「まったく…魔界と幻想郷の全面戦争を起こす気なのかしら?」
「先に約束を破ったのは魔界側じゃないの。豹ってのだけじゃなく、あの時いたユキが暴れてるのはどういうことかしら、アリス?」
「永遠亭がメルランを拉致したからユキも助けに向かったのよ?私に文句を言う前に真っ先に手を出した永遠亭と天狗共の責任を問うべきだわ。
責任を問うどころか合流してる時点で、その気が無いのは理解してるけど」
「霊夢も天狗も永遠亭も関係ないぜ。紫も魔界も私を交渉の道具扱いしてるのに違いは無い、私はそれが気に食わないから豹ってのを捕まえて魔界に突き出してやるんだよ!これだけ舐められて黙ってられるか!!」
「…まあ、魔理沙は仕方ないわね。
でも私はそれじゃ困るのよ。永遠亭に向かうというのなら、私を倒してからにしなさい!」
「悪いがアリスに付き合ってるヒマなんて無いんだぜ―――って!?」
とにかく魔理沙と霊夢だけはここで足止めしなきゃならないわ。だから永遠亭への直線距離と移動速度を逆算して、人形を伏兵として仕込んでおいた。この位置だと流れ弾が人里に着弾する危険もあるのだけれど、妖夢からすでに慧音が人里を隠したということは聞いている。だから確実に霊夢と魔理沙を足止めできる位置で、隠形魔法を切り人形を可視化させる!
「《戦符『リトルレギオン』》!!」
「ちっ、これだからアリスは!」
「ああくそっ!邪魔するなよアリス!!」
霊夢と魔理沙の進路妨害になるように、私も含めて弾幕を展開!
その弾幕を確認した上で、同行者が聞いてくる。
「ほう?私と鈴仙は通って良いと?」
「構わないわよ。魔界にとって問題になるのは霊夢と魔理沙、それに魅魔と幽香だけだから。
鈴仙と文なら、穏健派まで開戦支持に回るまでの影響は無い。私は魔界と幻想郷の全面戦争を止めに来ただけ、豹を援護しに来たわけじゃないわ」
「そう。
霊夢、魔理沙!私と文は永遠亭に先行するわ!!さっさと片付けて追って来なさい!!」
「「はあっ!?」」
「おやおや、随分と勝手なことで。
ですが、アリスより豹の方が記事のネタになりますので!乗らせていただきましょう!」
ユキ達には悪いけれど、私と妖夢だけでこの4人を抑えるのは厳しい…妖夢は元々が剣士、多数を相手取ること自体に向いていない。私も上海とゴリアテというトップクラスの戦力になる人形を欠いている状態…特に幻想郷最速を誇る文を足止めするのはかなり難しかったわ。
だからこそ、任せてしまう。永遠亭襲撃に向かったメンバーの方が、数も戦力も揃っているのだから。
「そうね、任せるわ魔理沙」
「ってオイ!?霊夢まで私を置いてく気か!?」
「させないよ!霊夢の相手は私!!」
「…まあ、アリス一人だけとは思ってなかったけど。
思った以上に面倒なのが出て来たわね…!」
私が魔理沙を優先して乱射していることは当然霊夢には気付かれて、霊夢も先行しようとする。そのタイミングで妖夢にもかけていた隠形魔法を切れば、勘のいい霊夢はそれほど驚くこともなく妖夢を見据える。
「は?妖夢まで豹とやらの味方だってのか!?」
「少なくとも、今の状況ならね!魔界と戦争になる危険があるなら、霊夢と魔理沙を止めるべきだもん!」
「くそったれ…!どいつもこいつも私の道具扱いには何も言わねえのかよ!!」
「魔界で好き勝手暴れた自業自得よそれは。私のようにあの時のことを割り切れてる魔界人の方がずっと少数派、あれだけの被害を出しておいて恨まれてないとでも思ってたの?」
「あーそうかよ!わざわざ教えてくれてありがとな!
それじゃまた魔界に乗り込んでも平気になるように、豹をとっ捕まえに行かせてもらうぜ!どけアリス!!」
「何度も言わせないで頂戴。永遠亭に向かうのなら、私を倒して行くことね!!」
「輝夜っ!?」
妹紅の作戦がドンピシャだな!妹紅と咲夜二人がかりなら十分月の姫を抑えられる、それなら決め手である椛は後発組に混ぜて伏せ札にする―――そして、どういうわけか月の姫本人が椛を狙うというツキもあり、最大警戒対象の無力化に成功!!
そして、月の姫に対し過保護な八意永琳も一瞬の隙を見せる。それは、俺とユキに対して甘過ぎだ!!
「「『スノウピラミッド』」」
「――っ!?しまっ」
何の合図もなくユキは俺に合わせてくれる―――氷雪世界をルーツに持つ俺とユキは青系統…水属性や氷結属性の魔法に適性を持つ。それは、この降りしきる雪をローコストかつ最大限に活用できるということなのだ!!
「ええっ、ユキさん!?豹さんごとですか!?」
「落ち着け麟。俺はもう脱出済みだ」
「よ、よかったです。ですがこれで、メルランさんを探し出せば作戦成功ですね!」
「ビックリさせてごめんね。でもこれでだいぶ時間を稼げるから!」
空間魔法でユキの隣に離脱したのを把握できなかった麟と椛が驚いているが、俺とユキですぐ声を掛けて落ち着かせる。
ユキが周囲の雪を操り、俺を中心に一瞬で結集させる。そして俺が空間魔法による離脱と同時に結界を張ることで、雪で物理的に結界で魔力的に閉じ込める…八意永琳を屋外に引き摺り出したのは確実に長時間拘束できる
「豹!メルランは見つけたわ。でも、私たちじゃ起こせない…!」
「も、もう遅かったりする!?」
「ッ!?見せてくれ!!麟も頼む!」
「はいっ!」
そして俺や咲夜の案内無しでルナサとリリカはメルランを救出できたようだ。二人でメルランを抱えて永遠亭から無事に出てきてくれたが…投薬済みだと俺の手に負えない可能性がある!治癒魔法を行使する必要も考えて麟も呼ぶが、辛うじて間に合っていたようで。
「ど、どう?」
「大丈夫だ、なんとか間に合ったらしい。投薬による昏睡じゃなく、瞳術として行使された睡眠だ。これなら―――」
「…ぅ、うぅん…?
…あれ?豹…?」
「メル姉!よかったぁ…!
間に合わなかったかと思ったじゃん!!」
おそらくエリスか幽玄魔眼の瞳術だろう。だがそれなら俺の魔眼で打ち消せる…ルナサとリリカからメルランを受け取り、閉じられた瞳を俺が開き魔眼と合わせることで瞳術を破る。
「―――ふえぇっ!?豹が助けに来てくれたの!?」
「落ち着いてメルラン。本当に無事でよかったけれど、ここからが大変よ。動ける?」
「へ?っていうかここどこ!?って、ち、近いって豹…!」
「…兄さん、とりあえずメルランを一度放してあげた方が落ち着いてくれるんじゃないかな」
「そうか…?もう体に不自由は無いかメルラン?」
「…だ、だいじょうぶよ~。
助けてくれてありがとうね豹」
「俺だけじゃ無理だったさ…皆のおかげだ。
だが、全員無事に逃げ切らないと意味が無い。手短に説明させてくれ」
「その間に豹さんの治療をさせてください!
皆さんも、どこか怪我していましたら教えてください!私が治しますので!」
傍に降りて来てくれた麟がさっそく右足甲に刺さった矢を抜いて麒麟の力を行使し始めてくれた。メルランも含めて、これだけ被害が少なく済んだのは奇跡的だな…!数頼みの速攻ゴリ押しは間違ってなかったようだ。
もっとも、ここからが厳しい撤退戦になっちまうんだろうが…!
「これは…どういう状況かな?地底の妖怪の方が少ないとは」
「状況を知りたいのはこちらの方なのだけれど?何故仙界から後戸の国に飛ばされるのかしら」
閻魔様と仙人のお姉ちゃんが仙界ってところまでの入口を作ってくれて、そこにみんなで飛び込んだんだけど。飛び降りてすぐにまた別の入口に吸い込まれちゃった。何が起きてるのかわかんなかったんだけど、吸い込まれた先には見覚えのある奴がいたわ!
「これはこれは…
豊聡耳様、私は地底のお客様のお相手をしますので。他の方々との交渉はお任せしますわ」
「ほおーう?さっきは一目散に逃げたってのに、どういう心境の変化だい?」
「貴方とあの方の邪魔をしたこと自体が間違いだったということが情報を整理することで理解できたのですよ。
ですので、貴方がお望みであろう【喧嘩】を素直にお受けいたしますわ。あの方ほど楽しませることは不可能でしょうが、こうやって真正面から受けて立てば私が本心から謝罪しているという証明になりますもの」
「…はっ!狡賢い邪仙って聞いてたけど、案外話が分かるじゃないか!
いいだろう!さっそく喧嘩しようじゃないか!!そっちは好きに話しときな!」
「ではこちらへ。申し訳ありませんが本気でなければ私が無事で済みませんので、あの方のようなタイマンとはいきませんわ。そこはご了承くださいな」
「安心しな!私も手加減する気ないからねえ!!
死にたくなきゃ策も含めて全力で抗って見せな!!私が満足するまで生き延びられたらその謝罪、受け入れてやろうじゃないか!!」
…そう言って勇儀さんとさっきの青い仙人は私たちより低いところに降りて行っちゃった。私どころか閻魔様も、あっちの偉そーな親玉さえ何も言えないなんて…やっぱり勇儀さんはすごいんだねー。
「…まあ、今の勇儀を止めることは私達でも不可能。あれは認めてもらいますよ?」
「こちらとしても青娥一人であの鬼が納得してくれるのであればそれが理想的だ、止める必要などない。
…しかし、地獄の閻魔様とはな。仙人たる我々とは無縁だと思っていたのだが」
「つい最近復活した仙人だというのに、傲慢が過ぎます。ここ幻想郷で過ごす以上、誰もが私の裁きを受けることになる。それが遠い未来のことだとしても、です。
これは説教が必要なようですね」
「四季様?今はそれどころじゃないことを忘れないでくださいよ?」
「お説教はこの一件が解決した後の四季様の休日にお願いします。今は魔界の問題を解決することを急いでいただけないでしょうか?」
「…そうでしたね。
いずれ私直々に説教しに参ります。その日は時間を空けておくように」
「…気は進まぬが拒否権は無いか。致し方あるまい、その日はお付き合いしよう」
「おい布都、お前あの閻魔に余計なこと言うなよ?」
「う、うむ…太子様にお任せした方が良いということじゃな」
あはは!仙人でも閻魔様のお説教はイヤなんだねー♪地底どころか地上でもなっがーいことで有名だし。
…でもこうなると退屈そうだなー。
「ねえこころ、仙界からの脱出は出来るって言ってたけど、ここからも行ける?」
「悪いが無理だぞこいし。先ほど後戸の国と仙人が口に出したが、私は来たことが無い場所だからな。
大人しく話を聞くしかなさそうだ」
「むー…」
大人しくついてきたのは失敗だったかなー…?でもこのメンバーに加わらないとお姉ちゃんに邪魔されて地底から出られなくなりそうだったし…
そんなふうに思ってたら、察してくれたみたいで諏訪子さんが小声で話しかけてきてくれたわ。
「こいし、こころ。あんたたち二人だけなら私が外に出せるよ。
ちょっとこんなところまで飛ばされるのは私も計算外だからね。神奈子と早苗に今までの状況を説明してくれるなら、先に出してあげるけど…どうする?」
「!
諏訪子さん、お願いしていい!?こころもいいよね?」
「うむ、その二人に説明さえすれば好きに動いていいということだな?」
「出来れば早苗に力を貸してやってもらいたいんだけど、状況次第では好きに動いちゃっていいよ。
一番問題になるのは、ここに私達を集めたのが
「わかった!神奈子さんにも状況を聞いてからどう動くか決めるのは約束するね!」
「うん、いい返事だ。それじゃ頼んだよ、こいし、こころ!」
「はーい!」「まかせろ!」
そう返事を返すと、私とこころの足元が急に開いて。また私とこころは吸い込まれちゃった!
開いたと同時に閻魔様と仙人のお姉ちゃん、偉そーな方の仙人は気付いたみたいだけど。止める余裕は無かったみたいで。
私とこころは守矢神社の境内に放り出されたわ。
「うわー、あっという間。やっぱり諏訪子さんもすごい神様なんだねー」
「なるほどな。自分の神社に帰るのは簡単だということか」
「―――あ、やっぱりこいしさんですか!」
「あ、早苗!いろいろお話ししなきゃならないから、神奈子さんも呼んで!」
それにすぐ気付いたらしい早苗が神社の中から出てきてくれた!急いで説明して、豹を探しに行かないと!