寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により203話の「打倒」を「妥当」に修正しています。久しぶりに甘過ぎる推敲案件ですねこれ…
誤字報告いつも助かっております。ありがとうございます。


第204話 重大な見落とし

(うーん…交戦は避けるように言われてましたけど。これはちょっと見逃す方がまずそうですよね)

 

お嬢様の指示でプリズムリバー三姉妹の末っ子に状況の説明を命じられたんですが、教えられた場所から肝心の末っ子さんが移動しちゃってるんですよね。なのでそれを追おうとしたんですけど…

 

(距離を取って動いていた最後尾の反応が、当初の目標地点でいったん合流した後で引き返してるんですよね。つまり、この反応は情報伝達要員…戦力的に劣るかもしれない。

それなら…私でも上手く利用できるかもしれないですよね!)

 

そう判断した私は進行方向を変え、目標地点から単独で引き返す反応へ向かうことにしました。私も魔界で生まれた悪魔の端くれ。魔界の広さに対して幻想郷はとても狭いので、私の探査魔法でもかなりの広範囲を探知できる―――咲夜さんが上手く対応してくれたようで、プリズムリバー邸近くで交戦していた6名が撃退に成功し分散して援護に向かっているのを把握できています。

 

つまり、当初三姉妹の末っ子が交戦していたポイントにはもう援護が向かっているってことです。それなら私は主戦場から離れるように動いている反応を優先するべきでしょう。私以外の皆様は気付いていない可能性もありますしね。

 

「そういうわけで、ちょっとお話を聞かせてもらいますよ!」

「って、悪魔!?魔界からもう援護が来てるってこと!?」

 

ちょうど私が進行方向を塞ぐように移動してきたので、あちらも接触は不可避と見てくれたみたいですね。進路を変えることもなく真っ直ぐ向かって来たのは、赤髪をリボンでポニーテールに結んだ妖怪の少女でした。予想通り、私一人でも問題なく相手取れるレベルです。

 

「貴方はどちら様で、どこに向かっているのですか?

答えてくれないと実力行使です!」

「う…正直に話せば見逃してくれます?」

「はい、私もあまり戦闘はしたくないので」

「はぁ…あたし足を引っ張っちゃってるなー。

私は呪珠っていうしがない野良妖怪です。魅魔様に頼まれて、明羅さんと一緒に情報収集に向かってたんですよ」

 

…大当たりですね。つまり当初の交戦地点に残る3つの反応のうち、一つは明羅…お兄さんを匿っていたのに、あの強盗魔法使い側に回っちゃったって人です。

ふふふ、これは見逃すのは勿体ない相手ですよね!

 

「ごめんなさーい。その話を聞いたら、見逃すわけにはいかなくなりました♪」

「え?…ええっ!?」

 

不意打ち拘束魔法で捕縛完了です。人質としてその明羅さん相手に使わせてもらいましょう!

 

「ちょ、ちょっとー!?話が違うじゃないですか!?」

「私が悪魔だって見破ったのに、あっさり信じる方が悪いですよ?

悪魔との口約束が守られるなんて思ってたんですか?」

「ぐぐっ…!契約じゃないと信じちゃいけなかったか…!」

「でも心配はいらないみたいですよ?その明羅さん、この状況に気付いて向かって来てくれてます」

「………もしかして、あたしとんでもない相手を引き寄せちゃったの?」

 

あらら…私みたいな下級悪魔を大物と見誤っちゃいますか。本当にこの妖怪戦闘向きじゃなかったみたいですね。逆に考えると、このレベルでも使わなきゃならないほど手が足りていないってことです。

これなら上手く戦闘無しで切り抜けられそうです!

 

…と、いうわけで。明羅さんって人が来るまで少し待ちまして。

 

「お待ちしてました。明羅さんですね?」

「…ああ、いかにも私が明羅だ。呪珠を放してもらおうか」

「条件があります。貴方の妹弟子である霧雨魔理沙が図書館の本を窃盗してるんです。

貴方達からすぐ返しに来るよう言ってください」

「…魔理沙ぁぁぁ!!あたしは完全にとばっちりじゃないのー!!」

「あのばかもんが…!」

 

あれー?あの強盗魔法使いの姉弟子にしてはまともみたいですね。頭抱えちゃってます。

でもこれなら、穏便に済ませることもできそうですか。

 

「とりあえず、それだけ守ってもらえるならこの子…えーっとジュジュ?は返しますよ。

それ以上は情報交換という形にしてもらいたいですけど」

「はぁ…いいだろう。魔理沙が迷惑をかけたらしいしな…

合流したらしっかり魔理沙に伝えておこう」

「それじゃ、お返ししますねー」

 

拘束魔法を解いて呪珠を手放しました。これであっちが口約束を破る可能性もありますが…

魔法使いではなく武人として生きているこの男装少女ならそういった小細工はしてこないと踏みました。今日の私のカンは冴えてるらしく、解放したジュジュも戦闘態勢には入らず話をする方向みたいね。

 

「それでは情報交換と行こうか…まず、あんたはどんな立ち位置なんだ?」

「私は紅魔館に仕えている小悪魔です。お嬢様の命で、お兄さんを援護するべく動いています」

「っ!?まさか、そのお兄さんってのは…!」

「はい、昨日まで明羅さんが匿っていたお兄さんですよ」

「………そうか」

 

これは…明羅さんはお兄さんのことを割り切れていないみたいですね。情報交換にあっさり乗って来たのはこれが理由でしょうね。それなら…

 

「プリズムリバー邸の襲撃に博麗の巫女と強盗魔法使いは関わってなかったはずですよね?なんで貴方たちが動いてるの?」

「…日が完全に落ちてしばらくした頃にな、ふざけた天人が博麗神社のゲートを開こうとしていた。それは天界からも阻止すべきと判断されたようで、竜宮の使いまで地上に降りて来た。

そこを魅魔様と巫女に竜宮の使いで天人を捕らえてな。手が足りない私たちの駒として使うことになった。

そして、その竜宮の使いが天界で虚報を広めたという情報が入ってな。早速駒として使ったわけだ。私と呪珠はその監視役だったが…あれに助力する気にはなれん」

「だから明羅さんは聞き出した情報をあたしに伝えて、先に魅魔様へ報告することにしたのよ。

その途中であたしはあんたに絡まれてこのザマなんだけどね」

 

…これはまた厄介なのが首を突っ込んできてますね。私単独で交戦ポイントに向かわなかったのは正解だったみたいです。

 

「あんたの主は何が目的で豹を助けようとしてるんだ?」

「お嬢様はお兄さんをとても気に入っていますので、魔界に返したくないからですよ。

もっとも、お嬢様は有名なのでお兄さんは潜伏先として考えていなかったみたいですけどね」

「うっわぁ…紅魔館も敵ってことかあ」

 

この辺りは隠すことじゃないですから話しちゃって大丈夫でしょう。少なくともさっきプリズムリバー邸を襲撃してきた勢力にはもうバレてますし。

 

「でもこれ以上はあまり話したくないですね。切り上げさせてもらっちゃっていいですかー?」

「そうだな、紅魔館も敵って大き過ぎる情報を持ち帰るだけでも十分だ。

失礼させてもらおう」

「はあ…明羅さん、本当すみませんでした」

「気にするな、裏切り者の私と里香より呪珠はよくやっている」

「優しいんですねー明羅さん。

それじゃ、私は行きますので」

 

情報交換を打ち切って、本来の目的だった末っ子との合流に向かいます。これだけ派手に動いてるのですから、私たちにもあまり余裕はなさそうですしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、みんな頑張ってね~!」

「ういっす!メルランちゃんありがとう!!」

「ああ、メルランちゃんの優しさでこの雪の寒さも耐えられるぞ!」

「メルランちゃんの手料理を味わえるなんて…今日が夜勤だったのは幸運過ぎたぜ…!」

 

自警団の詰め所にタダで居座っちゃうのも悪いから、備品として詰め所に置いてあったお汁粉を振舞ってあげたらものすごい勢いで喜ばれたわ~。あまり料理は得意じゃないんだけど、私の手作りってだけでハッピーになってもらえるなら、備品を勝手に使っちゃってもいいわよね~。

 

「それじゃ私は二階の見張り部屋でお迎えを待つわね~」

「はい、誰かいらっしゃいましたら呼びますよ」

「あ、大丈夫よ。お迎えが人里に近付いて来たらすぐ入口に戻るから~」

「そっすか、何かありましたら呼んでください。俺はここに居残りなんで。

お汁粉、ごちそうさんでした!」

 

この雪の中でも自警団は人里入り口の門番や内部の見回りをしてるのよね。私たちがライブを続けていられるのも、こういった地道なお仕事によるもの。実際に戦闘になったら私たちどころか野良妖怪相手でも危険があるのに、人里の日常を守るために働いてくれてる人たち。

 

私はこんな人里の日々が大好きだから、このまま変わらずに過ごしたい。だから、豹が魔界に帰ってしまうのは歓迎できないのよね…ユキと夢子には悪いのだけど。

 

(でも人里はあまり頼れないのよね~…慧音は豹のことを信じてくれるでしょうけど、稗田に思いっきりケンカを売っちゃってるなんて思いもしなかったし。小兎姫さんは今の状況を聞いたら豹を魔界に帰らせようとしちゃうでしょうし)

 

レティさんのおかげで無事に自警団の詰め所までは逃げ切れて、そのレティさんも足止めを終えたら追われることなく逃げてくれたみたい。私に向かって来た月の玉兎二匹も人里で目立つのは避けたいみたいで、ついさっき迷いの竹林の方に向かって動き出したわ~。今日は小兎姫さんが自主的に夜の見回りに加わってくれてるって言ってたから、あの二匹を捕まえてもらえると助かるんだけど…そんなラッキーなことにはならないわよね~。

 

(とりあえずは、姉さんとリリカの無事を祈るしかないかしら~。

これ以上私一人で動くのはハイリスク過ぎるでしょうし)

 

―――こんなことを考えながら詰め所の二階に登る私は、事態を楽観しすぎてたわ。

 

「格下にあんだけ媚びを売るのに、何の意味があるんだか。

 アタシには全く理解できない世界だな」

「ッ!!?」

 

二階に登って見張り部屋の戸を開くと、知らない声が語りかけて来たわ…!いつの間に!?

 

「あんたに恨みは無いんだがな、ヒョウを助けてるってだけでアタシの敵だ」

 

人里の重要性は、幻想郷で過ごす人外ならみんな理解してる。理解してるからこそ、力の弱い人間が滅ぼされることなく人里で生活を続けているわ。人里が滅びてしまえば、存在を維持できなくなる妖怪がたくさんいるのだから。

だから、安全だと思い込んじゃってた。永遠亭も守矢神社も天狗たちも、人里を巻き込むことで管理者たちや他の勢力に敵視されてまで…私一人を狙うことは無いって。

 

「釣り上げるためのエサになってもらうぜ、騒霊」

 

だけど、人里を巻き込んでも何も問題ない相手が、もう来ちゃってることを見落としてた。

それこそ私は【人里と関係が拗れても問題ない】協力者として、衣玖さんを思い浮かべてたのにも関わらず。

一番気を付けなきゃいけなかった奴は、人里の重要性なんて関係ない立場だったってことを。目の前に現れたことでようやく思い出した…!

 

5つの目玉の視線の先に映る金髪の少女―――コイツが、幽玄魔眼!!

 

「…っ!!」

「フン、身の程知らずでは無いってことか」

 

霊体化して壁をすり抜けて外に逃げる!こんな夜中でも戦闘になったら起きてきちゃう人もいるだろうし、流れ弾で家を壊しちゃう危険だってある。だから外に出たらそのまま高度を上げたんだけど…!

 

「ほーんと甘っちょろいんだねー。そんなに見ず知らずの人間が大事?」

「えっ…!?」

 

飛び上がった先に待ってたのは、左頬に星を持つ金髪黒翼の悪魔。

聞いている名前は…エリス!!

 

「ま、ヒョウの仲間ってだけで人質としての価値はあるからねー。

 …逃がさないよ?」

「こうでもしねえと出てきそうにねえからな、あの女たらしは」

 

魔界からの刺客2人に囲まれちゃった…!ど、どうしよう!?

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