寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により霧様→霧雨に修正してます。なんでこんなとこミスった…
いつも迅速な報告助かっております、ありがとうございます。

また、捜索で紹介してくださった読者様がいらっしゃいました!ありがとうございます!


第279話 帰還準備と果たすべき約束

「それじゃ紫さん、お願いします」

「帰りはどうするのかしら?」

「直接麟の家に飛びますよ。隠れ家の方をお願いします」

「わかった!それじゃ紫、ヒョウくんを送ったら手伝ってね!」

「ええ、すぐに合流するけれど藍が先に手を付けてくれてるわ。作業を始めてしまって構わないわよ」

 

麟と魔理沙の解呪を終えると、そのまま会談は終了となった。不満はあれど摩多羅隠岐奈や四季映姫・ヤマザナドゥ、八意永琳たちには神綺様の要求を断れるだけの理由と実績が無い。味方の数で押し切るべきと即座に動いた俺たちの完勝だ。そのため彼女たちと魅魔・魔理沙は早々に紅魔館の図書館を去っている。

 

後は俺が魔界に帰るための準備だが、それを皆が手伝ってくれることになった。

 

「ヒョウさんも気を付けてくださいね。父さんにちゃんと話をしたら、私の家で待っています」

「心配はいらない麟。サリエル様だけじゃなくユキも同行してくれる上にこいしがいる。勇儀と合流しちまえば地底の連中も手出しできないさ」

「まっかせて!やーっと地霊殿にヒョウを連れてけるんだもん♪

私たちでしっかりヒョウは守るから!」

「うん!ようやくわたしも兄さんと一緒に過ごせるんだからね。心配なんていらないよ」

「ああ、昨日助力してくれた鬼相手となると無事では済まないだろうが…私が絶対に死なせずに治療する。

こちらは任せなさい」

 

俺はまず勇儀とこいしとの約束を果たさなきゃならない…なので目的地は地底だ。ちなみにこいしは念のために会談中から伏兵として俺の背中にくっついてもらっていた。途中で飽きたらしく寝息が聞こえていたが。

だが地底にも同行を望んでる麟の忘却の呪いが解呪できたので、俺が地底に向かう間に麟は父親と再会させることにした。当然最初は麟自身が俺から離れるのを渋ったのだが、【麟を地底に入れるのは万が一のためにも避けたい】ことと【俺と共に魔界に来るのなら、しっかり説明してやってほしい】と告げることで折れてくれた。

 

―――言外に魔界まで同行することを俺が認めたのを察してくれたワケだ。流石の俺も麟の想いと覚悟は理解できてるから、認めると同時に背中を押す…もう人里に戻れとは言わないから、幻想郷から離れるってことだけは伝えて来な、と。

 

「では、人里までは私が麟さんに同行します」

「ああ、助かる」

「ありがとね白蓮ちゃん!準備が済んだら私と夢子ちゃんでその命蓮寺に向かうから!」

「はい、お待ちしています神綺様」

「ではヒョウさん、私も一度帰ります…!」

 

昨日の今日で敵対派閥が報復に麟を狙うことはないだろうが、丁度いいことに聖白蓮が護衛を買って出てくれたので頼むことにした。これで強者が動いても問題ない…聖白蓮が迎撃すれば命蓮寺からの応援が見込めるからだ。麟一人のために命蓮寺を敵に回すのは割に合わない…そこを無視して麟を狙う可能性があるのは伊吹萃香ぐらいだが、奴は紫さんが昨日のうちに回収した上で一時的に幻想郷から追放しているそうだ。これ以上引っかき回されるのは困るから、酒とつまみだけ用意してスキマ内部に閉じ込めてるとのこと。紫さん曰く「魔界との交渉が終わるまでは隔離しておくわ」だそうだ。

…思ってた以上に俺を不意打ちしたことを怒ってるようだった。ホント紫さんには世話になりっぱなしだな…

 

「ああ、悪いが私から一つ頼んでもいいかい?」

「む、何だろうか?

――いや、直接言葉を交わすのは初めてだったな。紹介はいらないかもしれないが、俺がヒョウだ。さっきは完璧なタイミングで摩多羅隠岐奈を黙らせてくれて助かった。ありがとう、八坂神奈子」

「礼なんていらないさ、むしろこっちが先にやらかしてたんだからね。これぐらいで帳消しになんてならないだろうけど、役に立ったならそれでいいわ」

「いや、帳消しには十分すぎる。少なくとも俺と魔界にとっては。

ただ、ルナサたちそちらの風祝と直接闘り合った皆からは何か言われるかもしれない。そこは見逃してくれると助かる…それを飲んでくれるなら問題ない要求は飲む」

「そこは私も覚悟してるよ、安心しな。

それで要求は私からじゃないんだ。魔界は妖怪の山代表として私を呼んだね?天狗たちにも結果を伝えることは織り込み済みだろうが、烏天狗の大将から要望があってね」

「飯綱丸からか?内容は?」

「ヒョウに協力してた白狼天狗、犬走椛を妖怪の山に帰参させてほしいそうだ。要は彼女を手放すのは惜しいんだとさ」

「そうか…

すまないが、それは直接椛に聞かないと確約が出来ないな。椛に帰る意思があるなら問題ないんだろうが」

「あ、それなら私が椛のところに案内してもいいわよ?私はこれから手が空くし、そのうち雛に結末を話しに行くつもりだったし。

椛かあんたがいれば妖怪の山に問題なく入れるでしょ?」

「いいのかアリス?神綺様や夢子と話すこともあるんじゃないのか?」

「昨日のうちにほとんど済んだわよ。相変わらず子離れできてない母親だから」

「ゔっ…!」

 

神綺様に流れ弾が…自覚はしてるんだよな。本当に神綺様は変わってない。

 

「私としちゃありがたい話でしかないよ。頼んでいいかい?」

「俺からも頼む。いつか礼はする…椛が俺の考えを聞いてきたら『俺としては帰ってやってほしい、故郷ってのは優しいものだから』と伝えてくれ」

「いいわよ、それじゃついて来なさい」

 

そうあっさり返してアリスが八坂神奈子を連れて図書館を出ていく。椛がどうするかは椛自身に決めてもらいたい…麟を受け入れた以上、椛が俺との同行を望むのであれば受け入れるのが道理だからだ。

だが、椛は同じ白狼天狗の仲間との別れを惜しんでいる節も見受けられる。言葉に出すことはなかったが、俺と二人きりで麟の家に逃れていた際、無意識にだろうが視線が妖怪の山に向いていたのだ。おそらく、椛の中ではまだ妖怪の山を捨てることに迷いがある…少しでも未練があるのであれば、妖怪の山――ひいては幻想郷に留まってもらいたい。

 

俺は幻想郷を離れることになるから。いつでも戻って来れるようになるとはいえ、救援要請の伝達というタイムラグはどうしても発生してしまう。だからこそ、幻想郷に未練があるのであれば魔界に来るのではなく、幻想郷を守っていてほしい。離れてしまう俺の代わりに。

 

(まあ、ここは椛の気持ち次第だ。俺が強制するわけにはいかない)

 

図書館の入り口から視線を戻すと、次は夢子が話しかけてきた。

 

「それでは神綺様、先輩。私はレミリアと交渉に入ります」

「ああ、頼んだ」

「うん、よろしくね!

レミリアちゃん、直接お話できなくてごめんね。でも貿易とかに関しては夢子ちゃんの方が詳しいから!」

「だからちゃんは止めろ。

…まあ、大体はお兄様と小悪魔から聞いたからな。場所を変えるぞ、どうせなら紅茶を飲みながら詰めたいわ。

咲夜、用意して」

「かしこまりました」

「では、また後程。神綺様もお気をつけて」

 

夢子は紅魔館に残ってレミリアと正式な異界間交易の交渉に入るようだ。これは魔界にもレミリアにも有益な取引だろう。そして輸送業者として現場で動くカムさんも取引規模の拡大というメリットがあるので、俺の仲間は誰も損しない。ぜひ上手くまとめてもらいたいところだ、まあ夢子とレミリアなら何の心配もいらないだろうが。

 

そして、最後に。

 

「それじゃ、私はヒョウくんのお家に向かうね!カナちゃんに詳しいことは聞けばいいのよね?」

「はい、俺よりもカナの方が詳しくなってるはずです。上海とゴリアテも先に準備してくれてるんで、お願いします」

「はーい!それじゃ華扇ちゃんだよね?一緒に行きましょ♪」

「本当にそれが素なのね…まあいいでしょう。紫、私も先に」

「スキマで送るわ」

「あ、ありがと!

それじゃサリエル、ヒョウくんとユキちゃんを頼むわよ!」

「ああ、任せろ」

 

神綺様が茨華仙を連れて紫さんが開いたスキマに飛び込む。俺の隠れ家を魔界へ転送する準備…転送自体は神綺様と俺、加えてサリエル様までいる以上難しくはない。だが流石に地下室は地盤の関係で難しいのと、俺が預かっていた危険物は先に引き渡す必要があった。

 

紫さんに確認したら、すでに引受先は茨華仙に決め伝えてくれていたので本人に回収してもらうことになった。かつて同族である鬼の四天王にすら牙を剥いた鬼…たしかに強い妖怪ではあったが、鬼の四天王総出かつ紫さんと藍に俺まで討伐に参加した以上敵じゃなかった。強大過ぎる力に溺れ、同じ強者を見下した慢心によりあっさり討伐された鬼―――その頭蓋骨は特級呪物として俺が封印し、地下室で保管していた。

 

これを魔界に持ち出す気はなかったので紫さんに処理を頼んだところ「もう茨華仙に許可を取ったわ」と笑顔で返されたワケだ。そのため正確な俺の隠れ家の位置を知らない茨華仙は誰かしらに案内を頼むつもりだったのだが、まさか結果的に神綺様が引き受けてくれることになるなんてな。

 

「それじゃ紫さん、俺たちもお願いします」

「ええ、こっちよ」

 

そして紫さんが新しくスキマを開く…あらためてとんでもない能力だ。魔力反応をまったく残さずに異空間へのスキマを開く―――神綺様でさえ再現できず、対応しきれない能力。本当に、紫さんが俺の味方でいてくれて助かったな…

 

「はい、また後で話の続きを」

「待ってるわ、藍と橙もね。

 サリエル様、ユキ。ヒョウをお願いします」

「もちろん!本当に久しぶりに、兄さんと肩を並べられるんだから平気!」

「そうだな、ヒョウの心配はいらぬよ。

 では、参ろうか」

「はーい♪私がちゃんと案内するね」

 

地底へ続くスキマへユキ・サリエル様・こいしと飛び込む。約束は、ちゃんと果たさないとな。

 

 

 

 

 

―――そういうワケで、スキマで直接地底に送ってもらったのだが。

 

「コンガラ様が来てない?」

「昨日あの魅魔って悪霊がコンガラさんの刀をへし折ってただろ?コンガラさんらしいっちゃらしいんだが、あの刀数打物だから今度は自分で打ってみるそうでさ。早速材料の調達に向かっちまったってキクリさんが伝えてくれたよ」

「か、数打物であの強さだったの!?」

「ああ、コンガラ様は俺が初戦で勝てなかった相手の一人だ」

「そうか、強いわけだ…」

「勇儀さんがさん付けするだけあったんだねー」

 

本当に勇儀の居場所をピンポイントで見つけてくれていて、スキマが開いた時点で勇儀が出てきてくれた。そこで早速約束を果たそうとしたのだが…

 

「だから悪いねヒョウ、三つ巴は次の機会にだ。

 今日は私とタイマンしてくれるね?」

「まあ、殴り合うつもりではいたから構わないが…次の機会はいつになるかわからないぞ?

 コンガラ様に確認が取れたら、こいしを通じて地上の皆に伝えておいてくれ」

「もちろんだよ、私もコンガラさんも楽しみにしてるんだ。

 ヒョウも幻想郷に戻ってきたら、私に連絡寄越すの忘れるなよ?」

「わかった」

 

コンガラ様は愛刀の用意のため不在らしい。まあ、俺にとってはかなり楽になった。

それでも、サリエル様の力を頼ることにはなるだろうが。

 

「よっしゃ!それじゃ始めようじゃないか、ヒョウ!!」

「ああ、礼はちゃんとしないとな…!」

 

ユキとサリエル様とこいしが見守る中。約束を果たすため、俺は再び勇儀の前に立った。

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