寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

194 / 289
第194話 合流・反撃

「「―――ッ!?」」

 

リリカが大音量で幻想の音を鳴らしたわね…!タイミングが悪かったら致命的な隙になったかもしれないけど。

 

「そこっ!」

「ちっ!楽団やってるのが勿体なく感じるな!」

「フォローありがとうルナサ!今のって!?」

「リリカだわ。追い付かれる前に雷鼓を呼んだのでしょうね」

 

同じ騒霊のカナにも聞こえてるのが後ろから見てわかったから、カナが押さえてた山童を狙撃して援護!そのまま上海が押さえてる守矢の風祝に向けて乱射!こうすれば後衛の河童は…

 

「よーく見えてるなあ!ホント割に合わないよ!」

 

私からの牽制が減れば後衛から狙ってくるから大きく回避!その隙を狙って巨大化した上海の大技…!

 

「《模倣・緑の魔法》!」

「くっ!操り主が不在でここまで戦えるなんて!」

「うおっ!?

こいつは大当たりだ!永遠亭だけじゃなくあの人形遣いも、儲け話のタネになりそうだなぁ!」

「たかねにゃ勿体ないね!私が持ち帰るから引っ込んでな!」

「出来るもんならやってみな!後ろから撃ってるだけのにとりじゃ手に余るだろうよ!」

 

本当に凄いわね上海…!蛇行するホーミングレーザーを複数同時に発射できるなんて。

これには上海が押さえていた風祝も回避を優先して距離を取る。4本同時に放たれたホーミングレーザーが敵それぞれを曲がりながら狙ったことで…!

 

「わっ!?

私まで意識できてるっての!?とんでもない人形じゃない!!」

「上海、フォローありがと!下がれ鈴仙!!」

「ちっ!」

 

経験の差で押され気味だったメディスンまで援護してるわ。アリスに操られることで得た経験は私なんかと比べ物にならないみたいね…!本来なら後衛として戦場全体を俯瞰する私が指揮官役を担当するべきなのに、上海は前衛で守矢の風祝を止めながら戦場全体を見れている。

そもそも今の複射式ホーミングレーザーも私が指示したわけじゃなく、私がカナを援護することで崩れた均衡を支えるために上海自身の判断で放った大技。それこそ私が前衛に出て上海に後衛司令官を任せる方が良かったかもしれないわね…!

 

「まさかここまでやれる相手だったなんて!もう少し協力者を募るべきでしたね…!」

「今さら遅いわよ早苗!最低限メディスンは捕まえないと、迷いの竹林を抜けられちゃうのよ!」

「はっ!こんなところまで出張ってきてそれかい?なーんも考えてないんだな兎は」

「所詮下っ端の使い走りなんだろ?商談はもっと上にしなきゃ駄目そうか」

「あんたら言いたい放題ね!?手こずってるのはお互い様のくせによく言うわ!」

 

それに相手は連係不足どころか協力体制すら歪。とりあえず数だけ揃えて来たみたいだから、一人一人の実力は私たちの方が劣っていても…!

 

「「言い争ってる余裕があるの!?」」

「「「「っ!?」」」」

 

あの迷惑な天狗相手に共闘したことと、夢幻世界で邪魔な魔物や霊魂を蹴散らしたことがリハーサルのような経験になっているのもあって。私とカナでデュオが奏でられる!

私の乱射に合わせてカナが放った鳥型弾が間隙を縫うように集中を切らした3人に飛び掛かり、一度距離を取って集合した4人を再度分散させる!

 

「鈴仙、やっぱり私のこと見下してるでしょ?雨じゃなく雪なら毒霧をかけられるの、わかってないのね!!」

「―――!!」

 

そして上海の頼み通り、メディスンは玉兎の足止めにすぐ回ってくれてるわ…!飛び退いた方向に毒霧を展開された玉兎は、大慌てで目を閉じ鼻と口を塞ぎながら更に後方に飛び出したことで残りの3人から距離ができる。

…味方としては心強いけど、メディスンが危険視されてるのも納得ね。ある程度距離が離れてるのに視認できる毒霧なんて、不意打ちで放たれたら私や上海のように毒に対して耐性が無い生物にとっては脅威でしかないわ。豹の助けになってくれたのだから、今後は討伐されるような事件を起こさないように私たちも気にかけてあげるべきね。

 

―――そして、私たちが十分な時間を稼げたことで。

 

「待たせたね!

…って、上海か!?羽が生えただけじゃなくてでかくなることまで出来るの!?」

「げげっ!?藤原妹紅!?」

「あん…?どっかで聞いた覚えが…

―――ちょっと待て!?なんでこんな大物が出てくるんだよ!?」

 

間に合ってくれたわ!これで反撃に移れる!

そして、このタイミングで。くるみとリィスが誘いに乗ってくれたことで…心強い協力者がもう一人。

 

「あら?私は大物と数えてもらえないのかしら?」

「えっ…!?

咲夜!?なんでこんなところに!?」

「お嬢様の命令よ。【お兄様を手助けしてやれ】ってね」

「なっ…!?冗談じゃないわよ!

紅魔館ごと敵に回られたってこと!?」

「そう、鈴仙も豹様の敵なのね。

ルナサ、くるみとリィスから最低限の話は聞いて来たわ。さっさと片付けてお嬢様のところに来てもらうわよ」

「ええ、見逃してくれたのだから約束は守るわ。

でも、妹が二人とも単独で逃げる羽目になってる。助けた後でもいいのかしら?」

「話の途中で抜けられる方がお嬢様は怒るでしょうし、それこそ楽団揃って来てもらうつもりだったわ」

「よ、よくわかんないんだけど豹の味方なのね?」

「カナ、事情は雑音を排除してからちゃんと話すわ。

だから今は…」

「私とメイドちゃんを中心に、こいつらを追い返せばいいんだな?」

「ふふ、これほど心強い味方はそういないわね。お願いするわ」

「…これは、困りましたね…!

まさか、こんな実力者が二人同時に来てしまうなんて!」

 

理想を言えば、レミリアの援護はメルランかリリカに向けてもらいたかったのだけれど。プリズムリバー邸(うち)に向かって来てくれたのだから距離が一番離れていない私と合流するのは仕方ないわ。

それなら、少しでも早くメルランとリリカを援護するためにも―――

 

「形勢逆転ね。今度はこちらが力尽くで追い返させてもらうわ」

「妹紅さん、咲夜さん。魔力の温存のために巨大化を解除してもよろしいでしょうか?」

「あら、アリスの人形だったの。

ま、構わないわよ。後ろから援護はしてくれるのよね?」

「もちろんです!」

「メディスンも来てるなんてな。上海のためか?」

「そうよ。妹紅さんも、ヒョウさんの仲間なのね?」

「ああ、それなりに永い付き合いさ。

時間が作れたら話してやるよ」

「どうするのよこれ…!数も質も一気に逆転されたじゃない!」

「おいおい、ビジネスどころじゃないぞこりゃ!文さんの口車に乗ったのが失敗だったか!」

「早苗、あらためて言っとくぞ!私は前衛には出ないからな!!」

「わかってますって…!鈴仙、最低限メディスンは捕まえないとでしたよね!?私と鈴仙で前に出ますよ!」

「妹紅さんが敵側じゃメディスン捕まえても意味ないわよ!!

あーもう!早苗が先制攻撃してなかったらまだ対話できたかもしれないのに!」

「ええ!?私のせいなんですか!?」

 

もう仲間割れ寸前のこんな寄せ集めに、これ以上時間を掛けていられないわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「追い付きましたよリリカさん!話を聞いてもらいましょうか!」

 

無視無視!少しでも雷鼓との距離を縮めておかないと…!

 

「聞こえてないんですかねえ?手荒な真似はしませんから、話を聞いてもらえませんかー?」

 

なめられたもんだなー。そんな口車に私が乗るとでも思われてるのかな?

 

「―――仕方ないですねえ!」

 

…やば、本気にさせちゃったかも。私にあっさり追い付くだけのスピード出してたのに、そこからまた一気に加速して追い抜かれた。そのまま思いっきり進路を妨害されて止まらざるを得なくなったじゃん!

 

「…どきなよ。アンタに構ってるヒマは無いっての」

「いえいえ、リリカさんと取引させていただきたくて。ちょっと時間を貰えませんかねえ?」

「は?取引?」

 

なーに企んでんだかこのパパラッチ天狗は…自分が信用される取引相手だと思ってるのかしら?まだ八雲紫の方がマシなんだけど。

 

「今回の件、守矢と永遠亭に高い貸しを作れそうですので。

私についてきてもらえれば無傷で解放することをお約束しましょう!上手く立ち回れば都合よく私をこき使う私の上司にも目に物見せてやれそうですしね」

「ふーん。それで、代価は?」

「聞くまでもないでしょう?豹の所在が掴めたら、私だけに情報を横流ししてもらいたいのですよ」

「ま、そうだろうね。

当然お断り!!アンタに渡した情報は脚色されて広まるからね!!」

「ほほーう、交渉決裂ですな。

なら、遠慮なく仕返しできますねえ!!」

 

―――コイツ!取引を断らせることで実力行使の口実にしたかっただけか!

これだから天狗は嫌いなのよ!性根が陰湿で執念深いから、カナにも手伝ってもらって4人がかりでカメラを脅しに使ったの、思いっきり根に持ってるじゃん!

 

「一人だけとんずらこいたのが間抜けでしたな!私から逃げ切れるとでもお思いで?」

「逃げなきゃなんないのよ!どけっての!!」

 

こうなっちゃったらどうしようもないわ!雷鼓が来てくれるまで粘るしかない!

でも、ただ時間を稼ぐだけじゃキツいだろうから…!!

 

「鬼ごっこは終わりです!首に縄を付けてでも引き摺って行きますよ!!」

「やってみなよ!そう簡単に捕まってやるもんですか!!」

 

私に向けて撃たれた弾幕は急降下することで躱して、下から抜ける!!

 

「おやおや、舐められたものですねえ!この私からまだ逃げる気で?《サルタクロス》!!」

「私は勝てない勝負する気は無いからさ!だーれが付き合うか!」

 

そのままほぼ地上を掠めるぐらいギリッギリの低空飛行で、雷鼓の家の方にそのまま飛ぶ!これなら上空から乱射されても、木々に当たって多少は避けやすくなるわ!

 

「小賢しいですねえ、でも無駄ですよ!!」

「邪魔するな!《ソウルノイズフロー》!!」

 

まあ当然あっちも降りてくるよね!でもまだ地上の方が手が打てる!本命を先に撃っておいて―――

 

「うりゃっ!!」

「…む?

――っと、考えましたね。地上なら動かせるモノも少しはあると」

 

まあわかってたけど当たらないか!石ころや枯れ枝を片っ端から飛ばしてソウルノイズフローの射線に追い込もうとしたんだけど、あっさり風で散らされて足止めにもならない!やっぱ屋内じゃないと騒霊の力は活かし切れないね…!

 

「私もあまり遊んでいられませんので、手加減は期待しないようにお願いしますよ?

余裕があればカメラの意趣返しで弄んであげたのですが!」

「くそう…!」

 

言葉通り弾幕がキツい!コイツ、行動がパパラッチだから小物臭く見えるけど実は天狗でもかなりの古株らしいのよね…!これでも本気じゃないってんだからやってられないわ!

 

「《風神・天狗颪》」

「うわっ!?」

 

これは避けきれない!多数被弾して墜落する…けどここまで考えての低空飛行!

落下の衝撃は軽い、まだ逃げられる!!

 

「おやおや、思ったより粘りますねえ!

成程、増援の当てがあるようですな」

「うっ!?」

 

バレてる!?不意打ちは空振りじゃん!

…でも、私一人じゃ相手にならないんだからまずは合流しなくちゃ!

―――そうあらためて覚悟を決めたところで。

 

(…ッ!!雷鼓だけじゃなく衣玖さんも来てくれてる!?

 伏兵として使えなくなっちゃうけど、3対1なら!)

 

もう少しだけ粘ればいいんなら、この天気が使える!!

 

「これならっ!!」

「…むっ?ほう、考えましたな!」

 

私の周りに乱射して、木々に降り積もった雪を使った目晦まし!

こんなの、今の状況じゃなきゃ簡単に風で吹き飛ばされるんだけど…それをしてこない。

 

何故なら、その強風で()()()()()()()から。

 

雪の煙幕を風で一気に吹き飛ばすのではなく、通常弾の連射で振り払いつつ一気に接近して来たところを―――!

 

「このっ!!」

「おっと!」

 

魔力を集中させた大型弾を真正面から打ち込むことで、あっちからも撃たせて相殺させる!

その反動も利用して、もう一度全速力で飛ぶ!!

 

「思ったよりやりますねえ!引き付けることで避けさせないとは!」

 

ギリッギリまで引き付ければ流石の幻想郷最速も咄嗟には避けられない…ここみたいにそれなりの木々が立っている地上なら!あのスピードで急に曲がって木に衝突したらそれなりのダメージになるはずだもんね!

でもこの程度じゃすぐ詰められる距離。あっさり追い付かれるんだけど―――!

 

「リリカ!無事よね!」

「…いつぞやの記者さんですか。何が目的でこんなことを?」

 

ど、どうにかなった…!雷鼓と衣玖さんが、私を庇うようにパパラッチの前に立ち塞がってくれたわ!




お伝えしたとおり4(土)の更新は休みます。
次の更新は7(火)になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。