寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第220話 永遠亭急襲 ―数の暴力―

「ちょっと!?何が起きてるのよ!応答しなさい鈴瑚、清蘭!!」

『やられた…!メディスンの毒で体が痺れて動けない!

早く戻って来なさい鈴仙!鈴瑚は完全に気絶させられたみたいだし!!』

「はぁっ!?二人ともやられたってこと!?」

『私が確認できただけでも七人は居るわ襲撃者!!その内訳が魔界人兄妹に鈴仙が言ってた蓬莱人で三人なのよ!!』

「っ!!テレパシー出来るだけましだってことね…わかったわ、全速力で帰る!」

 

敵の行動が予想以上に速過ぎるわ!まさかもう永遠亭に辿り着いてるなんて…!

 

「おいおい!もう被害が出てるのかよ!?」

「鈴瑚と清蘭はもうやられたそうよ!それに、豹だけじゃなく妹のユキまで襲撃に加わってるって!」

「は?あいつ私に手を出すなとか言っておいて戦闘に参加してるっての?ふざけた真似してくれるじゃない」

「まさか博麗の巫女どころか八雲紫も出席していた会談での約定を反故にするとは…魔界人は随分と月を嫌悪しているようですなあ」

「私たちはもう月とは無関係だってのに…!結局早苗が先制攻撃したのが一番悪いんじゃないの!?」

「ええー…流石にそれは責任転嫁ですよ。月と魔界のいざこざに守矢神社は無関係なんですから」

 

守矢神社の外まで見送りに出て来た早苗につい悪態を付いちゃったけど、これぐらいは言わせてもらいたいわよ。せめて最初に対話から入ってれば…!

 

「どうでもいいわよ。あの秘神が言った通り魔界から喧嘩売って来たんでしょ?私たちで退治すれば済む話だわ」

「ああ、これ以上増援が来る前に終わらせるべきだぜ」

「そうですな。急ぐのでしょう鈴仙?」

「そうね、全速力で永遠亭に急ぐわ!!」

 

思った以上に敵戦力が充実してるみたいだけど、永琳様と姫様ならそう簡単に後れは取らないはず。このメンバーで背後を突ければ問題ないわ…急がないと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラッ!!」

「キレてるようで冷静じゃない!まんまと乗せられたわ!」

 

流石にバレてるか。まあ、それこそ輝夜とはとっくに数えるのを止めるぐらい殺し合って来てるんだ。私の攻撃に殺意が無いことなんてすぐ看破されるよね。

 

「…いえ、違うわね。殺した方が厄介なことになると踏んでるのかしら!?」

「ハッ!そこまで読めてるなら、私の狙いもわかってんだろ!?」

 

それどころか豹の危惧まで正確に読み取って来てる。やっぱこういった面では永琳どころか輝夜にも私は敵わないか。でも、今はそれを読まれたところで問題は無い!!

 

「地上の兎!敵戦力は全員引き摺り出せたかな!?」

「く、あの魔法使い…!」

 

誤射上等とはよく言ったもので、豹の妹だっていうユキの援護が凄まじいね。実際永琳や玉兎だけじゃなく豹にも当たりまくってるんだが、その被弾に対し無反応で永琳相手の肉弾戦を続けてる…威力がだいぶ抑えられてるのかとも思ったけど、清蘭は喰らう度に足が止まってるから決して無視できる威力じゃないってこと。それはつまり、妹として()()()()()()()()()()()()()()に調整した乱射なんだろう。

豹の作戦通り、ユキ一人で3人を足止めしつつ豹を援護してるわけだ。豹がリスクを負ってまで呼び出すだけはある!

 

「これ以上妹紅だけに付き合ってられないわ!少し本気を出してあげようじゃない!!」

「っ!?」

 

そして輝夜もユキの強さを理解したのか、私との殺し合いでは滅多に使わない奥の手を使って来たのだろう。

―――私がそれに気付く前に、対処してくれてたんだけどね。

 

 

 

「…今でも原理は理解できませんが、後手に回っても回避だけなら可能のようですね」

「は!?吸血鬼のメイド!?」

「ありがとねメイドちゃん!時間系能力の対処は任せる、ある程度なら私を盾にして平気よ!」

「そうさせていただきますわ。本命も向かって来ていますしね」

 

冗談じゃないわよ…!永遠亭に乗り込んできた魔界人兄妹は、永琳が綿月姉妹と稀神サグメを引き連れて取り逃がしたなんて言ってたのも納得出来る厄介さだった。だから妹紅を早急に潰して援護射撃に徹する妹の方を黙らせるために、私の須臾を操る程度の能力で妹紅が避けられないように弾幕を展開したのだけれど。

紅魔館のメイドが集弾地点から妹紅を移動させたせいで不発に終わったわ…!

 

「紅魔館も関わってるっての!?」

「ええ、紅魔館は魔界と異界間取引を行っておりますので。

お嬢様の命令により、豹様の助けに参りましたわ」

「そういうわけだ。メルランちゃんを返してもらうよ!!」

 

敵戦力を甘く見積もり過ぎてたわ!鈴仙と守矢の風祝が撃退されたとは清蘭と鈴瑚から聞いてるけど、敵戦力の情報まで聞く前にあの剣幕で妹紅が殴り込んできたのよね。だから今になって理解する―――このメイドと妹紅が共闘してたのなら、鈴仙達が撃退されるのも仕方ないわね…!守矢神社と協調したのがそもそも間違いだったかしら!?

 

「爪符《デスパレートクロー》!!」

 

そして妹紅が再度私に突っ込んでくる!これはちょっと本気で不味いかもしれない…!あのメイド自身が言った通り、私も後手に回ろうが()()()()()()()()。時間に干渉することで被弾を避けるのは問題なく出来るのだから。

だけど、お互いに有効打を放てない…!永琳に策を打ってもらえばなんとかなるでしょうけど、今の状況で永琳にそんな余裕は無いわ。そして『問答無用で襲撃してきた』以上こちらと取引する気は皆無ってこと…騒霊を解放しても大人しく引き下がらない可能性すらある!

 

そして口に出ていた本命も姿を現す。騒霊楽団の残り二人と、それを護衛するような白狼天狗が永遠亭内部に向けて高速で直進してきてるわ。結局戦闘に加わったてゐの相手も加えると、ほぼ倍の数で襲撃してきてるのね…!

これはどうにかして永琳を自由にして策を練り直さないとどうにもならない、それなら!!

 

「新難題《エイジャの赤石》!!」

「おっと!」「あら…」

 

妹紅とメイドを狙うように見せかけて、本命は(ユキ)!てゐも出て来たことで私への集中が削がれ、メイド自身にも牽制を向けた今なら、もう一度須臾を操る程度の能力での不意打ちが狙える!

…その結果が、永琳の大失態も仕方なかったと思えるような状況になって。

 

「―――ッ!?危なっ!

気に食わないけどやっぱり月の民は強いね。時間系の禁呪なんて数百年ぶりに使ったよっ!」

「これを避ける!?これだけの魔法使いがあの騒霊の救出に出向いて来るなんて!」

 

須臾を操ってユキの至近に急展開させた本命の大弾を、紙一重で避けられた!?

その避ける一瞬だけ、ユキは速く大弾は遅くなっていたわ…!禁呪を扱えるレベルの最上位魔導士、兄と共に月から生きて帰ったのも偶然じゃなかったってこと。

 

「私の援護なんて要らないようですね。流石は豹様の妹様です」

「魔力消費が重過ぎるから乱発は出来ないんだけどね。わたしより妹紅さんを守ってあげて!」

「輝夜も随分と余裕が無くなってるみたいだな。悪いが豹の邪魔はさせないよ?」

(どうしろってのよ!?これだけの実力者に数で押されちゃ支え切れないわ!!)

 

そして、清蘭と鈴瑚が新たな増援…メディスンと人形遣いの人形―――おそらく話に出ていた上海により戦闘不能に追い込まれていたわ。まだ増えるとか、加減しなさいよ!!

 

 

 

 

 

(姫様に幸運を回す余裕ないんだけど!?なんでこんな本気で攻撃されてるのよ!)

 

お師匠様の命令で最後方の楽師…どうも肉弾戦で暴れてる豹を治癒魔法で援護してるっぽい人間の少女を狙おうとしたんだけど。私じゃ近付けるような敵戦力じゃないわこりゃ!その楽師の護衛に回ってる死神の弾幕を避けた先に、上空から高速弾を乱射して援護してるユキが私も攻撃対象に入れて来た。回避に集中しながら隙を見て楽師を狙ってるんだけど、死神が大鎌で弾き飛ばすから楽師まで届かない。そして弾き飛ばされないような威力のを撃てるような余裕が無いのよ!!

 

そして、状況は悪化の一途。プリズムリバー楽団の残り二人が真っ直ぐ永遠亭に入り込もうとしてて、それを援護するような位置に白狼天狗が控えてる。私を外に出したからもう中に入っても危険は少ないって見られたってこと、オマケに…!

 

「《模倣・黄の魔法》!!」

「う゛っ!?」

「上海の邪魔はさせないわ。しばらくそこで大人しくしてて」

「やられてる!?どうにもなんないってこれ!!」

 

清蘭と鈴瑚が一瞬の隙を突かれてメディスンと人形にやられたわ!これ鈴仙が戻って来てようが倍以上の数で攻め込まれてるってことじゃん!?な~んで魔界人に協力する幻想郷の住人がこんなにいるのさ!?

 

「次はてゐ!上海、援護射撃はユキさんに任せて、二人で前に出るよ!!」

「はいっ!任せてくださいメディ!!」

「ちょ!?私みたいなか弱い兎を袋叩きにする気!?」

「立ち塞がる者に容赦は不要、聞くまでもないことでは?」

 

死神に言われると洒落にならないのさそれ!!天国にも地獄にも行けないなんてごめんだわ、いやまだ死にたくないけどね!!

姫様には悪いけど、これ以上幸運付与の援護は回せないわ!私に作用させないと避けることすら出来なくなるって!!

 

「さ、てゐも毒で動けなくするわよ」

「いや~メディスン?一緒に豹を捕まえるの手伝ってくれない?」

「お断りよ」

 

ダメ元でメディスンを説得してみるけど、泥船に乗るような真似はしてくれないよねえそりゃ!雪のおかげで散布される毒が視認しやすいからなんとか援護射撃ごと避けられてるけど、このままじゃ逃げ場が無くな「ここで!!」「げげっ!?」

 

その毒が撒き散らされた位置から人形が騎兵槍を構えて突進してきた!!ギリッギリで避けたけど…

 

「《模倣・エスケープベロシティ》!!」

「おわわっ!?」

 

肉薄してきたから至近弾で撃ち落とそう…としたんだけどイヤな予感がして一歩下がったのが大正解!!白黒の魔法使いが好きそうな星を撒き散らす魔法を放ちながら、上空に離脱する人形。模倣とか言ってるからホントにあいつから真似た魔法なのかもしれないけど…なんで人形がそんなこと出来るのよ!?

人形だからメディスンの毒を気にせず動ける上、そこらの妖精よりもちっこいから攻撃を当てにくい。オマケに劣化コピーだとしても鈴瑚を一発で行動不能に追い込めるレベルの魔法を使いこなすとか、どんな人形なのよこの上海とかいうのは!!

 

(こりゃ~お師匠様と姫様には悪いけど、死なない二人に任せて鈴仙を連れ帰ってくるのを優先するべきだわ。この人数差と戦力差じゃ私は何の役にも立たないって!)

 

ここまで追い詰められたことで私の中で結論が出る。これ以上私が戦闘に付き合っても何も益が無い、それなら強行突破して援軍を連れてくる方がずっと有益かつ私が安全!!

それに、今が一瞬の隙!!姫様がユキを狙ったおかげで、私に向けた意識と援護射撃が薄くなった、ここで!!

 

「脱兎《フラスターエスケープ》!!」

「「「っ!?」」」

 

ここまで防戦一方だった私が一気に攻勢に出る。それだけであちらさんはかな~り警戒して慎重に対応する…これだけの人数差があるなら、無理攻めする必要は無いんだからね。

その思考的な隙を狙って、全速力で強行突破!!楽師に向ける弾幕を厚くすることで、差し違え狙いに見えるようにすれば!

 

「無駄です!麟さんの妨害はさせませんよ!」

「メディ、追尾弾で援護します!」

「わかった、前は任せて!」

 

よ~し、死神は護衛を優先して上海は援護射撃に回った!これなら上海は追撃を避けるハズ、ちっこい人形である以上高速移動にもそれなりの魔力を使うだろうしね。つまりメディスンの追撃にだけ注意すれば、迷いの竹林で振り切れる!!私ほど迷いの竹林に通じてるのはいないからね!

 

―――ここで離脱が見えたことで、私自身も油断しちゃったのが最大の失敗だったわ。

 

「…ッ!?あの兎、逃げる気ですか!?」

 

死神が気付いたけど、もう遅いっ!豹を視界に収めるために上空から援護してる最後方の楽師、その下を一気に抜けて永遠亭から離脱…

―――しようとして、前方のそれに気付いたわ。

 

\………/

「は?また人形!?でも一体だけじゃねえ!」

 

流石に上海ってのみたいな人形が何体も居るはずがない、だから迎撃されようがそのまま強行突破できる!そう踏んで速度を緩めず脇を抜けようとしたのが、決定的な判断ミス。

 

\…!!/

「ぶっ!?」

 

最高速のままいきなり目の前に現れた何かに激突したわ…!な、なにが起こったのさ!?

 

\………/

「――げっ!!こいつ、人形遣いの巨大化人形っ!?」

\……!!/

「そういうことよ。そのまま貴方も寝てなさい…豹直伝の睡眠魔法は深く眠れるから」

「な、なんでこんな羽目にぃ!?」

 

激突と同時に私をガッチリ捕まえた巨大化人形が、ここまで来てさらに増えた増援…妖怪の山の厄神に向けて私を差し出しやがって。

至近距離から放たれた睡眠魔法で、私の意識は落とされたわ。

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