寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第175話 魔神としての交流

「な、何故…創世神が幻想郷の肩を……」

「創世神だからこそ、魔界を敵視していない世界は守るのよ」

 

うん、今倒れたこの子で最後ね。サリエルだけじゃなく幻月ちゃんまで手伝ってくれたからあっさり制圧出来ちゃった。

 

「他愛ないですね。この程度で幻想郷に乗り込むなんて無駄死にしに行くようなものです」

「…いえ、流石に相手が悪過ぎただけではないでしょうか…?」

「だよね…神綺様にサリエル様に幻月さんじゃなあ」

 

サラちゃんとリィスちゃんはちょっと自己評価が低いわねー。私達の足を引っ張らずに援護できてるだけでも、もっと誇って大丈夫なんだけど。並の子じゃあついてくることすら出来ないんだし。

 

マイちゃんの案内で急進派の拠点に速攻を掛けたけど、思ってたよりたくさんの子が参加しちゃってた。

それもそうよね…幻想郷を恨まないでなんて言えないんだから。私だって紫から幻想郷のお話を詳しく聞いてなかったら、魔界人(子供達)の仇討ちを果たしてたかもしれない。それだけの被害は出ちゃってた。

 

でも、ゼロから生命を創造できる私だからこそ…安易に殺戮に走っちゃいけない。消し去ってしまった存在の穴埋めを、私が創造することで補填するのはなるべく避けたい。それが魔界の外で過ごす存在ならなおさら。

 

―――私は、創世神としてはまだ半人前なんだから。ヒョウくんがそうじゃないって、今の魔界を見て言ってくれない限りは。

 

「―――あら?夢月がここに向かってきていますね」

「え、そうなの?何かあったのかなー?」

「幻月だけでなく私とリィスも夢月と合流するべきだろうな。神綺はどうする?

後始末を優先するのであれば、後は任せて我々は離脱するが」

 

サリエルが確認をとって来る。たしかに私はそこまで終わらせないとヒョウくんのところに向かえないんだけど…夢月ちゃんのお話も聞いておきたい。

 

「うーん…マイちゃん、お話聞きに行ってもいいかなー?」

「構わないですよ。ただ裁量権は下さい」

 

あ、マイちゃんがOK出してくれた!

 

「それじゃマイちゃん、後は任せちゃうね!緊急事態だからマイちゃんで処分決めちゃっていいから!」

「はい。……………フフフ、久しぶりに肉体に作用する魔法も研究できる…♪

「それじゃわたしも護送に回って、そのままパンデモニウムで待機しますね」

「よろしく!」

 

意識がある子と投降を選んだ子をマイちゃんとサラちゃんに任せられるなら、私が戻るのは遅れても大丈夫。気を失ってる子は空間魔法でそのまま留置施設に送っちゃえばいいんだし…それなら幻想郷の状況を聞いておきたいものね。

 

「そういうことになったからー、私も夢月ちゃんのお話を聞きに行くわ!」

「そうですか、では行きましょう」

 

 

 

 

 

―――そういうわけで、幻月ちゃんの先導で一直線に飛んで夢月ちゃんと合流したわ。

 

「もう終わっちゃった?私も暴れられるかと思ってたけど」

「夢月じゃ楽しめない相手だったわよ。あのレベルで幻想郷に殴り込むなんて無謀でしかない雑魚ばかりだったわ」

「そう。神綺は私に何か聞きたくて付いてきてるの?」

「ううん、そういうわけじゃないんだけど…夢月ちゃんが幻月ちゃんと時間差で動くなんて珍しいからちょっと気になって。私が判断しなくちゃ問題になるお話だったら、先に聞いておいた方がいいと思ったのよ」

「別に神綺とはあまり関係ないよ。ルナサたちが幻想郷に戻って来て話を聞いたから、私も合流した方が姉さんが早く帰って来れると思って来ただけだし」

「ということは、夢月ちゃんもアリスちゃんとお話ししてくれたのかな?」

「ええ、軽く話には聞いてたけど神綺が愛娘として扱ってるだけはあるね。機会があれば闘り合いたいぐらい」

「止めはしないけど、ちゃんと寸止めはしてよー?

アリスちゃんを傷付けたら、私も夢月ちゃんにやり返しちゃうからね?」

 

大丈夫だとは思うけど、牽制はちゃんと入れておく。夢月ちゃんも幻月ちゃんも戦闘を楽しめるタイプだから、テンションが上がり切ってると加減を忘れちゃうし。アリスちゃんなら致命傷は避けてくれるだろうけど、心配なのは変わらないからねー。

 

「あら、止めに入ると思ってましたけれど」

「実戦に勝る修行は無いからねー。幻月ちゃん夢月ちゃんと戦うんなら、私とサリエルで立ち会っておきたいっていうのが本音だけど」

「…たしかに私が立ち会えば最悪な事態は避けられるが、そうなるまでの殺し合いは避けてくれ。私からすれば、神綺の愛娘も夢幻姉妹も等しく失いたくない者なのだからな」

「…へえ?いつの間にサリエルは私と姉さんをそんなに気に入ったのよ?」

「昨日伝えた通りだ。ヒョウの力となってくれている者への助力は惜しまない――それだけで私にとっては守るべき存在だ」

「うん、サリエルも手遅れよねー…」

「ヒョウ様のことですから。私もサリエル様と同じ考えです、神綺様」

 

本当に私の罪は重いわ…ヒョウくんの居場所を奪い、ユキちゃんたちから兄を奪い、大切な友たちから想い人を奪ってしまって―――こんなにも永い時間、引き摺らせてしまった。

贖罪になんてならないのはわかってるけど、みんなが変わらずにヒョウくんと過ごせる時間を創ってあげたい。私が奪ってしまった時間を、少しでも取り戻してもらうために。

 

「ああ、むしろ私から神綺に話しておきたいことが出来たんだった。

 神綺、摩多羅隠岐奈って知ってる?」

「え?紫と同格の管理者のこと?」

「そいつが豹の排除を狙って動き始めて、紫と豹を切り離すために例の巫女を動かしたそうよ。

夢子とユキもこれは把握してたから、下手に動くことは無いと思うけれど。策を弄して来るのがあの巫女の後ろに付いたってことは覚えておいて」

「っ!ありがとね夢月ちゃん、あまりゆっくりはしてられないのがわかったわ。

…あまり使いたくなかった繋がりだけど、幻想郷の管理者直々に動いてるなら手伝ってもらおうかなあ」

「む?増援の当てがあるのか?」

 

思わずこぼれちゃった言葉にサリエルが反応しちゃった。あまり期待させちゃうのも良くないからなー…

 

「私は魔神だから、神としての繋がりだけじゃなく邪神としての繋がりも持ってるのよ。

ただ、邪神だからこそあまり頼りたくないのよねー…下手するとヒョウくんにまで被害が出ちゃうかもしれないし」

「それはたしかに困りますね…

協力者が増えるのは助かりますが、ヒョウの敵を増やさないでくださいよ?」

「うん、とりあえず魔界の方を片付けるのが優先だしね。もしみんなと協調出来そうだったら、なんとかして連絡するわ!

他に何か夢月ちゃんから聞いておくべきことあるかな?」

「大きな情報はこれぐらいよ。後始末が残ってるなら、急いだ方がいいんじゃない?」

「うん、そうするね!

 それじゃ、みんなヒョウくんをお願い!」

 

それだけ返してパンデモニウムへのゲートを創造して飛び込む。私も急がないと!

とっても大きな情報を夢月ちゃんが持ってきてくれた。夢子ちゃんに摩多羅隠岐奈の名前は教えてあるから、アリスちゃんとユキちゃんはしっかり抑えてくれるはず。

 

(でも、自分の国を持ってるレベルの神…そこの規模次第では数で押されちゃう危険性もある。

 もう少し情報も欲しいけど…)

 

ヒョウくんを守るためにも、信頼できる伝手は頼るべきよね。

 

「でも袿姫ちゃん、今どこに居るのかってところから調べなきゃならないからなー…」

 

時間の問題もある…諜報を任せてるマイちゃんが知らなかったらまず間に合わない。

でもコンタクトが取れるなら、力を貸してもらうべきよね。

 

 

 

「それで、夢月がわざわざ魔界まで来たってことは何かあったのよね?

神綺には聞かせたくなかったってこと?」

「別に聞かせても問題ないとは思うけど。伏せられる手札は伏せた方がいいと思ったから。

サリエル、ルナサのおかげで雛って厄神を夢幻館まで連れてこれた。もたもたしてるとエリーたちに厄が移るから、急いで戻ってもらえる?」

「わかった。リィスもこの時間なら幻想郷経由で幻夢界に戻っても大丈夫だろう、付いてきてくれ」

「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いないならてゐを探せって言われても…」

「探すために竹林に入るのは本末転倒よね…」

 

…見慣れない兎妖怪が何か言ってる。鈴仙の仲間かしら?

 

「何してんの、あなたたち」

「「えっ?」」

「私の毒に巻き込まれたくなかったら、どいてほしいんだけど。

その道が正解ルートだから」

 

そう言ったら、ものすごい勢いで食いついて来た。

 

「もしかして永遠亭までの道を知ってたりするの!?」

「知ってるけど…何?

あなたたち鈴仙の仲間じゃないの?」

「いや仲間だよ!ただ最近ここに来たばっかりで道が覚えられなくてさ!

永遠亭まで連れてってくれない?」

「…まあいいけど。私に近付き過ぎて毒を受けたり、距離を取り過ぎてはぐれても文句言わないでよ?」

「う…でも他に手がないわ。いいよね、青蘭?」

「選択の余地がないからいいんじゃない?

途中でてゐを見つけられればいいんだしさ」

 

てゐと鈴仙のことを知ってるんなら、警戒しなくても大丈夫かな?

一応、後ろから殴られないように毒を背後にまとめとけば平気だろうし。

 

「それじゃ、付いてきて。見失っても待たないから。

一本道で進まないと私も迷っちゃうしね」

「ちょ…本当に大丈夫なの!?」

 

 

 

そんなこんなで迷いの竹林を兎妖怪二人引き連れて進む…また落とし穴作られてるし。一度何も気づかずに嵌ってからは、地面を歩くんじゃなくて低空飛行することにした。あの時中を覗いて来たてゐに思いっきり毒霧をブチかましてからしばらくは数が減ってたのに、結局逆戻り。鈴仙と妹紅さんはなんで放置してるんだろう?一番ここを通るのはあの二人なのに。

 

そう思いながら通り過ぎたんだけど…後ろの二人、本当にここに来たばっかりらしくて。

 

「―――え゛っ!?」

「は?」

 

…先に注意するべきだったみたい。青い方の兎妖怪が思いっきり私の気付いた落とし穴に嵌っていた。

 

「…てゐの落とし穴ね。気付かなかったの?」

「って、あんた気付いてたの!?」

「そうじゃなきゃ素直に地面を歩いてるわ」

「うえーん…なんなのよこれー」

「とりあえず、助けてあげれば?

私が手伝ってもいいけど、毒に耐性が無いと追い打ちになるわ」

「…さっきも言ってたけど、毒ってあんたいったいなんなのよ?」

「あんたじゃなくてメディスン。メディスン・メランコリーよ。

私は毒で動く人形、手助けしたくても逆に苦しめるボディを持ってるのよ」

「うげ…団子屋として近付くの避けなきゃいけない相手じゃない」

「鈴瑚ー…早く助けてよー」

「あーもうわかったって!」

 

団子屋、ね。つまり人里に紛れ込んでる妖怪ってこと。

そのくせ落とし穴に引っ掛かるなんて…間抜けだわ。妖怪だってこととっくにバレてるんじゃない?この二人。

 

「くそー…てゐの落とし穴って言ってた!?後でぼこしてやる!」

「今はそれどころじゃないんだよねー。私に手を出すとお師匠様が怒っちゃうよ?」

「って、てゐ!?いつの間に来たのよ!?」

「落とし穴に引っ掛かった音がしたから見に来ただけさ。まさかお仲間が落ちたなんて思ってなかったけど。

足元不注意なのは自己責任だよ?これも防衛用の罠なんだし」

「仮にも患者を受け入れる永遠亭の周りに罠を張っちゃダメだと思う」

「ありゃ、メディスン?この時間に来るなんて珍しいじゃない」

「この雪だからね。本格的に積もる前に永琳に毒を渡しに来たのよ。

 ちょっと聞きたいことも出来たしね」

 

そして本当にこの兎は性格が悪い。落とし穴に嵌ったことに気付くと即座に見に来るんだもん。

まあ私は反撃してやったんだけど。

 

「むぐぐ…!覚えてろー!」

「引っかかる方が悪いわよ。でもなんであんたたちだけ戻って来たのさ?」

「鈴仙が重要な情報を掴んでくれたから、伝えるように頼まれたわ」

「あ、そうなの。ならさっさとお師匠様に伝えるのさ」

 

……?永遠亭が外で情報を集めるなんてめずらしい。

何か起きてるのかしら?

 

「そう思うなら案内しなさい!この子に近付くの危ないんだし!」

「はいはい、こっちよ」

 

そういって永遠亭に向かい出すてゐと兎二人。

…先行してくれるのは助かるわね。私も歩いていけるから。

 

(ま、外で情報を集めてくれてるのは私にとってもラッキーね。

 ヒョウさんのこと、永琳たちが知ってるといいんだけど)

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