寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第248話 妹たちとの作戦会議⑤

「ここからの戦力配分が皆の知恵も貸してほしいところになる。残りのメンツは命まで取ってしまうと面倒なことになっちまうからな」

「相変わらずお兄様は優しいを通り越して甘いわね。私とフランを永遠亭の連中に当てる一番の理由はそれなの」

「嫌というほど理解させられてるから今は言わないでくれ。

俺の中で選択の余地が無いから魅魔と月の連中は先に決めたが、今博麗神社にいる勢力は敵に回る可能性が高い。そいつらを先に説明していくぞ」

 

レミリアにツッコまれたが今はそこを気にする状況じゃない。ゆえに軽く流して説明を進める。

 

「今博麗神社に集結している有力勢力は、先に説明したメンツを除くと5つ。

幻想郷の管理者の一角である茨華仙。地獄の裁判長を務める四季映姫・ヤマザナドゥ。守矢神社の二柱の片割れ・洩矢諏訪子。仙界の指導者・豊聡耳神子。そして天狗勢力から情報交換に派遣されたらしき射命丸文だ。

この中で守矢神社は命蓮寺からの仲介で中立に回るってことを伝えてきてくれた。こいしとこころはそのための伝令役として俺に合流してくれた形になる」

「ああ、だからこいしまで付いて来てたのかい」

「そーいうことだよ勇儀さん!」

 

最後に合流した雛と妹紅しか把握していない情報をここで全員に伝える。地味に東風谷早苗を敵に回さないで済むのは大きい―――妖怪の山を内部から牽制できるからだ。そして射命丸は守矢神社を経由してから博麗神社に合流しているので、洩矢諏訪子にも八坂神奈子と東風谷早苗の動きが伝わるはず。

 

「そしてこいしが協力してくれてる以上、こちらから協力要請も出せるってことだ。つまり妖怪の山から増援が出る場合は背後を突いてもらうことが出来る。

そして、そのリスクがある状況で天狗勢力が大きく動く可能性は低いだろう。少なくとも天魔や飯綱丸が前線に出張って来ることは無い。もっとも、最悪の状況を想定しなきゃならない以上…射命丸が妖怪の山に帰らず博麗神社に留まった場合を考えて射命丸個人は敵戦力として数えるがな」

「豹が守矢神社へ増援を依頼する手段があるという点は、あちらは把握していないのでは?」

「いや、今の状況で洩矢諏訪子と摩多羅隠岐奈が射命丸に情報を伏せさせることは無い。少なくとも紫さんと摩多羅隠岐奈は射命丸が守矢神社に寄ってから博麗神社に来てるのを把握できてるだろう。博麗の巫女だけじゃなく幻月と夢月にフラワーマスター、アリスや俺まで派手に闘ってた状況でどうやって守矢神社が命蓮寺と接触したのかは確実に問い詰められる…こいしの介入は隠しようがないさ。

こいしが俺と合流したのは摩多羅隠岐奈にとって最大の誤算だろうよ。水面下で交渉するのにこれだけ役立つ能力はない――要するに奴はあらゆる可能性を考慮した上で動かなきゃならなくなったワケだ。必要ない勢力まで注視する必要がある…具体的に言えば奴はここにいる皆だけではなく、命蓮寺と地霊殿にも目を向けざるを得ない。これは俺たちにとってかなり大きいアドバンテージだ」

 

ドレミーの指摘にもう一つの嬉しい誤算を説明することで答える。勇儀とこいし、地底から出向いてきてくれた強者が俺に協力的なのはいくら摩多羅隠岐奈だろうと想定外だろう。特にこいしは手に負えなくなった場合の最終手段として、紫さんが()()()()()()ことも選択肢に入れていたレベルで管理者からも警戒されている存在なのだ。もし姉である古明地さとりが制御に匙を投げたなら、即座に管理者直々に粛正に動く可能性すらある爆弾。

だが、制御できるのであればこれ以上暗躍に適した存在はいない。そして運が良いことに、俺は現状こいしを制御できる数少ない存在なのである。上手く使いこなす自信は無いが、俺の精神守護能力は飯綱丸から射命丸経由で周知される…つまりあちらは俺がこいしを使いこなすこと前提で動かざるを得なくなるワケだ。これによるミスリードは防ぎようがないだろう。

 

―――このタイミングで、俺は新たな乱入者を察知する。

 

「っ!?コイツは!?」

「………これはまためんどくさそうなのが出て来たわね。地底からの客人はあれを知っているのかしら?」

 

俺に少し遅れて索敵魔法を展開していたらしきパチュリーも、地底に続く洞窟に現れた強大な反応2つをキャッチしていた。その位置から俺より先に勇儀たちに質問を向けるのだが。

 

『おおそうじゃった!むしろ豹に聞きたいことがあったのじゃ!

そこの魔女が地底に向けて聞いて来たのであれば奴じゃろう。勇儀とコンガラがそちらに出向く直前に、畜生界の埴安神袿姫が供を一人連れて地上に向こうておったのじゃ。じゃが同じ地獄住まいと言うても畜生界との交流はわらわもコンガラものうてな。奴が地上へ出向く理由に、豹の方で心当たりはないかの?』

「…そうか、神綺は即座に動いてくれたのだな。

その邪神は我々の味方と考えて問題ない。神綺の友人で、アリスとも交友があるそうだ。夢子が一時的に幻想郷から離れていた理由が、神綺に埴安神袿姫への救援要請を出してもらうため…夢子が先にアリスの元に戻っているということは、神綺が直々に説得してくれたのだろう」

「へ?サリエル様はなんでそれを知ってるの?」

「ヒョウの隠れ家に残されていた人形を、リリーが繋げてくれたことで私とサリエルはアリスと通信できたんですよ。カナからすると二手に分かれたぐらいの時間の話です。

ただ、あの巫女が一直線にヒョウを探り当てて慌てた私とサリエルはあの人形を持ち出すのを忘れてます」

「うぅ、リリーが眠ってしまったのも悪いのですよー。ごめんなさい…」

「リリーは何も悪くない、それこそリリーがいたからドレミーが合流出来てるんだからな」

「流石は豹ですね、そこまで理解できていますか。

ですが、ここに移動する前に確認しておくべきでしたね…今から回収しましょうか?」

「…余裕があればにしておこう。上海を連絡役としてアリスの元に向かってもらう以上、戦力を割いてまで回収するほどじゃない。むしろ、アリスの許可がもらえるなら命蓮寺に渡してもらいたいところだな。中立を貫く必要があるとはいえ、陽動ぐらいは引き受けてくれるかもしれないしな。

それで、サリエル様。そのお言葉からすると、埴安神袿姫はアリスと合流するということでしょうか?」

「ああ、神綺と夢子が動いた結果だからな。思っていたより早く動いてくれた…アリスへの援護は空間魔法で飛ぶより飛行して向かった方が良いかもしれん。神綺が友と認める邪神だ、供まで連れているのであれば幻想郷の管理者だろうと問題なく対応できるだろう…それならば援護に向かっていることを察知させて、更なる戦力分散を狙える」

 

サリエル様とキクリ様の返答で、予想だにしなかった強力な増援だということを知ることが出来た。まさか畜生界で争っていた三勢力を、一時的な協力体制に追い込んだ邪神が俺の味方側に付いてくれるとはな…!

これは、最大の懸念点を解決できるかもしれない。

 

「上海はその埴安神袿姫について何か知っているか?

具体的には、連れて来ているだろう供も含めてどのレベルの相手まで任せてしまっても不興を買わないかを知りたい」

「そうですね…私は今のように言葉を話すことが出来なかったので、袿姫さんと直接お話ししたことはほとんどないんです。ですので豹さんが求めている答えは出せないのですが…お供として控えている方はまず間違いなく杖刀偶磨弓さんだということは断言できます。

袿姫さんの埴輪兵団を率いる兵長を務めている方で、ご主人様の指示がない私と蓬莱で弾幕ごっこをしてもらったときは一蹴されてしまいました。スペルカードルール無しの戦闘であっても、今の私でも敵わないと思います」

「つまり供も含めて強力な戦力だと考えていいんだな。

…それなら、動かれた場合に一番問題が出るフラワーマスターを任せたいところだが。いっそのこと、アリスもぶつける相手を指定しちまうか…?」

 

俺が現状で最優先しなければならないのは、博麗霊夢・魅魔・霧雨魔理沙・風見幽香の4名と夢子・ユキ・ルビーが交戦するのを防ぐことだ。そして前者3名は今博麗神社で行われている会談で紫さんと摩多羅隠岐奈に茨華仙からあらためて釘を刺されるハズだ。博麗の巫女が俺を捕らえ損なった以上、俺とアリスを除く魔界人との戦闘は全面戦争まっしぐらになるのが避けられない。それは俺の排除を狙う摩多羅隠岐奈も幻想郷の管理者として超えられない一線だからだ。

 

だが、風見幽香は誰であろうと指示通りに動くことは無い。むしろ他人が避けたがる方向に動くことを楽しめる気質の持ち主なのだ。目を覚ますまでは動かないという可能性が高いと言っても、動かれてから対処するのは難しい相手なのだ。

 

しかし、地獄から出向いてきてくれた埴安神袿姫であれば実力的にも立場的にも風見幽香にぶつけるのに何の問題も無い。神綺様が友と認めるだけの実力を誇り、相互不干渉という建前がある地底側の存在なのだ。魔界側が難癖付けようとも、【地獄と幻想郷は無関係】というのを押し通すことが出来る。OKが貰えればこれ以上ないぶつけ方になる。

 

「…一応聞いておくが、勇儀とこいしも埴安神袿姫との接点は無いんだよな?」

「私にはないねえ。一応地底と地獄もある程度の距離を取らせてるからさ…それこそさとりの管轄に入るんじゃないかい?」

「うーん…たしかにお姉ちゃんなら知り合いかもしれないけど。私ははじめて名前を聞く奴だねー」

「となると夢子とアリス頼みか…神綺様が来る前にかなり余裕をもって会いに行かなきゃならねえな」

「あのー…豹さんだけで納得されても困っちゃいます。その埴安神袿姫ってのを幽香にぶつけたいってのはわかりましたけど、もう少し細かく説明してもらえないですか?」

「ああそうだな、すまないくるみ」

 

作戦会議で自己完結なんて時間の無駄でしかない。ちゃんと皆に伝えないとな。

 

「神綺様が友と認めているような邪神だ、その実力は問題ないだろう。オマケに優秀な従者まで連れて来てるんだ、協力して貰えるならコンガラ様と同様にお供を連れた二人だけで強者相手にぶつけたい。

そして、被害を出さないって前提条件を考えると一番キツい相手がフラワーマスターだ。それこそ部下であるエリーとくるみだろうが容赦なく潰しかねない…となれば埴安神袿姫にフラワーマスターを食い止めてもらうのが一番被害が少なくなるだろう。なにしろ彼女は造形神(イドラデウス)――壊されてもすぐに修復出来る埴輪兵団を創り出した神。フラワーマスターに破壊されても修復可能ってのは被害を抑える点でこれ以上ない適任だ」

「…いや、地獄から出て来た邪神っていうからとんでもない奴だって気はしてたけど。思ってた以上にヤバくないかしらその邪神」

「雷鼓の言う通りだが、紫さんからすれば比那名居天子や豊聡耳神子よりはずっと話が通じる相手だそうだ。なにより神綺様がこの状況で頼ったという事実で、俺も紫さんの評が正しいことに確信が持てる。神綺様の魔界人(子供達)以外の人を見る目は凄まじい…魔界を守るための敵味方の判別に関しては特にだ。

少なくとも、俺絡みのこの件に関しては頼れる味方だ。恐れる必要は無いさ」

「豹さんが言うのであれば私は信じます」

「私も信じるわ。私たちのためにここまでしてくれた豹を信じないで、何を信じるって話よ」

 

俺が紫さんから伝えられた限りの埴安神袿姫に関する情報を話したことで、雷鼓が正直に恐怖感を口に出してくれたのだが。俺なりの根拠を伝えたことでルナサと麟がすぐに肯定的な意見を出してくれた。本当に俺は妹に恵まれている…俺自身も直接会ったことのない相手すら、俺を信じるという形で認めてくれる。

この護るべき妹たちのために、被害ゼロでケリを付けなくてはならないのだ。

 

「ありがとな、ルナサ、麟。

だが説得が必要になったことでさらに時間が惜しくなった。反対意見は無いとして話を進めさせてもらうが…いいか、エリー?」

「はい、私とくるみのことは気にしなくて大丈夫ですよ。幽香ならそれほど凄まじい邪神が相手であろうと、楽しめないと判断した時点で興味をなくして花を楽しみに戻りますから」

「そうですね!そういう方向での幽香は絶対に変わりませんから!」

「…本当に、そういう関係なのは羨ましい。なんでフラワーマスターはエリーとくるみを放置してるんだろうな…」

「ははは…それも幽香ですから」

 

エリーとくるみの反応からして、埴安神袿姫をぶつけてしまっていいだろう。

最大の問題が思わぬ方向で解決できそうだ。説得を成功させるためにも、急がないとな…!




次回は25(土)までには更新します。
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