寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により238話の誤変換を修正してます。数ヶ月ぶりに週3更新出来ましたが集中力不足は解決していないですね…
迅速な誤字報告いつも助かっております。ありがとうございます。


第239話 保護すべき相手

古明地こいしと秦こころ双方と面識があって、そもそも星と連絡を取り合うことになっていたのは私だからと。私の家まで近付いて来た3人は妹紅が迎えに行ってくれたのだけれど、丁度そのタイミングで夢子が魔界から戻って来たわ。予想外な相手を引き連れて。

 

「そういえば、上海たちが母さんと話したときに同席してたって言ってたわね…

ルビーも豹を魔界に帰らせたいってこと?」

「はい、戦闘では足を引っ張ってしまうでしょうが…探査・索敵や隠密に関しては役に立てるはずです」

「サポート担当としてはこれ以上ないわ。それに先輩の妹として過ごした時間は、マイやサラよりも長い…先輩を裏切ることは絶対に無いと言い切れる」

「ルビーは兄さんにとって数少ない、弟子って呼べる子だからね。隠れてる兄さんの隠形魔法を見破ったり、広範囲を探査・索敵してるところを逆探知で捕捉するのは、ルビーもわたしと神綺様並にできると思うよ」

「そうだったの…あまり話すことは無かったけれど、しばらく頼むわね、ルビー」

「こちらこそお願いします。それで、あなた方もヒョウさんを助けてくれていた幻想郷の方でしょうか?」

「ええ、厄神の鍵山雛よ。サリエル様のおかげで日が昇るまでは厄を周りの皆に移すことが防げるはずだから、もうしばらく集団行動に参加できるわ。よろしく」

「私はちょっと微妙な立場なんだけど…魂魄妖夢です。よろしくお願いします」

 

パンデモニウムで異世界との交渉役として働いてるだけあって、問題なく妖夢と雛に接してるわね。こういう意味では誰に対しても物腰が柔らかいルビーは幻想郷に入りこませる魔界人としては適任か。

戦闘があまり得意ではないから喧嘩を売ることはないし、索敵・隠密魔法に通じているから霊夢たちに狙われる可能性も低い。そして夢子とユキが揃って信頼してる以上、私が不安視する必要は無いわよね。

 

そして妹紅が星たち3名を連れて戻って来る。

 

「ちょっと迎えに行った隙に2人も増えてるじゃない…どういうことよ?」

「妹紅さん、夢子さんはすでにユキさんと私たちに接触してくれた方です。霍青娥と共に仙界に出向いてくださったのですが、無事に戻って来ていただけたようですね」

「む?霍青娥は後戸の国にいたが…このメイドのお姉さんはいなかったよな?」

「霍青娥の協力で仙界勢力の戦力を確認しに出向いただけよ。先輩の味方にはならないと判断して、早々に離脱したから」

「へー、メイドさんも諏訪子さんみたいに空間移動が簡単にできるんだ。すごーい!」

「…なんだか子供っぽい子たちだなぁ。それで星、命蓮寺でも何かあったのかな?」

「はい、豹さんではなくむしろユキさんと夢子さんにお伝えしなければならないことが。

…その、ここに居る皆様は全員、幻想郷と魔界の全面戦争を避けるべく動いてくれているのですよね?」

「ええ。妖夢は八雲の指示で動いてくれたそうだし、ルビーは魔界から今幻想郷に出て来たところ。摩多羅隠岐奈のように豹を力尽くで捕らえる方向で動くことはないわ。

ただ、連れて来たそっち…古明地こいしは豹に先制攻撃をかけてきたって聞いてるけど?」

「私はそこを謝りに来たの。神奈子さんと早苗からの伝言と一緒にね」

「…それはつまり、命蓮寺に守矢神社が接触してきたということかしら?」

「はい。アリスさんとユキさんがお帰りになられてからも、命蓮寺を訪ねて来た方がいらっしゃいまして。妹紅さんがこちらに向かっていることを聖が確認してくれたこともあり、失礼ながらこんな時間に訪ねさせていただきました」

 

これは…妖怪の山在住の雛が合流してくれてるのは何気に助かるかもしれないわね。少なくとも私や妹紅、妖夢よりは守矢神社に関して詳しい情報を持っているでしょう。

 

「なら中で話を聞かせてもらいましょうか。霍青娥はついさっき星熊勇儀を連れて紅魔館に移動したのを私とユキでキャッチしてる。どうして貴方が別行動しているのか、そのあたりも聞きたいから」

「こいしでいいよ、お姉ちゃんがいるから名前で呼んで。

私もこころも豹の味方だから、いろいろ聞かせてほしーな!」

「ああ、お兄さんにはもっと話を聞きたいからな。こいしと共に力になるぞ!」

「…まあ、戦力としては申し分ないんだが。こいしは勝手に動かずにいられるのか?」

「そこなの!豹なら私が勝手に動く前に止められると思うの!!

無意識に隠れた私を見失わずに豹は見つけてくれるんだもん!!豹が私から目を離さないでいてくれれば、ふらふらしないでいられるはずなのよ!!」

「おお、こいしが本気でお兄さんを狙ってる理由はそこなのか!たしかに無意識に隠れたこいしを見つけられる相手なんて一人も知らない、運命の相手というのもあながち間違いではないのかもな!」

 

…とんでもないことを言い出したわね。霊夢や魔理沙どころか紫すら手を焼く無意識妖怪を見失わずに見つけられる?これを理解しているとしたら、紫が本気で保護しようしたことに説得力が増すわ。精神的に頼れる数少ない男性と言うだけではなく、対処の難しい相手への切り札としても扱える戦力…手放すのは惜し過ぎるでしょう。

 

この推測を裏付けるように、原理を夢子とユキが教えてくれたわ。

 

「無意識に隠れる、でも兄さんは見つけられた…つまり、こいしちゃんのその能力は、相手の無意識を操るってことなのかな?」

「そーだよ!兄さんってことは、おねーさんは豹の妹なの?」

「うん、わたしはユキ。兄さん共々よろしくね」

「成程ね。()()()無意識に干渉する能力だから、先輩には通用しなかった。でも、勝手に動くということは…こいしはその能力をコントロール出来ないということかしら?」

「最近はがんばって自分でもある程度自由に使えるようになったんだけどねー…私が完全に制御することはできないんじゃないかなー?心の瞳を閉じちゃってから発現した能力だから、使いこなせるようになる気はしないわ」

「うーん…こいしちゃんは確かに兄さんに任せるのがいい気がする。無意識に取り返しのつかないことをやられちゃうと、もう全面戦争を止められないところまで来ちゃったからなぁ…」

「…どういうこと、ユキ?まさか私が魔界に帰ったタイミングで!?」

「ええ、大きく事態が動いてしまったのよ。私や妖夢がアリスの家に集まったのは、その対応に動いた結果だから」

「そこも含めて夢子とルビーにも説明するわ。皆、入りなさい」

 

ユキの言う通り、ここから先不用意な行動は避けなければならないわ。そうなると、こいしを紅魔館に向かわせる方向に持って行くことも必要になるわね。敵襲と判断されないような手段を考えないと…

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――という状況になりましたわ。結果的に、私が八雲紫の足止めをしてしまった形になります。こうなった以上私も積極的に豹を助けるべき理由が出来ましたので、申し訳ありませんが貴方の依頼はこれ以上受けられそうにありません。もっとも…八雲紫を経由せずに貴方の求めていた伝手を得ることは出来たようですが」

「その伝手と交渉した結果、八雲紫とも一度話をしなければならなくなったわ。ただ、急ぐ必要は無くなったから…この異変が解決してからでいい。一度私と直接話をする機会を設けて頂戴、と八雲紫に伝えておいて。それだけやってもらえれば後は好きにして構わないわ」

「おや…?予想していたより随分と寛大ですね」

「この異変、私は動いたこと自体が失敗だったのよ。輝夜はやられっぱなしが気に食わないみたいだからまだ介入する気満々なのだけれど…私はこの異変より優先すべき事案が出来てしまった。この異変に介入することでそれに悪影響が出かねない以上、もう不介入を貫く必要がある。つまり、貴方がどう動こうがもう私には関係ないわ。

もっとも、輝夜を危険に晒したら容赦はしないけれど」

「そこは肝に銘じておきますわ。私はともかく、豹が配慮するとは思えませんが」

 

豹の紹介で紅魔館に入り、私の知る限りの情報を主であるレミリアに伝えたところ。『先に永遠亭からの依頼を済ませて来い、その方がお兄様がお前を動かしやすくなる。まだ全戦力が結集できていない今のうちに終わらせるのが効率的だしな』と指示されたので、八意永琳と接触するため永遠亭に出向いたのですが…効率を優先したレミリアの判断は正解だったようですね。まさか、このタイミングですでに月の姫君が八意永琳の制止を振り切って独自に動いているとは。

思っていたより月の姫君はアグレッシブなようですわね。

 

「それでは、私は八雲紫に貴方の要求を伝えますが…今の状況を考えると、言葉通り豹の一件が片付いてから向かう方が良さそうですね。私と貴方で密約があったという事実を、摩多羅隠岐奈や魔界に利用されるリスクがありそうですし」

「ユキの話を聞いた限り、魔界はその方向で警戒する必要性は薄いでしょうけど。摩多羅隠岐奈に知られるのは避けたいところね。その方向でお願いするわ」

「承りましたわ。

他に何か、私に伝えておきたいことなどはありますか?」

「…そうね。

サグメから連絡があったら、一度夢の世界で話をしたいと伝えておいてもらえる?月の上層部にも幻想郷の管理者にも伏せたい案件がある、とね」

「いいでしょう、伝えておきます。

ですが、私がこれを豹や八雲紫に伝えてしまうリスクは考慮していないのですか?」

「内容からすればむしろ伝わって構わない案件よ。

魔界が月を滅ぼすべく動いた際に、私は協力できなくなるということを伝えるだけだから」

「そうですか。このあたりで私が貴方に敵うはずもありませんし、聞く必要がありませんでしたね。

それでは、これで失礼させていただきますわ」

「ええ、律儀に依頼を果たしてくれたことには感謝しておくわ」

 

そう返して八意永琳は自室での研究に戻りました。

さて…私も紅魔館に戻りましょうか。どうやら私を捕らえようとする様子が無い以上、八意永琳は今後この件に介入するつもりが無いのは本当のようですしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたわね。メディスンとゴリアテも上海が動くならついて行くそうよ」

「私ではなくサリエル様も治療してくださいましたので、そこの心配はありません」

「そうか。ありがとうなメディスン、ゴリアテ」

「上海のためだもの、ヒョウさんがお礼を言う必要は無いわ」

\…!!/

「メディもゴリアテちゃんも、ありがとう。とっても心強いです!」

 

予想通りリリーだけでなくメディスンも連れてルナサが戻って来た。ゴリアテも付いて来たのは予想外だったが、メディが来るならゴリアテも来るよなそりゃ。あとは何故かこのタイミングで麟とリリカも外に出て来ていたが。

いやまあ、麟はわかるんだが。リリカはなんで今になって出て来たんだろうな。

 

「豹さん、リリーは何をすればいいのですかー?」

「ああ、今から説明するが…ルナサ、レミリアから何か言われたか?」

「…レミリアのこともよくわかってるみたいね。流石は豹というところなのかしら。

空間移動について行かないのであれば、星熊勇儀は先に中に入って状況を聞かせてもらいたいそうよ」

「だそうだ。頼めるか、勇儀?」

「ああ、逆に私も地上の動きは全然知らないからねえ。先に聞いておくよ」

「それなら私も先に戻りましょうか。一度博麗神社に顔を出したのは私だけですし」

「衣玖もそうしてもらえると助かるな。共有できる情報は皆に聞かせてもらいたい」

「それでは案内も兼ねて先に中に戻りますね。勇儀さん、こちらへどうぞ」

「おう、頼んだ」

 

そう言って勇儀を衣玖が紅魔館内部へ案内してくれた。ここまで空気を読んで動いてくれるのは助かるなホント。

 

「ふーん、やっぱりこうなってたかー♪豹が逃げられなくなる理由が一つ増えたじゃん」

「リリカの言う通りね。豹も覚悟を決めてもらわないと♪」

「リリカ?私がどうかしたのかしら~?」

「べっつにー?メル姉が一番わかってるはずだけどー?」

「…そ、そうかしら~?」

「メルラン…リリカとあれだけ私で遊んでたのだから、こうなることはわかってたはずよ?私も雷鼓までこうなるとは思ってなかったけれど」

「うぅ~…」

 

俺の隣に陣取っていたメルランが顔を赤くして俯いてしまった。リリカはこの反応を見に来ただけか…

 

「それじゃ、頼みたいことを伝えるぞ。中で聞いたはずだが、博麗の巫女を完全に敵に回しちまってな。今後俺の知り合いってだけで問答無用で襲撃される可能性がある…だからアリスの家に向かった雛と妹紅の他に、あと3人ほど紅魔館に連れて来てもらいたい」

「顔見知りを連れて行った方がいいって言ってたわよね?私が向かうのはミケの所ってことかしら?」

「ああ、そういうことだ。まあレティに頼みたいミケと、リリーに頼みたいノエルは問題ない…二人の家の位置を俺が把握してるからな。青娥の協力があればすぐ行けるだろう」

「ええ、豹様が正確な位置を把握しているのであれば問題ありませんわ」

「ただ、一人だけ俺以外と顔見知りじゃないだろう子がいてな…ルーミアなんだが」

「え、あの宵闇妖怪?それなら私が話したことあるわよ」

「そうなの姉さん?」

「あ、そういえばルナ姉のお気に入りな場所に入りこんできたことがあったって言ってたっけ」

「そうなのか?それじゃルナサに頼んでいいか?」

「任せて。戦闘じゃあまり役に立てないのだし、これぐらいはやらせて」

「助かる。なら順番に迎えに行ってきてもらえるか?

リリーはノエル。レティはミケ。ルナサはルーミア。

最後に上海たちでアリスの家の妹紅と雛なんだが…上海には一つ、ユキたちに伝言も頼みたい」

「はい、なんとお伝えすればいいでしょう?」

 

これが間に合うかどうかで全てが決まるが、間に合わせなきゃならない。

俺なんかのために、これだけの人数が力を貸してくれてるのだから。

 

「全面戦争を避けるための動きが決まったら、もう一度上海を説明に行かせる。

 これを信じてくれるなら、神綺様と夢子にも俺が直接会いに行く。

 だから今は、俺の戦力として動ける雛と妹紅だけ紅魔館に来てくれ―――だ」

 

アリスはともかく、ユキと夢子を戦闘に巻き込むわけにはいかない。俺が戦闘しちまった以上、魔界人であるユキと夢子が次に幻想郷の住民に手を出したら紫さんと摩多羅隠岐奈以外の管理者も黙っていられなくなるからだ。二人ともこれを理解できてるだろうからこそ、俺から頼めばまだ待ってくれるはず。

幻想郷に居られなくなった俺を理由に、魔界と幻想郷で戦争を起こすわけにはいかないからな…!

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