寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により61話の」変換漏れを』に修正してます。探せばまだ見つかりそうですね…
誤字報告はとても助かっています。ありがとうございます。


第240話 保護対象回収完了

「―――結果だけ見れば、【八雲紫とサリエル様の仲裁で、博麗の巫女と八雲の隠者】の戦闘を止めた形になるわ。八雲の隠者が魔界人ということを魔界側に隠蔽できれば、まだ全面戦争は避けられるはずよ…ギリギリだけど」

「兄さんはわたしを助けに呼ばなかったからね…わたしか夢子が攻撃されるよりはマシって考えたんだと思う。サリエル様も兄さんを助けてくれたけど、暴れたのは幻月だけだったし。幻想郷の住民に攻撃された中に魔界人はいなかったって、かろうじて誤魔化せる。

なにより、兄さんを引き摺り出した張本人の摩多羅隠岐奈からすれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは間違いなく計算外でしょ。最悪の事態にはまだなってないはずだよ…レミリアってヴァンパイアには感謝しないとね」

 

夢子と星たちを家に入れて、私とユキが把握できている現状を説明する。ユキは八意永琳相手の取引を成立させてから索敵魔法に専念できてたそうで、私が探知できた状況と合わせることで各戦闘に関しては戦力・結果含めてだいたいは察せた。だからすんなり全員が現状は理解できたようで。

 

「本当にギリギリの筋ね…ある意味神綺様が幻想郷に来る前で助かったかもしれない。サリエル様だから仲裁で済んだけれど、神綺様だったらその場で反撃に出てたかもしれない」

「おいおい、魔界神なんて立場の神にそんな感情的に動かれちゃたまったもんじゃないぞ…」

「神綺様ですので…ユキさんと夢子さんがいなければ、ヒョウさん発見の報告があった直後にここ幻想郷に飛び出していたでしょう。そういう神様だと納得していただけませんか?」

「…まあ、直接面識が無くて人伝に聞いただけの私だとその言葉に納得できるわ。

逆に言うと、魔界神が乗り込んできてから豹が戦闘に巻き込まれた場合…止める間もなく魔界神が援護に向かってしまうのね?」

「そうだね…わたしどころか夢子でも本気になった神綺様の空間魔法は止められない。

逆に言うと、神綺様がこっちに来てくれた時点で摩多羅隠岐奈も強硬策は取って来なくなるとは思う。神綺様と面識があるのが本当ならね」

「早苗が守矢神社を出てすぐに、こいしの能力で隠れるよう頼んだのは正解だったようですね。反応を隠していなかったら、魅魔というのが私たちを狙って動いた可能性があったみたいです」

「こころも相変わらず口調が変になるよねー。

ま、そこに関して神奈子さんが手伝ってくれるみたいだよ?」

「はい、守矢神社が我々命蓮寺に接触してきた理由がそこです。守矢の二柱は神綺様と直接の面識がある、それゆえに魔界との交渉役としても動くことができる…『情報不足で動き豹を敵に回してしまったことは謝罪する。今後は豹側の援護に回るから、早苗を敵視し攻撃しないでくれ』―――これを宗教的な対立者である我々命蓮寺と協力することで、説得力を持たせて皆様に伝えてほしいと。私だけでなく聖たちも同意してくれたので、こいしとこころを連れて私が参りました」

「ええ、私も守矢の二柱と面識はあるわ。もっとも、私が魔界のNo.2だということを伏せるために私が護衛役、マイを神綺様の補佐官として対応したから名乗ったわけではないのだけど。顔を合わせれば思い出してもらえるでしょう」

 

そして、星が出向いて来たのも納得できる理由だったわ。このタイミングで守矢神社が豹・魔界側に回るなんて伝えてくれなきゃ読めない。そして早苗に対して過保護な守矢の二柱だからこそ、豹だけでなく咲夜と妹紅とまで交戦した以上は()()()()()()()早苗を戦闘に出すリスクを取れない…そのため早苗が私たちに攻撃されることを避けるべく動いたということでしょう。

ただ、一つ確認するべきなのが…

 

「その早苗本人がここに来ていないのはどういうことかしら?」

「今、命蓮寺では人里の守護者である上白沢慧音さんを保護しているのですが。同時多発していた戦闘が終わったとはいえ、慧音さん単独で人里を元に戻して問題ないかを調べてもらうのはまだ危険な可能性があると判断しています。そのため命蓮寺に向かってくれている小兎姫さんと守矢の風祝を慧音さんの護衛に付ける…我々命蓮寺に所属する者が戦闘することはまだ避けたいこと、こいしを人里に向かわせてしまうと別の管理者が相互不干渉違反を問題視してしまう可能性を考慮した結果、守矢の風祝を連れてくることは断念しました」

「地底と地上の相互不干渉違反なんてもう誰も気にしてないと思うんだけどねー。でも早苗を連れて来てたら、こんな風に私たちとお話ししてくれた?」

「そうだね、その場合は話をする前に私は迎撃するべきって言ったんじゃないかな?ルナサちゃんを助けるときに思いっきり闘り合ってるし」

「たしかに妹紅さんがそう言ってたらわたしも賛成しちゃってたと思う。そう考えると命蓮寺の判断に感謝だね」

 

理由として違和感もないし、星が虚言を混ぜているのであればこれだけすらすらと言葉は出てこないでしょう。なら信用して問題ない…ついでにこれも聞いておきましょうか。

 

「もう一つ。小兎姫が命蓮寺に向かっていると言うけれど…その小兎姫は私が魔理沙と戦闘に入る前の時点では豹の隠れ家に向かっていて、魔理沙を魅魔に押し付けた後には引き返すような動きをしてるのよ。彼女がどういう考えで動いているのかを、慧音は聞いていなかった?」

「慧音さんによると、小兎姫さんは『豹本人が何を考えてるのかは聞き出しておくべき』と言っていたそうですが。先程までの緊迫した状況の中詳しいことを聞く時間は無かったそうで、小兎姫さんが何故豹さんの隠れ家の位置を知っているのかなどは聞けていないそうです」

「アリス、リリーに状況を聞けないかな?」

「さっき私もそれを聞いたんだけど、通信人形の近くに誰もいないみたいだよ。リリーも紅魔館に連れて行ったんじゃないかって」

「先輩なら博麗の巫女を敵に回した時点で、護衛が必要な妹も拠点に連れて行くのは当然…サリエル様が連れて行ったのでしょうね。運が悪かったのはアリスのマトリョーシカを持ち出す余裕が無かった点か」

「その小兎姫とやらはどういう立ち位置なのかしら?私が聞いている範囲では名前が出ていないはずなのだけれど」

 

そういえば、完全に豹の味方として動いているメンバーで小兎姫が豹の隠れ家を訪れたことを知っているのは上海・ルナサ・カナだけになるのね。雛の疑問にも答えておくべきか。

 

「小兎姫さんは人里を守護する人間の一人で、警官を務めています。人里で過ごす信徒達を護っていただける方として、我々命蓮寺も感謝しています」

「私がカナから聞いた話なのだけれど、豹の隠れ家を家宅捜索したことがあるそうよ。豹が稗田阿求を敵視している以上、人里関係者は巻き込むことは無いと考えていたから誰も話題にすることが無かったんじゃないかしら。少なくともこの話は、私とカナ以外に上海とルナサは把握してるから」

「え、豹が稗田の当主を敵視してるってどういうこと!?」

「ああ、妖夢がそこを知らないのは仕方ないか。リリーが豹を慕ってるのは聞いてるよな?その豹が幻想郷縁起の作者をどう見るかは予想できるね?」

「あー…そういうことかあ」

「そこはわたしたちもアリスから聞いてるからね。小兎姫とはお互いに中立を保つのが理想的だし、そういう意味では命蓮寺と合流してもらえたのは助かるかも」

「はい、我々も人里の防衛戦力である慧音さんと小兎姫さんを八雲紫と摩多羅隠岐奈の対立に巻き込むことは避けるべきという結論に達しています。これに関しては対立している当人たちも同じ考えだと想定していますので、お二人が襲撃される可能性は低いとは思いますが…人里でメルランさんが襲われたように、ユキさんと夢子さんを除く魔界からの侵入者や永遠亭関係者はそう考えていない可能性もありますので」

「だから早苗を護衛として残したのですね。今のところ問題になるのがその二つの勢力ということですか」

「八意永琳はしばらく大人しくするはずよ。ユキと妹紅が豹の指示通り上手く取引してくれたから。

…月の姫の方は黙って見ている気は無いようだけど」

 

その言葉で雛も豹から探査・索敵系の魔法を教わっていたということを実感する。丁度星が永遠亭の名を出したあたりで、迷いの竹林から4つの反応が博麗神社に向けて動き始めたのを私もキャッチしたから。

 

「―――これは!?まさか、博麗神社に集まる面々と合流するつもりですか!?」

「やっぱ月の連中は信用できないね。わたしとの取引なんて守る気さらさらないか」

「八意永琳との取引を、月の姫が守る必要は無いって理屈なのでしょうね。おとぎ話に伝わる通り、自分勝手な姫だわ」

「輝夜だからなぁ…あれだけやられて大人しくするはずもなかったか。

どうする?星とユキに夢子だけここに残して、先手を打って輝夜たちを叩きに行くのもアリだと思うけど」

「そーだね!それなら単純に6人で4人潰せばいいだけだし!」

「私はそれでも構いません。お兄さんに協力すると決めましたから、こいしに付き合います」

「私とユキは交戦するわけにはいかないし、星も同様。そうなると妖夢にも手を貸してもらいたいところだけど、構わないかしら?」

「うーん、私が勝手に永遠亭と戦っちゃっていいのかなあ…?

それこそ一度私も博麗神社には向かいたいんだ。紫様が来てるから、幽々子様の指示も聞けるだろうし」

「今の状況で紫が幽々子と連絡が取れているとは思えないわよ妖夢。

まあ、無理強いは出来ないけれど…向かうのであれば手を貸してほしいところね」

 

雛の言葉で全員気付けたらしく、妹紅の提案に傾きそうになったところで。

今度は私の家にまた来客があったわ。

 

「っ!?霍青娥と、上海!?」

「えっ!?どういうこと!?」

「ご主人様!少しお話しさせてください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――と、いうわけでな。博麗の巫女や白黒の魔法使いにその師である悪霊あたりが問答無用で襲ってくる可能性を作っちまった…とりあえずこの一件にケリがつくまではレミリアに護ってもらってくれ」

 

青娥の空間移動は俺の想像以上で、ノエルとミケにルーミアの居場所へは同時に繋いでくれた。そもそも夢殿大祀廟から撤退する際に俺が無力化し損ねた死体も回収していたのだから、一人移動するだけの小さなゲートを複数創ることには慣れていたということらしい。そのため説得の必要がある上海と共にアリスの家へ移動してもらう間に、ルナサ・リリー・レティが連れて来てくれた3人に俺から説明したところ。

 

「そーなのかー」

「迎えに来てくれたのに感謝するわ…アイツらに店を荒らされちゃたまったもんじゃないし」

「…チルノちゃんが心配ですけど、わたしが襲われることで巻き込んでしまうかもしれないってことですよね。

わかりました、ここで大人しくしています」

 

ノエルは少し不満もありそうだが、皆納得はしてくれた。これで一安心だろう。

 

「それじゃ、私たちでレミリアに説明しておきましょうか。レティさんに門番役は任せてしまっていいのよね?」

「ええ、そのためのイヤリングでしょ?任せなさい」

「OK!それじゃ私は中に入るけどー…メル姉はどうする?まだ豹にくっついてる?」

「な、なによ~!いいじゃない別に!」

「…まったく。リリカはこうなると思ってたわ…

私とメルランはもう少しここに居るわ。里香の相手を豹一人に任せるのも負担になりそうだし」

「気を使ってくれてすまないなルナサ。それじゃリリカと雷鼓にリリーで三人の紹介もしておいてくれ」

「わかったのですよー!」

 

そう返したリリーを先頭に、リリカ・雷鼓・ノエル・ミケ・ルーミアが紅魔館へ入っていく。これでなんとか俺のせいで巻きまれる可能性があるのは紅魔館に集められたはずだ。

…そして、このタイミングで厄介な反応も拾えてしまっていた。

 

(…かぐや姫直々に永遠亭から出て来るとはな。八意永琳が防衛に失敗した状況で執心する姫を外に出すとは思えん以上、姫の方が暴走したってことだろうが…妹紅が状況を読めれば助かるんだが。

それに、星がこいしとこころを連れてアリスと合流してる理由もわからねえ…命蓮寺に東風谷早苗が移動してるのも拾い損ねてる。博麗の巫女と萃香相手にあの無様を晒してた以上、気付けなかったのは仕方ないとはいえ…永遠亭と天狗勢力に協調してた守矢神社が命蓮寺に何の用があるってんだ?)

 

命蓮寺で戦闘の反応が無いあたり、今の時点で大きく動くつもりは無いってことだろうが。雛と妹紅で情報を引き出せなかった場合、青娥にもう一回力を貸してもらう必要がありそうだな…

 

そんな事を考えていたのを察したらしく、ルナサが心配そうな顔で問い掛けて来る。

 

「…豹、また何か動きがあったのね?」

「ああ…だが雛と妹紅が話を聞けてれば片方は問題ない。

それに、こっちの戦力がもう着く。先に俺が礼を言わなきゃならない相手がな」

 

ここまで接近してようやく俺も気付いたが、里香とリィスさんの他に反応がもう一つある。ここまで小さい魔力反応が俺の予想通りの人物――朝倉理香子のものだとしたら。魔法を嫌うのが理解できない程度には高位の魔法使いってことになる…もっとも、彼女だとしても優先して対応すべき相手は別なのだが。

そして、その相手だけがスピードを上げ。

 

「ようやく、お会いすることが出来ました、ヒョウ様…!」

「様なんて付けなくていいですよ。

 貴方が、リィスさんですね」

「こちらこそ、さんなんて付けないでください。

 サリエル様と同じく、私もヒョウ様に命を救われた身なのですから」

 

サリエル様と同じ、美しい白翼を持つ天使が。俺の前に降り立った。

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