迅速な誤字報告、いつも助かっています。ありがとうございます。
…妖夢を連れて家に帰り着いたのだけれど、予想外な来客が増えているのよね。
「妖夢は人里で慧音と小兎姫にも接触してたわよね。小兎姫の動きについて何か聞いてるかしら?」
「え、あの人がどうかしたの?人里を隠し終えた慧音と合流してからのことは何も聞いてないけど」
「そう、どう読むべきかしらね…」
ユキは妹紅と雛を連れてそろそろ私の家に戻って来るのだけど、その後方に命蓮寺から星が秦こころともう一つ反応を連れて私の家の方に向かって来てるのよね。それに加えて小兎姫が何故か豹の隠れ家の方向から命蓮寺に向かっているわ…流石に魔理沙を相手しながら幻想郷広範囲を探査・索敵魔法で探るような余裕なんてあるはずないから、魔理沙を大人しくさせてから探知した状況の変化なのだけれど。
「何か動きがあったの?私はそういうの苦手だから教えてくれないとわからないよ」
「小兎姫がなんでか豹の隠れ家方面から命蓮寺に向かってて、命蓮寺からも3つ反応がここに向かってるのよ。
まあこっちに来てるのに星がいるから交戦にはならないでしょうけど、妖夢は何か心当たりはないかしら?」
「へ、命蓮寺?
うーん…たぶん小兎姫が命蓮寺に向かってるのは、慧音を保護してもらってたんじゃないかな?慧音一人じゃ夢月みたいなのは抑えられないし、位置的にも人里から近いから。
ただ、豹の隠れ家からってのは全然わからない。さっきの人形で聞いてみたら?」
「その人形を持ち出さずにサリエル様も幻月も動いてるのよ。リリーすら
「そうなんだ…私は全然情報が足りてないからやっぱりわからない」
「星が来るまで待って聞くしかないか。
問題は星が連れてる反応、片方は秦こころだけどもう一人が強大な相手なのに心当たりがない…これも妖夢は探知できない?」
「えっと、ユキと妹紅さんの後から来てる3人だよね?私は誰も知らないなぁ…」
となると妹紅か雛が知らないとなればお手上げね。どちらにしろ
―――そんなやり取りをしてる間に、先行していたユキたちが戻って来たわ。
「アリス、大丈夫!?」
「私は問題ないわよ。むしろ豹がマズいんじゃない?」
「そうみたいだな…というか妖夢も関わってたのか」
「藍に頼まれたからね。それで…あなたが鍵山雛かな?」
「ええ、貴方は魂魄妖夢だったかしら。よろしく頼むわ」
妖夢と雛は初対面なのね。それこそこの一件が表面化する以前から雛と面識がある私の方が稀少か。
「それでなのだけれど…妹紅か雛、星が後からここに向かって来てるのは把握できてるわよね?秦こころじゃない方の反応は誰なのかわかったりしないかしら」
「ああ、アリスはあいつと面識が無くてもおかしくないか。古明地こいしだよ」
「「えっ!?」」
「どういう経緯で命蓮寺からここに向かってるのかは全然わからないけど、話は聞く価値があるんじゃない?」
「星が一緒に来てるなら、戦闘にはならないと思う…ついさっき初めて話したわたしが言うのもどうかとは思うけど」
妹紅が出した名前に私だけじゃなく妖夢まで思わず声を上げてしまっていたわ。私は人里で人形劇を演じているから、秦こころの能楽にも興味を持って見に行ったことがある。だからその魔力も知っていたのだけれど、古明地こいしに関しては容姿を人伝に聞いたことがあるぐらいで直接会ったことはない。というか…
「妹紅はなんで古明地こいしの反応だってわかるのよ?」
「私は都市伝説異変と完全憑依異変の時に直接やり合う機会があってね。顔見知り程度の付き合いはあるのよ」
「…そういえば、都市伝説異変があった時期は魔界じゃないと手に入らない人形制作の材料を仕入れるために魔界に里帰りしてたわね。完全憑依異変は私の人形に憑依されると厄介なことになるから避けてたし」
「私は時たま守矢神社や地底に続く洞窟あたりで探知できたから知っているのだけれど。あの二つの異変に関わっていないなら、地底の住人である彼女の妖気を知らないのも仕方ないわね」
「い、いいのかなー?思いっきり相互不干渉を無視してるけど…」
「妖夢も袿姫が元凶だった畜生界の異変で地底に乗り込んだって聞いてるわよ?人のことは言えないんじゃないかしら。
まあ、動向が気になる相手ではあるわね…って!?」
「この反応、さっきの邪仙!?」
そんな話をしている途中でユキと私がほぼ同時にそれに気付く。命蓮寺に突然現れた空間移動の反応、それが紅魔館に現れて…!
「っ!?もう一つの反応、星熊勇儀よ!」
「はあっ!?あの邪仙が鬼を引き連れて紅魔館に出て来たってこと!?」
「どういうことだ!?その二人をぶつけて豹と椛は離脱したって言ってたよな!?」
妖怪の山に住む雛が古明地こいしだけでなく鬼の四天王の妖気も知っていたことで、また事態が急変したと思った私と妹紅が反応してしまったのだけれど。この中で最も場数を踏んでいるユキは冷静で。
「落ち着いてアリス、妹紅さんも。今の紅魔館をたった二人で襲撃するはずないでしょ?
たぶん、兄さんから直接話を聞きに出向いただけ。少なくともあの邪仙があれだけ戦力が集まってるところに殴り込むってことはないよ」
「…それもそうね。慌てる必要はないのかしら」
「そ、そうなのかな?私はその二人がどういう形でこの異変に関わってるのかすらわかってないんだけど」
「そういえば妖夢は人里に援護に来てからまともに話も出来ずに戦闘続きになるのかしら?
…私達を追って来てる3人が来るまでに軽く説明しておくべきじゃない?」
「だな。たしかに今の紅魔館の戦力なら問題ないか」
「うん、それじゃ妖夢に説明しながら星たちを待ちましょ」
というわけで、まだ家の中には入らず星たちを外で待つことにしたわ。正確な私の家の位置を知っているはずないでしょうし、近くまで来たら迎えに行く方がいいでしょうしね。
「ただいまー!夢子ちゃん、終わったかな!?」
「今片付けてる件で私が処理できる部分は終わります。ルビーが手伝ってくれたおかげで効率的でした」
「ルビーちゃんはこういう処理関係のお仕事が本業だもんね。ヒョウくんに会いたいって気持ちも私たちと同じぐらい強いし」
執務室に帰って来ると、残ってたお仕事の7割ぐらいは夢子ちゃんが終わらせてくれてたわ。さっすが夢子ちゃん、私より仕事が早い!
「神綺様も溜め込まずに適宜処理してもらえればもう少し早く動けたはずですが?」
「う゛っ…ごめんなさい」
「これで少しでも改善されれば、先輩のおかげということになりますか」
相変わらず夢子ちゃんは私の内心を遠慮なく読んで釘を刺してくれるなー。今回に関してもぐうの音も出ない正論、実際夢子ちゃんとユキちゃんは仕事量の差があるとはいえ一日もかからずに自分のお仕事は終わらせてたし。
「と、とりあえず袿姫ちゃんは先にアリスちゃんと合流してくれるって!」
「ありがとうございます。
ルビーが戻り次第、私とルビーも幻想郷へ向かいます」
「うん、私もお昼前には合流出来ると思うから!」
それどころか私じゃないと処理できないお仕事も効率的な順番になるように仕分けてくれてる。本当に夢子ちゃんは管理者として優秀よねー。
「…これ以上私に権限を押し付けないでくださいよ?」
「わ、わかってるって」
追撃のように釘が差される。うぅ、早く隠居したいのに夢子ちゃんがそうさせてくれないところもあるのよね…
そんなことを思いながら私のお仕事を手に取ったところで、執務室のドアがノックされたわ。
「失礼します。ルビー、戻りました」
「ご苦労様、ルビー」
「おかえりー!」
「あっ、神綺様もおかえりなさいませ!
その、ヒョウさんは…?」
「うん、袿姫ちゃんもアリスちゃんと一緒にいてくれるって!」
「そうなのですね!よかった…」
ルビーちゃんも丁度いいタイミングで帰って来てくれたみたい!これなら袿姫ちゃんより先に夢子ちゃんとルビーちゃんでアリスちゃんのお家に向かえるから、アリスちゃんに説明する時間も取れそうね!
「―――こちらも終わりました。
神綺様、それでは」
「…はい、お願いします!」
「うん、アリスちゃんのお家に送るね!
夢子ちゃんもルビーちゃんも、例の4人にだけは気を付けてね!」
「「はいっ!」」
一休みさせた方がいいとも思ったけど、アリスちゃんのお家でも大丈夫だと思ったからそのままゲートを創り出す。夢子ちゃんもルビーちゃんも期待に満ち溢れた目をしてるから、待たせちゃう方がかわいそうだしね。
「では、先行させていただきます!」
「神綺様、ありがとうございます!行ってきますね!!」
「私も急ぐから、無理はしないでねー!」
そう言って夢子ちゃんとルビーちゃんがゲートに飛び込んで、無事に移動が済んだことを確認して閉じる。
さ、後は私が処理しないと終わらないお仕事。頑張らなきゃ!!
「豹さん、この方は…!?」
「…勇儀、椛を許してあげられるか?」
「私がそんなこと気にすると思ってるのかい?むしろ見事なもんだよ、私を出し抜いて豹と離脱するなんてさ!
龍が椛を受け入れなかったり、逆に椛が妖怪の山に戻る気が無いなら、私が地底で椛を保護してやるよ。白狼天狗であれだけの気骨を持ってるのは貴重だからね」
「そうか、そう言ってくれて安心した。
勇儀は味方だ。地底妖怪をまとめる鬼の四天王、これ以上はそうそういない戦力だ」
「そういうわけだ、お前さんらも豹を助けてるんだろ?荒事は引き受けてやるから、豹の話に混ぜてもらうよ。
それで、だ。コイツはわざわざ例の秘神に追い返された私を地底からここまで送ってくれたんだよ。あの秘神より豹を優先することは私が保証するし、裏切りそうになったら責任は私が取ってやるから、協力者として受け入れてくれないかねえ?」
「…霍青娥、目的は変わっていないってことか?」
「青娥とお呼びくださいな。ええ、先ほど時間を作って夢子さんとユキさんにも同じ要求を伝えましたの。ユキさんからもご依頼されることになると思いますので、よろしくお願いしますわ」
「マジかよ…!まさか夢子と一緒に命蓮寺から空間移動したってことは、止められなかったのか?」
「ええ、ユキさんのお言葉をそのままお伝えしますわ。
『兄さんが魔界に帰って、わたしたちと一緒に過ごしてくれる。それが叶えられるなら、見ず知らずどころかまだ生まれてない存在なんて切り捨てるのが当たり前よ』
だそうで」
「………ユキにそこまで言わせちまったのか、俺は」
真っ先に上海が警戒心を持った反応を返したことで冷静になれた俺は、状況次第で力を貸してくれると踏んだ勇儀に問い掛けたのだが。そのまま流れで邪仙に話が向いたことで、俺がどれだけユキを追い詰めていたのかを思い知らされることになった。
「豹、この邪仙の口振りからすると…幻想郷も魔界も関係ない方向で何か要求されてる?」
「あら、あら…なかなかそちらのヴァイオリニストさんも鋭いようで。
お察しの通り私は個人的なお願いをこの方に依頼していますの。ただ…豊聡耳様が摩多羅隠岐奈と協調するのであれば、これ以上仙界に留まるのも考えものですので。こちらの視点からこの一件、詳しくお話を聞かせていただきたいのですわ」
「隠岐奈さんも相変わらずのようですね。貴方のような方にすら不信感を持たせてしまうなんて」
オマケにこの邪仙、俺が
…さっきルナサの反応に期待していた辺り、彼女もこいしが言ったように恋の話が大好きなのだろう。こういう方向で気を使われるのは地味に悲しいんだが。
だが、ここに来て自由に動ける空間魔法の使い手が協力してくれるというのなら…ありがたく力を貸してもらうべきだろう。今となっては、俺の関係者と言うだけで情報源として博麗の巫女や魅魔一派に襲撃される可能性が出て来るのだから!
「わかった、今は戦力はいくらでも欲しい…話を聞かせるのは構わない。ただ、その空間移動能力を使って、もう何人かここに連れてくることは出来ないか?完全に博麗の巫女を敵に回しちまった以上、孤立させる方が危険がある」
「それぐらいなら構いませんわ。何方をお連れすれば良いのでしょう?」
「二つ返事でOKされるとは思わなかった…なら少し時間をくれないか?顔見知りを連れて行く方が怪しまれないだろう。人数が増えても負担は軽減される俺の補助術式を青娥の空間移動に組み込む」
「ウフフ…この私と協力して術を扱うなんて、とてもハイリスクだということが理解できないはずないのに。迷わずそんな言葉を出せるなんて、本当に好ましいですわ。
豹様の考え通りにしてくださいな。そのぐらいの時間はお待ちしますわ」
「ちょ、ちょっと豹?こんな怪しいの引き込んで本当に平気なの!?」
雷鼓が常識的な反応を返してくるが、今は戦力の方が必要だからな。だが、雷鼓の危惧も考慮する必要があるか。
「誰かすまないが、レミリアに勇儀と青娥も紅魔館に入れていいかだけ確認してもらえないか?
出来ればルナサかメルラン、雷鼓か衣玖にお願いしたい…レティと上海は青娥に同行してもらうことになるからな」
「え、私?」「私ですか?」
名指しされたレティと上海が怪訝な反応を返す。危険が無いわけじゃないから、レミリアに話を伝えれば同行すると言い出すのもいるだろうしな…少なくともメディスンは上海について行くだろう。
「…わかった、私がレミリアに伝えてくるわ。少し待ってて」
「悪いなルナサ、頼む。それとリリーが起きてたら、連れて来てくれ」
「私が外に出る前に起きてたわ。任せて」
「助かる」
そう言ってルナサが紅魔館に入って行った。
さて、里香とリィスさんもそろそろ到着するが…青娥に連れて来てもらうメンツが最後になりそうだな。