「ありがとうございます、コンガラ様」
「礼など要らぬさ。まさか地上に出ることで、これだけの猛者と縁が出来るとは思わなかった故にな。
折を見て地上を流浪するのも悪くないようだ…まずはこれを受け取れ、豹」
「ははっ、コンガラさんもそう思うかい?やっぱ地底と地獄の停滞は罪だよねえ!
地上の方にはまだまだ活きのいい奴が残ってるあたり、相互不干渉も考えものさ」
勇儀はそれほど時間をかけずにコンガラ様を紅魔館に連れ帰って来てくれた。これが俺の動かせる戦力の全てになる…ユキにツッコまれるのも当然だな。潜伏してる逃亡者がこれだけの戦力を揃えられるのはおかしい、つまり俺は潜伏できてなかったってことの証明だ。
「………地底ってこんな奴ばっかなの?」
「そうでもないよー、私や勇儀さんみたいな考えの方が珍しいしー。
凄い剣士さんなのはわかるけど、私は初めて会うしねー」
『妙に地底に詳しいと思うたが、古明地の妹じゃったか。こやつを従えるあたり、流石じゃのう豹』
「従えたわけじゃないですよキクリ様…」
キクリ様も分体越しに話は聞いてくれるようで、コンガラ様から受け取った分体から顔を出してくれている。
…というか、協調性という点での不安要素だったフランドールとこいしが普通に会話出来てるな。二人ともまだスイッチが入ってないってのもあるんだろうが、そうなる前に片が付けられれば仲間割れの可能性は低そうか。
…俺は本当に妹に恵まれてるな。
「まあ、心強い味方のコンガラ様とキクリ様だ。本来なら地上に出てきてもらうだけでも大騒ぎになりかねないんだが…俺と夢月、幻月にサリエル様まで派手に動いた以上今更だからな。力を貸してもらうことにした」
「本当にお兄様は人が悪いわね。地底どころか地獄とまで繋がりがあったなんて、どこが隠者なのかしら?」
「俺も今になって隠者と名乗るのは無理があるってようやく自覚したよ。隠者でいられたのは紫さんのおかげでしかなかったってことだ。
だからこそ、幻想郷も守るために頭を使わなきゃならない」
「そこは任せるぞ。儂は武人であって将ではない…策を練るのは不得手だからな」
コンガラ様のその言葉で、俺が総指揮を執ることに異論がないことを理解する。信頼して貰えてるのだから、下手は打てない。
「それじゃ、戦力配分に当たってまずは敵戦力の確認からしていくぞ。
まず博麗の巫女本人と霧雨魔理沙に、その庇護者として表に出て来た魅魔。そしてそれを支援する摩多羅隠岐奈とその部下である二童子・丁礼田舞と爾子田里乃。そして俺を不意打ちしてきた鬼・伊吹萃香…この7名は確実に俺の敵として動く」
「え、最後の鬼って姉さんが半殺しにしてた奴でしょ?そう簡単に復活するとは思えないんだけど」
「あらゆる手段を使ってでも摩多羅隠岐奈が回復させるさ。ここまで本気で俺の排除を強行してきたんだ、戦力になるのは片っ端から使ってくる」
「私も同感だね。萃香は半殺しぐらいじゃ一眠りしたら全快するよ。
ってか、萃香が不意打ちするなんて珍しいじゃないか。口では興味ないとか言ってたが、なんだかんだ豹に警戒心は持ってたんだねえ」
「いや、傍から見れば俺が3人がかりで博麗の巫女を仕留めようとしてた戦況だったからな…数にものを言わせた袋叩きに比べれば、不意打ちなんざかわいいもんって考えだと思うぞ」
夢月の疑問に俺が返答し、それに勇儀が同意する。実際のところ萃香は今の時点で目を覚まし八雲の隠し酒蔵に向かっている…体力回復と鬱憤晴らしを兼ねている行動だろう。俺と藍の密造酒を片っ端から飲み干されるのは藍に申し訳ないが…萃香を制御しきれなかった代金と思ってもらうしかない。元々俺はあまり飲まず、藍が有力者との取引材料に使うのが主目的だった酒だ。紫さんたちが飲む分は適宜八雲邸に持ち帰っていたし、在庫を切らしても困ることはないハズだ。
「そしてこの7名と協調しない可能性もあるが、確実に俺の敵として動くのが永遠亭の姫。どうやら八意永琳は妹紅との取引を守る気はあるようだが、姫の方は納得しなかったらしい」
「悪い豹、永琳だけじゃなく輝夜にも釘を刺しとくべきだった」
「妹紅が謝る必要は無いさ。それこそ八意永琳が前線に出てこないだけでもだいぶ楽になる…月の頭脳とはいえ策を為すには準備と時間が要るからな。前線に出てこないのであれば、神綺様の到着より先に策を打たれることはない。
もっとも、姫の援護のため前線に出てきたら真っ先に対応しなきゃならねえがな」
いくら八意永琳と言えども神綺様の到着より先に策の準備を終えることは無い。何故なら俺の速攻急襲で永遠亭を制圧できたからだ。こちらの情報が把握できていれば八意永琳が数頼みのゴリ押しで敗北などするはずが無い、つまり今になってようやく紅魔館に集結した俺の協力者を把握した状況だろう。その状態から策を練ったところで時間が足りなくなる。これだけの戦力があれば、小細工にしかならない策は力押しで潰せるのだから。
「とりあえずここまででも手を焼く相手揃いなんだが…コンガラ様はキクリ様にお伝えした通り魅魔を抑えて頂けませんか?」
「任せよ。魅魔が刃を捨てるほどの魔法、相手取れる機会など早々無い」
「「「…っ!?」」」
椛と上海、メディスンがコンガラ様の獰猛な笑みを見て震えている…俺の作戦ミスで魅魔に襲撃されてしまった椛たちは、魅魔は凄まじい相手だということを嫌でも理解してしまっている。それを相手取るのにあの笑顔、コンガラ様の強さがそれに並ぶということを見せつけられたワケだ。あの反応も仕方ないだろう。
「そして動かれた以上厄介が過ぎる月の姫にはレミリアとフランドールをぶつけたい。頼めるか?」
「いいじゃない、相手にとって不足無しだわ」
「たしか不老不死とか言ってたっけそいつら。遠慮なく壊しちゃっていいってことね♪」
「ああ。問題はこの雪が案外早く上がって晴れ間がのぞく場合なんだが…背中にルーミアをくっつけてくという荒技がある。必要ならルーミアにも協力を頼みたいんだが」
「へ、私?」
「…ああ、そこの宵闇妖怪か。
フラン、日傘より太陽光を遮断できる方法だがどうする?私は日傘で十分だからな」
「どうするって…そいつがどういう妖怪なのかすら私知らないよ?」
「そうだったな…ルーミア、いつも通り闇を展開してもらえるか?」
「わかった」
そう言ってその場で球状の闇を展開するルーミアだが、何の考えもなく展開したことで。
「ちょっ!?真っ暗なんだけど!?」
\!?/
「ええっ!?何?なにっ!?」
「メディ!?こっちです!」
「あ、ごめんなさいなのだー」
傍に居たミケとメディスン、ゴリアテが闇の中に巻き込まれていた。先に俺の方に呼んでから展開してもらうべきだったか。ルーミアもその反応で気付いたらしく上に移動するのだが…
「あいたっ」
「…とまあ、自分でも見えなくなるような闇をルーミアは展開できるんだが。ヴァンパイアのレミリアとフランドール、くるみなら有効活用できるんじゃないかと幻想郷の上層部は考えててな」
天井に頭をぶつけていた。俺が声を掛けずとも流石にわかると思ってたんだが…ルーミアのマイペースを甘く見過ぎてたか。
「俺と紫さんは不要だと言ったんだが、吸血鬼異変の直後で上層部が過敏になっててな。俺がルーミアに封印術式を施したから能力を知ってるワケだが…ルーミアを背中にしがみつかせるのが気にならないなら日傘代わりに使えるし、接近戦での目晦ましにもなる」
「ふーん、面白いじゃん。連れてっていいの?」
「頼んでもいいか、ルーミア?」
「構わないよ。冬の春告精までおにーさんを手伝ってるんだし、私もやれることはやる!」
「それじゃ頼む。
フランドール、見ての通りルーミア自身はあまり力の強くない妖怪なんでな…足手まといになると判断したら切り捨ててくれ。そうされた時の離脱に関してはルーミア自身でやれる」
「うん、それぐらいは出来るよ」
「それじゃちょっと私の部屋で試してみてもいい?」
「後で細かい内容を伝える時間はくれよ?それなら構わない」
「美鈴、念のために付いて行け」
「了解です!」
「それじゃルーミアだっけ?付き合って」
「はーい」
そう言ってフランドールがルーミアと美鈴を連れて地下へ降りていく。レミリアの指示が無ければ俺から頼むつもりだったが、その手間を省いてくれた。やはりこういった指示に関してはレミリアの方が俺より的確に動けるのだろう。さっき言われた当主と護衛の差だ。
「そしてレミリアとフランドールを月の姫にぶつけたことで八意永琳が出向いてきた場合は…サリエル様、妹紅と共に交渉に向かってもらっていいでしょうか?」
「構わない。だが、私の裁量で交渉してしまって良いのか?」
「はい。むしろ八意永琳が俺相手に交渉する必要性は薄いですから。
…妹紅、奴は俺じゃなくサリエル様との伝手を求めてただろ?」
「ああ、ユキにそれを求めてたよ。正確には魔界への伝手だったけどね」
「私もそう聞いていますね。八雲紫と接触するよう依頼される前に、魔界の住人であるサリエルと直接接触できるかと確認を取られましたので」
「妹紅が話してくれた内容からの推測でしかないが、八意永琳がこれ以上魔界と対立する気が無いというのは事実だろう。月の連中と繋がってる以上油断は出来ないが…少なくとも永遠亭の戦力だけで魔界に喧嘩を売ることは無いはずだ。つまり交渉次第で奴に月の姫を止めさせるという方向に持って行けるかもしれない。
被害を抑えるという観点だとこれが理想的になります。サリエル様と神綺様に負担をかけてしまうことになりますが…お願いしてもいいでしょうか?」
「ああ、私も神綺もヒョウのフォローは全力でする。ヒョウが後始末のことを考える必要は無いさ。
戦闘不可避になった場合は、始末してしまって構わないのだな?」
「はい、俺の本音を言えば始末したいです。月の連中は信用できませんから」
「――って、ちょっと待った!?その言い方だと…!」
「…ああ。サリエル様なら、蓬莱人も殺せる。
確信が無かったから、妹紅には教えてなかったが…可能性はあると思ってた。そして今、サリエル様が答えを出してくれた」
「…こうして知り合えた以上、下したくない決断だが。
君が蓬莱人として生き続けることに耐えられなくなったときは、私を訪ねるがいい。
死を司る天使として、君に死を与えよう」
「っ!!
………今はそのつもりはないよ。でも、覚えとく」
不老不死という妹紅の業にして苦悩。俺たち魔法使いとは違い、己の意志で終わらせることのできない永遠の生―――俺がそれを理解できるはずもないから、可能性でしかない予測を妹紅に伝えることはしなかった。
だが、妹紅の返答で…俺も少し気が楽になった。妹紅はまだ絶望していない…それは、俺のお節介も無駄ではなかったということなのだから。
「八意永琳と月の姫以外の永遠亭の戦力に対処するために、レミリアが連れて行きたいのはいるか?」
「そうね、美鈴はフランに同行させるけれど。堕天使と蓬莱人が後詰に控えてるなら美鈴意外の増援はいらないわ」
「助かる。八意永琳が動かないのが理想だが、月の姫が動いた以上望み薄だからな…
サリエル様と妹紅は八意永琳が動くまでは紅魔館で待機していてください」
「ああ」「おう!」
「そうだ、ついでに紅魔館の防衛から動かせないのが二人いる。里香と青娥だ」
「まあ、そうなるのですぅ。燃料不足気味なので、移動をなるべく避けたい以上防衛に回らざるを得ないのです」
「私は緊急時の移動役ということですわね?」
「ああ。俺が前線に出る以上、青娥より適任な空間移動の使い手はいないからな。それに摩多羅隠岐奈や仙界の連中が空間移動で紅魔館に乗り込んでくる可能性もある…その妨害は咲夜とパチュリーはあまり得意じゃないだろ?」
「そうね。空間魔法の妨害ならともかく、固有能力による空間移動の妨害は私だけでは厳しいわ」
「私も本来は時間系統に属する能力ですから、空間系統の対応となると難しいですね。
豹様の配置が最適だと思いますわ」
「だそうだ。頼めるか、青娥?」
「お任せ下さいまし」
―――ここまでは動かしようがない配置だ。本格的に戦力配分を考えなきゃならないのは、この先。
ミスらないようにしねえとな…!
申し訳りません、ここしばらく投薬による副作用が酷いため落ち着くまで更新が不安定になります。なんとか週一更新は維持しますので、遅くとも21(火)までには更新します。