寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第275話 敵残存戦力掃討

「―――という状況です。まだ抗戦するというのであれば、私達も加勢して袋叩きにしますが?」

「だとさ。あたいはもう切り上げたいんだけど、久侘歌はまだやるかい?」

「…四季様のお説教が怖いですが、今さらですね。

わかりました、私達も引き下がりましょう。あうん、いいですね?」

「うう…霊夢さんごめんなさい…」

 

直接紅魔館を狙って来た死神・ニワタリ神・狛犬は、背後からの増援による説得を受けて撤退しましたわ。

元々数の上でも優勢な上、里香なる技師の戦車による援護もあり危機一つなく拠点である紅魔館の防衛に回っていましたが。豹様が目的を果たしたことを察した者は撤退し始めましたわ。案の定豊聡耳様も早々に仙界に退却した様子…魔界と相互不介入を求める伝手として後々豊聡耳様の方から私に接触することになるでしょう。豹様に敵視されてしまった際は少々焦りましたが、摩多羅隠岐奈が先に動いたことで私にとって理想的な結末に軌道修正できましたわ。

接触しに来られる豊聡耳様に再び恩を売ることで、全て元の鞘に収まりますもの…懸念点としては豹様が私に報酬を支払う前に、豊聡耳様が仙界への帰還を求める場合かしら。

 

(となると…都合の良い母体を手早く確保するべきですわね。

 もうこちらの防衛に戦力は必要ありませんし、一足先に抜けさせて頂きましょう)

 

「皆様、豊聡耳様と摩多羅隠岐奈は引き下がりましたが、後者はドレミー様が捕らえた二童子を救出して撤退していますわ。

念のため、私と芳香で追撃してよろしいかしら?再侵攻の気配が無ければ、そのまま私も離脱しますので」

「…あっ!?いつの間に…!?」

「幻想郷の管理者だけはあるということですか…!

青娥さん、お願いしていいでしょうか?後は私とくるみで十分対応できますので」

 

早くから豹様の逃亡を支えていた死神と吸血鬼から都合の良い返答がありましたが、やはり私を警戒している方もいらっしゃいまして。

 

「追撃は任せますが、一つ先に答えてもらいましょうか。

貴方は豹様に何を求めていらっしゃるのです?」

「そうね、そこは聞いておきたいわ。

彼の味方であることは疑わないけど、その目的が私たちにとって害になる可能性があるから」

 

この館…紅魔館の住人であるメイドと魔女が質問を返して来ましたわ。

もっとも、隠すほどのことでもありませんから問題は無いのですけれど。

 

「私が豹様に求めているのは【養小鬼を補充するための協力】ですわ。

 あくまで私個人の戦力拡充ですので、皆様に危険はありませんよ?」

「「「っ!?」」」

 

あら…思っていたより養小鬼のことを知らない方が多かったようで。魔女と死神、科学者だけが察した反応をしましたが、他の面々は疑問符を浮かべていますわね。ですがこれは好都合、説明を押し付けてしまいましょう。

 

「理解していらっしゃる方に詳しい説明をお願いしておきますわ。それでは追撃に参ります。

 芳香、いらっしゃいな」

「ほいよ!」

 

細かいことを語らずに去りましょう。どうやら初心な方もいらっしゃるようですし、ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「騒葬《スティジャンリバーサイド》」」」

「こんのっ!!数でしか攻められないっての!?」

「そりゃそうよ、私らはミュージシャンなんだから戦闘は専門外だからね!

 《ブルーレディショー》!!」

 

接近戦はこいしとこころに任せて、私はひたすら鬱の音を聞かせながら回避と弾幕展開に専念!メルランとリリカだけじゃなくバンドとして活動する雷鼓も援護に入ってくれたから、鬼の四天王が相手でも足止めにはなる!!それに加えて…!

 

「鬼でも毒は通じるでしょ?たっぷりばら撒いてあげる!!」

「生意気なガキ共が!!」

「わたしを甘く見過ぎじゃない!?その程度じゃ牽制にもならないよ!」

 

メディスンが散布する毒霧は鬼であっても厄介なようで、包囲陣への牽制射撃で同時に残留する毒霧を吹き飛ばしている。でもむしろ毒霧への対処が本命なようで、メディスンのフォローに回ったカナが狙いが甘かったり威力不足の弾を片っ端から道路標識で打ち返して反撃。そこへさらに!

 

「胡蝶《バタフライサプランテーション》」

「ぬぐぐ…この野郎!!」

「あはっ!こっちだよーだ♪」

「この至近距離なら!《歓喜の獅子面》!!」

「あっつ!!?

―――小賢しいマネを!!」

 

私たちの弾幕を避けつつカナが打ち返した弾を弾き飛ばす鬼だけど、さらにドレミーが追撃の弾幕を放つ!それを回避した先にこいしに隠されていたこころが炎を吹き出すと、酔っていない時間の方が少ない伊吹萃香には効果覿面なよう!酒が入ってるでしょう瓢箪を守るためか一度完全に霧化して距離を取ったわ。

 

「どいつもこいつもつまらない手ばっか使いやがって!!」

「鬼相手に真正面からぶつかるなんて、豹レベルの強者じゃないと自殺行為よ。至極当然な対処法」

「そ~いうこと!

それに、やっと効果が出たみたいだからね!」

「ああん?

 …なっ!!?」

 

私とカナで言い返したタイミングで、ついに私たちの切り札の効果が現れる!!鬼の四天王である伊吹萃香の力は私たちなんかとは比べ物にならないレベル、それを数の力で袋叩きにすることで強引に抑え込んでいた。それは周囲の地形にも甚大な被害を与えていて―――サリエル様の加護により鬼だけに集中された厄が、とうとうその牙を剥く!!

 

昨日から降り続き周囲の木々に降り積もった雪が戦闘の衝撃で振り落とされ、()()()()()()()()()()()伊吹萃香は小規模な雪崩に足を取られる。そこに!!

 

「チャンスっ!!」

「ぶっ!?」

「鬼にも通用するかしら?豹の睡眠魔法は」

「く、くそっ…」

「終わりです、『今は眠りなさい』」

「………zzz」

 

厄を鬼に押し付けていた張本人だからこそ、厄に飲まれるタイミングがわかってたよう…豹の隠形魔法で姿は見えないけれど、メディスンが毒霧を発生させた直後に雛の声が響き伊吹萃香がふらつく。そこにドレミーが駄目押しの一言を加えたことで、とうとう伊吹萃香は倒れ込んでいびきをかき始めたわ。

 

「やったわ~!」

「私たちもやるもんじゃん!」

「やっぱり豹もすごいなー!雛さんも近付いてるのぜんぜん気付かなかった!」

「サリエル様のおかげよ。普通なら私がこの距離まで他者に近付くだけでも、周囲に厄を移してしまうのだから」

 

それを見てメルランとリリカが歓声を上げ、姿の見えないこいしと雛も戦意を収めた声を出す。

なんとか、鬼の四天王・伊吹萃香を止められたようね…!

 

「そういえばこの鬼も眠らせられたけど…紅魔館に送るのはちょっとアレよね?」

「そうですね…

どうやら昨夜の騒ぎのせいでこの時間になっても起きていない兎がいます。豹が嫌っている永遠亭に放り込んでおきましょう。雷鼓、手伝ってもらっても?」

「お、ナイスアイデア!そうしましょ!」

「では私と雷鼓はこの鬼を移動させて、一度紅魔館に戻ってから再合流しますわ」

「うむ、わかったぞ!とはいっても、もう勝利は決まっているようだがな!」

「えーっと、後残ってるのは。永琳たちと閻魔と悪霊と…誰あいつ?」

「衣玖さんを狙って来たお子様天人だね~。メディスンが知らないのは無理ないわ」

「あ、ミーティングで言ってた奴ね」

 

雷鼓とドレミーがそう言って伊吹萃香を担いで夢の世界に飛び込む。そしてこころが言うようにほとんどの戦闘が終わっていたわ。まだ戦っている敵は魅魔と閻魔に永遠亭の主従、天人くずれだけ…もっともコンガラさんっていう剣士と魅魔の戦いはとても私たちが援護できるレベルじゃないし、豹についてくれた方の鬼と閻魔に関しても同じ。それこそ援護したら【タイマンを邪魔した】と私たちが不興を買うかもしれない。永遠亭の姫を相手してるフランドールは豹とレミリアの話を聞く限りフレンドリーファイアが怖いし、八意永琳は昨夜の言葉を思い返す限り多対一で相手取ると一網打尽にされるリスクがある。

 

そうなると、次に私たちが援護に向かうべき相手は天人くずれ。

 

「それじゃ、私たちはこのまま衣玖さんを助けに向かいましょう。

 他のところは足手まといになるかもしれないから」

「OK、姉さん!」「りょーかい、ルナ姉!」

「はーい♪」「うむ!」「わかったわ」

「ええ、行きましょう」

 

もっとも、強力な援軍が先に参戦してるから、私たちの援護が間に合う前に決着が付いてしまうかもしれないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!!」

「せいっ!!」

「このっ!無駄に息が合いやがって!!」

 

ミケさんは上手く伝達してくれたようで、冥界からのお二方…西行寺幽々子さんと魂魄妖夢さんは衣玖さんの救出に動いてくれました!それによって私より数段上の剣士である妖夢さんがお騒がせ天人に斬りかかり、それにより出来た隙を私が狙い、逆に妖夢さんの隙も私が埋めるという即席の共闘でじわじわと追い込んで行く。

 

「ええいどけっての!!私の邪魔をするなあっ!!」

「お断りねー。行きなさい、符牒《死蝶の舞》」

「げっ…!」

「紫が貴方は殺していいって言ったのだもの。

手加減しなくていいのは楽でいいわー」

 

そして私も回避に専念せざるを得ない、触れただけで死に至る恐ろしい援護が放たれます。従者である妖夢さんは誤射を恐れずお騒がせ天人に斬り込み続けているのですが、万が一がある私はその度胸を持てませんでした。

ですが、私が距離を取ると同時に…!

 

「流石に死なれるのは目覚めが悪くなりそうですが、大人しくしてもらう必要はありますので!」

「私はどちらでもいいのだけれど、これ以上余計な騒ぎを起こされても困る」

 

茨華仙様と衣玖さんが援護の弾幕を展開しお騒がせ天人の抵抗を潰してくれます!流石のお騒がせ天人も幻想郷を管理する側である茨華仙様と西行寺幽々子さんの共闘を相手にしては分が悪く、妖夢さんと切り結ぶ以外の抵抗をほとんど出来ていません。下手に射撃で後衛を狙おうとすれば妖夢さんが斬りかかり、妖夢さんを先に仕留めようと動けば茨華仙様・衣玖さん・西行寺幽々子さんの容赦ない援護射撃に晒されるのです。

 

まさに八方塞がりなのでしょう。それに加えて同行していた天邪鬼は、豹さんが目的を果たしたと察知した時点で退却しています。貧乏神も私の魔眼とはいえ、外的要因が無ければもうしばらくは眠らせておけます。そして、どうやら萃香様さえ皆様で撃退できたようで、ルナサさん達とこいしさん達も私たちの方に向かってきてくれています!

 

それにあのお騒がせ天人はまだ気付いていない…それなら、私がまた力になれるかもしれません!!

 

「投降しなさい!!私たちの仲間がここへ向かっています。多勢に無勢、豹さんが目的を果たした以上、これ以上の交戦は無駄です!!」

「はあ!?白狼天狗如きが舐めたこと抜かすんじゃ「止まれ

「っ!!?」

 

決められた!衣玖さんから事前に聞いていた通り、【思い通りにいかないと激昂する】―――冷静さを失ったことで私を白狼天狗と見下す。それによって私に視線を向けてしまう、思い出されてはすぐ視線を外されてしまうので、眠らせるのではなく止める!!

私の未熟な魔眼でも、一時的な停止であれば最短で効果を発揮させられる!そして、その一瞬の隙さえあれば!!

 

「決める!!」

「ふ、ふざけやがって………」

 

妖夢さんの強烈な峰打ちをまともに喰らったお騒がせ天人は、そのまま地面へ墜落していきました。

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