…そして、前話前々話と続いた圧倒的多数の見逃し衍字、これ衍字じゃなくて脱字でした…やばいですね、本格的に集中力が切れているのかもしれない。
「―――って状況なの。ヒョウくんがそう簡単に魔界に帰って来てくれるはずないけど、せめて直接会ってお話ししたい…たったそれだけのことなのに、魔界と幻想郷の危ういバランスの都合で取り返しのつかないことになっちゃうリスクがあるってことよ」
なるべく簡潔に袿姫ちゃんと磨弓ちゃんに状況を説明したんだけど…やっぱり長くなっちゃった。サリエル脱出に関しては端折れたけど、それに端を発したヒョウくんの反乱とその後始末。加えて魔界で大暴れした4人やヒョウくんを見つけてくれたアリスちゃんのことも話さないと私たちが迂闊に動けないのがわからないだろうし、そこを踏まえた上で幻想郷でもヒョウくんの存在が問題になっちゃってる現状の説明―――手短に終わるはずなんてなかったわ。
「…成程な、神綺の側近は少女ばかりなのにはちゃんとした理由があったわけだ。私のような第三者からすれば上手く回っている世界にしか見えない魔界だが、そこまで安定する過程で起こった反乱。神綺個人は敗北したが、夢子を中心とした部下の奮闘で鎮圧には成功したことで、創世神の敗北は魔界の支配に何も影響を与えなかったというわけかい」
「後になって振り返ってみれば、いつかは起こってしまう避けられない歴史だったんだろうねー…
結局今になっても私は隠居できてない。
だからこそ、アリスちゃんが見つけてくれたヒョウくんの背中を…見失うわけにはいかないの」
「まったく…いい加減なようで神綺は魔界に対して本当に真摯なんだよねえ。自分が創り上げた世界だから当たり前だと思ってたが、そんな言葉じゃ足りない。己の本心を抑えてでも優先し続ける世界、私からすりゃ神綺は立派な創世神に見えるけど」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、私はまだそれを認めるわけにはいかないのよ。
その評価を、ヒョウくんからもらえた時。初めて胸を張れるんだと思ってる」
「…そうなのかもな。私が勝手に同意するのも失礼だろうが」
私たちも神である以上、信仰されなければ存在が維持できなくなってしまう。
でも、私や袿姫ちゃんは【信仰される相手を自分で生み出せる】―――それ故に魔神や邪神と呼ばれる存在。私の創造魔法や袿姫ちゃんの造形術はそういったチカラを持たない神々からすれば羨望されるモノで、忌避されるモノでもあるわ。
己の存在を維持するためだけに使える、利己的でしかないチカラ。嫉妬や僻みもあるんでしょうけど…他者からの信仰がどれだけ大切なのかは神だからわかる。だからそう思われても仕方ないんだけど、私のためだけに創造魔法を行使してるわけじゃない。それを証明したいから、
…自由にさせた結果、みんなからヒョウくんを失わせてしまったんだけどね。
「…反逆した護衛を、そこまで…」
「あー、磨弓にはちょっと理解するのが難しいかもねえ。
なんて言えばいいのかな…ヒョウって奴は、反乱を起こしたけど神綺を裏切ったわけじゃない。これで納得できるか?」
「裏切っていない…ですが、反逆したことは間違いないのですよね?
もう一度信を置くのは危険ではないのでしょうか?」
「磨弓ちゃんは兵長らしい判断ができてるのね。袿姫ちゃんが側に控えさせるのも納得だわー。
でも…うーん…ヒョウくんのことを信じてもらうのは難しいかなあ」
「そうだねえ、磨弓は《忠誠心がそのまま強さになる》んだ。だから自分がそんなことをしたら一気に弱体化する―――そこも含めて理解し辛いんだろう」
忠誠心、か。それなら…
「磨弓ちゃん、前提がちょっと違うの。
裏切ったのはヒョウくんじゃなくて、私なのよ」
「…はい?」
私がヒョウくんに負けちゃった、最大の理由。あまり口に出したくない私の過ちなんだけど、今はみんなのために話すべき。
「磨弓ちゃんが袿姫ちゃんに色々力をもらったようにね、ヒョウくんには私がとても強い能力をあげたの。
でもね…その能力をある一点だけに使ってもらうために、私はヒョウくんの別の力に制限を掛けちゃったんだ。
つまり、最初からヒョウくんはその力を私に奪われちゃってたの。ヒョウくんが、私を裏切ったんじゃない。私がヒョウくんを裏切っちゃってたから、ヒョウくんが離れていってしまっただけ…だから、ヒョウくんが私を許してくれれば、またやり直せるの。これでわかってもらえないかな?」
「…はい、正直に言ってしまえば、理解できていないのでしょうけれど。先ほどまで私にもお話ししてくださいました過去と、神綺様のその気持ちで納得します。
袿姫様がヒョウの助けになるべく動くのであれば、私もそれに従いましょう」
「ホントに!ありがとね磨弓ちゃん!!」
よかったあ、納得してくれた!袿姫ちゃんの言葉通りだと、迷いを持った磨弓ちゃんだと戦闘で不利になっちゃいそうだったから不安だったんだけど。この様子ならたぶん大丈夫よね!
「ふっ、流石は魔神神綺だな。言葉だけで磨弓を納得させられるとは」
「私がすごいんじゃなくて、これで理解してくれる磨弓ちゃんがすごいのよ。その創造主たる袿姫ちゃんもね」
「やれやれ、このあたりは本当に相変わらずだねえ神綺は。
それで、実のところ私に何をしてほしいんだい?」
やーっと本題に入れる!状況説明に時間がかかるだけで、頼みたいことはシンプルだからここまで来ればもう大丈夫でしょ!
「袿姫ちゃん、アリスちゃんともお友達になってくれてるんだよね?」
「ああ、地上に出た時に知り合えた者の中では最も有意義な交友関係になったな。人形製作という私の造形術に通じるものがありながら、神綺の創造魔法の影響も色濃く出ている自立人形…魔界出身だと聞いた時にもしやと思ってはいたが、神綺がここまで入れ込んでいる娘だとは流石に読めなかったけどね」
「私も何度かアリスさんとはお話しさせていただきました。その作品である人形にも多少の言葉を発せる者が居ましたので、似た立場の者として興味深い方です」
「あ、もしかして上海ちゃんのことも知ってるのかな?」
「はい、袿姫様とアリスさんが会談している際に上海ともお話しさせてもらいました」
「それなら驚くわよー!ヒョウくんの隠れ家のおかげで、上海ちゃんがもっと上手く話せるようになってるから!」
「え、そうなのですか!?」
「って、その感じだと神綺もあの人形と直接話してるよねえ?どういう状況…いや、魔界に入って来た幻想郷の住民の中にあの人形もいたのか」
「そう!だからお願いしたいことは簡単なのよ!
アリスちゃんと合流して力になってあげてほしいの!私よりずっと今の状況に詳しいと思うから、細かいところは直接聞いてもらう方がいいと思うわ。明日には私も幻想郷に行けるんだけど、私とサリエルが同時に幻想郷に侵入しちゃうとさー…」
「ああ、管理してる連中が動きかねないのか。そうなった場合魔界人を前面に出すのがまずいから、真正面から戦闘になっても問題ない私の助力が欲しいと」
「そういうこと!お願いしてもいいかな!?
お礼は後で言ってくれればなんとかするから!」
「いいだろう、面白い話も聞かせてもらえたからな。
これから準備して磨弓と共にアリスを訪ねる。それでいいね?」
「ありがとう袿姫ちゃん!
それじゃ私は魔界の方を片付けてからアリスちゃんのお家に行くから!また後でね!」
「はいよ、それじゃ磨弓も用意しなさい」
「了解しました!」
うん、これでアリスちゃんとユキちゃんのフォローになるはず!
後は魔界の処理を終わらせるだけだわ!!
「…もう、本当に豹は潜伏する気があるのかしら?門番役を引き継ぐなんて」
「ルナサも里香と直接会ってるんだろ?レティや美鈴にアレの相手をさせるのはな…」
「豹がそこまで言うほど酷いの、里香ってのは?」
「そうみたいね~。
はい、豹の分のホットコーヒー。この雪じゃすぐ冷めちゃいそうだけど…」
「気にしないさ、ありがとなメルラン」
「淹れたのは咲夜だけどね。やっぱり本職のメイドにはかなわないわ…私が淹れるよりずっとおいしいわ」
「姉さんは自分で淹れるだけ私よりはマシじゃないかしら~。
…機会があったら、私が淹れてみたのも飲んでくれるかしら?」
「淹れてもらえるならありがたくもらうさ。というかメルランは大丈夫なのか?」
「麟もサリエル様も癒すべきところは見当たらないって言ってくれたから、だいじょうぶよ~」
「気を使ってくれたのはわかるんだけど、私にホットコーヒーを差し入れられてもねえ」
「あー…咲夜はあれでたまに天然だからな。普通に気付いてなかったパターンじゃねえかな」
「まあ、自分でアイスコーヒーにしていただくわ。好意は素直に受け取っておくべきでしょうし」
レティにイヤリングを持って来るついでに、咲夜が用意してくれたホットコーヒーも持ってきてくれた。レミリアの言う通りこの寒い中俺と話すことを優先した面々はそれなりの数がいて、人数分のコーヒーカップをトレーに乗せて持ってくる程度には。ちなみにルナサとメルランが騒霊の力で零れないようにトレーとコーヒーカップを固定しているようで、咲夜がメイドとしての適性を感じたらしい。
そんなことを聞けるぐらいの、安らげるひとときだった。
「それで、上海。隠れ家は…」
「…はい、今の私のボディに残っていません…隠れ家さんは、元に戻るだけと言っていましたが…
ごめんなさい、私が無力だったせいで」
「上海が謝ることはない、それこそ皆を無事にここまで逃がしてくれた…いくらお礼を言っても足りない。
ちゃんと帰って、お礼を言ってやらないとな。元に戻ったっていうんなら」
「………そうですね。そのときは、私も豹さんと一緒にいてもいいでしょうか?」
「断る必要なんてない。俺の隠れ家にとって上海は、もう家族同然なんだろうからな」
「…っ!
はい…ありがとうございます」
上海の魔力とその様子から、同化していた隠れ家が消えてしまったのは察していたが…その最期は俺の隠れ家らしすぎる散り様だった。
(俺の最終手段、自爆…先に隠れ家が使っちまうなんてな。
どうか、無事に隠れ家に帰っていてくれよ)
博麗の巫女を敵に回したことで…俺も同じように、潔く散ることができるのは―――まだずっと先になりそうだった。
「…それで、待たせてしまってすまない。
―――永江衣玖さん、だな?見ず知らずの俺にここまで手を尽くしてくれてありがとう。いつか必ずお礼はする」
「いえいえ、空気を読んで待っていましたのでお気になさらず。私としても豹さんの助けになることにメリットがありましたので。それに衣玖で構いません、本格的な今後を話す前に挨拶はしておくべきでしょうし」
「そうだね、私もここまで衣玖が協力してくれるなんて思わなかったよ。それこそ豹も一度私たちと飲みましょうよ、絶対に誘う前に居なくなってたし」
「雷鼓もありがとうな、ルナサから力になってくれてるのは聞いてたが。それがお礼になるってんなら、終わり次第付き合おう」
「言ったね!大人数で付き合わされるのに覚悟しておきなさい!」
雷鼓と初対面になる衣玖さん…いや、衣玖でいいのか。この二人もわざわざ外まで出てきてくれていた。言葉を聞く限り先に顔合わせはしておく方が効率的と判断してくれたようだし、本当に貴重な相手に助けられてたらしいな。
「それで、ルナサは平気なの?」
「…どういう意味よ?」
「空気を読みましょうよルナサさん。メルランさんの距離感ですよ」
「…自覚すればこうなるのはわかってたから、気にはならないわ。私はメルランの姉だから」
「「あー…」」
「ふえ?みんな私がどうかしたかしら~?」
そんな二人はルナサと小声でやり取りした後、俺の隣に陣取るメルランを見て何か納得している。
…警戒状態の俺なら普通に聞き取れるんだが。どうやらまた俺はやらかしたらしいな…流石に今回は不可抗力だと見逃してもらいたい。
「となると、里香たちが到着したら皆に軽く自己紹介してもらうだけでもう全員顔と名前は一致するのか?」
「一番面識のある方が少ない私が里香さんとリィスさんの他にまだお会いできていないのが、今離れてしまっている藤原妹紅さんだけですね。鍵山雛さんとは一度
「そうか、衣玖がそうなら大丈夫そ―――っ!!?」
「あらあら、少し自信を無くしてしまいそうですわ。こうも簡単に気付かれてしまうのが続きますと」
「「「「「「!?」」」」」」
「よぉ!私とコイツも話を聞かせてもらうよ、豹」
どういう状況だ…!?霍青娥が勇儀を連れて空間移動して来やがった!