寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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大変お待たせしました。


第269話 規格外の最大限活用

「アリスちゃん!久しぶりー!!」

「お待たせしました皆さん!」

 

思ってたよりずっと早く母さんとルビーが戻って来たわ。それに夢幻姉妹が動いてから絶妙に間が空いている…示し合わせたとは言い切れない程度にはタイムラグがあるわ。それに珍しく直接屋内に移動するのではなく玄関先に飛んできた、それが意味することは。

 

「待ってたわ。細かい状況までルビーが説明してくれてるのよね?」

「うん!だから準備万端、早くヒョウくんを呼んでほしい!」

「ははは、ここまで真剣な神綺は珍しいな」

「だってヒョウくんのことだもん!ずっと、ずーっと帰りを待ってたんだから!」

「落ち着いてください、神綺様。先輩は約束を守ります」

「待ってたよ、兄さん!!」

 

そのユキの声と同時に、豹がユキの傍らに現れる。

…間近で見ると、とんでもない魔法だわこれ。妨害できるような隙が全く無かった。これこそがユキとヒョウの、切り札なのね…

 

「………神綺様、お久し振りです。

 反逆者として、ケジメを付けに来ました。

 ―――全ては、これを終えてから。お互い話すことも、俺が受けるべき罰も」

「…うん、それがヒョウくんの答えなんだよね。

 わかった、それじゃ始めましょ!みんな、後はお願いね!!」

「「「「「「はいっ!!」」」」」」

 

 

 

 

 

「―――っ!

神綺様がいらっしゃいました。ムラサ、マミゾウさん、ここはお願いします!」

「うむ、任せておけい」

「はいっ!ここに残る信徒はお任せください!」

 

聖の言葉と同時に、既に準備を終えていた私たちも動きます。それに呼応するように。

 

『母さんが到着したわ。そちらも頼むわよ』

「お任せください、人里に被害は出させません!」

 

露西亜人形(マトリョーシカ)からアリスさんの声が届き、即座に私が返答します。豹さんがどのような結末を迎えるにしろ、人里への被害は最小限にしなければなりません。そのために、私たちなりに出来ることを。

 

「星とぬえは慧音さんに連絡を。私は一輪と警邏を優先します」

「はいっ!雲山、出番よ」

「はいよ、それじゃ動きますか」

 

部下の情報網で現場の状況も調べられるマミゾウさんと、想定外の動きがあった場合の戦力兼連絡役としてムラサに命蓮寺の守りを任せる。そして残りの面々で人里への被害を抑えるべく動く―――私自身の手で豹さんが向けてくれた信頼に応えることのできる機会です。奮い立たないわけがない…!

だからこそ、冷静さが残っているうちに。

 

「ぬえ、私は少々感情的になっています。行き過ぎと判断したら」

「止めるよ、そのための組み方だからね。聖もマミゾウもわかってるさ」

「お願いします!」

 

仲間の頼もしい言葉に簡潔に返して、為すべきことを果たすべく速度を上げます。

微力ではありますが、今、私に出来ることを!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――って、お師匠様なにしてるの!?」

「思いっきり本命に逃げられてるじゃん!?」

 

見つけた!竜宮の使いが描いた絵にそっくりな二人組。あいつらを退場させることが最初の目標、だからすぐに終わらせる、次もあるんだし!

 

「『怒声の大蜘蛛面』!!」

「「っ!?」」

 

ちっ、お兄さんが警戒してただけあってあっさり避けられた。そう簡単に決着を付けられる相手じゃないみたい。でも、今の私には頼れる仲間がいる!

 

「『二鼓・怨霊アヤノツヅミ』!!」

「『夢符・愁永遠の夢』!!」

「は!?夢の世界の獏!?」

「こんな大物まで豹に協力してるの!?」

 

先陣を切った私の後方から、お姉さん二人が弾幕を展開!というかドレミーお姉さんは私が思ってたよりすごいらしい。一番接近してた私よりドレミーお姉さんに集中が向いた、私はそれを見逃すほど未熟じゃない。

 

「はっ!!」

「って、危ないなぁ!?これだから子供は…!」

 

薙刀を取り出して竹を持ってる方を斬り捨てようとしたけど、振り下ろす直前に少し離れた位置に出て来た。これがお兄さんの警戒してた後戸?って能力…これはたしかにお兄さんも危険って思うわけだ!

 

「なるほどね、豹の言う通りとんでもない相手だわ」

「ええ、無理はしないように。私たちの目的は【時間稼ぎ】ですから」

「お師匠様があんなに警戒してるわけね。こうまであっさり出し抜かれるなんて…」

 

茗荷を持ってる方が今まで以上に真剣な表情で言葉を漏らす。私は一度だけ…夢殿大祀廟でお兄さんの闘いを見たことがあるけれど、その一回でお兄さんの凄まじさはよくわかった。だからこそ、こんなとんでもない能力を使う奴でさえお兄さんを【強者】って認めてることに驚きはない。

でも、それだけ私たちも警戒されてるってことにもなる。こいしって切り札がいるとはいえ、決して油断しちゃいけない。

 

「私が前に出る!お姉さんたちは援護お願いするぞ!!」

「了解、こころも無理はしないようにね!」

「数の上では優位です。攻め急がないように」

「こっちが急がなきゃならないのよね!『冥加・ビハインドユー』!!」

「お師匠様のフォローが必要になったからさ!『笹符・タナバタスターフェスティバル』!!」

 

私が再度接近戦に付き合わせるべく突進する前に、二人共弾幕を放ち距離を取ろうとする。これは運がいい、こいしとメディスンを感付かせないためにあえて接近戦を狙った。でもあっちから距離を取ってくれた、それはメディスンが動くのに問題が無くなったってこと。それなら私たちはふたりが動きやすくなるように!

 

「ふっ!」

「おっ、こころもやるじゃない!」

「弾幕を打ち返す、ですか。器用なものです」

 

お兄さんの話を色々聞かせてもらって、私でもできそうなことを試してみる。薙刀を使っての反射…!お兄さんは素手でこれをやってたみたいだけど、そのまま私が真似するのは無茶なのはいくら私でもわかった。でもこうやって薙刀を使えば!

 

「流石はお師匠様にも縁がある面霊気、油断できないな!」

「手早く片付けたいのに面倒ね…!」

 

とはいってもぶっつけ本番で当てられるような技術じゃない。あくまで回避の補助にしかならないけど、私への警戒が増したからムダじゃない。こちらに気が向くことで、ますます無警戒になるんだから!

 

「――っ!?しまった…!」

「へ?どうしたんだい里乃…くっ!?」

「「テングオドシ!!」」

 

一番不安だったところは問題なかったみたいだな!本当にいつの間にか【あいつらの周囲】に睡眠ガスが散布されていて、一気に吹き飛ばすために暴風を伴う弾幕を二人揃って展開してきた。でも明らかに反応が鈍くなっている、メディスンの睡眠毒が効いてるってこと!

 

「いつの間に…!?」

「誘い込まれたの…!?」

 

でもまだ交戦できるだけの意識はある。だから私がまた先陣を切ろうとしたんだけど。

 

「ここまで睡魔に襲われていれば私でどうにかできます。

 『今は眠りなさい』」

「「…う………」」

 

ドレミーお姉さんのその一言で、二人揃って墜落していく。その落下地点に…

 

「上手くいったね!ドレミーさん、よろしく!」

「う、重い…早く飛ばしてよ」

 

姿を隠していたこいしとメディスンが現れて受け止める。落下の衝撃で起きてしまうのも不味いということだろう。

 

「ええ、紅魔館へ送ります。雷鼓、片割れを運ぶのを手伝って頂いても?」

「うん、任せな」

 

そう返したドレミーお姉さんと雷鼓お姉さんが二人を抱えて姿を消す。そして10秒もせずに戻って来た。

 

「豹のお願い、これでだいじょーぶだよね!」

「そうだな!だがこの次はどう動く?」

「私たちじゃ経験不足だわ。雷鼓かドレミーが決めるべきじゃない?」

「そうですね…とはいっても私もこちらでは情報不足。どうしますか、雷鼓?」

「豹は優先順位も教えてくれてたでしょ?次はもっと格上に奇襲をかける、次はこいしとこころが隠れて私について来て!」

「はーい♪」

「うむ!」

 

お兄さんが頼んでいただけあって、雷鼓お姉さんはすぐ次の相手を決めてくれた!頼りになるな!

そういうわけで私たちは次の舞台へ進む。こいしのとんでもない能力を、最大限に活用してもらわないとな!!

 

 

 

 

 

「―――!?馬鹿な…」

「集中が乱れてるわね。豹様を甘く見過ぎていたのかしら?」

 

私としたことが完全に予想の上を行かれたことで漏れてしまった声を、十六夜咲夜は聞き逃さず指摘してくる。レミリア・スカーレットの従者だけあってこの娘も厄介…いや、時間稼ぎに徹されるとレミリアどころか紫よりも厄介だった。時間停止を利用した遅延戦闘―――私の足を止めるための最低限の攻撃以外はひたすら回避に徹することで捉え切れない。後戸への誘導さえ時間停止を挟むたびにリセットされるため意味を為さないのだ。

 

(完全に私の失態だな…!空間魔法であれば戦闘の片手間でも妨害できたが、まさか召喚魔法で長距離移動するとは)

 

時間差で投擲されるナイフを躱しながら、致命的な誤算を悔いる。この私でさえ妨害する隙が全く無かった召喚魔法―――空間魔法であれば問題なく対応できるという慢心で、別種の魔法で長距離移動する可能性を考慮していなかった。ここに来て私は豹に手玉に取られたのだ…人形遣いの家に、神綺と豹が到着している。

 

(思い返せば、豹をはっきりと【兄】と呼んだ魔界人――ユキの長距離移動も召喚魔法だった。魔界人から騒ぎを起こす可能性は低い…この前提から彼女を重要視しなかったのも間違いだったか)

 

豹が永遠亭を襲撃した際、先行して幻想郷に侵入していた魔界人の片割れが合流していた。戦力としても警戒すべき夢子ではない方、かつ移動方法が召喚魔法だったことで【豹に使役される者】と思い込んだこともミスだったわけだ。そこまでは察していたのに、一般的な召喚魔法と思い込んだ私の読みの甘さが露呈している。

 

豹とユキは主従関係ではなく、兄妹という関係から()()()()()()()()()を行使できるということだったのだ。召喚魔法が一方的な主従関係によるものという思い込みで、兄妹と名乗った本質を見誤っていたということか…!

 

「集中力を欠いて私を振り切れるとでも?」

「そうだな、敵に回すのは惜しいぐらいだ。

 私の後継者になる気はないか?」

「興味ありませんのでお断りしますわ」

 

あの吸血鬼に従わせておくのは勿体ないから勧誘するが、忠誠心も持ち合わせていた。フランドールといい紅魔館には優秀な人材が多い、私の下に引き込みたいところだったが…上手くいかないものだ。

 

そんな現実逃避のような思考が浮かんだところに、別の厄介者を察知できるようになる。最悪な状況と同時に。

 

(古明地こいしを舞と里乃に!?

くっ…あの厄介者をここまで効率的に制御できるとは)

 

古明地こいしの出現とほぼ同時に舞と里乃が紅魔館に移動してそのまま動かなくなる。周囲にいた面々から推測すると、眠らせてドレミー・スイートが夢の世界経由で運んだようだった。つまり私が後戸で連れ帰っても起こさなければ戦力にならないということ。そして起こすような余裕は今は無い…!

 

そして、神綺と豹の魔力が一気に膨れ上がった。




…今後も更新は不安定になると思います。体調が回復したら更新ペースを上げられるはずですので、時間をください。お楽しみにしていただいている皆様、申し訳ありません。
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