寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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捜索で紹介してくださった読者様がいらっしゃいました!ありがとうございます!


第263話 開戦へのカウントダウン

里香だけでなくリィスの協力もあり、それほどの苦も無く幻夢界に建設された要塞へのゲートを開くことが出来た。そのため里香の戦車を早速紅魔館正門前に移動させたわけだが。

 

「ほう…これが。たしかに管理者からすれば幻想郷に広めるのは避けたいだろうな」

「科学技術だけじゃなく魔法技術も取り入れてるんだ。幻想郷だけじゃなく魔界でも中々見ないレベルの完成度…凄いじゃない、里香」

「ですがまだまだ完成には程遠いのです。耐久面にまだ不安があるし、あたい個人で量産できるようなコストじゃないのですぅ。もっとも、豹が防護魔法にも精通してるのなら耐久面の強化は見込めるので、後は戦車に価値を見出せるスポンサーさえ見つかれば完成が近くなるのです!」

「あ、それならカムさんに今度聞いてみますか?利益が出そうなら考えてくれるかもしれないですよ」

「ぜひお願いしたいのです!」

 

作戦会議の時点で戦車に興味を示していたレミリアと夢月の他に、フランドールと美鈴に小悪魔、加えて妹紅と青娥に俺の側に控えていたがった麟が実物を見るために外まで出て来ていた。夢月が満足したらそのまま先陣を切ってもらう幻月と引き続き門番として控えてくれているレティも含め、各々が興味津々に感想を出してゆく。

 

「これを紅魔館にも配備できれば私の仕事がもっと楽になりますねー」

「美鈴がこれ以上楽してたらまた咲夜にお仕置きされちゃうんじゃない?」

「そういえばこの館の門番はよく居眠りしてるって私すら聞いたことがあるわね。私みたいな野良妖怪にすら広まってるのはマズいんじゃないかしら?」

「門番が居眠りですか…エリーかくるみがそんなことしたら幽香に容赦なくズタボロにされます。レミリアは案外身内に甘いんですね」

「美鈴へのお仕置きは咲夜がやってくれているからな、私が追加で制裁する必要は無いわよ。何より門番なんて自由の少ない仕事を希望する者など中々見つからないし、信を置けるだけの者を見繕わなければ新規採用すら出来ないわ。多少のサボり癖なら見逃せるだけの価値が美鈴にはあるということだ」

「成程ね、幻想郷における有力勢力の頭を張ってるだけの器量はあるってことか。豹が気に入るのも納得だわ…

ちなみにだが里香、量産できた場合人里の自警団にも回してもらえるのかい?」

「顧客として購入するのであればあたいの方に問題は無いのです。ただ豹が言ってるように幻想郷の管理者が容認するかどうかが不透明なのです。操縦技術とか以前に科学兵器である時点で破壊に動かれる可能性があるのですぅ」

「やっぱそうなるか。慧音の負担を減らすことと、幻想郷の秩序を維持することは別問題だもんね…」

「それに里香の言った通り操縦技術や整備の問題もある。量産できても購入者が性能を活かせるようになるまでには、それなりの時間も必要になる…その期間で破壊に動かれるとただの浪費になっちまう。購入する前に少なくとも紫さんに確認は取るべきだろうな」

 

そして妹紅は俺と似た視点で戦車に興味を示していた。あまり人里の自警団に深入りしようとはしない妹紅だが、慧音との信頼関係から人里防衛に関しては真剣に考えている。操縦技術に魔法的な素養が必要ないのであれば、この戦車は自警団の大幅な戦力アップに繋がることをすぐ理解できたワケだ。もっとも、そう簡単にこれだけ高度な科学兵器の流通が認められるとは思えないが。

 

「―――どうでしょうか?」

「おおー!すごく楽になったぞー!」

「豹様の弟子を名乗るだけはありますわね。これだけ実用的な治癒能力は稀少…絶やしてしまうのは惜しいですわ。

豹様からも伝えられているでしょうが、貴方は生き延びることを最優先に戦いなさいな。もし無駄死にしたならば、死体ごと私がキョンシーとして永劫利用しますわ」

「はい、豹さんだけでなく師として私を鍛えてくださった皆様からも言われていますから、大丈夫です」

 

そして麟と青娥も即座に目的を終えていた。俺との交戦時にも青娥が従えていたキョンシー―――宮古芳香。どうやら後戸の国で勇儀が青娥に落とし前を付けさせた際に大ダメージを負ったらしく、表に出さず回復に専念させていたそうだ。そろそろ戦闘準備が必要となったことで青娥が戦力として召喚したのだが、その回復にサリエル様ではなく麟を指名したため外に出てきていた。

 

詳しくは聞かなかったが、青娥は麒麟に関して結構な知識があるらしくサリエル様の回復魔法より麟の麒麟の加護の方が自身の仙術と相性が良いからこその指名らしい。言われてみれば、霍青娥という名が本名であるのなら麒麟は彼女の故郷に伝わる瑞獣…仙人である青娥なら俺や麟より詳しい知識を持っていても不思議じゃない。目を離すのは危険過ぎるが、俺も同席することを前提にすれば麒麟に関して青娥から麟に役立ちそうな知識を伝えてもらうのはアリかもしれないな…

 

「それじゃ、最終整備に入らせてもらうのです!」

「ああ、頼んだぜ里香。

幻月と夢月は里香の整備が済み次第動いてくれ。今から15分後なら、神綺様の到着予定まで20分ちょい間が空く…無関係だと押し切れる時間差だろう」

「はい、任せされました」

「ええ、楽しませてもらうわ」

 

現時点ではまだ博麗神社に動く気配は無い。このまま俺たちが先手を打てればいいんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「神綺様、戻りました!」

「あれっ、ルビーちゃん!?何かあったの!?」

「……………ノックぐらいしなさい、神綺様の執務室よ」

 

残りのお仕事をサクサク片付けてたところに、夢子ちゃんと先行してくれたルビーちゃんが飛び込んできてビックリした。こんな朝早くからパンデモニウムに出てきてくれたマイちゃんはちょっと不満げに返してたけど、ルビーちゃんの続けた言葉でマイちゃんの反応まで気にしてあげられなくなっちゃったわ。

 

「ヒョウさんから神綺様にお願いがあります!

『午前7時半に幻想郷に来てほしい』そうです!!」

「――っ!?ルビーちゃん、ヒョウくんと直接お話しできたの!?」

「はいっ、夢子さんとユキだけじゃなく、アリスと袿姫様も同席しているところに直接会いに来てくれたんです…!なので、夢子さんの許可ももらえてます!

『先輩が魔界の後始末に回ってくれる前提であれば、多少仕事を残してもなんとかなります。決行時間を優先してください』だそうです!」

「それって…!ヒョウくんは帰って来てくれるのね!?」

「ヒョウさんに無事魔界へ帰って来てもらうために、神綺様の力をお貸ししてもらいたいんです…!どうかお願いします!!」

「うん、すぐ準備する!あと30分はあるもん、間に合うわ!!」

「……………相変わらず夢子さんもヒョウに甘いわね」

 

昨日の時点だとサリエルに【魔界に帰ることは選べない】ってヒョウくんは伝えてたのに、ルビーちゃんと直接顔を合わせた上で私にお願いしてきてくれた。それはこの一日でヒョウくんを取り巻く状況が急に変わっちゃったってこと…私たちにとっては嬉しいことだけど、喜んでばかりもいられない―――時間を指定して私の助けを求めるほど、ヒョウくんは追い詰められちゃってるってことだから。今度は、私がヒョウくんを助けてあげなきゃいけない。

ヒョウくんたちが、魔界を助けてくれたように。

 

「そういうわけだから、マイちゃんごめんね!

 ちゃんと帰って来たら終わらせるから、しばらく魔界をお願い!!」

「はい、夢子さんがOKしたんならどうにかなるでしょうし。

 頼れる護衛を助けてやってください」

「ありがとね!

ルビーちゃんは先に中庭でアリスちゃんのお家にすぐ飛べるようにしておいて!時間ピッタリに行けるように!」

「はいっ!お待ちしてます!!」

 

口では色々言うマイちゃんだけど、ここに来てヒョウくんが帰ってくることを認めてくれた。

頼れる護衛なんて呼び方をしてくれた。それはつまり、また私たちの傍にいても構わないってことだから。

 

(もう少しだけ待たなきゃならないけど、私もヒョウくんに会える…!

 今度は、間違えないようにしないとね!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「…増援というわけではないようだな」

「豹が魔界に去ったというわけでもないようです。彼の反応もまだ紅魔館に残っています」

「あれだけ強い魔力反応を残して何もしていないということは無いでしょうが…現時点では何が目的だったのか予想しようがないですね」

 

私でさえ気付けるような魔力反応だったから、当然ここにいるほとんどが紅魔館で何か起きたってことを理解してたわ。だけど敵の数が増えたわけでも減ったわけでもない…何のためにあれだけ目立つ魔法を使ったのかがわからなかったから、また話が始まって出発できなくなる。ああもうホントどいつもこいつも腰が重いわね!

 

「増援じゃないなら気にしないでいいでしょ?さっさと紅魔館に殴り込めばいい話じゃない」

「少しは状況を考えんか博麗の巫女。闇雲に突撃したところで無駄に戦力を消耗するだけだろう」

「ここでちんたら答えの出ない話を続けるよりはいいと私は思うぜ?」

「こっちの魔法使いも相変わらずね…今の状態で出撃したところでまともな戦闘にならないことぐらい理解しなさい。最低限の目標だけでも統一しておかないと共闘なんて不可能よ」

「そもそも共闘なんて出来るのかい?魔理沙を切り捨てる選択肢を捨ててないあんたらも私からしちゃ要警戒対象なんだけどねえ?」

 

豹を捕まえさえすればいいんだから細かい作戦なんて必要ない…って私は思ってるんだけど。流石についさっき豹を取り逃がしてる私の意見は通らない。急かしてみたけど案の定私と同じ考えなのは魔理沙だけみたいで、魅魔すら話を続けようとしてる。もうこうなったら私と魔理沙だけで動く方がいい気もしてくるわ。これ以上時間を掛ける方がまずいことになる…そんな気がしてる。

 

でもそれに感付いてない奴の方が多いみたいで、まだまだ話は終わりそうになくなってく。

 

「…人数に変化が無いのであれば、おそらく今の魔力反応は豹の空間魔法だろう。

里香の戦車を幻夢界の要塞から紅魔館とやらに移動させたのだと思う」

「里香?戦車?何よそれ。

勝手に納得されても困るわ、理解できるように言いなさいよ」

 

明羅さんの反応に輝夜が詳しい説明を求める。これでまた余計な時間が取られるわ…

 

「里香は私の弟子の一人だよ。私も認められる天才魔法使い…もっとも、魔法より科学技術を用いた戦車にその才能を向けちまってるんだけどね」

「豹が私の庵を訪れた時に、里香も来ていてな…豹の魔法が戦車の強化に繋がると判断して豹に執着したのだ。豹に直接戦車を見せるために移動させたことで、燃料不足と言っていた。だが里香の戦車を戦力として豹が数えていたなら、豹が空間魔法を感知されるリスクを負ってでも紅魔館まで移動させることは有り得る。

…人数に変化が無いというのが真実なら、この可能性が一番高いだろう」

「我も探ってみたが、敵戦力の数に変化が無いのは間違いないぞ」

「それならそいつの言う通りなんじゃない?

ま、人数は変わらなくても戦力を増強されたことに違いは無さそうだけど」

「まーた面倒なことになりそうな…戦車なんて幻想郷に持ち込まれるだけでもマズいんじゃないかい?」

 

明羅さんが詳しく答えたことで、鈴仙と小町が余計な本心を口に出す。あーもう、面倒になってるのはとっくに全員わかってるんだからいちいち言わなくていいってのに…!

 

「そうですね、それこそ八雲紫が率先して破壊に動いてもおかしくない。ですが、その様子が無いところを見ると…」

「紫は豹の援護になると判断して黙認したということだろうな。それこそ私でもない別の管理者に動いてもらいたいところだが…日和見主義の奴等がこの程度で動くはずもないか。

交戦に使用された場合は完全に破壊しておきたいところだ」

「お師匠様がそこまで言うのも珍しいですね」

「私と舞の仕事を減らす意味でも、ここに集まった誰かが壊してくれると楽になるわね」

「別に放置してくれても構わないけどね。私の憂さ晴らしに使っていいってことだろ?

酒とは別の楽しみになるからねえ破壊は」

「こうなった以上戦車の破壊は見逃すけど、里香にトドメを刺したら私が報復するからね。そこは覚えときな」

「はっ、随分とお優しい悪霊がいたもんだ」

 

そして魅魔と萃香がやり合ってるし。普段なら好きにやってなさいで済むんだけど、今は状況を考えて欲しいわね…!

あーもう、時間が無いのはみんなわかってるはずなのに、どうしてここまでちんたら出来るのかしらね!好き勝手動けないのがここまでイライラするとは思わなかったわ!

 

―――私の勘に従って、さっさと動いてれば良かったのかもしれない。それに気付くのは、異変が解決してからだったわ。

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