寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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お待たせしました。
誤字報告により234話の衍字を修正してます。…気を付けないとと言っておきながら全く同じ衍字繰り返してました。集中力が落ちてますね…これも副作用になるのでしょうか。
いつも迅速な報告助かっております。ありがとうございます。


第235話 続々集う参加者

「―――って流れよ。悔しいけど、紫が言うだけあったわ」

「…豹が迎撃に踏み切った理由は、麟だったってわけね…

引き留めることは、もう出来ない………」

 

紫にスキマで放り出されたのは博麗神社(うち)の境内。気付いたあうんと老いぼれだけでなく、スキマから藍と橙まで出て来て詳しく話すハメになったわ。

…もっとも、橙はともかく藍は私よりずっと消耗してたけど。

 

「申し訳ありません紫様、私が…」

「藍の自責は必要ないわ。風見幽香と隠岐奈の二童子を相手に連戦しながら私の元に橙を送り込めたっていうだけ、藍はよくやってくれたわよ…私が夢の世界で時間を取り過ぎたのが取り返しのつかないミス。謝るのは私の方だわ」

「紫様…」

 

それで紫だけじゃなく消耗してる藍も初めて見るぐらい落ち込んでるのよね。私が思ってたよりずっと(あの男)は紫と藍にアテにされてたってことかしら。

…だとしたら、ますますこうなるまで私に会いに来なかったのがわからなくなるんだけど。

 

「…その、これからどうすればよいのでしょうか?」

「しばらくは橙もここで待機しなさい。豹を援護している面々が紅魔館に集結し終えた以上、隠岐奈からこちらに出向いてくるわ」

「その、私も聞いてしまって大丈夫なのでしょうか?」

「構わないわよ。状況によってはあうんも戦力に数えるし、玄も連絡役として動いてもらうかもしれないわ」

「かしこまりました、この爺も話を聞かせていただきますぞ」

「…って、聞き捨てならないこと言ったわね?あの秘神がいまさら出て来るっての?」

 

あの秘神は結局援護に来なかったのよね。紫どころか豹を助けてるらしい天使と悪魔まで空間魔法で割り込んできた、つまり私をハメたか援護に来れなかったのどっちかでしょうね。その状況でわざわざ私に会いに来るとは思えないんだけど。

 

「私は隠岐奈にしてやられたわけだけれど、隠岐奈も豹にしてやられてたのよ。レミリアが隠岐奈を食い止めてたのに霊夢は気付かなかったのかしら?」

「…あー、紅魔館に逃げ込んだんならそりゃレミリア本人も動いてるわよね。あの秘神も何をやってるんだか」

「レミリアがこのタイミングで動いていなければ、完全に隠岐奈様の目論見通りになっていたでしょうね…

この状況になってしまった以上、礼を言うことすら我々には出来なくなってしまいましたが」

「紫さまも藍さまも、レミリアさんは最初から豹さんの味方として動いていましたもんね…

豹さんが霊夢とぶつかっちゃった以上、私たちから接触するわけにはいかなくなっちゃいました」

 

嫌な予感通りだったみたいね。紫と藍に橙の言い方からすると、レミリアが豹の援護に動くことを八雲は把握してたのにあの秘神は把握できてなかったっぽいわ。それか把握できてたのにもかかわらずレミリアに出し抜かれたって可能性もあるか。

どっちにしても情報不足で動かされた挙句、肝心な時に援護に来なかったワケだから…紫の言う通り出向いてくるってんならたっぷり文句を言ってやらないとね!

 

―――そして、私と一緒に文句を言いたいであろう二人も帰って来たわ。

 

「さて…どういう状況になったのか聞かせてもらうよ、紫?」

「…霊夢も帰ってたのか。つまり上手くいかなかったってことかよ…」

「悪かったわね。思った以上に厄介だったのよ、豹ってのは」

 

魅魔が魔理沙を連れて博麗神社(うち)に入って来たわ。あの様子じゃ魔理沙もアリスにしてやられたみたいね…やっぱり戦力が足りな過ぎた、か。

 

「もうしばらく待って頂戴、魅魔。こうなった以上、隠岐奈から私と霊夢に接触して来るわ…

おそらく別視点の情報を持った面々も連れて、ね」

「ああ、待たせたようだな」

 

そして待ち構えていたように秘神が出て来たんだけど…

 

「…何なのよ、この人数は」

「これでも何人かは帰らせたのだぞ?あまり聞かせたくない者もいたのだからな」

「…問答無用で勇儀を地底に追い払ったのは絶対に後で殴り込まれるわよ?私が勇儀を案内しても文句は言わないでよね」

「ですが、星熊勇儀がこれから始まる長い情報交換を大人しく終わらせられるとは思えませんので。悪くない判断でしょう」

「ふむ、スキマ妖怪に話に出ていた悪霊か。たしかに顔を出す価値はあるようだな」

「次は博麗神社ねえ。神奈子に任せた方が楽だったかなー」

 

秘神だけじゃなく華扇に守矢神社の小さい方、閻魔に仙界の仙人やら大人数で乗り込んできたわ。

…面倒なことになりそうね、これ。

 

「…って!?あの悪魔は!?」

「む?

…甘く見過ぎていたか。空間移動中に干渉されて逃げられたようだな」

「…貴方が利用していたと聞いています。逃がした、ではないのですか?」

「紫を問い詰めるのに有益な情報源をわざわざ逃がす理由が無い。

…どうやらあの堕天使が部下を回収したようだな。エリスだけでなく幽玄魔眼も紅魔館に反応が出て来た」

「そうでしょうね、サリエル直々にエリスの救出を命じていましたもの」

「八雲紫はすでにサリエルと接触していたのですか?

…これは本当に厄介ですね。双方共に問題行動を既に起こしているとは」

 

オマケに移動の時点でなんかあったみたいだし。これは、まだまだ休めそうにないみたいね…

 

 

 

 

 

「―――やってくれたねえ、あの秘神!」

 

邪仙との喧嘩に割って入って来たエリスとかいう悪魔から、華扇や閻魔に仙界の連中も交えて情報を引き出してる途中で例の秘神…摩多羅隠岐奈本人が出て来た。どうも私らが地底に仙界・後戸の国とうろついてるうちに地上で一気に動かれちまったらしく、『紫を直接問い質したければついて来い』なんて言って来たんだが…!

 

「貴方を蚊帳の外にするなんて…摩多羅隠岐奈様は余程後ろめたい手段を用いていたようですわね」

「ありゃ、お前さんも追い出されたのかい?」

 

博麗神社に飛ぶとか言っておきながら、あの秘神は私だけ地底に送り帰しやがった。私に聞かれたくないことが山ほどあったってことさね。

ま、私とは違う理由で追い出されたのも目の前にいるみたいだが。

 

「ウフフ…追い出されたのではなく離脱したのですわ。最初に断られた通り、戦力を引き連れて博麗神社に移動するのは避けたいというのも真実でしょう。仙界からの参加者は豊聡耳様一人と指定してきたのですから、私は最初から空間移動に巻き込まれていませんもの」

「へえ、つまり私の方にわざわざ来てくれたってことかい。

…何を企んでる?中身によっちゃ乗ってやろうじゃないか」

「好ましいですわ、その即断即決。

あの方の協力者が集合している有力勢力の拠点が地上にございまして。私であれば地底からでも直接乗り込めますわ。ですが、私一人では協力者どころか敵襲と判断されかねませんので…」

「椛もそこに居れば私は協力者だと証明してもらえるってことかい。

いいだろう!紫や摩多羅隠岐奈より、豹の話の方が聞きたいからね。それじゃ、どこに向かうんだい?」

「紅魔館…西洋からこの地に移り住んだ、吸血鬼の館ですわ」

 

こんな形でこの邪仙と協調することになるとはねえ。普段の私じゃこういった策を弄する奴と組むなんてまず有り得ない…これも豹と関わったからこそ。

本当に、豹は私を楽しませてくれる!地底の停滞した時間とは比べ物にならない騒動に、まだまだ付き合わせてくれるわけだ。遠慮なく暴れさせてもらおうかい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――取引内容は以上よ。何か質問はあるかしら?」

「…最初からずっと私達は利用されてたってわけ?」

「そういうことになるわね。幻想郷の管理者を二人同時に敵に回しては、情報収集が追い付くはずもないわけだわ」

 

目を覚ました輝夜に帰って来たウドンゲと手分けしててゐ・清蘭・鈴瑚も起こして、情報交換で得た内容を全員に周知させて。まず言葉を返してきたのは輝夜。

 

「気に入らないわね、ここまでコケにされたのは地上に降りてからは初めてじゃないかしら」

「輝夜、気持ちはわかるけど豹の協力者を叩くのは許可できないわ。サリエルと魔界神への伝手なのだから」

「何よ、ここまで好き放題されて永琳は悔しくないの!?」

「サリエルとの対立を避ける方がずっと重要だわ。私にとってはね」

 

…案の定輝夜は不満気だわ。藤原妹紅との殺し合いを定期的に楽しんでいるように、永く生きる割に輝夜は感情的な面が強い。だからこの反応も予想は出来ていたのだけど…

 

「結局、霊夢と魔理沙も引き下がってるみたいですし…相手が悪かったわけですか」

「地上の住人以上に魔界人は侮れないなんて…本当に私達は驕ってたんですね」

「でも次はやられないわよ!あれだけ手の内を見せて来たんだし!」

「いやいや、追撃禁止ってお師匠様が言ってるから。先走られても困るからね?」

「だからと言って、このままやられっぱなしってのも癪だわ!」

 

てゐが清蘭に釘を刺したのにも関わらず、輝夜が納得せずに蒸し返す。困ったわね、こうなった輝夜はそう簡単に引き下がらないわ…

 

「…輝夜、気持ちはわからなくもないけれど。せめて日が昇るまでは手を出さないで頂戴…それ以降なら相手を選べば報復しても構わないから」

「相手を選べばって…なんでそこまで気を使わなきゃなんないのよ!?」

「言ったでしょう、サリエルは蓬莱人を疑似的に殺し得る。そのリスクだけは看過できないのよ、何があろうともね。

お互いついさっき失態を晒しておいて、問題無いなんて言わせないわよ?」

「ぐ…!」

「魔界の住人には今後一切手出ししないで頂戴。

 報復を向けるのは幻想郷の住人だけにしなさい。出来れば、魔界人が幻想郷から去った後で」

「ぬぐぐ…仕方ないわね。しばらくは大人しくしてあげるわよ。

でも、追撃さえしなければいいのよね?」

 

…駄目かしら。思った以上に輝夜の気に障ったようね。

まあ、情報不足なのは事実だし…仕方ないか。

 

「私は動けない。豹とユキが最大限の警戒を向けているのは私なのだからね。フォローは出来ないわよ?」

「安心しなさい永琳、私の立場は弁えてるわ。

余計な連中が動かない程度には抑えるわよ」

「仕方ないわね…ウドンゲ、清蘭、鈴瑚。しばらくは輝夜の指示に従いなさい」

「「「えっ」」」

「ちょっと?どういう意味かしらその反応?」

「てゐは輝夜と合流する前に一つ頼まれてくれるかしら?」

「なんですかお師匠様?」

 

一度守矢神社で合流しているのだから、ウドンゲを連れていれば輝夜が博麗神社での情報交換に参加を拒否されることはないでしょう。逆に言えば、独自の情報網を持つてゐに探らせるべきは博麗神社に集まった面々とは別の勢力。

 

「可能な限りで構わないから、守矢神社含む妖怪の山と、人里の守護者を保護した命蓮寺の動きを探って来て頂戴。逆に魔界と直接繋がる魔法の森のアリスと紅魔館は放置しなさい…軽く探っただけでも取引不成立にされかねないから」

「ま、そのくらいならお任せくださいな。

先にお師匠様に報告してから姫様に合流で?」

「頼むわよ。私はもう手を出せないのだから」

「りょーかい!」

 

ここまで同時多発的に起こる異変は滅多に無い…そもそも異変は幻想郷に生きる妖怪を存続させるという目的もある以上、管理する側としても複数個所で同時進行させるのはデメリットしかないわ。この異変が八雲紫と摩多羅隠岐奈という【幻想郷の管理者同士の対立】が原因となっているのは、この点から事実と断定できる。

それならば、その対立軸が同位置に姿を現している今こそ―――輝夜を囮にてゐを暗躍させる絶好のタイミングだわ。今後この異変がどう動くのかを予測するためにも、情報だけは集めてきてもらいましょう。

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