それとお気に入り登録が800を超えました!読者の皆様の期待に応えられるよう完結まで頑張ります。
もう一つ、捜索でこの作品の名を挙げてくださった読者様がいらっしゃいました。ありがとうございます!
「博麗神社に集まったメンツに話を戻すぞ。勇儀と青娥に確認しておきたいんだが、二人とも摩多羅隠岐奈が博麗神社に入れなかったってことなんだよな?」
「ああ、奴が連れてったのは華扇と閻魔に守矢神社の祟り神、それと仙界の頭だけさ。機密性の高い情報交換になるから各勢力の代表一人だけ参加させるとか抜かしておいて、私だけ地底に飛ばしやがったんだよ」
「同じ理由で閻魔様のお連れしていた小町さんとニワタリ神、豊聡耳様の部下である物部様と蘇我様も同行を拒否していましたわ。当然私もですが、その判断のおかげで勇儀さんとこちらを訪ねるという手を打てましたの」
「つまりそれは、勇儀を締め出したのは摩多羅隠岐奈の独断。茨華仙と閻魔の同意は得ていないってことだよな?」
「そうなりますわ。勇儀様が油断したのも、口では地底の代表として連れて行くと述べていたからですもの」
「なら足止めより先に離間を試したい。勇儀から見て、茨華仙と閻魔が摩多羅隠岐奈から離れて中立を維持する可能性は残ってるか?」
「んー、そうだねえ…」
俺の目的は被害の最小化、避けられる戦闘は徹底的に避けなければならない。退いてもらえる可能性があるならそれが最優先なのだ。そして勇儀の他者を見る眼はアテに出来る。俺の本性を一度だけの激突で見抜いていたように、相手と顔を合わせればその本質を直感で理解できるのだろう。
ある意味、陰謀家泣かせの存在なのだ。策で踊らせることは難しくないが、駒として顔を合わせると裏まで見透かされるリスクがある…摩多羅隠岐奈が切り捨てたのはここが理由だと俺は踏んだ。それゆえに勇儀へ確認を取る…少し考えた上で勇儀が答えを返してくれた。
「閻魔は無理だろうね、豹を魔界人として割り切ってる。今まで豹が重ねてきた幻想郷での功績より、魔界の住人ってのを優先して考えてたよ。こうなった以上摩多羅隠岐奈に手を貸すだろうさ。
ただ華扇はまだ迷ってたから、分の悪い賭けに出るのも有りだとは思うよ?」
「そうか…ならぶつける相手は一つ決まりだな。
勇儀には閻魔の相手を頼んでいいか?奴が敵に回ることを前提にするなら、実力的にも地底側って立場的にも勇儀が一番悪影響が少ない…下手に地上の住民をぶつけて目を付けられると後が面倒過ぎる」
「ははっ、面白いじゃないか。あの頭の固い閻魔と本気で殴り合える機会なんてそう簡単に作れるもんじゃない!乗ってやるよそれ!!」
「ありがとな。今更ではあるが地上と地底の相互不干渉を貫こうとしてるってのを見せとけば、幻想郷の内戦を防ごうとしてる意思表示になる…頭が固い閻魔様だからこそ通じる小細工だ。やらないよりゃマシ程度だが」
あの地獄の閻魔…四季映姫・ヤマザナドゥは良くも悪くも保守的。規定されたルールを遵守すれば悪くは見られない、つまり敵対した状況であっても采配で情状酌量の余地ありと判断させることが出来るのだ。少しでも幻想郷が魔界を敵視する情報を残さないためにも、小細工だろうが片っ端から使うまで。
「次に茨華仙の説得だが…椛と衣玖に任せていいか?」
「えっ!?」「私ですか?」
椛は指名されると思っていなかったらしく驚きの声を上げたが、衣玖はそれほど動揺せずに返事を返してくれた。このあたりは竜宮の使い…使者として動くのが本分だからだろう。
交渉の余地があるのは四季映姫・ヤマザナドゥを除けば茨華仙だけになる―――摩多羅隠岐奈と博麗の巫女、魅魔一派に永遠亭は俺を擁護する理由が皆無。そして青娥が個人で動いているということは、仙界勢力も摩多羅隠岐奈と全面的に協力するってことになる…このあたりが引き下がることは無い。
残った勢力のうち天狗勢力は守矢神社に牽制してもらえればいいのだから、離間を狙うなら茨華仙か閻魔の二択しかなかったワケだ。それなら使者として動き慣れている上、龍神という強力過ぎる後ろ盾を持つ衣玖はここで切るべきだろう。そして彼女に釣られる可能性のある厄介者も、衣玖と茨華仙で共闘すれば行動不能に追い込むのは難しくないのだ。
「説得とは言っても、実際のところは足止めだな。ハッキリ言ってしまえば、茨華仙の善意を利用する形で時間稼ぎしてもらいたい。
…おそらくこの期に及んでも茨華仙なら情報交換には乗ってくる。何故なら紫さんと摩多羅隠岐奈が完全に決裂した今、管理者の一角として両者のストッパーとしても動かざるを得ないからだ。なにより椛は俺が完全に潜伏したタイミングでの同行者…椛しか知り得ない情報を持っている以上迂闊に切り捨てられない立場だ。それを利用する形で衣玖が交渉すれば、かなりの時間を稼げるだろ?」
「成程…たしかに会話の引き延ばしが通じそうなのは茨華仙さんだけですね。
わかりました、お任せください」
「ご迷惑をお掛けすることになりますが…衣玖さん、どうかお願いします」
「頼んだぜ。それで衣玖にはもう一つ別口で確認したいことがある…あの天人くずれは今後どう動くと思う?」
「総領娘様ですか…
考えられる可能性としては、私を狙ってくるのが6割、カナさんたちさっき私の救出に来てくれた皆様を狙ってくるのが3割、駒として利用しようとした摩多羅隠岐奈さんを狙うのが1割ぐらいだと思います」
「そうか…3割を引いた場合のフォローは必要になるか。
もしあの天人くずれが衣玖を狙って来た場合は、衣玖と茨華仙で隙を作って椛の魔眼を決めてくれ。他者を見下し過ぎるって点で月の姫よりずっと決めやすい相手だ…頼めるな、椛?」
「はい。私に出来る限りを尽くします!」
迷いも躊躇いも無く椛が即答を返す。永遠亭で月の姫相手に完全に決めたことで椛の自信に繋がってくれたようだな。
…この先椛を切り札に使う際の問題は、月の姫がまんまと白狼天狗にしてやられたことを協力者に伝えている場合。これをやられると白狼天狗だからといって放置は出来ないと椛を警戒対象から外されてしまい、真っ先に狙われてしまうリスクがある。だがあのプライドが異常に高い天人くずれであれば、駒として利用しようとした摩多羅隠岐奈に情報を求めることはまずしない。輝針城も俺の索敵範囲に入れてあるが、依神姉妹と少名針妙丸共々動く様子が無い…博麗神社にあれだけの有力者が集まっているこのタイミングで合流しようとしない以上、摩多羅隠岐奈にこれ以上駒として動かされることを嫌ったということだろう。
それならば、情報不足で
「もし天人くずれが衣玖を狙って来なかったり、そもそも交渉すら拒否された場合は、椛と衣玖は紅魔館まで退いて里香と合流してから迎撃してくれ。茨華仙なら紅魔館を巻き込むような戦闘は避けるハズ…魔界との交渉を終えた後の幻想郷のことも考えざるを得ない立場だからな。里香の戦車を加えた3人がかりなら戦闘になっても時間稼ぎにはなるだろ」
「別に追い返しても問題無いのです?」
「茨華仙が強硬的なら問題ない。ただなるべく交渉で済ませたいがな」
「出来る限りの努力はします。私も戦闘は面倒ですので」
軽くお道化て衣玖が言葉を返してくれる。本当に空気を読んでくれるのは助かるな…空気が張り詰め過ぎるとこの場で諍いが起きてもおかしくないぐらい、我の強い少女も多いのだから。
「ここまでで最初からぶつける相手を決めておきたい敵戦力の残りは、博麗霊夢・霧雨魔理沙・摩多羅隠岐奈・豊聡耳神子・伊吹萃香の5名になる。
…一番厄介な相手を咲夜に押し付けてもいいか?」
「摩多羅隠岐奈、ですね?」
「そうだ、とにかく奴の後戸を利用した空間移動能力は規格外が過ぎる…俺でも完全な対策は打てないレベルだ。
だが、咲夜の能力なら…時間稼ぎだけならいくらでも出来るだろ?」
「ええ、豹様のそのご期待に応えて差し上げましょう」
「咲夜、潰せそうなら容赦なくやって構わないわ。後始末は私がするから」
「はい、お嬢様の期待にも応えるよう力を尽くしますわ」
「奴は最後の最後まで直々に出張ってくることは無いだろうが、俺が神綺様と闘り合い始めれば動かざるを得なくなるだろう。奴の反応を拾い次第、咲夜が動いてくれ」
「かしこまりましたわ」
どんな手を打ってくるか読めない摩多羅隠岐奈だからこそ、こちらの奥の手となる咲夜をぶつける。それこそ咲夜のような強力過ぎる能力持ちでなければ、奴の足止めすら覚束ないのだ。問題点としてはレミリアが反対した場合だったが、あっさり同意してくれたことで解決する。ここまで俺の好き勝手にさせてくれるなんてな…頭が上がらないぜ。
「ありがとな咲夜。
それでもう一人単独でも十分戦えるパチュリーには、豊聡耳神子か伊吹萃香のどっちかを抑えてもらいたいんだが。どちらの方がパチュリーとしては与しやすい?」
「…そうね、選ばせてもらえるなら豊聡耳神子でいいかしら?読心系能力者の方が私としては足をすくいやすいのよ」
「それじゃそっちを頼む。仙界の部下と合流してきた場合、援護として連れて行きたいのはいるか?」
「とりあえず細かいフォローが出来る小悪魔は連れてくわ。後は…
そうね、そこの朝倉理香子を借りるわよ」
「ふむ、別に構わないけれど…理由は聞こうか」
「単純に科学を扱う貴方が一番仙人の意表を突けるからよ。ほんの数年前に目覚めた仙人が、近代科学に通じているはずが無いでしょう?」
「成程ね、古代の仙人相手に科学の力を知らしめる機会になるわけか。
いいでしょう、存分に見せつけてあげるわよ」
「小悪魔は大丈夫か?戦力的に厳しかったらもう一人ぐらい回せるが」
「いえいえ、パチュリー様がいて時間稼ぎだけでいいのでしたら大丈夫ですよ!お気遣いだけありがたく受け取っておきます!」
「そうか。なら任せるぞ、パチュリー」
「ええ、でも足止め以上はしないわよ?そこは納得しなさい」
「紅魔館から足を延ばしてくれるだけでもだいぶ譲歩してるのは理解してる。そこまで多くは望まないさ」
「…ああ、その性格だからここまでこじれたわけね」
とうとう交友関係が希薄なパチュリーにまで言われたか…
ここで言い返すのも時間のムダになるからな。甘んじて受け入れよう。
「そうだ、一応敵戦力に数えてはいるが射命丸は泳がせる。正確に言えば奴をこちらから捕捉するのは骨が折れるからな…己の欲望を優先するのに期待する」
「え~っと、わたしにもわかるように説明してくれないかな豹?」
「ああ、俺しか把握してないだろう情報も加えての判断だからな。
何人かには軽く話したが、そもそも摩多羅隠岐奈と天狗は相容れない天敵の間柄。余程のことがない限り協調しないんだ。もっとも、俺を取り巻く状況は余程のことに含まれるんだろうが…ここに来て守矢神社が中立に回った。そしてそれを烏天狗の大将である飯綱丸龍も把握してるってのがポイントだ。
要は飯綱丸が守矢神社との関係維持を優先する場合、射命丸が摩多羅隠岐奈に協調する理由が無くなるんだよ。そうなれば射命丸は己の利益のためだけに動く…パパラッチ根性を発揮するだろうよ。だがここまで来たら俺が記事にされても問題がない。神綺様と本気で闘り合うんだからな、興味がある連中に顔が割れるのは織り込み済みだ。
つまり、記者として写真を撮ることに専念するなら放置して問題ないってことになる」
「あ~!そういうことなのね!」
幻想郷最速という【こちらから手を出す】のはかなり難しい射命丸への対応を伝えたところで、理解できていなかったカナに向けて細かく説明する。飯綱丸の動向次第では射命丸は無視できる―――俺たちにとって理想的な動き。だがそう動かなかった場合も想定する必要はある。
「だが、摩多羅隠岐奈と協調する可能性や俺以外の記事候補を狙ってくる可能性もある…さっき足止めに回ってくれたエリーや、幻想郷では滅多に見ない天使であるサリエル様とリィスを優先する可能性はゼロじゃない」
「…そうですね。私一人ではヒョウ様が警戒対象に挙げるような妖怪の相手にはならないでしょうし」
「ああ、そこを考えると射命丸を独力で追い返せない皆は単独行動させられないんだ。強力な相手にぶつける分配を先にしたのはここが理由になる」
「そうですねー、わたしも一人じゃどうにもならないのがゴロゴロいるのがわかってますし」
「だが放置できるならそれに越したことはない。だから射命丸は迎撃対象に数えない、その代わり記者ではなく戦闘員として動いた場合は遊軍として動く複数人で相手取ってもらう形になる。これは皆が頭に入れておいてくれ」
先にぶつける相手を決めておきたいのはあと3人。そしてタイマンで食い止めるのは難しい戦力が多くなってしまっている―――これだけ力を貸してくれる皆がいても戦力不足気味ってのは、本当に幻想郷の強者の層が厚いのを痛感させられるな…!
次は6/3(火)までには更新します。