寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第271話 決戦・乱戦・激戦

神綺様の弾幕をなんとか凌ぎつつ、会季のハルバートを投擲。これは俺の常套手段だから神綺様に通じるはずが無い、あっさり回避される。だがその背後の初撃で散らした魔力拳銃の弾でワームホールを開く…もっともこれも護衛時代から使っている戦法、神綺様も次を読んで俺の手元に戻す位置の流れ弾を探ろうとする――その一瞬の隙を狙ってワームホールに入れる直前に!!

 

「アンロック!!」

「きゃっ!?

 凄いねヒョウくん、こんなこともできるなんて!」

「簡単に避けられる神綺様も凄すぎますよ!」

 

時間魔法を解除して2発目を発射!!石突側が砲口にあるからこその使い方、投擲を避けられた後にユキの魔法を発動する不意打ち―――それも紙一重で防ぎ切る神綺様はやはり規格外。黒翼を防御に使わせたという点は誇れるが、やはり俺じゃ神綺様には敵わないってことだ。

 

別のワームホールからハルバートをキャッチして再度距離を詰めるべく動こうとするが、本気の神綺様がそんなことを許すはずが無い。接近どころか回避と低威力弾を弾き返すので精一杯…!だがあまりあっさりと終わっちまうのも問題、やらせだの八百長だのと難癖の材料にされるからだ。それを避けるためにも、現状の最善を尽くすのみ!!

 

「爆ぜろ!!」

「っ!

 ユキちゃんの魔法を相手取るのも久しぶり!流石は会季くんの作品だね!」

 

少しでも俺が自由に動くための隙を作るべく3発目を発射!叩き潰されるのは、俺の全てを出し切ってからだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――成程、神綺やアリスが警戒するわけだ。私も十分楽しめそうだねえ」

「あの反応ですか。袿姫様、参りましょう!」

 

神綺が黒翼を解放してほどなく、教えられてた方角から強い妖気がここ…アリスの家にゆっくりと向かって来た。どうやらこれが私に任されたフラワーマスターとやらみたいだねえ。磨弓も動き出した時点で反応できてるように、強大な力を隠そうともしない相手。これは確かに生半可な奴に相手はさせられないわ。たとえ磨弓でも単独で向かわせるのは避けるべきだろう。

 

それはつまり、私がどこまで力を取り戻せているかを存分に試せるってことだ。

 

「それじゃ行こうかい、磨弓」

「はっ!!」

 

人間霊の求めに応え畜生共を一蹴することで私は信仰による力を回復した。神綺と同じように信仰者を造形することで最低限の神格を維持できる私だからこそ、私が造形した存在以外からの信仰がどれだけ得難いものなのかを理解している。相性の関係で私直々に前線に出るまでもなかった畜生霊共と違い、あれだけの強大な妖気を持つ妖怪であれば私の造形物をものともせず立ち塞がってくれるだろう。

 

―――そう、あの時私の神域を冒したあの巫女のように。

 

「ふふふ、神綺があれだけ本気で遊んでるんだ。

 私も存分に楽しませてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく!たかが騒霊が舐めた真似しやがって!!」

「鬼の四天王を甘く見ることなんてないわ」

「全力で抗わなきゃ簡単にやられちゃうもの~!」

「私らソロじゃアンタからすりゃ雑魚なんだろーけどさ!」

「同族で協力すれば十分渡り合えるのよ!

 戦いは数だって、【百鬼夜行】を冠する鬼ならわかってるんじゃない!?」

「口の減らないガキだね!!」

 

カナが上手く挑発に乗せてくれたことで、最低限の仕事は果たせたわ。鬼の四天王・伊吹萃香を私たちだけで足止め…カナの実戦慣れのおかげでなんとか渡り合えている。

 

「くそっ…うざったい音撒き散らしやがって!」

「騒音にしてないだけ控えてるわ」

「大きくし過ぎると無差別音波攻撃になっちゃうからね~」

「アンタだけに聞かしてるんだから感謝しろっての!」

「霧になっても音は防げない、豹の見立て通りね!」

「黙れよ」

 

それにしても、鬼の四天王ともあろう大妖怪がここまで頭に血が上るなんてね。カナの挑発にあっさり乗ってきたのもそうだけど、怒りに飲まれてて冷静さを失ってるわ。幻月が「半殺しにした」なんて恐ろしいことを言ってたけれど、この様子だとそれが余程業腹だったようね。

 

カナも含めた全員で集団行動し、私が豹から教わった防壁魔法を全員を覆うようなドーム状に展開。それをメルラン・リリカ・カナで強化して霧化して内部に入りこまれるのを防ぐ…当然私の魔法がベースになってる防壁では鬼の力を止めることは出来ない、あっさり殴り壊されるんだけど。

 

「当たらないわ」

「多用はできないけどね~」

「実体無しってのも使いようってね!」

「あーもう!イラつかせやがって!!」

 

壊されたタイミングで完全霊体化して殴りかかって来る鬼をすり抜けて回避、実体持ちのカナは複数の鳥に姿を変えて距離を取る。再集合した光からカナが実体化したポイントに集合して――!

 

「防壁展開」

「それを強化!」

「足止めのレーザー!」

「『リリースバーズ』!!」

「本っ当にムカつくな!!喧嘩のけの字もありゃしない!!」

 

私がベースになる防壁魔法を展開し終えるまでのタイムラグは、メルランの蛇行レーザーとカナの鳥型弾で鬼の出足を止めることで埋める。これを繰り返すことでひたすら時間稼ぎに徹する…雛の存在を悟らせないまま!!

 

「いい加減飽きた。本気で叩き潰してやるよ!!」

 

そう言って伊吹萃香の【凄み】が急激に増したわ。少し冷静になればワンパターンな私たちの戦法なんて簡単に崩せるはずなのに、ただ力技だけで壊そうとしている。どれだけキレてるのかしらね…!

もう流石に同じ戦法は通用しない。どう対応するか私は迷ったのだけれど、十分な時間は稼げていたみたいで。

 

「間に合ったわ!援護に入るわよ!!」

「ああん!?」

「コンパロコンパロ、毒よ集まれー」

「次の相手は鬼ですか。搦手の使いどころですね」

「みんな助かるわ!袋叩きにしちゃいましょ!!」

 

いつの間にか最初のターゲットを片付けてくれてた雷鼓たちが援護に来てくれたわ!これなら十分時間は稼げる、それに…!!

 

「とうっ!!」

「えいっ!!」

「はぁ!?

 ちぃっ!!古明地の妹か!!」

「久しぶりだねー、勇儀さんが言ってただけあるじゃん!

 私の不意打ちを止めるなんて!」

「止めるというか、止まっただな。

 私の薙刀もこいしのナイフも鬼の体には通らないのか、また一つ知ったぞ!」

 

左右から突然現れたこいしとこころが斬りつけるけれど、刃は鬼の体を傷付けるには至らず止まっているわ。でも、簡単に不意打ちを仕掛けられるこいしの参戦は大き過ぎる…!時間稼ぎなら簡単にやってもらえるのだから!

 

「時間稼ぎ、続けるわよ!」

「OK!任せなさい!」

「このっ、邪魔すんなっての!!」

 

私の声に雷鼓が応えて、他の皆も合わせて動いてくれる。

後は、雛の厄が実害を及ぼすまで粘るだけ。やってあげようじゃない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハ!逃げろ逃げろ!禁弾《カタディオプトリック》!!」

「このっ!?吸血鬼のくせに屋外で暴れんじゃないわよ!!」

 

宵闇妖怪を背中に張り付けたフランがご機嫌で月の姫を追い回している。厄介な時間系能力でフランが出し抜かれることが無いよう私が後衛に回ったが、摩多羅隠岐奈に連れ出されたことでフランも成長している。奴の目論見をフランの成長した戦闘力で阻止する、こんな形で皮肉を返せるとは思わなかったわ。

要は私の援護など最低限で十分だった。だから美鈴への援護を優先していたのだが…

 

「ふっ!」

「野蛮な…離れろっ!」

「神罰《幼きデーモンロード》」

「ひゃっ!?また邪魔を「せいっ!!」

「うっ!?ほんと、このアマゾネスはっ!」

 

あれでも月の兵卒では上澄みだったらしい玉兎が存外に粘っている。美鈴が戦いやすいよう肉弾戦が避けられなくなる方向で軽く援護をしていたのだが、チョロチョロ逃げ回ることで美鈴の打撃を捌き切っている。まあ、お兄様の依頼は遅延戦闘なのだからこれで問題ないのだけれど…あまり面白くない展開だわ。

 

「ここまでお兄様の迎撃策通りに事が進むなんてね。順調すぎて面白みが無いわ、そう思わないかしら?神槍《スピア・ザ・グングニル》」

「ふん…!今はその余裕を楽しめばいいさ」

 

咲夜の援護も兼ねて摩多羅隠岐奈に軽い挑発とグングニルを投げてみたけど、咲夜の遅延戦闘に手を焼いて私まで相手取る気はないようだわ。どうにも拍子抜けよ。

 

こんな風にもうさっさと終わらせようかと思い始めたタイミングで、予想外の展開が訪れる。

 

「軽く話を聞いているのだけれど、貴方がカムさんの取引相手かしら?」

「ああ、その格好…お前が夢子だな。何の用だ?」

「先輩からある程度聞いていると思うけれど、私とユキは月相手にしか手を出せないのよ。

姫と八意永琳は殺しても問題ないそうだけれど、玉兎も始末して平気なのかしら?」

「そうだな…私としては構わないが、避けた方がいいだろう。昨夜軽く相手にしたが、摩多羅隠岐奈は失点があれば確実に付け込んでくるタイプ…魔界人の手で幻想郷側に犠牲者を出すと交渉が面倒になるだろうよ。私には関係ないが、夢子には関係するのだろう?」

「ええ、神綺様の傍に控える形で交渉に赴くことになるでしょうね。

では、月の姫を狙うので玉兎の排除を任せて構わないかしら?あちらの妹君は止まらないでしょうし」

「ハッ、私に雑魚掃除を求めるとはな!それも何の躊躇いも無くだ。

その度胸が気に入った、順調すぎて退屈だったところだよ。乗ってやろう!

フラン!魔界人が援護に回る、その無礼な姫は任せるぞ!」

「ふーん、そのメイドがお兄様の仲間なのね。お手並み拝見させてもらおうかしら」

「はあ?魔界人――って!?」

 

夢子が臨戦態勢に入ったと同時に、失礼な姫の周囲に無数の剣が現れその刃先を向けていた。お兄様やあの人形が言った通り、魔界のNo.2は流石ね…あの一瞬であれだけの数の剣を召喚できるなんて。

 

「傲慢で愚劣な月の民。サリエル様の無念を晴らさせてもらうわ」

「私はそれに関与してないわよ!?」

 

その言葉と共に月の姫へ無数の剣が殺到する。まあ、避けられなくとも死なないからもう放置でいいだろう。

それじゃ、私もさっさと終わらせようか。

 

「美鈴!一気に終わらせる、しっかり避けなさい!!」

「は!?って、姫様!?」

「お嬢様の本気から気を散らすなんて随分と頭が悪いですね!」

「《紅色の幻想郷》」

「しまっ…!」

 

夢子とはこの機会に細かい話をしておきたい。魔界のNo.2である彼女と友好的な関係を築いておけば、闇取引ではなく正式な異界間貿易という形でやり取りできるようになるだろう。それは紅魔館での生活をより楽しむことに繋がる、ならばその時間を作るべく邪魔者はさっさと潰すに限る!!

 

「ま、相手が悪かったわね」

「うっ……」

 

紅色の幻想郷で移動制限をかけて、私直々のボディーブローを玉兎にくれてやる。美鈴もしっかり被弾を避けつつフェイントをかけてたから、玉兎は私の接近に全く抵抗できず一撃で気絶。

 

「美鈴、例の邪仙に届けておいて」

「了解です!」

 

殺すと後が面倒だから、お兄様も認めた邪仙に押し付けておく。そう簡単に戻って来れないところに放り込んでくれるでしょ。

 

「さて、次はあの失礼な姫を片付けようか」

 

 

 

 

 

「妹紅さん、援護に入るよ!」

「くっ、ユキ…!」

「助かるよ!遠慮なくやってくれ!」

 

兄さんと神綺様が再会してくれたから、すぐ月の連中を潰しに動く!夢子が月の姫の方に向かってくれたから、わたしは八意永琳!それに妹紅さんだけじゃなく…!

 

「《スノーフレークセレステ》!!」

「うげっ!?あいつは「一瞬の隙が命取りだ」

「え」

「てゐっ!?」

「やられたの!?」

 

八意永琳だけじゃなく月の兎二匹と幻想郷の兎も巻き込む青系広範囲魔法を放ち、それで足の止まった幻想郷の兎をサリエル様がレーザーで撃ち落とす!流石はサリエル様、反応が早い!

 

「よそ見してる余裕なんてあるの!?《緑の魔法》!!」

「うわっ!?」「このっ…!」

「どうした永琳!?私を無視できるとでも思ったか!?」

「くっ、延々と輝夜の相手してるだけはあるわね…!」

 

そのまま残りの3人を狙って緑の魔法を3発!当たれば仕留められる威力だけど、流石に簡単に当たってはくれない。でもサリエル様が援護してくれるなら!

 

「避けるばかりで他愛ないな」

「へっ!?」「な…!」

 

サリエル様の的確な乱射で、蛇行する緑の魔法の射線に追い込まれた月の兎二匹が被弾して墜落していく。八意永琳は誘導に引っ掛からなかったけど、妹紅さんが即座に接近戦に持ち込んでくれたから問題なし!

 

「後は月の姫と八意永琳だけ!」

「不死の者だ、容赦しない」

「豹の邪魔はさせないよ!」

「――輝夜を止められなかったのが最大の失敗になったわね…!」

 

兄さんと神綺様の決着が付くまで、こいつらを自由に動かすわけにはいかない。しっかり時間稼ぎしないとね!

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