ちなみに主人公の外見は泰山天狼拳の人を金髪にした感じでイメージしてます(画才ゼロの作者)
動揺を隠せなかった時点で俺の負けだ。確信を持たせてしまった。
「当たりみたいですね。随分と昔の話ですが…今でも待ってると思いますよ。会いに行ってあげないのですか?」
魔界と繋がりがあると聞いてはいたが、知られているとしても俺の悪行…反逆者のヒョウとしてだと考えていた。まさか、サリエル様との繋がりを知る悪魔がいるとは思いも……
―――いや、悪魔ならいたなそういえば!
「………エリスか?」
「あ、間違いなくサリエルの探し人ですね!その通り、エリスから話を聞きました」
「エリス?……ああ、そんなこと言ってたか」
サリエル様が魔界に堕ちてから、無邪気に慕っていた悪魔。その無邪気さゆえ、不和と争いを引き起こすことすらあったお騒がせ悪魔を思い出す。流石にそこから繋がるのを事前に予測は出来ねえよ…
「エリスが出処ってことは、俺の方の事情は話してないんだろうな…」
「はい、『サリエル様がヒョウっていう金髪長身の魔界人に会いたがってるから見つけたら教えて!』とだけ言われました。それから千年以上音沙汰なしなので、私たちに伝えたことすら忘れてるかもしれません」
さてどうするか…下手打つとサリエル様の下に連行されるよな。
「あの天使が直接会いたがってる、か。
フフフ…死にかけのあなたを引き摺って行ったらどんな反応をしてくれるかしら?」
…いや、すでにアウトか。実に素敵な笑顔で言ってくれる。
「ちょっ…夢月さん!?本気じゃないですよね!?」
「大丈夫よエリー。サリエルは死を司る天使にして癒しの天使。会いたがっているというのが真実なら―――」
確信を持った笑顔で、悪魔が言い切る。
「
サリエル様とそれなりに近しい立場だった自覚はあるとはいえ。
「いくらなんでも、サリエル様がそこまで俺を買ってるとは思えないが」
「これはサリエルも報われないわね…買ってるなんて言われるなんて。
月から魔界に堕とされた天使が、一個人を部下を使ってまで探す。これがどれだけ特別なことか、あなたにはわからないの?」
「そうですね。それだけ印象に残る話だからこそ、私も憶えていたのですし」
…地雷を踏んだか?姉の方も乗り気になってしまったらしい。
―――これはもう、腹を括るしかないか。
「ちょっと何事…ってなにこれ!?どういう状況なの!?」
「あ、くるみ!夢月さんを止めるの手伝って!」
「あ、おはようくるみ。大丈夫ですから、大人しくしててね♪」
臨戦態勢になった妹に気付いたのか、くるみも飛び起きたようだが遅かった。
姉の方も天使のような悪魔の笑顔で、エリーとくるみを止めてしまう。
「…俺はどうすれば見逃してもらえる?」
「フフッ、逃亡するだけのことを仕出かしたのは本当のよう。私と姉さんを前にすぐ覚悟を決められるなんて…あの巫女以来かしら。
簡単なこと、私たちを楽しませて。出来なかったらさっき言ったとおり、死なない程度にボロボロにしてサリエルに突き出すよ」
「俺は攻撃魔法が不得手でな。楽しませるなんて出来そうに無いんだが」
「でも、十分戦えるでしょ?少なくとも、肉弾戦なら。おしゃべりは、私たちを楽しませた後で」
「そういうことです。では、いきますよ」
エリーとくるみを押さえながら俺を狙える姉。俺の旧い魔力と接近戦慣れを一目で看破している妹。
たとえ全盛期の俺でもキツ過ぎる!平和ボケした俺で逃げ切れるのか、これ!?
「やっとやる気になった!」
「逃がしてくれないようだからな!」
封じていた魔力をすべて開放、肉体強化魔法を展開―――感知魔法なんて気にしてられる相手じゃない!サリエル様の下に連れてかれること自体に危険性は無いが、そうなることによって神綺様とサリエル様の間で対立が起きかねない。本人同士が仲良くしたくとも、配下同士はそうもいかないのだ。俺の犯した過ちが繰り返される可能性が出てきてしまう。
俺の勝ち筋は二つ。接近戦に持ち込むか、同士討ちになるよう巻き込むかだ。相手は息の合った姉妹となると、後者は難しい。であればまずは突撃あるのみ!
「攻撃魔法が不得手というのは嘘じゃないんですね」
「その確認を2人掛かりでされてもな!」
挨拶代わりに放たれた光弾…エリーとくるみへの牽制も兼ねているのだろう。明らかに俺を狙っていないものも多数。ならば本命が来る前に叩く!
「へえ、甘く見てた。この程度じゃ牽制にもならないのね」
この程度なら避ける必要ない。俺最大の売りは【頑丈さ】…生半可な攻撃じゃ俺は止められない。光弾を払い除けつつ突進して前衛の夢月を狙う!
「ッ…魔界人とは思えない腕力。これは正面からまともに相手はしてあげられない」
「それで夢月が楽しんでくれるなら構わない。そのかわり早く満足してくれ!」
その言葉とともにテレポートで距離を取られる。首を掴もうとした右手は両手で止められたが、反撃のハイキックは左手で止めた。単なる力比べなら俺の方が上だが、もう接近戦に付き合ってくれそうにないな…!
「球状だと意味が無いですか。それなら…これで!」
「幻月さん!?豹さんは私たちの恩人なんです!本気にならないでください!」
「夢月さんも!何があったのかわからないですけど豹さんと戦う必要なんてないでしょー!?」
幻月は牽制の光弾を収束させて針状にしたか。だがその程度じゃ俺からすれば何も変わらない…つまり今警戒すべきは夢月!
「数を増やすよ。さあ、踊れ!」
やっぱそうなるよな!バラ撒き弾の魔力密度を上げて射程外からの一斉射撃、俺を接近させずに蜂の巣にする腹積もり!
「エリーもくるみもごめんね?半殺しはともかく、彼を連れてったサリエルの反応は私も見たいわ」
流石は悪魔、姉妹揃って天使の弱みになりそうなことには食いつくか!
「「さあ、どうする?」」
接近の手はあるが、二度は使えない初見殺し。そしてそれだけで勝負を決めるのであれば…狙うは姉である幻月。その機会が来るまでは、凌がなきゃならねえ!
「どうするも何も、避けきるしかないだろ!!」
前衛を張っていた夢月だが、幻月に劣らず後衛としての掃射も激しい―――が、ジリ貧になる前に強行突破するしかねえ!そのまま前進!
「悪いわね。肉弾戦はお断り」
「何か手を打たないとただの的ですよ?」
だが弾幕を放ちながらなんの予備動作や詠唱も無くテレポートで距離を取られる。単なる脳筋だったらこれだけで嬲り殺しだ。そして俺がそうじゃないと見透かしている…
ええい、ホントどうしてこうなった!
「とはいえこれでも足止めにすらならないですか。私も増やしますね!」
幻月が菱形弾を乱射し始めた。だが弾の魔力密度からして牽制に変わりはない、喰らっちゃマズい夢月の本命だけ避けて、幻月の牽制は急所狙いだけ捌けば―――っ!?
「跳弾かっ!見た目で判別付くのはお情けか幻月!?」
「その形じゃないと上手く跳ね返らないんですよ、難無く避けられるヒョウを見ると改良が必要に思えてきます!」
跳弾があるとしても地面だけ警戒すればいいと考えていたが甘かった!いつの間にか俺の上空から側面、背後にかけて魔力障壁が張られて菱形弾は四方で跳ね返って来やがる。だが、それなら逆用してやるまで!
「飛んでけ!」
丁度いい位置にきた菱形弾を片っ端から蹴り飛ばして姉妹を狙う!俺の本命に利用させてもらうぞ!
「ッ!その頑強な体じゃなきゃ出来ない芸当…ヒョウ、あなた何者?」
「八雲の隠者として働いたことはある」
「妖怪の賢者に匿われていたということですか。ヒョウは私たちが思っていた以上に重い立場のようですね」
会話とともにそのチャンスが来たッ!!幻月も夢月も、回避行動と移動を兼ねて短距離テレポートを行使するが、それが俺の付け込む隙っ!空間魔法なら俺も得意だからなぁっ!!
「《ウィドウリング》」
「えっ!?」
反応の速さは流石の悪魔だが、それでもこの至近距離なら俺の方が速い!
幻月のテレポートに干渉し、俺の行使した空間魔法の【出口】を幻月のテレポート先と合わせる―――片割れだけ使うことなく残されたペアリングを核に俺が創造した魔法の一つ。もう片割れのペアリングが一つだけになって残り一回しか使えなくなったが、切り札を伏せて逃げ切れるような姉妹じゃない!
そして俺が勝つために選んだ手段が、幻月の魔力の逆用。翼という器官は、人の形をした生物には必要が無いはずなのだ。ならばなぜ翼を持つ神や天使、悪魔が存在するのか?
戦闘態勢に入った神綺様がわかりやすい存在だろう。体内に留めきれない魔力を逃がすための、魔力タンクとしての翼。すべての翼を持つ存在がそうだとは言い切れないが、これだけ強大な力を振り撒いていた彼女が、体内だけで魔力を留めることは出来ないはずなのだ。
「悪いが、使わせてもらう!」
別の切り札である鎖細工を右手に絡ませて、幻月の翼から魔力を奪う!!
―――それが、俺の最大の失策だった。
「姉さんの翼に触るなっ!!!」
それは、情け容赦のない夢月全力の一閃。
「ああっ!?」「豹さん!?」
「ちぃっ!持ってかれたかっ!」
肉体強化魔法など、それがどうしたと言わんばかりに。
「夢月!?なにしてんのよ!」
「あっ!」
幻月の翼に触れていた俺の右手が、夢月の手刀で綺麗に切り落とされた。
次の更新は明日します。