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「―――要するに、奴も【お兄様の殺害】が目的の一つであることに嘘は無かった。
ただし、それを幻想郷で実行する気は最初から無かったからこの局面で使い捨てられたということか」
「どうだか。わたしどころか舞と里乃の援護すらできないぐらいアンタも暴れてたんでしょ?魔眼の援護がなきゃわたしも陰陽玉の巫女の神社に連れてく気だったみたいだし、まだ使えるとは思ってたみたいだけど」
豹さんの指示で魅魔さんの襲撃に遭った椛さんとメディスンちゃん、ゴリアテちゃんの治療をサリエル様と共に終わらせたところで、サリエル様の命令を受けていた幽玄魔眼が一人の悪魔…エリスを連れて戻ってきました。
サリエル様がレミリアさんに断りを入れた上で空間魔法で紅魔館内に迎え入れたのですが、それを目の当たりにしたことでパチュリーさんとフランドールさんもサリエル様が西洋で名高い大天使本人だと理解したようですね。紅魔館内部を広げている咲夜さんの空間魔法や、パチュリーさんが構築した早期警戒領域など複数の高位魔法が常時展開されている紅魔館内部に空間移動用のゲートを創るとなると様々な部分で干渉し合い不安定になる…そうなるはずがサリエル様はどの魔法にも影響が出ないようにゲートを創り出し幽玄魔眼とエリスを迎え入れたようで、珍しく図書館から出て来ていたパチュリーさんが「…凄いわね」と言葉を漏らしていました。
そして、サリエル様の命令でレミリアさんを中心とした皆様にこのお二人が幻想郷に侵入してからの動きを詳しく説明することになりました。それを聞き終えてレミリアさんが出した結論に対する返答がこちらなのですが…
「そこはついさっきこの館の入口に空間移動してきた二人も同じ考えじゃない?こっちに来たってことはあの秘神に追い返されたってことだし」
「む?つまり外でヒョウが対応してくれている二人も後戸の国に居たということか?」
「居たどころかわたしを二人掛かりで捕まえて、偉そうな連中に情報提供させやがった鬼と仙人です。あのレベルのがごろごろいるほどとは思ってませんでした…わたしも魔眼も幻想郷をナメ過ぎてたのは認めなくちゃならないです」
「アタシが空間移動に介入したタイミングでは、あの二人は陰陽玉の巫女の神社に向かっている奴らに同行してませんでした。エリスの言う通り、秘神にとって神社に連れて行くのはハイリスクだって思われてる奴なんじゃないかな、と」
私たちを襲ってきた裏で、摩多羅隠岐奈は状況を理解していない仙界の面々や中立的だった茨華仙様と地獄の閻魔様を引き込むべく動いていたようです…!
「隠岐奈も相変わらずだなぁ。私を引っ張り出した時点で手段を選ばないのはわかってたけど、魔界からの侵入者まで利用する気満々だったわけね」
「それどころか茨華仙様まで自陣営に引き込もうとしている、ですか。私が勇儀様率いる方々まで敵に回したことさえ、豹さんを陥れるために利用されてしまったとは…」
「そのあたりは流石は幻想郷を管理する賢者の一角と言うべきかしらね。今の話を総合すると、博麗神社と魅魔一派に守矢神社と地獄の閻魔、茨華仙に仙界の連中を合流させて戦力拡充することは阻止できなかったってことかしら?」
「そうなっちゃうんだろうね~…結局わたしたちはあのお子様天人一人に足止めされちゃったわけかぁ」
「いやー…元はと言えば私があの迷惑なパパラッチを振り切れなかったのが原因だし。助けに来てくれたカナが気にすることじゃないって。足を引っ張ったのは思いっきり私とメル姉だったじゃん…」
「あの天人くずれは小人と合流したのでしょう?それなら輝針城も索敵範囲に入れておけばこちらから先手が打てる以上、そこまで問題にはならないわ。隠者に頼めば簡単に出来るでしょうし、後で私が見ておいてあげるわよ」
「あはは…パチュリー様は前線に出る気はないってことですね」
「拠点で探査・索敵を任せられるだけでも私にとってはありがたいさ。敵対している幻想郷の住人に関してはそれなりの情報を貰っているが、地理的な面は全く理解できていないからな」
「そうですね。ルナサや雛と短時間とはいえ実際に移動した夢月はともかく、私とサリエルは空間魔法での移動しかしていませんから。移動と索敵に関してのフォローは必要になりますので」
「そうなると、私はしばらく妹様に同行してしまって平気ですかねお嬢様?」
「そうだな、レティが門番を代行する以上それが私にとっての最上だ。まあ、フランを誰にぶつけるのかはお兄様次第になるだろうが」
「美鈴を私に付けるレベルで本気なの。私が思ってた以上に隠者のこと気に入ってたんだお姉様」
「そうじゃなきゃ紅魔館を集合場所に提供なんてしないわよ。私としてもフランがあっさり聞き分けたのは意外だったけど?」
「そりゃお姉さまにあれだけ完璧に出し抜かれちゃったらね、あいつの素性や目的は気になってくるもん。詳しく話を聞くには隠者に手を貸すのが早そうだし」
「妹様がそれで納得していただけるなら問題ありませんね…それで、この裏切り者二名はどう処分するおつもりでしょうか?」
そしてここまでにまとめた情報だけで紅魔館の皆様の動きは決まってしまったようです。流石は異変に際しての対応に慣れているというか…豹さんの指示次第でサリエル様や幻月さん・夢月さんと共闘できる範囲での動きに留まっているのが凄いです。それこそ豹さんが紅魔館の皆様に私たちを加える形で作戦を立てられるような。
その上で、最後に大き過ぎる問題の答えをサリエル様に求めてきています。部下の不始末にどう落とし前を付けるのか、と。
「八雲紫と取引している…『エリスと幽玄魔眼は、今後発見し次第即座に幻想郷より追放する。いかなる手段をもってしても』とな」
「「っ…!」」
「粛正する気は無いということか?随分と甘いな」
「私は月から堕天する際、部下全員を見捨てて単身脱出した。その結果、魔界まで私を追って来てくれたのはリィスのみ…今の私にとってエリスと幽玄魔眼は、数少ない信頼できる存在なのだ。
ヒョウのことで相容れないのは残念だが、私がエリスと幽玄魔眼の命を奪うことはない。だが、ヒョウを選んだ私に失望したのであれば…まだ私の下に居てくれとは言わないさ。
だから…見逃してくれないか?このまま二人とも魔界に送り帰す」
「次に幻想郷に侵入した場合、ここで立ち会った者…姉さんも含めて全員が。
エリスと幽玄魔眼はその場で殺す。それを認めるんなら私はいいよ」
「む、夢月さん?幻月さんやレミリアさんたちはともかく、私やエリーじゃ難しいですってそれ」
「八雲紫も『この2名を発見し次第排除しても良いかしら?』って確認してきましたから。幻想郷の住人も率先して協力してくれるはずですので、大丈夫ですよ」
「へー、あのスキマ妖怪がそんな事認めるのめずらしーじゃん。そこまであいつも豹のこと気に入ってたんだね」
「そういうことだ。エリスと幽玄魔眼を危険に晒さないためにも、これ以上幻想郷に留まらせるわけにはいかない…
エリス、魔眼。これ以上私の下に留まれとは言わない。故に私からの最後の命令だ…このまま魔界に帰り、二度と幻想郷に関わらないでくれ」
「サリエル様…」
…本当に、サリエル様が月を追われてしまったというのが理解できなくなります。部下に対しここまで真摯に頭を下げて、命を守るために頼み込んでいる…こんなに優しい大天使様が、どうして月の支配者から追い落とされてしまったのか。人間の小娘でしかない私が疑問に思うこと自体が不敬かつ失礼なのかもしれませんが、とても納得できません。
そして、裏切り者であるお二人も…その優しさは理解できていらっしゃったようで。思わずその名を溢してしまったエリスが、言葉を返しました。
「最後の命令なんて言わないでください!これだけやらかしたのにまだわたしを切り捨てないでいてくれるなら、まだサリエル様の傍にいさせてください!!
サリエル様の神殿で待ってますから。ヒョウを連れて来てでもいいので、帰って来てください!」
「………悔しいですけど、アタシじゃ何一つヒョウに勝てないってことが理解できましたから。
アタシもエリスと一緒に待ちます。神殿が荒らされないよう、守りに回ります」
「そうか。ありがとうエリス、魔眼。
神綺達と粗方潰したはずだが、生き残りが襲撃を掛けてくる可能性はある。十分に警戒しておいてくれ…襲撃者は始末しても構わんが、生け捕れた場合はマイに引き渡してもらえると助かる」
「「わかりました!!」」
そう声を揃えたエリスと幽玄魔眼は、サリエル様の手を煩わせることなく自ら空間魔法のゲートを開いて去って行きました。これだけの高位魔法を扱える方なのですから、味方として動いてもらえるなら心強いのでしょう。
豹さんのために、サリエル様と神綺様が魔界の強硬派を叩いてくれたのであれば…魔界でその報復が行われる可能性がある。それに対する戦力として扱いたいというのであれば、私たち幻想郷の住民が口を挟む余地はないのですから。
「…まぁ、話を聞いた限り魔界の住人は仲良しこよしが過ぎると思ってたけど。ここまでとはね…
それで、本当に追い返すだけでお兄様に危険はなくなるのかしら?」
「ああ、幽玄魔眼は私の使い魔だ。先ほどの戦闘でヒョウが一時的に全ての魔眼の支配権を奪っていてな…それを再びヒョウにひとつ、魔眼に5つに振り分けた際に私がいつでも幽玄魔眼を制御下に置けるようにしておいた。私が創造する生命に自由を与えるのは早過ぎるというのを思い知ったからな…二人がまた余計な動きをしたならば、私が幽玄魔眼を操って止める。これ以上ヒョウの妨害はさせない」
「わたしはサリエル様を信じるよ。今日だけでもたくさん助けてもらったからね」
「私もカナさんに同意します。幻想郷に侵入する前にエリスさんとは少しお話ししましたが、サリエルさんへの忠誠心は確かでしたので。そのサリエルさん本人にここまでされた以上、幻想郷に侵入することは無いと思います」
「エリスが問題ないなら平気じゃないかしら。幽玄魔眼の方は豹様に敗北感を叩き込まれたようですし、背後を撃つような真似は出来なそうに見えましたわ」
「そうですね…私は豹さんが幽玄魔眼を支配下に置くところに居合わせましたが、絶望に染まった絶叫を上げていましたので。豹さんの恐ろしさを思い知ったことに間違いは無いです」
咲夜さんから見た様子を補足する形で私も同意することにしました。これ以上豹さんに手出ししないのであれば、サリエル様にお任せするべきだと思いましたから。
「…まあ、お兄様がこれでいいと判断するなら私の意見を押し通す必要は薄いか。連絡が付き次第魔界の取引先に監視を頼んでおけばいいだろう」
「魔界と幻想郷で取引だと?
もしや、その取引先とはカムのことか?」
「ああ、リィスからも確認されたよ。あの男、本当に大物だったのだな…」
「ああ、ギャングではなく真っ当な貿易商として活動しないのが不思議なほどのやり手だ。
本人曰く、予想できないトラブルに巻き込まれやすいから手段を選ばない裏稼業じゃないと安定しないと言っていたが」
「あー…カムさんって妙に不憫な目に遭ってますもんね。この前も幻月さんの流れ弾で別荘が半壊したって頭抱えてましたし」
「…姉さん?修理費用請求されても知らないからね?」
「そんなの当然踏み倒します。請求は私を怒らせた命知らず共に向けてもらわないと」
「ああ、魔界でもそんな感じなのねあの男」
「…パチュリー?済んだことを掘り返すのは良くないと思うなー?」
…フランドールさんに視線を向けるパチュリーさんの様子だと、そのカムという方は取引先の紅魔館でもフランドールさんの狂気に巻き込まれたことがあるみたいですね。それはたしかに不憫です…
そのような形で裏切り者の処分が済んだところで、豹さんに通信用のイヤリングとホットコーヒーの差し入れを持って行った一人のルナサさんが戻ってきました。…私も外に向かいたかったのですが、サリエル様の補助として治療役を任されてしまっていたのと豹さんと霊夢さんの戦闘に居合わせた当事者として話を聞かせてほしいと引き留められてしまったんですよね。
「レミリア、豹が『星熊勇儀と霍青娥も紅魔館に入れて構わないか?』って聞いてるわ」
「戦力として扱えるのなら構わないぞ。そのあたりの判別はお兄様にしか付けられないだろうしな」
「わかった。
それなら、その霍青娥にあと何人か連れて来てもらうみたいだから。もう少し時間がかかりそうよ。
それと、リリー?豹が何か頼みたいみたいだけど、もう眼は覚めた?」
「え、リリーですか?だいじょうぶですよー」
「よりによってリリー?
…あー、ノエルも保護しようとしてるのかな豹は?」
「そうかもしれない。上海とレティは顔見知りとしてあの邪仙に同行してもらうって言ってたわ」
「ちょっと、上海が動くなら私とゴリアテも行くわ!」
\ハーイ!/
「え、治療したばかりですが大丈夫ですかメディスンちゃん?」
「このぐらい平気よ!上海の助けになるために私はここにいるんだから!」
「そうか、なら行くといい…上海も断らないだろう」
「それじゃ、リリーとメディスンさん、ゴリアテさんで行ってくるのですよー」
「あ、それでしたら私も豹さんのところに行きたいです」
「麟に聞きたいことは聞いたからな、好きにして構わん。
だがそうだな…霍青娥とやらに同行させないのであればもう一人の星熊勇儀は先にこちらに来るようお兄様に伝えてくれ。先にそちらの詳しい動きも聞いておきたいからな」
「あ、なら私も外出るわ。メル姉を冷やかせるだろうし♪」
「リリカー…この状況で拗らせるようなことしないでよ?」
「へーきへーき!なんならカナも来る?」
「わたしは今のうちにこのお屋敷で武器として使っていい《モノ》を聞いておきたいからね~。室内戦の可能性があるなら真っ先にやるべきことだし」
「それでしたら私が教えますわ。カナさんはこちらへ」
「は~い、ありがとう咲夜さん!」
―――といった形で、私とリリカさんにメディスンちゃんとゴリアテちゃんで豹さんのいる外に出ることになりました。少しでも豹さんのそばにいたい、これぐらいのわがままはいいですよね?