寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により230話の誤変換を修正してます。いつも迅速なご指摘ありがとうございます。


第231話 終結し始める各戦闘

「遅いですよ…もう引き返せなくなりました」

「ごめんなさい…隠岐奈にしてやられたわ」

「……紫」

 

豹さんが展開した結界が紫様によって消え去り、紫様が豹さんの拳を止めたことで豹さんは怒りを鎮めてくださいました。霊夢さんが【私を狙った】ことで豹さんの逆鱗に触れてしまった…私個人としては、豹さんがここまで私のために怒ってくれたのは嬉しいです。ですが、私のせいで豹さんは紫様と完全に決裂してしまった―――博麗の巫女を豹さんから切り捨ててしまったことで。

 

そして、私は無力という現実を突き付けられることになります。

 

「まあ、どんな理由があろうと霊夢を3人がかりで殺ろうとしたのは許さないけどねえ」

「――がっ!!?」

「豹さんっ!?」

「…は?」

「っ!?何をしてるの萃香!?」

 

突然現れた小柄な鬼―――伊吹萃香が豹さんを攻撃してきたのです!私どころか豹さんの拳を止めていた紫様さえも反応できなかった不意打ち。私がすぐ麒麟の力で癒そうとしたのですが…!

 

「あんたも妙な真似するんじゃないよ?人間らしいから一度は見逃してやるけどさあ」

「うっ!?」

「萃香!?これ以上勝手に動かないで!!」

「は、なんでさ?スペルカードルール無視して霊夢を狙う連中をのさばらせちゃまずいだろーに」

 

お、お酒臭い…!豹さんを不意打ちした伊吹萃香がなぜか私の目の前にも現れて、首を掴まれてしまいました。

少し力を入れられるだけで、私の首なんてへし折られてしまうのでしょう。ですが、豹さんを助けなければ…!いくら頑丈と自負していた豹さんであっても、鬼の膂力で胴体を貫かれてしまっては命に関わってしまいます!

ですので、そのまま麒麟の癒しを行使し続けるのですが…!

 

「ほーう、私相手に嘗めた真似してくれるねえ。その度胸だけは買ってやるけど…

調子に乗んなよ小娘」

「かはっ………!」

 

い、息が…!一息に殺そうとしないあたり本当に一度は見逃してくれるようですけれど…!

い…今、豹さんを助けられるのは、私だけ、なのに…っ!

 

「――っと!?」

「死なせんよ、ヒョウは…!」

「ふざけたことしてくれますね!!」

「っ!コホっ…はぁ、はぁ」

 

絞め落とされる直前に、二人の伊吹萃香を強力な光弾が襲い。私も豹さんも辛うじて解放されました。

 

 

 

「………サリエル、様」

「間に合ってよかった…!一度魔眼を捨てられてしまったのには焦ったぞ」

「なんだいあんたらは?幻想郷じゃ見ない顔だねえ」

 

回復魔法を行使しながらサリエル様が俺の傍らに舞い降りる。尻拭いをさせてしまうなんてな…伊吹萃香の不意打ちで死にかけるどころか、麟まで危険に晒しちまった。サリエル様にも幻月にも、いくら感謝しても足りないなこれは。

 

「まったく、運命の再会がこんな味気無いものになってしまうなんて!

許せませんねえ、この酒臭いチビっ子は!」

「ああん!?ナメた口きい「ムーンスパーク!!」

 

…幻月がキレてるな、何の躊躇も無く初っ端から最大火力をブッ放してる。マズい、これは紫さんでもそう簡単に止められねえぞ!?

 

「サリエル様…なんでコイツなんかを…」

「魔眼、話は後だ。エリスを回収してから私の元に戻れ」

「っ!?そんな…」

「ヒョウの魔眼はまだ渡せん。だが救助だけなら5つで足りるはずだ、行け」

「っ………!

了解、です…」

 

俺が腹を貫かれて意識を落としかけたことで、支配下から逃れた幽玄魔眼だが。

サリエル様が俺の使っていた魔眼を再び俺の左眼に宿すことで、博麗の巫女と闘り合う前の状態に戻された挙句、この場から追い出されるように命令され姿を消した。

…こんな俺に、まだ魔眼を使わせてくれるのか。

 

「八雲紫、何か申し開きはあるか?」

「…何もありませんわ」

「サリエル様、紫さんは何も悪くない。

悪いのは俺です。俺以外に責任を求めるのであれば、紫さんではなく博麗の巫女の方です」

「ふん…!」

「そうか。

では、ヒョウの身柄は私が預かる。文句は無いな?」

「当然です。

…どうか、豹を頼みます」

「………支配する側から追い落とされた、私が言うべきではないのだろうが。

割り切り過ぎるのも辛いだけだ。君も多少は、我欲を優先する方がいい」

「お気遣いに感謝しますわ。

霊夢、詳しく話を聞かせてもらうわよ」

「はあ?なんで紫に…って!?」

 

サリエル様と軽く言葉を交わして、紫さんも博麗の巫女をスキマに落として同じスキマに姿を消す。

…損な役回りを押し付けてしまうな。本当に、俺は恩を仇でしか返せない最低な野郎だ…

 

「話はある程度リリーとアリスから聞いているが、これからどこへ向かう気だ?」

「俺に力を貸してくれた皆が、紅魔館に集まってくれているので俺も合流します…麟、大丈夫か?」

「はい…助けていただいてありがとうございます、サリエル様」

「俺もです、助かりました…ありがとうございます」

「ようやく、ヒョウに恩を一つ返せたのだ。気にしなくていいさ。

それに私だけの力ではない。後で幻月にも感謝を伝えてやってくれ。

気が済み次第、幻月も合流するのだからな」

「止めに入る必要は無いってことですか。礼だけじゃなく詫びも要るな…」

 

…幻月が不機嫌なまま紅魔館に入るのは避けた方がいいだろう。周りの被害など気にせず大暴れすることで頭が冷えてくれるといいんだが。

こうなると問題は、俺が幻月にこの借りを返せるかどうかだな。あれだけお望みだった【運命の再会】が、幻月にとっては期待外れに終わっちまったんだから。

 

「このっ!!喧嘩を楽しむ気が無いっての!?」

「ハッ、喧嘩!?鬼風情が悪魔の楽しみを無にしておいて、楽しめるとでも思ってるの!?

お前に楽しみなどくれてやるものか!!悪魔に命を狙われる恐怖を受け取れ!!」

 

不意打ちとはいえ俺を一撃で戦闘不能にした伊吹萃香を、幻月は一人で追い込んでいる。そもそも初撃のムーンスパークで麟を襲った分身を簡単に消し飛ばしているのだ。紫さんが博麗の巫女を連れてすぐ離脱したのは、ここまで頭に血の登った幻月の相手はしてられないと判断したからだろう。止めるとなると相当な消耗を覚悟しなきゃならない…それなら勝手に動いた伊吹萃香に押し付けることを選んだ。

 

自惚れかもしれないが…紫さんも奴の俺への対応に不満があったのかもな。サリエル様に、頼みますなんて言ってくれたのだから。

 

「…行きましょう。俺が幻想郷に留まるために力を尽くしてくれた皆に、謝らなきゃならない。こうなった以上俺の潜伏先は隠しようがないですから、隠れ家に向かった皆は空間魔法で直接紅魔館に連れ込みます」

「わかりました!」

「ああ、先導を頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――やってくれるねえ…!防護魔法だけに専念したのなんて悪霊になってからは初めてな気がするよ」

 

この私が同じ相手に二度も出し抜かれるとはねえ。隠居なんて嘯いてたせいで思いっきり腕が鈍ってた証明になっちまったかい。

まあ、自爆なんて本当に最後の手段を使ってきたからには敵の戦力を一人は確実に落としたことにはなるんだが…

 

(魔力翼が人形の形に変化しての自爆…昨日やり合ったときにはあの魔力翼は人形に付いてなかった。つまりあの後に人形強化の一環として創られたモノ――要するにあの人形の弱体化にはなってない。カナ共々逃げられた時と同じ状態に戻っただけだわ)

 

そう考えると結局白狼天狗と別の人形2体を落としただけ、たいして敵戦力の低下にはなってない。となると他の奴らの追撃をしておくべきなんだが…

 

(…ありゃたしか夢幻世界の双子悪魔。私でもそう簡単にケリを付けられる相手じゃないから時間効率的にナシだ。あの天人くずれも結局時間稼ぎにすらなってないねえ)

 

霊夢と紫が豹を捉えたみたいだけど、そこに双子悪魔の片割れが乱入したことで豹の確保は諦めて離脱してる。同じ理由で太陽の畑方面でのフラワーマスターともう片方の双子悪魔を叩くのも非効率。後は天人くずれと交戦してたメンツは全員紅魔館に向かっていて、私が最高速で向かってもこの位置からじゃ紅魔館に辿り着かれる方が早いだろうね。

 

そうなると、このタイミングで追撃しておく価値があるのはあの二人だけになるわね。

 

「ま、魔理沙一人に任せるのもちょいと厳しそうだしねえ。叩けるときに叩いておくとするかい」

 

魔理沙を足止めしてるアリスともう一人。援護も兼ねて急ぐとするかい。

 

―――この時、撃ち落とした白狼天狗と人形にトドメを刺さないで追撃に回ったのもちょっとしたミスだった。もっとも、今の幻想郷で止めを刺す方が面倒なことになるってのもあったんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…姉さん、なにやってるんだか」

「大暴れしてるわねえ、つまり面白くないことになったってことでしょ。

ヒョウとかいうのが痛い目を見たんならもういいわよ。それにいい加減眠いわ…気が向いたとき夢幻館に戻るから、結末だけ聞かせなさい」

 

ヒョウが例の巫女にピンポイントで探り当てられるっていう最悪の事態になったから、姉さんとサリエルがその場に出向いてくれたんだけど。姉さんがマジギレしてる…まあ、あの状況でヒョウと合流したのなら【運命の再会】は姉さんの理想とかけ離れたものになったはずだし…仕方ないか。

 

そこまで読み切った幽香はあっさり戦闘を止めて太陽の畑の方に帰って行ったわ。そういえば幽香はくるみ以上に睡眠を貪るタイプだった。この時間まで起きてる方が珍しいってのは、幻想郷でも変わってないみたい。相変わらず勝手だけど、私の頼まれごとはこれで終わり。後は好きに動いていいんだろうけど…

 

(とりあえず、エリーを回収しようか)

 

 

 

「近くにいて丁度いいし、エリーは連れて帰るよ」

「そうですな、流石の私も貴方を敵に回したくはありませんので。見逃してもらえるというのであれば構いませんよ」

「今はそれでいいけど、後で余計な事触れ回ったら姉さんと一緒に潰しに行くから」

「おお、こわいこわい。それでは失礼いたします」

「ありがとうございます夢月さん、助かりました」

 

そういうわけで烏天狗と交戦してたエリーと合流。あの烏天狗も結構やるみたいだけど、天狗らしく自分より強い相手との戦闘は避けたがったから余計な時間を取られずに済んだ。

 

「助けたついでにちょっと付き合ってもらっていい?落ち着いたら姉さんも連れてかなきゃ」

「そうですね…豹さんの予定通りにはなっていないようですし。お付き合いします」

 

流石はエリー、幽香に仕えてるだけあって肝は据わってるね。あの状態の姉さんの方に向かうことを躊躇わない…こういう精神的な強さはなかなか得られないもの。こういうところがあるから、私も姉さんもエリーとくるみを気に入ってるわけだし。

 

「それじゃ、行くよ」

「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本当に来ましたね、人形が」

「っ!?あなたは、小兎姫さん…!」

 

隠れ家さんのおかげでひとり窮地を脱した私ですが…移動の途中で最悪の事態になってしまったことに気付きました。豹さんを霊夢さんが捉えてしまい、交戦状態になり。そこに八雲紫さんが介入したことによってサリエル様と幻月さんがそちらに向かってしまったのです。つまり、ゴリアテちゃんとメディ、椛さんを私一人で助けに向かわなければならなくなったということ。

 

そのためにも、一度豹さんの隠れ家に戻って魔力の補充が必要です。私一人で魅魔さんを相手できるなんて思っていませんが、全力を尽くすためには必要なことなのですから…!そう信じてようやく豹さんの隠れ家に辿り着いた私を、この方が隠れ家の入口で待ち構えていたのです。

 

「…時間が無いんです!通してください!!」

「落ち着きなさいな、私はあの天使と悪魔を同時に敵を回せるほどの余裕は無いわ。

魅魔さんと交戦していた面々を助けに行くのでしょう?それを手伝うよう脅されたから、早く魔力を補充して来なさい」

「っ!ありがとうございます!」

 

ですが、私の予想に反して小兎姫さんは協力的でした。お話の限りだとサリエル様と幻月さんが上手く交渉してくださったようです…後でしっかりお礼を言わないといけませんね。

 

―――そして、隠れ家さんから豹さんとユキさんの魔力を補充しようとしたところで。

 

「安心しなさい、お人形さん。助けに向かおうとしているお仲間は、こちらの方々で間違いないですね?」

「えっ…!?」

「………貴方、どうやってこの中に?」

 

なぜか()()()()()()()()()、ゴリアテちゃんとメディと椛さんを連れた女性が出て来たのです…!

 

「この家で眠っている者がいて助かりましたわ。

私はドレミー・スイート。遅くなってしまいましたが、豹の手助けに参りましたよ」




直腸癌、転移済みのためステージ4という検査結果でした。
…働くことは当面諦めて治療に専念しろとの診断ですので、抗がん剤投与による副作用次第で今後の更新ペースが変わると思います。副作用が軽ければ引き続き週3更新に戻しますが、重ければ週一更新すら覚束なくなるかもしれません。
来週の更新ペースがしばらく続くことになると思います。
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