副作用と戦いつつ、更新を続けて行きます。今後は体調次第で更新ペースが変わると思います。
「………兄さんとサリエル様もルナサたちと合流できそうだね。幻月のフォローはしないみたい」
「いいのかそれ…?あのあたりの地形変わりそうなんだが」
例の巫女が何の迷いも見せず一直線に兄さんを探り当てたときはどうなるかと思ったけど、わたしを
「幻月は夢幻世界の主だから、魔界とは無関係って言い張れる。下手に兄さんとサリエル様が援護しちゃう方がまずくなるのよ」
「それに八雲紫が直々に出向いた上での判断である以上、少なくとも八雲紫とサリエルの間で交渉はまとまったと見るべき。下手に介入する方が拗れかねないでしょうね」
八意永琳も流石だね、しっかり兄さんと巫女の衝突地点に向かった面々を把握できてる。それならついでに聞いておくべきなのは…
「妹紅さん、幻月が攻撃してるのってどんな奴なのかわかるかな?」
「伊吹萃香…鬼の四天王の一人だよ。今は博麗神社に居候してるはずだから、博麗の巫女の援護に回ったんじゃないかな」
「そうなると…やっぱり八雲紫はあの巫女を制御しきれてないってことになるのかな?魔界人のわたしが言えたことじゃないんだけど」
「そう考えて問題無いと思うわ。あの巫女を完全な支配下に置くことは誰であろうと不可能…それが彼女の本質だとも言えるのだから」
「そうなると…夢月に止めてもらうのが理想的になるのかしら?フラワーマスターはなんとか引き下がったみたいだし」
「夢月もそのつもりみたいだから、雛さんの言う通り任せちゃっていいと思う。エリーが付き合わされるみたいでちょっと不憫だけど…これでまだ戦ってるのはアリスと黒幕だけになるのかな?」
「メディスンたちが心配だったが、魅魔が諦めた途端豹の隠れ家に誰かが連れて行ってくれてるしね。まだ私たちと顔を合わせてない協力者がいるみたいだな」
「…メディスンを保護したのはドレミー・スイートよ。私が八雲紫との接触を依頼した相手なのだけれど、どうやら私の依頼より先に豹と八雲紫の援護を優先したようね」
「って、そいつあの獏だよな?ほんと豹はどれだけ交友関係が広いんだよ…」
「獏ってことは夢の世界の住人かな?兄さんからしたら足が付きにくいって意味で頼りやすい相手だから、仲良くしてたんだと思う」
「そんな簡単に予想しちゃうあたり、ユキは本物の豹の妹なのでしょうね。私じゃそこまで読めないわ」
妹紅さんと雛さんだけじゃなく八意永琳まで補足してきた。魔界とこれ以上やり合いたくないってのは本気みたいだね。そうじゃなきゃわざわざわたしに幻想郷側の情報を落とすメリットがないし、八意永琳が何の考えもなく発言するなんて迂闊なことはしないだろうから。
「豹も大したものね。完全に掌の上で踊らされていたようでいて、最大の脅威である摩多羅隠岐奈に幻想郷内で動かせる最高戦力を宛がうことでしっかり妨害出来ている」
「メイドちゃんが援護に来たことにも驚かされたが、レミリアまで直々に出張って来るなんてな。まあ彼女の性格も考えれば不思議じゃないけど、豹は幻想郷でも頼れる妹との信頼関係を築いてたってことか」
「それで潜伏してるつもりになってるんだからね…兄さんは本当に、兄としてしか生きられないの」
「兄として、か…豹がただ一つ貫き続けている信念がそこなのね。
隠者として潜むことよりも優先し続ける、
「それをあっさり言葉にできるんだから、雛さんも兄さんの妹だよ。
兄さんのことをよくわかってくれてる」
「…まあ、幻想郷の住人では八雲主従に次いで豹と長い付き合いなのが私でしょうし」
このやり取りだけでも、幻想郷は兄さんを受け入れてくれてたのがよくわかる。魔界に帰れなくなった兄さんが、わたしたちの知る兄さんのままで居てくれたのは―――間違いなく幻想郷っていう世界と、そこで暮らす住人のおかげ。
だからこそ、魔界との全面戦争で滅ぼすわけにはいかない。魔界を荒らした恨みを向けるのは、アイツら4人だけに抑えなくちゃいけない…兄さんを兄さんのままでいさせてくれた、幻想郷を守るために。
「―――お師匠様!!」
「やっと帰って来たわね、ウドンゲ」
ここでようやく永遠亭最後の不確定要素になった玉兎が到着したわ。結果的にサリエル様と幻月の介入を八雲紫が不問にしたこと、そして裏で暗躍してた摩多羅隠岐奈の危険性を八意永琳にある程度伝えられたことを考えると、悪くない待機時間だったって言えるかな。
「それじゃ、他の奴らも起こそうか。妹紅さん、念のために雛さんの護衛に回ってもらえるかな?」
「わかった。雛、こっちに」
「ええ、世話を掛けるわね」
「ウドンゲ、手出しは無用よ。何もせずに永遠亭に入りなさい」
「へ?それってどういう…?」
椛は魅魔にやられちゃったみたいで、月の姫に対する昏睡の魔眼は少し前に効果が切れちゃってたんだけど…スノウピラミッドを壊す前にわたしが睡眠魔法を重ね掛けしておいたから、交戦した4人はまだ夢の中。念のためだったけど大正解だったね。起きてから色々聞かれるのも面倒だから、そこは八意永琳に押し付ける。戻って来た玉兎への説明も一緒に済ませられるだろうし。
「う、ううん…?」
「起きなさい、輝夜」
「ふあ…?永琳…?」
「これで文句は無いよね?
約束通り、追撃はしないでよ?」
「勿論よ。こちらからも頼むわ…信じてもらえるかどうかは別だとしてもね」
「わかってる。兄さんが関わってるんだから、約束は果たすよ。
行こう、妹紅さん、雛さん」
「ああ」「ええ」
何か言いたげな玉兎に背を向けて、永遠亭を去る。
後はアリスの救出だね。夢子はまだ戻って来れなさそうだし、妹紅さんと雛さんにも手伝ってもらわなきゃならないか。
「―――決着を付けきれなかったのは惜しいが、これ以上は時間の無駄だな。
まあ、お前の目論見通りにはならなかっただけで良しとするか」
「そうでもないぞ?博麗の巫女と豹の激突を紫が仲裁した。これだけでも十分な成果だ」
「ハッ!余程私に邪魔されたのは計算外だったようだな!
「ふん…!」
結果だけ見ればあまり良い状況ではないのだろうが…少なくともお兄様にとっての最悪は避けられただろう。少なくとも、この秘神がお兄様の妨害に出向けないままこちらの戦力の大多数が紅魔館に集結出来ているのだ。これだけの戦力があれば紅魔館を力押しで攻め潰すという方針は取れない、つまりお兄様を中心に作戦を立て直す時間の余裕が出来たということなのだから。
「重ねて言っておくぞ。あまり私を嘗めるなよ?
外界や魔界と独自の伝手を持っているのはお前達だけではない」
「そこは覚えておいてやる。私の読みが甘かったのは事実だからな」
それだけ返して後戸の秘神は姿を消した。私が戦意を引っ込めただけでこうも簡単に引き下がるあたり、私以外にも奴の想定外で動いた者がいると見るべきか。
(それがお兄様の協力者なのか敵なのかが読めんがな。
さて、帰り道で回収しておくべき者はまだいるか?)
咲夜は問題なく騒霊楽団を連れ帰っていて、くるみも別方向で交戦していたグループを連れて紅魔館にそろそろ到着する。お兄様と霊夢の交戦地点で暴れている悪魔は…太陽の畑のフラワーマスターを相手にしていたもう一人の悪魔が向かっているな。となれば、私のフォローが必要そうなのは…人形遣いもしくは紅魔館ではない方向に逃走したグループか。
(おそらくあちらのグループの向かった先がお兄様の隠れ家だろうね。
お兄様が不在という形で出向くのは少々つまらんが…位置だけでも覚えておく価値はあるか)
そう判断した私は、少々回り道になるが迷いの竹林からお兄様と分散したグループの集合地点へ向かうことにした。あれだけの戦力が集まれば、フランが暴走しようが問題なく止められるだろうしな。
「―――ごめんアリス!してやられたみたい…!」
「そのようね…!幻月が本気で暴れてるあたりロクなことになってないわ」
「ちっ…!妖夢が戻って来やがったか!」
魔理沙は魔法使いとしては脳筋…真正面から叩き伏せるのは骨が折れるけれど、搦手を使って足止めするだけなら与しやすい。もっとも、上海とゴリアテ抜きだからかなり危ないところもあったのだけれど…大きく状況が動き、それに片が付くまでの時間は稼げたわ。
その状況が、良い方向に動いたとはとても思えないのが問題なのだけれど…!
「妖夢、悪いのだけれどこちらに向かって来てる魅魔の相手を頼める?魅魔は悪霊だから、妖夢はかなり厄介な相手になるはずだわ」
「わかった、霊夢を止められなかった分は返さないとね!」
「させるかよ!彗星《ブレイジングスター》!!」
「うっ!?」
妖夢の刀…白楼剣は幽霊を強制的に成仏させることができると聞いているわ。それはつまり魅魔に対しての切り札になるということ。もっとも、魅魔がそう簡単に斬られるとは思わないけど…魔理沙に対しては十分な脅しになったわ!
私と妖夢を同時に相手取るために、突進系の大技を繰り出して来た。それは、ここまで私だけに集中していた意識を妖夢に向けて逸らした、致命的な隙!!
「蓬莱!!」\ホラ-イッ!!/
魔理沙が妖夢に向けて突進した一瞬の死角で、蓬莱を伏兵として仕込む!それを気取らせないために…!
「呪符《ストロードールカミカゼ》!!」
「邪魔だぜアリス!!」
目晦ましにストロードールを中心とした人形をバラ撒いて、私と蓬莱は回避に専念!後はこの状況で黙ってるはずが無い妖夢を陽動に…!
「先に魔理沙を落としておくべきだね!獄神剣《業風神閃斬》!!」
「このっ…!」
読み通り魔理沙の突進を回避しつつ、反撃に出る妖夢。流石の魔理沙も二人掛かりで弾幕を展開されては無茶な突進は出来なくなり、回避を優先するわ!このタイミングで!!
「魔操《リターンイナニメトネス》!!」
「うおぉっ!?」「ひゃっ!?」
ストロードールに混ぜておいた爆破用の人形を起爆!!妖夢は巻き込まないように調整したけど、合図もなしに人形が爆発すれば驚くわよね。でも、爆発範囲外の妖夢でさえ驚くような状況であれば!
\ホライッ!!/
「げっ!?」
「今日はここまでよ。考え無しに妖夢まで巻き込んだのが魔理沙の敗因」
「くっそー…!」
爆発を煙幕代わりに蓬莱に背後を取らせて、私直々に魔理沙の喉元に指を突き付ける。これで最低限の仕事は果たしたわよね。
「―――そういうわけだから、魅魔もこのまま博麗神社に戻りなさい。細かい事情は霊夢と紫が知ってるでしょうし」
「…仕方ないねえ。魔理沙、行くよ」
「うぅ…ごめんなさいだぜ魅魔様…」
「気にすることないよ、援護が遅れた私も悪かった」
流石の魔理沙もあの状況に追い込めば大人しくなったから、少し遅れて到着した魅魔に押し付けることにしたわ。多発した戦闘もほとんど落ち着いたようだから、魅魔としても情報を整理したいでしょうしね。
魅魔と魔理沙が博麗神社に向かうのを見届けて、私から妖夢に問い掛ける。
「それで、妖夢はどうする?私は一度家に帰って、姉を待たないといけないのだけれど」
「うーん…私は紫様に話を聞くべきなんだろうけど、博麗神社にいるんだよね?
魔理沙と魅魔が向かった今、私が向かうのはちょっと…だよね?」
「それなら私と同行しておく?これ以上戦闘は起きないと思うけど、単独行動を狙われる可能性はゼロじゃない」
「そうだね…誰から話を聞いても私にとっては有益になるだろうし、アリスの家にお邪魔しようかな」
「そう、なら行きましょうか」
丁度いいタイミングで、妹紅が迷いの竹林からユキと雛を連れて出て来たところだったわ。このまま帰ればそれほど待たずに私の家で合流出来るでしょう。
…大暴れしてる幻月は夢月に任せていいわよね。魔理沙を相手にした後で本気になってる幻月の相手はしたくないし。
―――長かった雪夜が、ようやく明けようとしていた。