに利用価値は残るのじゃからな。

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