寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により222話の変換ミス等を修正してます。今回は数が多かったですね…推敲が甘くなってました。いつも迅速なご指摘ありがとうございます。


第223話 離脱準備と魔神と邪神

「―――って状況だ。紅魔館まで逃げ切れれば一段落だが、空間魔法で長距離移動という手が使えない…誰か一人でも摩多羅隠岐奈に介入されて異空間に放り出されたら詰みだ。救出に出向いたところを待ち伏せされるのが目に見えてる」

 

麟の治療を受けながらメルランに状況を伝える。気絶した玉兎はともかく、メディスンが神経毒で無力化した方の玉兎はテレパシーで永遠亭を離れている鈴仙・優曇華院・イナバに情報伝達できる可能性があったため、月の姫同様永遠亭に放り込んでもらった。本来であればこういった力仕事は俺がやるべきなんだが、ゴリアテが因幡てゐ含む兎三名をまとめて抱えて連れて行ってくれたので説明を優先できている。

 

…というか、上海のフォローがあっただけでゴリアテも【ギリギリ永遠亭の扉をくぐれるサイズ】まで大きさを変えられるのには驚いた。アリスの人形がどれだけ優秀なのかまたも見せつけられた形だ。これは神綺様が過保護になるはずだよな…

 

「メルランは私たちと一緒にそのまま紅魔館へ向かうわよ。レミリアが私を見逃した条件だから」

「へ?みんなで紅魔館に向かうわけじゃないの?」

「永遠亭の連中がこれ以上関わらないようにしなきゃならねえ以上、分散する必要があるからな…それなら俺の隠れ家に戻った可能性も残しておけば敵戦力も分散させられる。なによりリリーが残った隠れ家にサリエル様と幻月が待機してくれてるんだ、分散させて各個撃破できれば一気に楽になる」

「それにわたしはアリスの援護に戻る必要もあるからね。今は上手く例の巫女と魔法使いを足止めしてくれてるけど、反応を隠した悪霊がアリスを狙うとまずいことになっちゃうし」

「…そういえば、先行して守矢神社からここに向かっていたのに今は隠れているのですね。忘れようもないあの強大な魔力は」

「ってちょっと待った。メイドちゃんは魅魔と面識があるの!?」

 

咲夜の反応に妹紅が驚いてるが…そういえば妹紅は吸血鬼異変で人里に回ってたから、魅魔の存在は知っていても接点が無かったな。

 

「ええ、人里で吸血鬼異変と呼ばれている異変の際に紅魔館へ突入してきた一人ですので」

「あ、そういえばそうだったね。でもそうなると、魅魔の動きが読めないのは予定外か…どうするんだい豹?」

「魅魔の目的は霧雨魔理沙の保護だろう、となれば奴が最優先で狙うのは俺だ。だが今奴が隠密に徹して動きが掴めないように、奴も俺が隠密に徹すれば俺の位置を把握できない。そして優先順位を考えれば…俺以外の皆なら奴が姿を現しても、無理に抗戦せず逃走に徹すれば追撃してこないかもしれん。摩多羅隠岐奈の援護がある今が、俺を押さえる最大のチャンスだろうからな。

なにより紅魔館にはレミリアとフランにパチュリー、俺の隠れ家にはサリエル様と幻月が待機してくれてるからな。魅魔を撃退するのであれば力を借りるべきだ…そこを考えても魅魔との交戦はなるべく避けて、紅魔館と隠れ家への到着を優先してくれ」

 

理想は魅魔が再度キャッチ出来次第幻月が抑えに向かうって状況なんだが…幻月の目的は俺とサリエル様の再会に居合わせること。そこを考えると単独行動してもらうのは望み薄だろう。それなら全速力で隠れ家まで向かってもらうのが一番安全になる。リリーが残っている隠れ家に待機してくれてるだけでも、俺の計算に入っていなかったありがた過ぎる動きなのだから、これ以上を求めるのは贅沢ってもんだ。

 

「…ですが豹さん、守矢神社からここに向かっている4名の中に文様が居ます。位置的に豹さんの隠れ家はともかく、紅魔館までの距離を考えると追い付かれてしまうのではないでしょうか?」

「うげ、アイツ私を諦めたんじゃなくて合流を優先しただけだっての!?しっつこいなあホント!」

「たしかにそうですね。私一人であれば問題なく紅魔館まで帰れますが、楽団の皆様を護衛しつつとなりますと…あの天狗を振り切るのは難しいですわ」

 

ここで椛が当面の問題を示してくれる。俺も気付いてはいたんだが、具体的な解決策が浮かんでないんだよな…

 

「そこなんだよな…アリスのおかげで迷いの竹林を抜けた後で接敵する可能性がありそうなのは魅魔と鈴仙・優曇華院・イナバに射命丸ぐらいなんだが、空間魔法を使わずに逃走という条件下だと射命丸が厄介過ぎる。速度と執拗さを併せ持つ奴をどう振り切るか…」

「…豹さん、つまり今ここに向かってきているのは月の玉兎とその烏天狗ということですよね?」

「はい、間違いありませんエリーさん。ご主人様と妖夢さんが霊夢さんと魔理沙さんを食い止めていて、東風谷早苗さんは守矢神社から動いていないようですから」

「それなら私がその烏天狗を抑えます。永遠亭の玉兎はここに戻ることが最優先でしょう。おそらく私がその烏天狗を相手取れば玉兎単独でここに戻ることを優先するはずです。そうなれば妹紅さんとユキさん、雛さんの脅迫に巻き込めるのではないでしょうか?」

 

するとエリーが具体的な手段を出してくれた。たしかに鈴仙・優曇華院・イナバは永遠亭への帰還を最優先に動くだろう。そうする場合問題になるのは…!

 

「妹紅、八意永琳を相手にしても月の姫のように抑えきれるか?」

「ユキの援護があるなら十分やれるよ。だから問題は雛が鈴仙ちゃんを止められるかどうか」

「援護に徹するなら妹紅さんと雛さん同時にできるよ。雛さん、いける?」

「相手が一人ならどうにかなるわ。そのかわり、永遠亭だけでなくそいつにも厄を使うことになるけどね」

「そうなった場合は雛の安全のために使ってくれ」

 

永遠亭脅迫組は戦闘になってもなんとかなるか。なら後は。

 

「エリー、射命丸は傍迷惑な新聞記者として有名になってるが、その実幻想郷全体でも上位に入る実力者だ。足止めと言っても移動を優先されるとエリーじゃ追い付けない…なにか手はあるのか?」

「新聞記者であることを優先できるだけの存在ではありませんか?

 幽香の部下である私であれば」

「…試す価値はあるな。

エリー。戦闘になった場合は一人で相手取ろうとせず、近くの仲間と合流できるように退いてくれよ?」

「大丈夫です。私の弱さは幽香たちに思い知らされてますから」

 

エリーは夢幻館が崩壊して以降、幻想郷で活動すること自体が稀な存在。射命丸からすれば見慣れない死神にして四季のフラワーマスター・風見幽香の部下などと名乗られたら興味をそそられてもおかしくない。

そして取材対象と判断されれば攻撃はされても命までは取られないだろう。時間が惜しい、エリーに頼らせてもらおう…!

 

「エリー、それで頼む。

それじゃ皆、予定通り分かれるぞ。メディスン、案内を頼む」

「ちょっと待ちなさい、ゴリアテがまだよ」

「…あっ!もしかしてゴリアテちゃん、中で迷ってしまっているのでは!?」

「ああっ!?私ならゴリアテちゃんの居場所が分かるので、すぐ連れてきますね!」

 

麟の反応で気付いたようで、上海が大慌てで永遠亭に入って行った。もう少し細かく詰めておけるか。

 

「妹紅、迷いの竹林を抜けたタイミングでスノウピラミッドを壊す。八意永琳のことだから色々聞いてくるだろうが、追撃してこない条件を呑むのであればある程度の情報は渡してやって構わん。ただ魔界に関しては妹紅じゃなくユキが答えてくれ」

「それこそ全部ユキが答えた方がいいんじゃないの?」

「わたしが答えても信用されないと思うよ。妹紅さんが答えて、わたしが付け加える方がアイツらは納得するんじゃないかな」

「あ、それもそうだったね」

「ルナサたちは真っ先に『俺が紅魔館に着くまで無理に動かないでくれ』とレミリアに伝えてくれ。そうすれば詳しい状況をレミリアの方から聞かれるはずだからな。

もし余裕がありそうなら、カナ達を迎えに行ってもらえると助かる」

「わかった。悪いけれどお願いするわね、咲夜」

「ごめんね~…私は思いっきり力不足を晒しちゃったから…」

「メル姉がそれじゃ私も変わらないし。迷惑かけるけどお願いしまーす」

「これもお嬢様の命令ですから、お任せくださいませ」

「椛たちは真っ直ぐ俺の隠れ家へ。もし敵戦力が追ってくるようだったら、誰か一人を先行させてサリエル様と幻月に助けを求めてくれ。残りの3人も無理に撃退しようとせず、援護が来るまで逃げ切ることを最優先にな」

「安心しなさい、上海は私が守るわよ」

「はい、私たちが一番戦力が薄いですから。無理はしません」

「皆様、お待たせしました!」\……/

 

本当にすぐ上海がゴリアテを連れて戻って来た。人形同士の繋がりか…アリスにも顔を合わせて、ちゃんと礼を言わねえとな。

 

「よし、それじゃ俺と麟は今の時点で魔力を隠す。迷いの竹林を抜けたら姿もな…悪いが皆、頼むぜ」

「はい、皆さんよろしくお願いします!」

 

厄介者を相手取ることになるエリーの返事に、皆も続いてくれた。どうか皆、無事に切り抜けてくれよ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりー、袿姫ちゃん!」

「おや、神綺じゃないかい。相変わらずとんでもないねえ、私の神域に直接転移してくるなんて」

「…ど、どうやってここに!?」

 

ゲートから袿姫ちゃんの居場所に飛び降りると、見慣れない子とお話ししてたみたい。とりあえず、敵意が無いことを示さないとね。

 

「はじめましてー、私は神綺。袿姫ちゃんの古ーいお友達よ。よろしくね♪」

「ちなみに神綺は魔界の創世神。こんな感じで軽い奴だが、創造に関しては私の造形術と並ぶレベルの魔神だよ、磨弓」

「………は?」

 

磨弓ちゃんっていうのねー、目を点にして固まっちゃった。うーん…袿姫ちゃんと二人でお話しできるような子なら、そんなにビックリしなくてもいいと思うんだけどなー。

 

「本当に変わってないねぇ神綺。前にも言ったけど、いくらフレンドリーに振舞おうと私らが畏怖されることは避けられないよ。もう少し弱者からの視点ってのを理解しなって」

「そんなことないわよー。なにしろ私は反逆者に負けちゃったことがあるような情けない創世神だもん。創造に関してはともかく、戦闘なら私を超えられる相手はいくらでも出て来るはずよ」

「……おい、ちょっと待った。今さらっととんでもないこと言ったよな神綺?」

「私がここに足を延ばした理由でもあるから、ちゃんと話すわ。でも先に磨弓ちゃんのことを聞きたいなー!

ちょっと大変なお願いになるから、磨弓ちゃんのお仕事によっては聞かない方がいいと思う」

「っ!?袿姫様のご友人にして、魔界の創世神たる方が大変だと仰るのですか!?

―――いえ、失礼しました。私は杖刀偶磨弓、埴輪兵団の兵長を務めております。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

 

兵団の兵長、か。つまり戦闘をこなせるってこと。なら袿姫ちゃんがOK出してくれたらお手伝いしてもらっても平気かな?

 

「うん、よろしくね磨弓ちゃん!兵長をやってるんなら、むしろ聞いてほしいわ!」

「そうだねぇ、戦力という点であれば磨弓は問題無いよ。ただ神綺が直々に私のところに出向くってことは、魔界の戦力に制限があるってことだね?」

「さっすが袿姫ちゃん!とりあえず、お願いしたいことを要約するね。

幻想郷で生き延びてくれてた私の護衛を助けてあげてほしいの!」

「神綺の護衛…?

っ!まさか、月の支配者・サリエルを救出したとされる男のことかい?」

「えぇっ!?なんで袿姫ちゃんがヒョウくんのこと知ってるの!?」

「あー…こうなった以上隠す必要は無いか。月の民に私の血縁が居てねぇ。もう随分昔の話だけど、珍しくあっちから私に連絡を取って来たことがあったのよ。『月から堕天したリィスって天使を見つけたら、保護して連絡して欲しい』なんて言って来てねぇ。

流石にそれだけじゃ意味が分からなかったから、細かいところまで聞き出したのよ」

「リィスちゃんが魔界に来る前の頃かぁ…そういえばあの時期に袿姫ちゃんから魔界に来てくれたことがあったっけ。もしかしてリィスちゃんが目的だったの?」

「まあね。でも魔界で楽しそうにしてたから私は手を出さなかったよ。疎遠な血縁より神綺を優先したかったし」

「そうだったんだー。嬉しいこと言ってくれるわねー♪」

「ま、そういうわけでサリエルの堕天に神綺の側近らしき男が関わってたことと、リィスって天使が月より魔界を選んだってことは把握してた。多分私が神綺と付き合いがあるのを月に知られてたから、逃走ルート候補だと想定して私に聞いてきたんじゃないかねぇ?その読みはハズレだったわけだけど。

ただ、そのヒョウってのと私は会ったことが無い。そもそも神綺の側近に男がいることすら知らなかったんだ。それが幻想郷に居るのは何故なんだい?」

「…私の情けなくて、長い昔話になっちゃうの。だから要約しちゃっていい?」

「いや、時間が無いらしいのは神綺の様子で理解できるが要約じゃ不満だよ。神綺が『反逆者に負けちゃった』って話と合わせて、それなりに詳しく話しな?」

「仕方ないかー…手短にまとめるぐらいは許してよー?」

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