寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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捜索で紹介してくださった読者様がいらっしゃいました!ありがとうございます!


第252話 妹たちとの作戦会議⑧

「姉さんが前に出るなら私も出るわ。リリカはどうする?」

「あちゃー、メル姉も即答かぁ。仕方ないな…」

「いや、メルランから希望してくれたのはありがたいがメルランとリリカはルナサと別行動させる方向でも考えがある。リリカが伊吹萃香と闘り合うのを避けたいならそっちを優先してもいい」

「え?どういうことかしら~?」

 

メルランも前線に出る覚悟を決めてくれたようだが、リリカは乗り気ではないらしい…それなら無理に最前線に出てもらうのではなく、撹乱に回る遊撃隊として動いてもらう方向でも貴重な戦力になる。

 

「ルナサと同じで、メルランの躁の音も策に使える。広範囲に影響を及ぼせる音は防ぐことが難しいからな…例えば、幻月と夢月が稗田邸に襲撃を掛ける前に人里でゲリラライブをしてもらい、テンションが上がった住民に騒ぎを起こしてもらう。今の状況でメルランが動いたとなれば、博麗神社に集まってる面々は釣られるだろうよ。人里まで引き付けた上でメルランを青娥に回収してもらえば、状況を掴み切れていないだろう慧音や小兎姫は住民を落ち着かせることを優先するため人里に到着した奴へ協力を要請するだろう…奴等がこの協力要請を無視すれば自警団も味方に付けられるし、協力すればこちらの戦力を割かずに足止めできる」

「…豹さんもやっぱり魔界のエリートなんですねー。よく思い付きますねそんな使い方」

「メルランともそれなりの付き合いになってるからな…こういう状況に追い込まれたときの動かし方を考える時間は十分にあっただけだ。

他にも紅魔館防衛戦力の底上げに回ってもらうのもアリなんだが―――レミリア、起きて来た妖精メイドも頭数に数えていいんだよな?」

「纏めて聞かせて突撃させるのか。お兄様も上に立つ者としての兵の使い方を心得てるじゃない」

「一回休みで済む妖精じゃなきゃ使えない手だけどな。精神操作して無駄死にして来いって命令するようなもんだ…あまり使いたくない策だが、捕まえられて人質に使われないためにはこれが手っ取り早い」

「う~…私としてもあまりそういう形で演奏はしたくないわ~…」

「それなら無理にとは言わない。その場合妖精メイドは戦闘に巻き込まれないよう隠れてもらうだけだ」

「前言撤回よ。やっぱりお兄様は上に立つのは向いてないわ」

「俺自身が誰よりも理解してるさ。

ああ、妖精メイドの話が出たついでだ。木を隠すには森の中、リリーとノエルに妖精メイドの服を用意してくれないか?ノエルはまだ知られてないだろうが、リリーは俺に協力してるのを把握されてる可能性があるからな…人質として狙われるだろう筆頭だ。妖精メイドに紛れ込ませたい」

「咲夜、用意してやれ」

「かしこまりました」

 

そう返すと同時に咲夜の姿が消えた、と思ったらすぐにメイド服を2着持って現れた。やっぱとんでもねえな咲夜の能力は…

 

「豹様以外男性がいませんし、豹様の視界に入らない位置でさっさと着替えなさい」

「あ…はい」「わかったのですよー」

 

そのままリリーとノエルが受け取って俺の背後に回る。ついでにこいしが焦点の合わない目でぼんやりと明後日の方向を向いていたのに気付き、くっついていた背中から一度引き剥がして左腕に抱え直す。

 

「………あっ!?ありがとね、豹!」

「無意識に飲まれてたか。有用だが難儀な能力だな」

「えへへー、それを止めてくれる豹はやっぱり私の運命の相手だね♪」

「…俺に精神守護能力を与えてくれた神綺様ならなんとかしてくれるかもしれん。時間が作れないか頼んでみる」

「ぶー!何が不満なのよー!!」

「フッ、随分と好かれているなお兄様?」

「レミリアもこんなのに乗らないでくれ…」

「そこで何の躊躇いもなく抱き寄せてしまう豹も悪いですよ?

私が指摘するのもどうかと思いますが、豹は少し女性に対する距離感が狂っています。後ろから刺されないように気を付けるべきですね」

「ドレミーにも言われるのか…魔界にいた頃もユキから何度も言われてる、治らないだろうよこれはな」

 

そしてレミリアが煽りドレミーにツッコまれる。予想はしてたが作戦会議中にイジる必要は無いだろうよ…

 

「話を戻すぞ。リリカが最前線に出たくないってなら無理にとは言わない。だがルナサを最も的確にフォロー出来るのは姉妹であるメルランとリリカだ。

…俺としては、ルナサの援護に回ってほしい。頼まれてくれないか、リリカ?」

「豹が頭下げなくていいって!今まで助けられてたのは私も同じだし。

それにこの期に及んでワガママ通す気はないって。メル姉と一緒にルナ姉の囮になってやろうじゃん!」

「それならわたしも付き合うわ!同じ騒霊だから合わせやすいし!」

「私も行くわ。メンバーで一人だけ後ろにいるのも薄情だからね!」

「リリカにカナもありがとうな。

ただ雷鼓は悪いんだが遊撃隊の一つに回ってもらいたい。どのタイミングで出て来るか読めない上に、対応が必須な敵がまだ残ってる」

「え?誰のことよそれ」

 

カナを中心にメルランとリリカで援護すれば伊吹萃香相手でも足止めは出来る。カナは好戦的な面があるだけあって、幻想郷における隠れた実力者なのだ。里香が連れて来てくれた理香子もそうなのだが、スペルカードルールが施行される前の異変において博麗の巫女や魅魔と闘り合えるレベル…加えて俺の隠れ家に憑りついてからは俺が隠れ家の維持に必要だった魔法を教えてある。

要するに強化・防護魔法に関しては魔界の高位魔導士クラスに届いているのだ。遅延戦闘に限れば幻想郷の上位妖怪であっても相当粘れる。そこにメルランとリリカの援護が入るのなら、ルナサの鬱の音に影響されるだけの時間は稼げるハズだ。

 

そして、雷鼓は付喪神であるからこそ組ませたい戦力がいる。

 

「最初に【確実に敵に回る7名】を説明しただろ?そこでまだぶつける相手を決めてない残りの2名――摩多羅隠岐奈の二童子・丁礼田舞と爾子田里乃だ。

後回しにしてた理由だが…ここにいる皆とは顔を合わせないように動かれてるんだよ。だから容姿とかから説明しなきゃならなくてな」

「あ、それでしたら私が似顔絵を描きますよ。隠岐奈さんの元へ使者として出向いた際に、軽く会話したことがありますので」

「マジか、助かる…!レミリア、紙と筆記具を頼めるか?」

「これをお使いください」

「…命令するまでもなかったわね」

「ありがとうございますね、少々お待ちください」

 

レミリアが命令する前に咲夜が衣玖に紙とペンを手渡していた。本当に助かる。

 

「衣玖が描き終えるまでに伊吹萃香の方を済ませるぞ。カナが前衛に出た上でメルランとリリカで援護。それでも厳しそうならルナサも援護に回ってくれ…鬱の音を聞かせるだけなら、戦闘の片手間で出来るよな?」

「ええ、曲を奏でるのではなく音を出すだけなら簡単よ。最初から私も戦うわ」

「頼む。雛の存在はなるべく隠してくれ…俺が雛に隠形魔法をかけてから動くが、位置を察せられると雛は最優先で狙われる。強者であるほど、雛の危険性が理解できるからな」

「…皆悪いけれど頼むわよ。敵に回った私は真っ先に落とすべきというのは、豹が言う通り規格外の上位存在ほど身に染みているから」

「そうだろうな。儂でも厄神の厄から逃れるのは困難…敵として厄介なことこの上ない」

「ひ、雛って凄かったのね~…」

「私が凄いわけじゃないわ。厄は誰にも平等なだけ…厄神として影響を受けない私にも、孤独をもたらしている。存在するだけで悍ましいモノなのよ。厄祓いが神事として今も続いているのが、わかりやすく厄の恐ろしさを示しているでしょう?」

「…そうかもな。その手段は異なるとはいえ、西洋東洋問わず続いている儀式に違いはない」

 

レミリアやコンガラ様さえ厄の悪影響を防ぐのは難しい…そういう意味では雛も幻想郷における強者と言える。だが雛本人が語る通り、厄を纏う雛自身はあくまで妖怪でしかないのだ。厄塗れになることを恐れず向かってくる規格外がいれば、あっさりと命を奪われてしまう…不機嫌な鬼であれば躊躇なくそう動く。だからこそ切り札である雛は伏兵として扱う必要があるのだ。騒霊と厄神では、敵に回した際の脅威が桁違いなのだから。

 

「ルナサの鬱の音も雛の厄も、効果が表れるその時までこちらから視認できない以上ひたすら耐え凌ぐ戦闘になる。今セッティングした迎撃の中では一番キツくなるだろう…エリーとくるみにリィスは紅魔館防衛に回ってもらうが、ここの戦闘が厳しそうなら加勢するのを優先してくれ」

「わかりました!」

「りょーかいです!」

「お任せください」

「…ということは、だ。さっきの遊撃隊というのは私とこいしにドレミー、それに雷鼓ってお姉さんとメディスンか?」

「ああ、こころの言う通りその5人で遊撃隊として動いてもらいたい。

というのもこいしのステルス能力は敵からすれば雛の厄以上に警戒しなきゃならないからな。おそらくあちらも対抗策を打って来る…その内容までは俺じゃ予測できん。

それならその対抗策を打たせなきゃいい。こいしを迎撃の中核戦力にしてその位置を把握させるより、要所要所だけで使うことで対抗策として使う敵戦力を遊ばせられれば全員への援護になる」

 

こいしは暗躍だけでなく戦闘員としても規格外―――なにしろあの青娥にすら完璧な不意打ちを決めているのだ。加えて守矢神社と命蓮寺の協調が射命丸から伝えられる以上、こいし本人だけでなく複数名を完全に隠すことが可能だということが敵側にも実証されている。

敵からすればこいしにサリエル様やフランドールを隠され、意識外から即死攻撃を受ける理不尽も考慮に入れなければならないワケだ。ある意味俺よりも優先して止めなければならない存在なのである。

 

「摩多羅隠岐奈の二童子を遊撃隊に最優先で潰してもらいたい理由は、出現位置の予測が難しいのと逃走に専念されると追撃が難しいからだ。紫さんか藍の協力があれば後戸で逃げられてもスキマで追えるんだが…ここにいる皆で異空間まで追撃できるのは俺とサリエル様に青娥、幻月と夢月ぐらいだ。最高レベルの戦力をあの二童子にぶつけなきゃ逃走阻止が難しい上に、どのタイミングで何処に出て来るかの予測も付け辛い。つまり後手に回らなきゃ対処できないんだが、そもそも異空間まで追撃するような余裕は戦力的にも時間的にも無い。

だから対策されること前提のこいしをぶつけることで奴らの目論見を潰しに行く。敵からすれば最大警戒対象のこいしを、丁礼田舞と爾子田里乃に向けられるとは摩多羅隠岐奈でも読めないだろうよ…いくら摩多羅隠岐奈の直臣とはいえ、今博麗神社に集まってる実力者には戦力としては劣るからな」

「成程ね。格落ちの相手に向かわせるのは勿体ない、そう考えると踏んで逆に雑魚狩りに向かわせると」

「二人とも雑魚なんて言えない実力者ではあるんだがな…だがこいしは規格外が過ぎる。加えてメディスンとドレミーが同行すれば不意打ちからの離脱が難なく出来るんだよ。紅魔館の妖精メイドかホフゴブリンを一人眠らせておけばな」

「え?私とドレミーってお姉さんでどうすればいいのよそれ?」

「メディスンの扱う毒に睡眠作用がある毒はあるか?」

「それはいくつかあるけど…」

「そういうことですか。こいしの協力でメディスンを悟らせずに睡眠毒を浴びせれば、私が全員を連れて夢の世界経由で撤退できると」

「それに加えて二童子も連れ帰れば人質交換に使えるからな。紅魔館で眠らせるのはレミリアが選んでくれ」

「ええ、考えておくわ」

「そして雷鼓とこころをこのグループに加えたい理由は、比較的メディスンの毒に耐性があるからだ。付喪神と面霊気なら実体を持ったとはいえ、人間や妖怪より毒の作用は薄い」

「あー、そういうことなのね!納得よ、私も遊撃隊に回るわ」

「…と、ここまでこいしの協力を前提に進めちまったが。こいし、頼めるか?」

「もっちろん!ただ私を案内してくれる人は付けてもらいたいな」

「そのための雷鼓だ。この5人だと幻想郷の生活時間は短いとはいえ、人里も含めて幻想郷内の地理に一番詳しいのは雷鼓になるだろ?」

「…あ、たしかにそうね。一応聞いとくけど…ドレミーさん?貴方も案内できるほど詳しくないってことなのね?」

「すみません、私は本来夢の世界の住人ですので。こちらで活動することは稀なのですよ」

「後はこころだが、遊撃隊の隊長としての判断ってできるか?」

「うむ、無理だろうな!色々な意味で私には経験が足りていないぞ!」

「ってワケだ。遊撃隊の隊長を案内役も兼ねて雷鼓に頼みたい…紅魔館防衛が里香と妖精メイドだけで事足りそうなら残りの防衛組も遊撃隊に合流してもらうが、皆幻想郷の案内は出来ないからな」

「了解!戦闘に関してはこいしとメディスンを気取らせないように時間稼ぎするだけでいいってことね?」

「ああ、どこまで戦力をつぎ込んで来るかで遊撃隊の負担は変わるが、最優先は伝えた通り丁礼田舞と爾子田里乃だ。

他に敵として動く可能性があるのは高麗野あうんや明羅と呪珠、小野塚小町に庭渡久侘歌あたりだろう。もし二童子より先にこのあたりが動いちまったら、エリーとくるみで迎撃してくれ。積極的に戦闘を楽しむ方向には動かないメンツだ…戦闘を少なくするために拠点の紅魔館を狙ってくるだろう。里香の援護射撃が届く辺りがベストな交戦地点だ、頼むぜ」

「「はいっ!」」

「それとリィスは霧雨魔理沙か伊吹萃香が厳しくならない限りは紅魔館から離れないでもらいたい…天使であるリィスは余計な連中の注目を集めてしまう。紅魔館の最終防衛ラインは里香とリィスで築いてくれ」

「はい、ヒョウ様のお言葉に従います」

「任せるのです!」

「―――出来ました。どうでしょう?」

 

全員の分担を済ませた丁度いいタイミングで衣玖が似顔絵…というかデフォルメされた丁礼田舞と爾子田里乃を描き終えてくれた。たしかに特徴的な帽子と服装さえ知っていれば細かい顔のパーツは必要ないな…本当に空気を読んでくれて助かる。

 

「ああ、これで十分すぎる。人里どころか幻想郷全体で見てもあまり見ない装束だからな。皆、確認しておいてくれ…特に遊撃隊は」

「「「「「はーい」」」」」

 

戦力分配はこれで完了。後は軽くまとめてフランドールとレティに説明したら、アリスの説得に向かわねえとな…!




今週は再度投薬があるため次回更新は不透明になります。
なんとか6/11(火)までには更新できるよう頑張ります。
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