寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第185話 救援、プリズムリバー邸

「ど、どうするのメル姉!?」

「どうしようかしら…」

 

本当にこれが役に立つことが起こるなんて思ってなかったわ~。姉さんと一緒に何度か豹をプリズムリバー邸(うち)に招待したことがあるんだけど、そのお礼にって豹が持ってきてくれた霧の湖周辺のジオラマ…これに探査・索敵魔法を行使することで、ここ付近に近付く魔力反応を察知できるっていうすごいもの。今朝の時点で姉さんが魔法をかけてあって、私かリリカが後から魔力を送るだけでもちゃんと使えるようになってるんだけど…よく考えると姉さんも魔法使いとしてなかなかすごいことしてる気がする。

 

豹本人は『悪質なファンがストーカー化した場合は早期発見に役立つだろう』なんて言ってたけど。まさかストーカーどころか敵対しちゃった妖怪相手に使うことになるなんて…

このジオラマ、ご近所さんな紅魔館のヴァンパイアさんも絶対に欲しがるわよね。そんなのんきなこと考えてる場合じゃないんだけど。

 

「あのブン屋だよねこれ…!おまけに後続が4人もいるし。倍の数相手じゃどうにもならないって!」

「わかってる、でも幻想郷最速相手じゃ今さら逃げても追いつかれるわ。

…私が囮になるしかないわよね」

 

この状況、一番まずいのは豹が私たちを助けに来ちゃうこと。そういう意味だと姉さんがここを離れてたのはラッキーだったのかも。姉さんが残ってたら豹は絶対ここに助けに来ちゃう…私とリリカが姉さんと豹をくっつけるために、姉さんのピンチには絶対助けに来てって何度も言い聞かせてたから。

豹の方が追われてるこの状況でも、頼んじゃった以上豹は姉さんを助けに来ちゃうはず。でも、襲われたのが私とリリカなら…即決で助けに来る前に別の方法がないかを考えてくれると思う。少なくとも、豹の側に逃走の手助けをしてる仲間がいれば止めてくれるはず。豹が一人だった場合は向かって来ちゃうかもしれないけど…その判断に迷ってる間に姉さんやカナがここに向かってきてくれれば踏みとどまってくれるとは思う。

 

―――でも、それはここに来てくれる皆だけで対処しきれる相手だけだった場合の話。異変を解決するために動くような実力者まで騒ぎに気付いて出てきちゃうと、戦力不足と判断した豹が援護に来ちゃうかもしれないのが問題になるわ。

そこを考えると、私とリリカは問題なくここに向かって来てるのを撃退できる仲間のところか、下手に攻撃を仕掛けてこれない場所に逃げることも必要になるのよね。ここを放棄するのは決まりとして、何処に逃げるかなんだけど…

 

「―――リリカ、家の中に引き込んだら入り口を閉めて逆に閉じ込めるわよ。それだけやったら先に雷鼓のところに逃げちゃって。たぶんカナたちは援護に来てくれるから、雷鼓も加えれば数が増えるわ」

「メル姉はどうするのよ!?」

「家の中のモノもフル活用して時間を稼いだら、人里に逃げるわ。いくら夜中でも人里で騒ぎになるのはあっちも避けたいはず…少なくとも姉さんとカナはすぐ助けに来てくれるはずだから、戦力を連れてきてくれれば、逃げるのはなんとかなるはず」

「アリス達を頼らないの?」

「アリスの家は魔法の森。こんなにわかりやすく私たちを狙ってきてるんだから、簡単に引き下がる気は無いってことでしょ?あんな人気の少ないところじゃ、私が逃げ込んでもまた戦闘になるもの。そうなって夢子とユキまで迎撃しちゃったらダメじゃない」

「そうだった…!でも、それは人里でも同じじゃない?」

「少なくとも自警団の詰め所まで逃げ切ればあっちも止まるはずよ。人里で騒ぎを起こすと管理者に睨まれる…そのリスクを負ってまで私たちを捕まえる意味はないと思うわ」

「ちょっと不安はあるけど、もう時間が無いか…!

 メル姉、絶対に逃げ切ってよ!」

「心配しなくても大丈夫よ。少なくとも幻想郷の住人が相手なら、命の危険はないわ~。

捕まったとしても、豹のことを聞き出される前に助けに来てくれればいいのよ~」

「そんなお気楽に言ってくれてもなー…それしかないけどさ」

「頼むわよリリカ。もう来るわ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー。とりあえず結界を張り直すわね」

「お待たせ。とりあえず、魔界の方は神綺たちがある程度片付けてくれたみたい。

魔界から幻想郷に全面戦争を仕掛けてくる可能性は、しばらく潰せたみたいよ」

「そうなのね…一安心、というところかしら」

 

魔界から帰って来た夢幻姉妹は、そのまま湖に結界を張る作業に移行してるわね。状況を報告しながら片手間にこなせるあたり、やっぱり私なんかとは格が違う…

 

「サリエルさんは夢幻世界でしょうか?」

「リィスも連れて来てる。この時間なら幻想郷経由で幻夢界とやらに戻っても大丈夫だろうだってさ。

よし、これでサリエルを呼んでも大丈夫」

「あ、それなら私が呼んで来ますね!」

「お願いねくるみ。

それで、あなたが話に出ていた雛ですか?」

「ええ、私が厄神の鍵山雛。貴方が幻月ね…あまり役に立たないかもしれないけど、よろしくお願いするわ」

「幻想郷の状況を教えてくれるだけでも大助かりですから、気にしないでいいですよ」

 

強者の余裕、というものかしら。エリーの鎌を厄受けに使っているとはいえ、幻月は何のためらいも無く雛に近付いて挨拶を交わしている。本当に、豹の力になってくれて助かってるわね…

 

「手間をかけてすまないな…これで集合は出来たか」

「手間なんかじゃないですよ。ゲートの目の前で待っててくれたじゃないですか」

「失礼しますね」

 

そしてあっという間にくるみがサリエル様とリィスを連れて戻って来た。言葉を聞く限り本当にすぐ側で待っていてくれたみたいね…ありがたい限りだわ。

 

「それでは、さっそく用件を済ませて状況を整理しましょうか」

 

そう幻月が話を進めようとしたところで。

―――誰も予想していなかった大物が割り込んできたわ。

 

 

 

「悪いのだけれど、先に私から話をさせて頂戴」

「「「「「「「「――ッ!?」」」」」」」」

 

 

 

突然私たちの上空でスキマが開き、八雲紫が舞い降りてくる。

 

「敵対する意思は無いわ。それはルナサが証明してくれるのだけれど…そのルナサに伝えることが出来た。

永遠亭と守矢神社に天狗が手を組んで、メルランとリリカを狙って動いたわ」

「えっ…!?」

 

それは、私が見落としていた最悪の事態。豹を追っているのは私で、メルランとリリカはあくまでそれを手伝っているだけ…それが前提だったから、私が捨て駒として切られた後はメルランに任せるつもりであまり目立たない動きになる役目を任せてた。

でも、それはあくまで私の主観。私たちを敵視している相手から見れば、私の関係者は全員共犯…!リリカを動かすときに使ってた理屈なのに、メルランとリリカが先に狙われる可能性をほとんど考えていなかった…!

私よりメルランとリリカの方が戦力不足になったのは今が初めてじゃないけど、なるべく孤立しないように役割を割り振ってた。でも、【メルランとリリカ二人だけじゃ対処しきれない戦力で狙われる】ことになるとは思ってなかった…!完全に、私の見通しが甘過ぎただけ…!!

 

「ルナサが一番理解してるでしょうけど、八雲は直接援護に向かえない。でもここから近場…霧の湖の対岸までスキマで送るぐらいは出来る。確実にスキマから出て来たことを目撃されない位置はこの辺りがギリギリだわ。

守矢と天狗はともかく永遠亭に豹の協力者が捕まるのは避けなくてはならないわ。ルナサ、急いで向かって頂戴!」

「わかった…!」

「私も行くよ。天狗に月の斥候、楽しめそうじゃない」

「悪いけれど夢月は駄目。同行してる守矢の風祝の命を取ってしまうと、守矢の二柱が前線に出向いてしまうわ。そうなると管理者も動かざるを得なくなる…豹を幻想郷から切り捨てる方向で。

それに、風見幽香に関して交渉したいことがあるのよ。そこも含めて行かせるわけにはいかないわ…

襲撃者は全員生かしておく。この条件に従えるかしら?」

「……うぐ~」

「夢月、迷うならガマンして。このスキマ妖怪が直々に出て来たってことは、情況はかなり悪いってことだわ」

 

私は即答で返事を返したけど、それに続いてくれた夢月にはストップがかかってしまったわ。でもこれは仕方ない、今の状況で守矢の二柱を介入させるのはどう考えてもマイナスにしかならない…!

 

「私が行くわ!野良妖怪同然の吸血鬼なら問題ないわよね!?」

「私も行きます!私が動くことで、魅魔さんたちを襲撃者にぶつけられるかもしれませんので!」

「助かるわ。くるみと…貴方がリィスかしら?

貴方と里香を除いた魅魔の一派は今、博麗神社に集結しています。もし彼女たちが動いたならば、上手く誘導することを期待させてもらうわ」

「力を尽くします。サリエル様も、よろしいでしょうか?」

「私からも頼む。ルナサの力になってやってくれ」

「なら私も…!」

「エリーは夢幻館に留まって!もう一つ別のところを援護しに行かなきゃならなくなったら、雛の単独行動になっちゃうわ!」

「…私一人じゃ何の役にも立たないでしょうね。エリー、私からもお願いしていいかしら?」

「――ッ、そうですね…!くるみも気を付けて!」

「わかってる!」

「霧の湖に出てからは私が案内する。くるみ、リィス、どうかお願いするわ…!」

「はいっ!」「任せて!」

 

頼もしい返事を返して、私に続きくるみとリィスがスキマに飛び込む。

 

(メルラン、リリカ。なんとか持ちこたえて…!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――悪い予感が当たってしまいました!射命丸文さんが先行する形で、一度合流した5名の反応がプリズムリバー邸に向かっています!」

「わたしたちの繋がりはバレバレだったもんね…!

上海ちゃん、メルランとリリカを助けに行くよ!」

「上海、先に一つ聞かせてください。豹さんが私にかけてくれた魔力封印術式は、まだ作用していますか?」

「え?それはまだ作用していますが、椛さんは何を?」

「少し賭けに出ましょう。私は隠れ家に戻り始めた妹紅さんと合流して、そのままプリズムリバー邸に向かってもらうようお伝えしてきます。カナさんと上海は先行してください!リリーは何があってもここから動かないように。誰か一人はここに戻るようにしますので!」

 

そう言った椛さんは私が返事をする前に動いてしまいました。

麟さんもそうですが、幻想郷を捨ててしまうほどの覚悟を決めている皆様は迷いが無いですね…!

 

「カナさん!私たちも急ぎましょう!」

「わかった!

リリー、不安でしょうけどちょっとだけガマンして!」

「大丈夫なのですよー!皆さんはリリーに出来ないことをやってください!」

「はい!メルランさんとリリカさんを助けてきます!

 リリーさん、お留守番をお願いします!」

「わかったのですよー!」

「それじゃ行くよ、上海ちゃん!!」

 

間に合えば、私とカナさんに妹紅さんで数は互角になりますし、気付いていればルナサさんも戻って来てくれるはずです!博麗の巫女たちが動く前に、なんとか止めないといけませんね…!




サ開から続けているソシャゲがレッツゴー!陰陽師とコラボしてて昨日は笑い倒しました。
妖怪メインという東方との共通点があるのでここに書くのもお許しを…
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