…やっぱり時間を作って再度推敲した方が良さそうですね。
誤字報告いつも助かっております、ありがとうございます。
「…あれっ?見当たらない?」
「姿を隠してるってことでしょ。
―――そのあたりかなっ!?」
「ッ!?」
やっぱり完全霊体化しても視界しか誤魔化せないみたいね!月の玉兎二匹は私の反応が視界内に入ったはずなのに見当たらないことで、範囲を絞って弾幕を展開してきたわ。このまま上手くすれ違いたい私はその範囲外まで一気に抜けるのだけど…!
「残念!せめて雪が降ってなかったらねー!」
「もうっ!邪魔しないでよ~!」
先手を打ってきた橘色の兎の弾幕に、舞い落ちる雪と遠距離からも探知できていた私の反応。これだけ条件が揃えば視界に頼っていた青い玉兎も気付けるレベルにはあるようだわ。私の移動ルートに弾幕を放ちながら人里に向かえないよう進路を塞ぐよう位置取られちゃったわね…!
「色違いの衣服に水色髪、間違いなく鈴仙が逃がした騒霊だね!」
「鈴仙?
あ~、そういえば月の玉兎にはテレパシーが使える個体もいるって、いつだったか豹が教えてくれてたわね…!」
「なっ!?
本当にヤバい相手なんだね豹って魔界人は。それを知ってるなんて…!清蘭、余計なことは喋らないで」
「はいはい、わかりましたよー。
たしかメルランとかいうんだっけ?どうせ私たちには敵わないんだし、大人しく連こ「邪魔なのよ!!」
♪&$+#”*$%#*%#*♪
「「―っ!?」」
一回だけなら確実に決められる初見殺し!予備動作や詠唱ゼロで爆音を発生させて聴覚にダメージを入れる私たち姉妹の得意技で怯ませて、そのまま人里に向けて突っ切る!!
「――っ!!あいつ、嘗めた真似してくれるじゃない!」
「ほんっと、地上人への認識あらためないとね…!甘く見ちゃうのなんとか直さないと!」
でも思ったより復帰が早い!速度差が無ければこれだけで振り切れるんだけど…!
「鈴瑚!弾速特化で乱射開始!!」
「言われなくてもそうするわよ!!」
そう上手くはいかないわよね!私はあまり戦闘慣れしてないから、背中を向けたまま自分より速い高速弾を避けることなんてできない。だから振り返って回避に専念するんだけど、それはせっかく離した距離を詰められるってことだから。
「《ヒノファンタズム》!!」
「むっ!」「おっと!」
私からも牽制しないと逃げ切れない!ただでさえ
「これだけやれるのが楽団なんてやってるの!?」
「武装の補給無しじゃ地上人の確保すら難しいなんて!」
なんだか私をとっても侮ってるけど、多少被弾する程度で速度はそれほど落としてないのよね…!私狙いの高速弾を撃つ頻度は減ったから、牽制にはなってる。でもこのままじゃ人里に逃げ込むより私の魔力切れの方が先に…!
「様子を見に来て正解だったようね。
人里に逃げ込むまでの時間稼ぎならやれるわ。その後は自分でなんとかしなさい」
「ッ!?
ありがとう!いつかちゃんとお礼するわ!!」
ラッキーなことに孤立してる私を追って来てくれた仲間がいたわ!仲間任せすぎて悪いのだけれど、余力があまり残ってないから甘えさせてもらっちゃう!
「で、貴方達は何が目的なのかしら?」
「無関係なのがしゃしゃり出て来るんじゃないわよ!邪魔す「答える気が無いならいいわ、凍えなさい」
「っ!?こいつ、雪女の一種!?清蘭離れて!!」
「え゛」
問答無用で青い玉兎の周囲の寒気を操って氷の牢獄を造り上げる。火炎魔法が得意な魔法使いや、力任せに氷塊を叩き壊せる強力な妖怪には意味が無いけれど、私のことを甘く見るような小物相手なら十分な足止めになるわ。
「ま、安心しなさい。私もあまり大物に目を付けられたくないから、少し遊んだら解放してあげるわ」
「ふ、冬の雪女ってこんなにやばかったの!?」
今更私に恐怖を感じたみたいね。まあ、月の兎じゃ私のような【環境次第で強くも弱くもなる妖怪】の知識なんて得られなかったということかしら。
それでも無警戒に喧嘩を売って来なかった分、こっちの橘色の兎は侮れない。冬の訪れを幻想郷に知らしめるために、全力で遊んであげましょう!
「冬のレティさんは結構凄いのよ!雪も氷も踊りなさい!!」
「な、なんでこんなことにー!?」
「なんと、竜宮の使いが地上に降りて活動しているとは!これだけでも最前線に出て来た価値はありましたな」
…相変わらずとしか言えませんね、この記者さんは。組織に属する烏天狗とは思えないほど自己中心的に動き、地上のあらゆる出来事を自身の都合よく記事にする。そのためだけに幻想郷を毎日の様に飛び回れるような変わり者。
ですが、単独行動で取材活動を行えるだけの実力者ということでもあります。私にとっては総領娘様に次いで出会いたくなかった相手と言えるでしょう。
私が地上で活動していたことを、隠すことが出来なくなったということなのですから。
…ですが、これは逆に利用できるかもしれません。
「そうですね、なんなら私が取材を受けても構わないですよ。リリカさんと雷鼓さんを見逃して頂けるのであれば」
「それは中々に魅力的な提案なのですが、今のタイミングで引き下がるのは勿体ないのですよ。
貴方を狙っている乱入者もこちらに向かってきているようでして」
「…っ!?」
そう言われて、私も気付いてしまいました。
―――総領娘様が、ここに向かって来ています!
「衣玖、これどういう意味かわかる?」
「申し訳ありません、予想より早く総領娘様が折れてしまったようです…!
おそらく私を狙ってこちらに向かっています!」
「うわ、あのお騒がせ天人なんて相手にしてられないじゃん!さっさと追い返して逃げなきゃ!」
「そうね、手加減なんてしてられないわ!」
「あやや…この状況でも私と取引するという選択は無いのですか。どうして私はここまで信用されないのですかねえ」
「己の所業を省みて下さい!!」
「新参の私でもあなたは信用できないわね!」
「さっさと帰れ!パパラッチに渡す情報なんて一つもないっての!!」
相談するまでもなく対応が一致しました!この烏天狗は力尽くで追い返します!!
「出来ますかねえ、幻想郷最速の私を捉えることが!!」
「―――と、私の失態を利用して豊聡耳様を引き込みに参りましたわ」
「先輩を逃がさないための、空間魔法に対抗出来る協力者ということね。
上手い誘い方だわ…幻想郷の管理者に名を連ねるだけはある」
邪仙からもたらされた摩多羅隠岐奈の情報は、たしかに価値のあるものだったわ。幻想郷の実力者である豊聡耳神子、それが彼女の勢力丸ごと摩多羅隠岐奈と協調することを決定したということ。
空間魔法に精通している豹を捕縛するという目的を考えれば、この上ない協力者ということね…!
「私はまだ豊聡耳様の元を離れるのは避けたいのですが、あの方と完全に敵対したくもないのですわ。だからこそ今この時単独行動しているのですよ。この私であれば、拒絶され実力行使も失敗した以上は策を整えてから動く。そう皆様に予想されることを逆手に取らせて頂くことで、ね。
ウフフ…豊聡耳様も摩多羅隠岐奈も、一度失態を晒しただけで私に対する警戒を緩めすぎですのよ。私ほど己の利益のためだけに動く存在なんてそういませんのに」
「…伊達に仙人を名乗っておるわけではないようじゃな。儂も星から話を聞いておるが、お主がこうまで素早く次の手を打つとは思わんかったわい」
化け狸の大将ですらこのタイミングで邪仙が動くとは思ってなかったようね。これは扱いに困る相手だわ…利用価値は大だけど信用するのも危険すぎる。裏切りを繰り返しても逃げ切れるだけの力があるからこそ取れる立ち回り…本当に夢子が居てくれて助かったわ。私が上手く対処できる相手じゃない。
「そして摩多羅隠岐奈は先ほどまで博麗神社に出向いていましたわ。おそらくは私の失態から大きく動いた状況を、実働部隊となる博麗の巫女達に伝えたのでしょう。
逆に言えば、私の行動もそろそろ感付かれるはずですわ」
「本当に交渉が上手いなぁ…迷う時間はもらえないってことね。
それで、あなたは魔界に何を求めてるの?」
そして時間切れということをここに来て伝えて来る。それを理解させられたユキが続きを促すと、予想もしていなかった要求に私どころか聖たちまで絶句することになったわ。
「母体は私が見繕いますので、あの方の子供を頂きたいのですよ。養小鬼の補充に協力して頂きたいのですわ」
「わかった、わたしから兄さんに頼んでみる。でも確約は出来ないよ?
兄さんは身内に甘いから子供を使い捨てるなんて選択、普通は選べない」
「ええ、それは承知していますわ。だとしても、私から要求するより可能性はありますもの…
今は普通ではない状況ですので、妹である貴方の依頼であれば受けて頂けるかもしれませんから」
さらに追い打ちのようなユキの返答で私は再度絶句。でもここにいる中で人間としての意識がまだ残っている聖は看過できなかったようで。
「貴方は死なせるための子供を産ませると言うのですか!?生命というものがどれだけ―――」
「聖白蓮、貴方の意見は聞いていないわ」
「っ!夢子さん!?」
「白蓮。最古参にして最上位の黒魔導士として、一つアドバイスしておいてあげる。
魔法使いとして生きるのに、倫理観なんて不要だよ。捨虫・捨食の魔法を習得した時点で、
「それは…!」
「口を出すなら、その生命が終わるまで選ばせたい使い方を貫かなきゃダメ。それが己の死を拒んだ魔法使いの責任。
わたしが
ユキとは思えないぐらい冷淡な声色で聖を黙らせる。今までの受け答えからの落差もあって、聖は相当ショックを受けている様ね…正直に言って、私もこんなユキは初めて見る。今の魔界において最年長という事実を、今初めて実感したと言えるわ。
二の句が継げなくなった聖に替わるように、星が言葉を続ける。
「…やはり豹さんは、魔界で処刑されることを望んでいるのですね」
「私達は力尽くでもその望みを絶たなければならないのよ。そのために利用できるものは全て利用する―――それがどれだけ非道な手段であってもね」
「兄さんが魔界に帰って、わたしたちと一緒に過ごしてくれる。
それが叶えられるなら、見ず知らずどころかまだ生まれてない存在なんて切り捨てるのが当たり前よ」
「ウフフ…交渉成立ですわね。
それでは、私はどう動けばよろしいのかしら?」
…そして私が口を挟む前に話が付いてしまったわ。この邪仙、本当に協力者にして大丈夫なのかしら。
「いいえ、動くのは私よ。
アリス、私はこのまま仙界とやらに乗り込んでくるわ」
「は!?」
「脱出経路は確保できてるの?」
「先輩のおかげでね。豊聡耳神子…だったかしら?そいつが魔界から完全に敵視されるだけの覚悟が出来ているかを確認して来る。こちら側に引き込めるなら仙界勢力と待ち伏せして摩多羅隠岐奈を叩けばいいし、全面戦争を躊躇わないのであれば八雲紫に情報を渡せばいい。
―――協力してもらえるのよね、霍青娥?」
「流石は魔界の重鎮ですわね。その覚悟の決まり方、好ましいですわ。
私が仙界までご案内します。こちらへ」
さ、流石は夢子と言うべきかしら…脱出手段があるというだけで単身仙界に乗り込むことを即決できるなんて。私だったら思い付いても迷うでしょう。このあたりの判断力や覚悟の決まり方はとても真似できないわ…これだけの精神の強さを得るのに、私はどれだけの年月がかかるのかしらね…
「それじゃアリス、しばらくはユキと静観に徹しておいて。先輩が反応を残したらその位置だけは確実に押さえてもらえればいいわ。
上海達には悪いけれど、これだけ大規模な衝突に二人だけで介入するのはハイリスク過ぎる」
「わかったわ、任せる。ただ、一応持って行って」
「通信用の
ユキ、しばらくアリスを頼むわよ」
「任せて!夢子も無茶はしないでよ!」
そして夢子は霍青娥と共に仙界と繋がったらしきゲートに飛び込んでいったわ。
…こうなった以上、戦力的にも無理は出来ないか。なら…
「ユキ、まだここで聞きたいことは残ってる?」
「私は大丈夫だけど、白蓮と星はまだ何かあるかな?」
「…そう、ですね。話の途中でしたので、もう少しだけお付き合いいただけませんか?」
「いいでしょう。後は何を聞きたいのかしら?」
情報交換だけして帰りましょう。上海が行動不能に陥りそうだったり、永遠亭に連れ去られそうな反応を拾わない限りは…大人しく家で夢子を待つべきでしょうから。