寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第267話 Match-up

「やっぱり豹はわたし専属の助手になるべきなのです!幻想郷にも魔界にももったいないのです!」

「無茶言うな…手が空いたら里香のとこに顔は出す。俺にも都合ってもんがあるんだよ」

「その都合でわたしのところに来るのが少なくなるのが損失なのです!わたしの戦車以外を優先する必要なんて無いのです!」

「必要だよ!!ケジメをきっちり付けねえと魔界からも幻想郷からも俺は追討される。里香一人で幻想郷と魔界を同時に敵に回したいのか?」

「むー!わたしのどこが不満なのです!?」

「里香の都合優先で俺の都合を考慮しない点だ」

「バッサリ言い切るし。楽師の小娘や覚妖怪とわたしで対応が違いすぎるのですぅ」

「流石の麟も里香に小娘とは言われたくないと思うぞ…」

 

年齢の割に肉体的にも精神的にも大人びているせいで誤解されがちだが、麟は博麗霊夢と霧雨魔理沙より年下だ。そして里香と明羅は霧雨魔理沙より年長なので麟を年下扱いするのは間違っていないのだが、傍から見れば里香より麟の方が年長に見えるだろう。

 

「それじゃ、俺の合図でブッ放してくれ。この距離じゃ直撃は狙うだけムダ、散開させるために薙ぎ払え」

「了解なのです!主砲の威力、目に焼き付けるのですぅ!!」

 

俺たちが優先しなきゃならないのは最小限の被害で切り抜けること。そのための戦力分配だが、敵が密集していては作戦通りに行かなくなる。ゆえに、先制攻撃で敵を散開させる…砲撃直後に先陣を切るメンツが速攻をかけられるタイミングでだ。

 

そういう意味では、紅魔館に辿り着くまでに何度か戦闘になったのもムダじゃなかった。平和ボケがだいぶ解消されたからな…!

 

「―――撃てっ!!」

 

 

 

 

 

「―――っ!?」

「言わんこっちゃない…!!」

「里香は本気かい、明羅と違って割り切りが早いねえ!」

 

紅魔館付近に陣取った奴らが目視できるぐらいの距離まで近付いたら、いきなり紅魔館正門から極太なビームが発射されたわ。もっとも私の居る左から右へ薙ぎ払うように放たれたビームに巻き込まれるようなのはいなかったんだけど、この攻撃が意味するのは。

 

「なんだいなんだい、閻魔様がさとりのお守りかい?」

「…星熊勇儀、古明地こいしを出しなさい。古明地さとりは「こんな機会滅多に無い!私と喧嘩してもらおうじゃないか!!」

「――っ!?」

 

さとりが人質にならないってこと。地底から出て来た鬼が問答無用とばかりに閻魔に殴りかかってたわ。こうなった以上こいしの不意打ち覚悟の上で豹を狙わなきゃならないわね…それなら私がやらなきゃならないことは一つ!

 

「私はこのまま紅魔館に突っ込むわ。豹はそこにいるからね!!」

「ちょっ…!?待ちなさい霊夢!!」「れ、霊夢さん!?単独行動は…!」

 

私の後ろに居た華扇とあうんが慌ててるけど、人質なんか取ったところで時間切れになる可能性があるわ。それなら最速で豹をとっ捕まるべき…私以外にもそれを理解してるのも居て。

 

「おうよ!私も突っ込むぜ!」

「…悪い霊夢、魔理沙を頼んだよ!!」

 

反対側にいた魔理沙が乗って来て、魅魔が信じられないようなことを言って来たわ。でもその理由はすぐわかった…だいぶ前に地獄で戦った強いのが、魅魔の目の前に立ち塞がってたから。

あいつは、私や魅魔でも簡単に片付けられない…!なんで地上に出て来てんのよ!?

 

「まあ、この二人が陣形なんて気にするはずもないか。舞、里乃!援護してやれ」

「「はいっ、お師匠様!」」

 

それに気付いているのか、隠岐奈も部下二人を私と魔理沙に付けて自分は魅魔の援護…いえ、ここでの戦闘全体を纏めて援護するみたいね。あの剣士と鬼以外にも、レミリアや蓬莱人がここまで出て来てる。逆にここを隠岐奈たちに任せて強行突破すれば、豹以外に注意すべき戦力はいない。それなら考えるまでもないわ!

 

―――この時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことがおかしいって、私は気付けなかった。

 

 

 

「久しぶりだな、魅魔」

「久しぶりだねえ、コンガラさん。

 悪いけど退いてくれないかい?大事な弟子の危機なんだ」

「儂との手合わせを終わらせてからなら構わん。

 救出した後、その弟子にも手合わせをさせるがな」

「それじゃ間に合わないんだよねえ…!

 でも退いてくれないことは理解したよ――ならどいてもらう!!」

「かかって来い。刃を捨てて得た魔法、楽しませてもらおう!!」

 

 

 

「オラどうした閻魔!私相手に手加減するような余裕があると思ってるのかい!?」

「この、話を聞きなさい!古明地こいしを」

「無駄だよ!こいしが言うには『お姉ちゃんは気にしなくて平気、勝手に逃げるもん』だとさ!!」

「だから言ったでしょう、私は人質にならないって。

さっさと放してください、勇儀さん相手の盾になんてなりませんよ?豹とやらはよほど上手くやったようですね、勇儀さんは完全に本気です」

「―――本当に、腹立たしいですが…その通りですね!

いいでしょう。星熊勇儀、私が鬱憤を晴らすのに使わせてもらいます!」

「ハッ!ようやくその気になったかい、楽しませなよ!!」

「小町、久侘歌!先行した者を援護しなさい!紅魔館に残る者の方が捕らえるのは容易です!!」

「やれやれ…行くかねえ久侘歌」

「小町さん…!気乗りしないのは分かりますがもう少し真剣になってください!生半可な相手じゃないんですから!!」

 

 

 

「きゅっとしてドカーン!!」

「…なっ!?何するのよこいつ!」

「あれ、外した?

 ふーん、お姉様が相手にとって不足無しって言うだけあるじゃん」

「お姉様?…げっ」

「失礼な奴だな。月の姫は礼儀を知らんらしい」

「なに、姉妹で袋叩きにする気かしら?誇り高い吸血鬼様が情けないわね」

「お兄様の頼みだからな、情けない真似をするだけの見返りがある。

 部下共々私とフランを楽しませなさい?出来なきゃ骸に変えるわよ」

「あの男ロリコンの気もあるっての?手が付けられない女好きね…」

「言ってる場合ですか姫様!?来ますよ!!」

「わかってるっての!やられっぱなしで終わるもんですか!!」

「美鈴、行商の玉兎は任せるぞ。サリエルがいる以上好きに暴れて構わん」

「かしこまりました!!」

 

 

 

「…質量変化系能力か。ヒョウが不意を打たれるだけの理由はあったのだな」

「気に入らないねえその余裕。まずアンタを殺らないといたちごっこだ、ここで殺す」

「サリエル様にそんなことさせるとでも~?」

「…あん?なんだこのガキ」

「どうも何も見ての通りだよ?わたしを倒さなきゃサリエル様に近付けない」

「ったく、あの人間の小娘といい度胸だけはあるのが集まってやがる。

 あんな奴のどこがいいんだか」

「豹の良さがわからないから今でも独り身なんじゃない?

 ま、こんなに酒臭い鬼を貰ってくれる人なんていないだろ~けどね」

「いいだろう、お前から消し飛ばしてやるよ!!」

 

 

 

「あの鬼、余計なことを」

「さて、どういうことだ永琳?取引は成立したはずだろ?」

「私は輝夜の為に動いてる、それだけよ」

「つまり私と交渉する気は無いということだな?」

「…輝夜がそれを望まない以上、私に選択肢はないわ」

「そうかい、輝夜よりは信用できると思ってたんだけどな!

 豹の邪魔はさせないよ!私に付き合ってもらおうか!!」

「それなら玉兎と兎は私が片付けよう」

「うげっ!?」

「さ、サリエル様が相手!?」

「ど、どうしろってのよ!!」

 

 

 

(強行突破出来たのは霊夢と魔理沙に舞と里乃、仙界組と閻魔様の部下に茨華仙と狛犬か。

 …司令官役が豊聡耳神子になるのは少々不安だが「なにかお考えで?」

「っ!?」

「申し訳ありませんが邪魔させていただきますわ」

「…面倒なのをぶつけて来る。悪いが私にも余裕がない、加減できんぞ?」

「ご心配なく。

 時間を止めてでも時間稼ぎ出来ますので」

 

 

 

 

 

―――よし、上手い具合に散開してくれた!7時半まであと5分は切ってる、それならウォーミングアップに丁度いい!

 

「後は里香の判断に任せる!フレンドリーファイアだけは気を付けてくれよ!!」

「任せるのです!!」

「後詰、出るぞ!!」

「はいっ!!」

 

麟の返事とほぼ同時に紅魔館正門で待機する皆も動く。

―――俺は戦闘中に離脱しなきゃならない、だが摩多羅隠岐奈と八意永琳はそこを見抜いてくる可能性がある。特に俺の立ち回り方を目視させるのはハイリスク過ぎるだろう。そのため迎撃も先陣と後詰に分けたのだ。

 

血の気の多い勇儀とそれを抑えられるコンガラ様を中心に、永遠亭の連中にぶつける面々と伊吹萃香を相手取る面々+咲夜が先発隊。距離を離したい摩多羅隠岐奈と八意永琳に、勇儀と同じ理由で真っ先に殴り込んでくるだろう伊吹萃香を止めることも必要になるゆえの先発隊だ。全体的なフォローはサリエル様がしてくれるから心配はない。

 

(むしろ俺が抜けた後の後詰の方が指揮官役という点で不安がある。早目にサリエル様かレミリアが戻って来てくれりゃいいんだが…!)

 

まあ、そんなこと言ってられないんだが。

 

「見つけたわ!今度は逃がさないわよ!!」

「やれるもんならやってみな!逃走のエキスパートの俺を捕まえてみやがれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからついて来いっての!!姉妹揃えば最凶最悪なんだろうが!」

「女苑、天人様に力を貸してよ」

「何度も言わせないでよ姉さん、イヤだって。あのレベルの衝突に第三勢力として殴り込むとか正気の沙汰じゃないわよ。せめてどっちの味方に付くかはハッキリさせないと巻き添えを喰うだけだわ」

「私もそこはハッキリさせるべきだと思いますよ。いくら天人様でもあれだけの強者を片っ端から叩くのは無理です」

「だからこいつ等を連れてくって言ってんだ!」

「私ら二人付いてったところでどうにかなる戦力じゃないのも理解できないワケ?本当に天人とは思えないわ」

「お前まで私をバカにするっての!?」

「抑えて天人様!!そういうところがお子様って言われる原因なんですよ!!」

「おーおー、面白そうになってんじゃん。手を貸してやろうか?」

「ああん!?なんだお前?」

「鬼人正邪、生まれ持ってのアマノジャクだ」

 




申し訳ありません、今週は再度入院の可能性があるため次回更新が未定になります。
13(火)には更新できるよう頑張ります。
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