寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第35話 計算外のつながり

「そういえば、リリカは大丈夫だったの?あの天狗人里の方に飛んでったけど」

「あー、物凄く不機嫌そうにこっち来たけど、雷鼓とルイズを見ていつもの表情と口調に戻してたわ。ざっまあ!って感じ!カメラは元に戻しといたけど」

「幻想郷では新参になる私たちですら悪印象しか無いからねえあのブン屋。たまには痛い目に遭ってもいいでしょ」

「雷鼓にすらそう思われてるのは相当よね」

「あ、美宵ちゃん!鳥皮せんべいもう一皿追加で!」

「はーい!」

 

リリカが無事だったから聞くの忘れてたけど、やっぱあの天狗即座に解除させに行ってたのね。となると今後はわたしも絡まれることになるか~。隠れ家に帰るときは注意しないと。

 

「私たちこそ知名度向上のために取材してもらいたいのにねえ」

「いや姉さん、絶対余計なことまで書かれるからそれは最後の手段にするべきでしょ」

「ははは、そりゃそうだ。でもあんたたちも結構人気はあるんでしょ?今日も結構賑わってたじゃない」

「そうだよー、少なくともファン層は私たちと差別化できそうじゃん。二人とも大人っぽくてうらやましい。というかカナもだけどなんで幻想郷の騒霊は皆ちんちくりんなんだろ?」

「ちんちくりんってなによ!まあ否定できないけど、ルナサとメルランは大人っぽいとは言えなくてもスタイルいいじゃない」

「言うなー!くそう、一番下とはいえどうして私だけここまで子供体型にしたレイラ―!?」

 

あ、リリカにとって地雷だったかなこれ?いわゆるロリに片足突っ込んじゃってるわたしに比べればまだマシだと思うけど。

 

「お待たせしましたー、空いたお皿は片付けちゃいますよ?」

「―――うん、お願いね。座敷童さん」

「っ!?」

 

あ、大当たりだったみたい。わたしたちに似てるけど、本質が違う。そして東洋風の名前…こんな形で人里に紛れ込んでる妖怪もいるのね~。

 

「だいじょうぶ、わたしが騒霊だからわかっただけだし、言いふらす気も無いよ。世間知らずな私が空気を読まなかっただけ…おいしいお酒と料理をありがとう!」

「あはは…お願いしますね」

 

困った笑顔で美宵さんが戻っていったわ。案外バレてないのかな~?

こういうところに来ると、わたしがいかにお家に引きこもってたのかがわかるわね。いつか、豹も一緒にこういうところへ来れたらいいんだけどな………

 

 

 

 

 

 

 

 

メルランと二人で帰り着いて、二人で軽く家事を終わらせて。さっきのこともあったから、何も言わずマヨヒガへ向かう。マヨヒガに着いたところで本当に接触できるかどうかがわからないのだけれど…それしか私から接触する方法が無いのだから仕方がない。急ぎでなければ、冥界のお嬢様に取次ぎを頼んでみるという手があるのだけれど…今の状況ではそんな悠長なことはしていられないでしょう。

 

「ふふふ…私をお探しかしら」

「えっ…!?」

 

そんな不安を抱きながら飛んでいると、目の前に突然開いたスキマへ、止まることが出来ず飛び込んでしまう…!それに、この声…!

 

「御機嫌よう、ルナサ・プリズムリバー。八雲への協力、あらためて感謝するわ」

「八雲、紫……!」

 

そして新たなスキマから放り出された先は、見覚えのない屋敷の庭先。そしてその縁側に腰掛けた、大妖怪が私に微笑む。

 

「豹と接触する前に話しておきたいことが出来たのよ。そしてそれはルナサの方も同じでしょう?」

 

まさか、駒として扱われる私と直々に話をするとは思ってなかったわ…!だけど、今更気後れするわけにはいかない。

 

「…その口振り、私たちも監視してたのかしら?」

「貴方達というよりアリスを、ね。ルナサが集団行動を徹底させてくれたおかげで、ある程度の会話は拾えているわ」

 

気付けなかったわ…命蓮寺のぬえのように、アリスとカナは察してた可能性はあるけど。でも、今それを気にする必要なんてない。

 

「それなら、私が伝えようとした件もわかってるんじゃないかしら?」

「ええ、ルイズという魔界人が、豹の妹らしきユキに伝えてしまうことね。

結論から言うと、問題ないわ。ギリギリ間に合う…ルナサが昨日今日と誘導してくれた間に、最低限の手回しは済ませた。明日私たちが豹と接触して情報を伝えれば、神綺がこちらに来る前に豹も状況を把握できるはずよ」

 

少し、安心した。私の下手な誘導でも、最低限の時間稼ぎは出来ていたようだから。

 

「私たちはエリーという名を追っているけれど、それは問題ないの?」

「構わないわ。すでに神綺を誘き寄せる状況には持ち込んだのだから、アリスと豹が顔を合わせても影響はない。後は豹自身が魔界の追手から逃げ切れるかどうかよ。だからここから先ルナサに頼みたいのは…アリスが魔界側に付いた場合の足止め」

 

…そうなるのね。私との実力差は明確だけど、捨て駒として散れ、と。

 

「そう悲壮な覚悟はしなくて大丈夫よ。豹は気に入った相手には甘い…ルナサならはっきり豹の味方との姿勢を見せれば、豹は見捨てるという選択は取れない。そのまま守ってもらえばいいわ…そのかわり、魔界人とも戦ってもらうことになるけれどね?」

「…豹を守ろうとしてるのに、豹に守られなきゃならないのは悲しいわね。不相応な舞台に立った以上仕方ないのでしょうけれど」

「ふふ、そこは役得と考えてほしいわ。私たち強大な妖怪にとって、他人から守られるなんて得難いものだもの…替われるものなら替わってもらいたいぐらい」

 

…八雲紫に、こんなことを言わせるなんてね。豹は妖怪の賢者に対してすら、兄らしく振舞っていたのかしら。

 

「それに、私にとっても計算外の繋がりができたのよ…ルナサ、冴月麟について知っていることを話して頂戴」

「え…?豹の隠れ家に足を運んだことのある一人で、呪具として作られたあの二胡の製作者としか知らないけれど」

「何の迷いもなく答えられることがおかしいのよ。彼女の呪いは私や豹ですら解呪できなかったのに、ルナサには作用すらしていない。打ち消せるような能力を持っているわけではないというのに」

 

もしかして、この反応は…

 

「冴月麟も、八雲の関係者なの?」

「ええ。豹とは違う方向で、私が切り札として使える相手。そしてなにより…私ではなく豹を優先して動く存在。今のルナサとは目的が完全に一致するのよ。

だからこそ、彼女との接触はルナサ一人でお願いするわ。アリス達と同時に接触してもルナサしか憶えていられないでしょうけど、記憶の辻褄を合わせるためにはルナサ一人が望ましい…覚えていられずとも、顔を合わせたという過去は消せないのだから」

「…彼女のことは、本当にわからない。何か知っているのなら教えてほしいのだけれど」

「それは私の口から話すことではないのよ…麟本人から聞きなさい。

そのうち、機を見計らって麟と引き合わせるわ。どう動くかは、その時に二人で決めなさい…豹のことだけ考えて動いてもらえればいいわ」

 

その言葉と同時に私の足元にスキマが開いた。慌てて逃れようとしたけれど、すぐに塞がれてしまい数え切れない視線が交錯する空間に取り残されてしまう。そこに八雲紫の声が響く。

 

「おそらく明後日には、アリスは魔界側に回る。気持ちの整理は明日のうちに付けておきなさい。

整理がつかないのであれば、別行動を取るといいわ。アリスは無理でしょうけれど、カナとあの人形はこちら側へ引き込める…私たちがそう動くよう仕向けるまで、時間を稼ぐといいでしょう」

 

これ以上は教える気が無い、か。でも、予想以上に八雲紫が私を当てにしているということがわかっただけでも、私にとって有意義な時間だったのは間違いないわ。

 

「…思ってた以上に、豹は頼りにされてるのね」

「ええ、直接手助けできないのが悔しいぐらいに、長い付き合いだったわ。だからこそ…頼むわよ、ルナサ」

 

また足元にスキマが開き、着地すると…豹と出会った名も無き霊場だった。

 

(…迷っている時間なんて、本当に無い)

 

覚悟はもう決めている。私に出来ることは、再会を祈って力を尽くすことぐらいかしら…

今日の夜空は雲模様。明日は雨が降りそうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告します。幻月曰く、『偉そうに天使扱いしてきたから叩き潰しただけ』とのことです。幸いなことに絡んだ悪魔数名以外に生命的被害は出ませんでしたが、流れ弾でギャングの別荘が半壊したようです」

「夢月ちゃんじゃなくて幻月ちゃんが大暴れするのは珍しいと思ったけど、それは悪魔の方が悪いわねー。それで結局帰っちゃったの?」

「はい、用は済んでないからまた明日来るとは言っていましたが…監視を付けた方がいいでしょうか?」

「いらないわよー。幻月ちゃんも夢月ちゃんもなにか魔界に用があるみたいだし。そうじゃなきゃトラブル起こすような二人じゃないもん。それこそ私がお話聞きに行ってこようかなー?」

「そのまま夢幻世界経由で幻想郷に行くつもりでしょう?神綺様は大人しくここでお仕事をお願いします」

「はーい…早く隠居したいなあ…」

「後を任せられる相手を見つけてからお願いします」

「夢子ちゃんじゃダメ?」

「私の仕事を今以上に増やす気ですか…?」

「ごめんなさーい!!そんなに怒らないで―!!」

 

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