…誤入文字にちゃんとした単語があるのに今になって気付く不勉強な作者です。脱字の反対語で調べればよかったんですね…
「―――幻想郷において八意永琳が大きく関わった案件はこれぐらいですわ」
「……私が月を離れたのは、取り返しのつかない過ちだったのかもしれんな」
夢幻姉妹もエリーも雛も、先に私の私情を優先することを許してくれたことで。八意永琳の状況を聞かせてもらえば…永き時が流れても、傲慢が過ぎる奴らの性分は何も変わっていないことを理解することになった。
「豹は幻想郷で月との関わりを完全に断ち切って過ごしていたわ。私の依頼は何も聞かずにこなしてくれていたけれど、月が関わる案件だけは一切合切引き受けてくれなかった…私も無理強いは出来ないぐらい豹に助けてもらってたから、月のことや反乱のことは知ろうとしなかった。私は昨日になってようやく、豹が藍に話したその過去を知ったわ。
―――そして今、かつて私が八意永琳を幻想郷に受け入れたことで、隠岐奈が豹を追い詰めるために利用されようとしています。因縁を持つ貴方に押し付ける形になってしまいますが、どうか力をお貸しください…!」
幻想郷を管理する者の一角・妖怪の賢者にして、現状におけるヒョウの庇護者・八雲紫。出来れば神綺に任せたい相手だったが、私が想像していたよりずっと感情的な相手だった。まさか私と夢幻姉妹が揃っている状況で直々に出向いてくるだけでなく、ここまで率直にヒョウの援護を頭を下げてでも頼んでくるとな…
ヒョウは今でも変わらず、他者を支え続けていたということだ。魔界と幻想郷の危ういバランスを崩さないためには、ヒョウを切り捨てるのが最も効率的だ。神綺を筆頭としてユキや夢子にルビー…魔界でヒョウの帰りを待つ者は少なくないのだから。
しかし、八雲紫はその選択を取らずにヒョウを幻想郷に留めるべく動いていた。そのために駒として動かしていたルナサの妹達を救うため、私と夢幻姉妹に直接姿を見せてまで協力を求めに来たのだ。
幻想郷を管理する者としては、私情を優先し過ぎた選択だろう。
それゆえに協調できる。八雲紫は幻想郷を守ることとヒョウを幻想郷に留めることの両立が目的だからこそ、神綺とは完全に対立してしまうのだが…私と夢幻姉妹は【ヒョウを魔界に連れ帰る】ことまでは求めていないからだ。極論を言えば、私は【ヒョウと共に過ごすために幻想郷へ移住する】という選択を取れる。
ヒョウが魔界に帰ってしまえば、そう簡単に幻想郷へ戻れなくなる。
八雲紫の傘下にある陰陽玉の巫女が、魔界に大被害を与えたことで悪化した魔界の住民感情は…ヒョウが何度も魔界と幻想郷を行き来することを許容できないだろう。ヒョウにも幻想郷にも多数の悪意と敵意を向けてしまう行動なのだ。だからこそ八雲紫は神綺達の望む【ヒョウの帰還】を受け入れられない。
だが…その理由が個人的な好意であるがゆえに、幻想郷の管理者として動けなくなっているということだ。管理者の立場からすれば、ヒョウを差し出すことで魔界に恩を売る方が現実的かつ実利的ということを八雲紫本人も理解できているのだからな。
故に、【即座に幻想郷で活動出来る場所でヒョウを保護する】という条件なら彼女も妥協できるはずだ。そして今の時点でも私が幻夢界、夢幻姉妹が夢幻世界という2ヶ所を提示できる。そこに戦力を結集できれば、幻想郷の敵対派閥が総攻撃をかけてこようとも撃退するのは難しくない。何故なら神綺も私と同じくヒョウを心の底から求めている。ヒョウの安全のためなら魔界神自ら援軍として最前線に出てくる…私と神綺に夢幻姉妹が揃えば、それこそ八意永琳が月の関係者を引き連れてこようが撃退は難しくない。殲滅だと少々骨が折れるかもしれんが。
「ああ、ヒョウであれば今でも月を敵視しているだろう…私の失態のせいでな。それこそ八意永琳が先に動くのであれば、私が介入する口実にしてしまえばいい。私が幻想郷を訪れるに足る理由だ」
「ありがとうございます。その動きに反応した別の管理者への対応はこちらで引き受けますわ」
「頼む。出来れば夢幻姉妹が幻想郷で動くに足る理由も作ってもらえると助かる」
「承りましたわ。風見幽香への抑えも含めて、必要になりますしね」
「あ、それでは手回しが終わったら教えてください。私も夢月もすぐ動きますので♪
それにしても…撃退できない脅威に曝されたことで月から逃げようとするような臆病者のくせに、地上を都合の良い環境にするため高慢にも全ての生物を皆殺しにしようとしていた、ですか。
力がある割に随分と余裕が無いんですね、月の民は」
「見下げ果てた考え方だよ。サリエル、報復するときには私と姉さんも呼びなさい。吠え面かかせてやるから」
「そうだな…私から頼みたいぐらいだ。無駄に力だけはあるからこそ準備が必要だが、叩き潰すときには手を貸してくれ」
そして八雲紫から伝えられた、直近で月の民が幻想郷に対し企てていた計画は夢幻姉妹も嫌悪感を持ったようだった。私は月である程度奴らのことを知っていたからこそ、考えそうなことだと割り切れたのだが…
「問答無用で皆殺し、ですか…!
どれだけ思い上がっているのでしょうね…!」
「豹が徹底的に月を避けていたのは、潜伏のためだけではなかった様ね。
妹を守ることを貫く豹からすれば、絶対に認められない連中だわ」
エリーと雛も嫌悪感を隠さず吐き捨てる。何も知らないからこそ、怒りも強いのだろう。割り切れた私の方が、少し麻痺しているのかもしれないな。
そして、それに対する八雲紫の言葉は…ヒョウが今でも奴らを討ち果たすべきと考えている裏付けとなっていて。
「私も同感よ。そう思えたからこそ豹に月絡みの案件は頼まなかったわ」
「…その言い方、君は奴らと直接交渉したことがあるのか?」
「少々無茶をしたことがあったので、不愉快な連中ということはよく理解しているわ。
だからこそ、豹が月を敵視する存在と接触しようとすることには助力していましたので」
「へえ…ヒョウは月絡みの案件を徹底的に拒否してたのに、月と敵対する面々とは潜伏を捨てて顔を合わせてたってこと?」
「ええ、だからこそこの【月の遷都計画の阻止】に関して私は八意永琳の動きを静観していたわ。豹のおかげで月の襲撃者と協調していた女神様とすぐコンタクトが取れる状態になっていたから、八意永琳が本当に月と決別し幻想郷を守るべく動くのかを見極めることにした。
―――貴方が月に報復するのであれば、この女神様には私が協力を要請します。その際は私にもご一報下さいませ」
「ああ、奴らを相手にするのであれば戦力はいくらでも欲しい…よろしく頼む」
ヒョウだけでなく八雲紫本人も月の民を敵視していたことで、協力体制を取る理由が一つ増えた。
私が月の支配者の任を放棄したことで、ヒョウが逃れた地…幻想郷を危機に晒していたのであれば。私には幻想郷を守るべき責務があるのだから。
「だが、今私が知るべきことはこの件ではない…八意永琳の現状だ。
先に月への報復に関して話をまとめたということは、八意永琳はまだ月と繋がっているということなのだな?」
「八意永琳本人は、既に月とは無関係と言い張っていますが…月の民が未だ彼女の頭脳を諦めていない。そして今お話しした遷都計画の阻止においても、八意永琳は【霊夢と麾下の玉兎を利用し
本人がいくら関係を断とうとしても、月の民を滅ぼさない限り繋がりは残るでしょうね」
「それに、月の都を救ったことを考えれば未練もあるということですか。
ヒョウにとってはあらゆる意味で厄介な存在になるんですね」
「ええ、襲撃者に玉兎が含まれているのがルナサを囮に使うことの懸念点なのだけれど。豹が隠れ家を離れてから会っているルナサなら【永遠亭の関係者だけには捕まってはならない】ことが理解できているわ。それだけは避けるように対処してくれるはず」
「それでもその最悪な事態が起こった場合は、私と姉さんも幻想郷で暴れていいってことね?」
「サリエルも動いて構いませんわ。隠岐奈が霊夢も永遠亭も巻き込んで豹を追い詰める方向で動いている以上、私も手段を選べないので」
―――これは、神綺の到着を待つ余裕は無いのかもしれないな。あの月の天才薬師…八意永琳が関わって来るとなれば、先手を取られると挽回が難しくなる。そして八雲紫は魔界との関係で表立って動けない以上、ヒョウの協力者だけでは戦力不足…八意永琳が本腰を入れて動いた場合は、私と夢幻姉妹での救援が必要ということだ。
「ヒョウと八意永琳の詳報にあらためて感謝しよう。
状況次第では、エリーと雛だけではなく私と夢幻姉妹も幻想郷へ侵入する。幻月も夢月も構わないな?」
「当然よ。月の連中にヒョウは勿体ないわ」
「はい、もちろん私も異論は無いです」
「ありがとうございます。どうか豹をお願いしますわ」
「むっ!?増援ですか!?」
「え、メディスン!?なんでこんなところに!?」
「上海をヒョウさんに会わせなきゃならないの!邪魔はさせないわ!
行くよスーさん!!」
先に追い付いて来たのは東風谷早苗と鈴仙・優曇華院・イナバ。ミーティング通りメディスンが鈴仙・優曇華院・イナバに容赦なく弾幕を展開して先制攻撃。後続の射程範囲に入る前に…!
「悪いけれど付き合ってる暇はないわ。お引き取り願おうかしら!!」
「豹はあなたたちと会う気は無いし、ルナサを連れてくのもお断りよ!
さっさとお家に帰ってちょうだい!!」
「うっ…!弾幕ごっこでは済まないみたいですね、やっぱり!!」
私とカナで東風谷早苗に向けて援護射撃!そしてその弾幕の隙間を縫うよう―――!
「豹さんと無関係な方は出てこないで下さい!巻き込むだけでリスクになるんです!!」
「ちっ―――って、アリスの人形!?完っ全に後手に回ってるってことじゃない!!
…いやいやいや!?メディスン以外にこんな流暢に喋る人形なん「ひとり言なんて余裕ね。私を甘く見過ぎじゃないの鈴仙!!」
「くっ!」
巨大化術式を使わないまま上海が鈴仙・優曇華院・イナバに突撃!!流石にこの程度の不意打ちでは避けられるけど、メディスンがそのまま追撃することで東風谷早苗と分断するって狙いは成功!!
ここまでは上手くいったわ…!降りしきる雪でメディスンの毒もある程度落ちるけれど、霊体の私はともかく実体持ちのカナはメディスンの毒に巻き込まれるリスクがあった。
だからメディスンには
「って、数が増えてるじゃないのさ!引き受けるべきじゃなかったか!?」
「もう遅いぞにとり!前面に出てやるから、しっかり援護しな!!」
「すみません!あのボロ洋館から逃げられたのがミスでしたね…!
でも、にとりさんが後れを取るような相手じゃないでしょう?後衛お願いします!!」
「言ってくれるね~。これでもわたし、靈夢や魔理沙を相手にしたこともあるんだけどな」
河童と山童も追い付いて来たけれど、既にメディスンは少し距離を取った位置で鈴仙・優曇華院・イナバを押さえてくれてるわ。それに…!
『夜叉を、お借りします!』
「「「はぁっ!?」」」
「「余所見するなんていい度胸じゃない!!」」
「「「っ!!?」」」
上海の巨大化術式で気を引かせたところに私とカナで全力の乱射!!これで決まれば楽だったんだけど…!
「やりますね!!先に豹とやり合ってなかったらマズかったかもしれません」
「屋外でもこれだけやれる騒霊だったのか。これは甘く見れないなあ!」
「…ったく!おい早苗、追加報酬要求させてもらうぞ!あの人形はとっ捕まえて私が研究してやる!!」
「にとり、そうはいかないな。あれは私のビジネスに使わせてもらうぞ!」
「お断りします!!ご主人様と豹さん以外に、大切なボディに手を加えられたくありませんので!!」
「ええー?これだけ喋る人形に対する反応がそれなんですか…?」
東風谷早苗は避け切って、河童と山童も痛手になるような被弾はしていない…!
私じゃやっぱり力不足ね。せめて、カナと上海の足を引っ張らないようにしないと!
「作戦通り頼むわ。お願いねカナ、上海!!」
「OK!!」「はいっ!」
月絡みも独自設定ガチガチ。この作品の紺珠伝において、ゆかりんは豹→キクリ様→ヘカちゃんという繋がりから直接侵攻中止を要請出来る状況だったため、えーりんの策を静観していたという設定にしています。