寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第160話 戦力集中

「それじゃ、豹ってのが今どこにいるのかはわからないってことね」

「私にとって豹はお客様でしかないからね。付き合いはあっても親しくはないよ」

 

私は呪珠の交友関係を甘く見ていたようだ。師匠の指示で呪珠の護衛として情報収集に同行することになったのだが…昼過ぎから日暮れまでで有益な情報がすでにいくつか手に入っている。

あまり力が強くないからこそ、他者との繋がりを多く持つ。私と真逆の方針だが、今のような状況においては私よりずっと役に立っている。

 

(孤独は強さに繋がらない…か。本当にその通りだな)

 

初めて豹と手合わせをしてしばらく後、再度手合わせを申し込み…再び敗北した際に豹から言われた言葉だ。独力で強くなるのには限界がある。その強さをぶつける相手がいなければ判断しようがないからだ―――まったくもってその通りで、それ以降私は距離を取っていた師匠や魔理沙と再度連絡を取ることにした。

 

師匠に「やっと気付いたかい」と言われて、あらためて私の未熟さを痛感した一件だ。そして今再びこの言葉の意味を噛みしめている…他者との繋がりは、れっきとした強さの形の一つだ。

 

「―――っと、お客さんが来ちゃったわ。まだ私に聞きたいことはある?」

「ううん、大丈夫!でもお客さんにも聞いておきたいわ」

「そ。商売の邪魔しないでよ?

 いらっしゃい!何かご入用ですか?」

「お邪魔するわ。豪徳寺ミケ…でいいのよね?」

「あれ、初見さんが私のこと知ってるのは珍しいね。誰かからおすすめされでもしたのかい?」

「って、レティじゃない。雪にはしゃいで夜遊びかしら?」

「…呪珠、そこまで私は子供じゃないわよ。

この雪はしばらく降り続けるわ。冬支度が出来ていないなら、すぐに取り掛かるべきって忠告しておいてあげる」

「む?呪珠の知り合いか?」

 

呪珠に連れられて入った招き猫の小屋に、寒気を纏う女性が入ってきた。呪珠の反応を見る限り、冬に活動的になる妖怪だろうか。

 

「レティ・ホワイトロックよ。ちょっと表沙汰にしたくない取引をしたいから、席を外してもらいたいのだけれど…

話が済むまで私が外で待つわ。終わったら呼んで」

「あーちょっと待ってレティ!あたしたちの用はもう済んでるけど、レティにも聞いておきたいわ!

豹って魔界人のこと知らない?」

「え、呪珠と豹って知り合いだったの?」

「いや、交友があったのは私だ。だがその口振りからすると…あんたは豹と接点があるんだな?」

「そうだけど…貴方は?」

「私は明羅、侍だ。豹には手合わせの相手として世話になっている」

「そう。でも悪いけど、私は豹と顔見知り程度でしかないわ。どこに住んでるとかは知らないし、むしろ私が聞きたいぐらいなのだけど。

私は今日になってやっと外で活動し始めたところなのだから」

「なーんだ、やっぱ雪ではしゃいでるだけじゃない」

「冬のレティさんは結構凄いのよ?氷漬けにして太陽の畑にでも投げ棄ててあげま「ごめんなさいごめんなさい!!冬にしか活動できないんじゃそうなっちゃうよねごめんなさい!!」

 

…呪珠も変わらないな。まあ、こういったところが逆に親しまれているところでもあるのだろうが。

少なくとも、仏頂面で生硬な対応ばかりな私よりはずっと付き合いやすいのだろう。

 

「…ま、そういうことよ。私はこの雪が降り始めるまで日の光が当たらない場所に潜んでいたから、豹のことを聞かれても困るわ。貴重な話し相手ではあるから、冬の間に見つけられたら相手してもらいに行くけどね」

「そうか。だがそんなあんたが表沙汰にしたくない取引なんて、どういういきさつがあれば起きるんだ?」

「ちょっと冬になるまで潜んでた場所で、価値はありそうだけど元の持ち主がいるかもしれないものを見つけたのよ。こういったものを人里で取引するのは管理者に目を付けられるかもしれないから、非合法な取引も行ってくれるここを頼らせてもらったのだけど」

「なーんで私が闇商人みたいな扱いされてるのよ…」

 

店主が困った顔をしているが、レティを追い返す素振りは見せない。つまりはそういうことなのだな。

今後縁があれば、私も頼らせてもらうことがあるかもしれんか。

 

―――そんなことを考えていると、高速で一直線に向かってくる師匠の魔力を把握できた。

 

「…どうやら集合時間のようだな。レティと言ったか?一応、師匠とも顔を合わせておいてくれないか?」

「え?師匠って…向かってきてるあの強い魔力のことかしら?」

「そう!豹のこと見つけたらあたしたちに教えてくれるだけでいーからさ!」

 

呪珠に答えが返される前に、師匠はここに辿り着いて。

 

「邪魔するよ。明羅、呪珠、首尾はどうだい?」

「それなりですね!ミケもレティも豹と顔見知りだそうです!」

「へえ、そうなのかい。ま、ちょっと事態が動いちまったからねえ…二人とも博麗神社まで付き合いな」

「…むう。あまりあの巫女と顔を合わせたくはないのですが」

「今の状況じゃ仲間割れはさせないよ。

―――そういうわけだ。名前からすると、あんたがレティだね?時間が作れたら話を聞かせてもらうよ」

「…まあ、いいけど。あまり役に立たなくても文句は言わないでよ?」

「ふふっ、それはどうだろうね?

 まあ今はいいさ。明羅、呪珠、行くよ」

「「はいっ!」」

 

…どうやら、師匠はレティとやらが何か知っていると確信しているようだな。彼女の妖気は、後々捜索することも考えて覚えておこう。

 

 

 

 

 

「――参ったわね。流石はあの魔法使いの師…こんな簡単に見抜かれるなんて」

「つまり、お姉さんが私のところに来たのは豹から聞いたからってこと?」

「そういうことよ。頼まれたことをサッと片付けてとぼけるのが一番いいかしら」

「あはは…お姉さんも肝が据わってるねえ。あんなとんでもない悪霊相手に言い逃れる気満々なんだ」

 

それは貴方も、とは思うけれど。あまりゆっくりしているわけにはいかないようだから口には出さないでおきましょう。豹を取り巻く状況は聞いて来たけど、まさかいきなり要警戒対象の悪霊と鉢合わせるなんて思いもしなかったわ。

つまり、急がないと私の助力が間に合わない可能性もあるってことなんだから。

 

「レティでいいわ。それで、豹からの依頼よ。

 これだけ支払うから使えそうな魔法具を調達してくれ、だそうよ」

「…これは、口止め料も入ってるね。かなりヤバいことになってるわけ?」

「ええ、今さっき来てたあの三人も【豹にとっては敵】よ。だから表沙汰にしたくないって誤魔化そうとしたんだけど…悪霊と侍には通じなかった様ね」

「でも、その場凌ぎできただけでもレティはやり手よ。私も豹の援護が出来そうだし、レティが来てくれて助かったわ。

この辺、全部持って行って」

 

そう言って机の下に置いてあったらしい木箱をカウンターの上に置き、中身を見せられたのだけど。

 

「…私、調達してもらってくれって頼まれたんだけど。なんで店主はもう用意してあるのよ?」

「私のこともミケでいいわ。豹は私の数少ないお得意様だからねー、買い取ってもらえそうな道具はお取り置き扱いでキープしてあるのよ。

そもそも魔法具なんてわざわざ私のところに買いに来るお客さんなんて滅多にいないし、私には価値がわかんない以上、格安で売り捌いちゃうリスクがあるからね。豹はこういったものに関してはかなり高値で買ってくれるから、適正価格がわからない私からするとありがたーい上客ってワケ」

「成程ね…たしかに魔法具としての適正価格なんて魔法使いじゃないとわからない。理解できていないところに付けこんで買い叩こうとする客に売るよりは…」

「それなりに付き合いがあって元々利益が出る値段で買ってくれる豹に売りたいのよ。来店間隔は平気で一年以上空くこともあるんだけど、お互い損な商談にはしないって信頼はとっくに出来てるからね」

「まったく…薄々感付いてはいたけど、豹は女性に甘いのね」

「そうでもないよ?甘いのはお気に入りの女だけ。

一度敵と判断した相手は徹底して警戒するのが豹。具体的に言っちゃえば、烏天狗の大将とその部下の管狐とかね。私をアテにしてくれた最初の理由も、この二人の動向を知りたがった時に妖怪の山をある程度自由に歩き回れる手駒が欲しかったからだし」

 

魔界から逃亡中なのに天狗の動きを知りたがるって…余計なこととしか思えないんだけど。

まあ、私は豹に助けられたことがあるだけで深入りはしていない…というより冬以外では役に立たない私は春から秋にかけて豹がどう過ごしているのかすら軽く聞かせてもらっただけ。何も知らない私が勝手に想像するのも失礼な話か。

 

「それじゃ、その箱ごと受け取っていいかしら?」

「毎度あり!私は寒いの苦手だから、この時期はほとんどここにいるわ。一晩ぐらいなら匿ってあげるって豹に会えたら言っておいて!結構大きい貸しにできそうだから!」

「あまり深入りしない方がいいと思うわよ?まあ、冬しか戦力にならない私が言っても説得力がないけどね」

「ま、そうなんだろうけど…私に被害が及ばない程度なら力になってあげたいわ。どうも呪珠は豹のことを探ってる感じがしたから誤魔化したけど、実は私結構豹のこと気に入ってるからね」

「そう…わかったわ。直接会えたら言っておいてあげる。

それじゃ、私はさっそくこれを届けてくるわね。機会があればまた利用させてもらうわ」

「ご利用ありがとうございまーす!次もよろしくね!」

 

ミケの小屋から出て、プリズムリバー邸に向かう。これが豹の手元に届くのが、間に合えばいいのだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まさか、神綺が月に送り込むほどの相手だったとはね。本格的に事を構える前に知れて助かったと言うべきかな」

「だねー。再戦になる前に早苗が戻って来てくれて良かったよー」

 

永琳先生と豹の過去を神奈子様と諏訪子様にお伝えすると、私が予想していたより深いところを知っている反応が返ってきました。

 

「もしかして、神奈子様と諏訪子様は魔界神と会ったことがあるんですか!?」

「まあね。私も月の連中には思うところがあるから、喧嘩を売りに行ったって魔神がどんな奴で、いざとなれば共闘できるのかを…神としての繋がりを使って全盛期に一度見定めに行ったよ。

…まさか、月の方が私らに協力を求めてくるとは思わなかったけど」

「私もお師匠様ももう月とは無関係よ。地上の永遠亭として協力してもらいたいの」

「よく言うねー。綿月姉妹にサグメなんて月の重鎮じゃないのさ。あいつらと()()()()()()()のに無関係なんて、随分と面の皮が厚いじゃん」

「―――っ!?」

「あまり私らを甘く見るなよ玉兎。信仰を失い弱体化したとはいえ、お前らを支配する神共のことはよく知ってる…あの連中がそう簡単に八意永琳を諦めるとでも思ってるのかい?」

 

…私、置いてけぼりですねー。神奈子様と諏訪子様の返しで鈴仙が二の句を告げずに黙り込んでしまいました。もしかして、共闘は無理なんですかね?

 

「―――とは言っても、だ。この件で私が優先すべきは早苗の安全だからね。豹の身柄を押さえるまでは手を組んでやろう…諏訪子も文句ないね?」

「ま、そうなるかな。ちょーっと豹ってのが思ってた以上にヤバそうだし、早苗単独で相手させたくはないから私もそれがいいと思う」

「………協力に感謝します。私も単独で奴の相手はしたくないので」

「あ、いいんですね。それじゃ、神奈子様と諏訪子様が知ってること、全部教えてください!」

「まあ待ちな早苗。私が知ってるのは神綺のことだから、肝心の豹のことは全く知らないのさ。

だから知ってる奴に吐かせに行くよ、付いて来な」

「えー、また私が待機役なの?」

「この雪の中諏訪子が動くってんなら譲るわよ?」

「冗談、私は炬燵でぬくぬくさせてもらうからー♪」

 

なんて思ってたら神奈子様がすぐに動いてくださいました。

つまり、次の目的地は…!

 

「こんな危険人物に早苗を一人でぶつけようとしたんだ。大天狗には洗いざらい吐いてもらうさ」

 

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