寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により28・40話の誤変換を修正してます。ご指摘ありがとうございます。

ギリギリお気に入り数が400に届かず前後してたのに一気に20以上増えていて何事!?と思ったら、通算UAが30000超えたことによるブーストだったようです。
ここまで興味を持っていただけるとは想像すら出来ていなかったので逆にリアクション取れないのですが、ご期待に沿えるよう頑張りますのでこの先もよろしくお願いします。


第41話 弱る死神、逃げる死神

…豹さんが、行ってしまいました。二度と戻ってきてくれないというわけではないようですが、ここにいてくれたのは僅か三日足らずだというのに――ここまで、気持ちが沈んでしまうものなのですね。

 

「エリー、大丈夫?豹さんが離れることになっちゃったから直接言うけどさ…依存してたでしょ?

しばらく夢幻館にいてくれるんなら距離を取らせようとも思ってたけど、精神的にきついなら追ってもいいよ。幽香には私が伝えとくから」

 

依存、ですか。そうですね…言われてみれば、その通りです。今になって自覚するのは、良いことなのか悪いことなのか。ですが、私は今の状況で豹さんの傍にいても出来ることは無いのです。

豹さんの追手は、豹さん自身が守りたいと考えている方々。私は死神…意識していないと、相手を死なせてしまう。不安定な精神状態で豹さんの傍で戦っても、逆に豹さんを傷付けてしまいます。

 

「大丈夫じゃないからこそ、豹さんを追うわけにはいきません」

「……そう。なら、しばらくは夢幻館で寝泊りするわ」

「え、いいんですか夢月さん?魔界に行くなら遠くなりますよね」

「私も夢月もエリーとくるみは大切な友人と思ってるわ。昨日今日でヒョウのことも気に入ったのですし。エリーが落ち着くまでは付き合うわ…本当は幽香がやるべきことだけど!」

「あはは、その通りですね。幽香もこれだけ私たちを放っておいてるし、豹さんに乗り換えても文句は言えないですもんね!」

「フフ…その言葉、幽香に伝えたら面白そうね」

「やめて!本当にやめてください夢月さん!!」

 

それに、くるみも、幻月さんも、夢月さんもいてくれます。頼れる友人が傍にいてくれる私が、もっと苦しい状況に置かれている豹さんを頼るのは…甘えでしかないのです。

豹さんの傍に向かうのであれば、豹さんが私を頼れるぐらいになってから。

 

「くるみも、幻月さんも、夢月さんもありがとうございます。

少しだけ、甘えさせてもらいますね…自分でも、弱ってるのはわかってますので。

でも、落ち着いたら…皆で豹さんの助けになるよう動きたいです。お願いしても、いいでしょうか?」

 

頼もしい笑顔で、三人とも頷いてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

中有の道。妖怪の山の裏手に位置する三途の川への通り道で、その性質上死者が蔓延り人里の人間は立地も手伝い滅多に訪れることは無い。だが地獄に落とされた罪人が屋台を出しており、妖怪にとっては縁日感覚で訪れる者は決して少なくない。

 

でも、今日はあいにくの雨。屋台はほとんど閉まっていて見渡す限り死者ばかり。あまり長居する気にならない場所のはずなのだけれど、今日は例外が二人もいて。

 

「雨なのが残念ねえ、こんなに屋台が並んでるなんて思わなかったわ」

「わたしも思ってたのと全然違ってびっくり。今は死者しかいないけど、妖怪も混じったら普通に賑わってるってことだよね」

 

ルイズとカナが興味津々といった風に閉じた屋台を見回している。ちょっかいを掛けようとする死者もいたのだけれど…ルイズが対面に位置した屋台の支柱を両端にした拘束魔法を使い、道の真ん中で見せしめのように放置したことによって蜘蛛の子を散らすように死者は私たちから逃げて行ったわ。

…なんというか、流石はアリスの関係者と思うべきなのかしら。拘束された死者はうめき声すら出ないよう口枷を柱に繋がれたような状態で吊るされている。あれ、生者でやったら拷問よね…

 

「今日はせっかくのお休みなのに…貴方達は何をやっているのですか!?」

 

―――まあ、こんな事したら目を付けられるわよね…こんな雨の中傘を差してまで三途の川に向かう物好きなんてそういない。それが見せしめのような行動を取ったら管理する側が黙っていないわ。

 

「初めて見る顔ね。文句はルイズに言ってほしいのだけれど…話は聞くわ。何か問題があるのかしら?」

「問題って…いや、正当防衛なのかもしれませんがやり過ぎです!それにこの屋台の修復などに割く予算は地獄には無いのです!拘束魔法を解いてください!」

 

鶏の妖怪…にしては妖気を感じない。管理する側だとすると神の一種かしら?赤いメッシュの入った髪の中にひよこが入っていて、雨に濡れるのを嫌がっているように見えるわね。

…同じことを思ったのか、上海が傍に寄り傘の中に入れて話しかける。

 

「お騒がせしてごめんなさい、三途の川に用がありまして…拘束は解いてもらいますので、先に進ませてもらってもよいでしょうか?」

「あ…傘はありがとうございます。ですが、三途の川にいったい何の用があるのです――って、人形!?」

 

なんというか、ある意味上海は私たちの切り札になってるわね。

…私たちと呼び合える時間は、もうほとんど残ってないようだけれど。

 

 

 

「小町さんにご用ですか。それなら急いだほうが良いですね。仕事場にいないことが多々ありますので」

 

庭渡久侘歌と名乗った彼女は、ニワタリ神という鶏の神だそう。地獄の関所で番人を務めているそうだけど、今日は公休で妖怪の山でゆっくりしていたのにルイズの見せしめを見つけてしまい、慌てて飛んできたということらしいわ。

 

「でもこの屋台を経営してるのが地獄だなんて思わなかったわ。予算がないって言ってたし、地獄の沙汰も金次第だっけ?この国の言葉は深いものが多いのねー」

「…なるほど、貴方は幻想郷の住人ではないのですか。今回に関しては見逃しますが、あまり目立つことはしないようにしてください。私は番人でしかないのです…上層部に睨まれたら擁護できないですからね?」

「はーい、気を付けまーす」

 

…本当に気を付ける気があるのか判別し辛いのよルイズ。まあ、こういう口調が普段通りなのだろうけれど。

 

「…それで、名前を出したのだから逃げようとせず出てきてほしいんだけど、小町?」

「げっ…バレてたのかい」

「って、小町さん!?またサボりですか!?」

 

あら、向こうから来てくれたのね。でも…やっぱりアリスは凄い、私は気付けなかった。

この先、アリスを止めなくてはならなくなったら。私に勝機なんてあるのかしらね…

 

「なんなんだいこの集まりは…?あたいに用があるみたいだけど、ここじゃ四季様にすぐ見つかっちまうよ。人里で待っててあげるから、話はそこで、な!」

「って、しまった!待ちなさい!」

「くっ…相変わらず逃走に使われると厄介ですね小町さんの能力は」

「ええ~…何があったの今。テレポートにしては魔力反応がないわよね」

 

ルイズが首を傾げてるけど、私も何があったのかわからなかった…

 

「久侘歌さん、わたしにはテレポートしたようにしか見えなかったんだけど…あの死神さんの能力って聞いてもいいのかな?」

「小町さんの能力は距離を操る程度の能力です。サボるために瞬間移動のような高度な技術を使われても困るのですが…この様子だと四季様もこちらにやってきてしまいそうですね。お急ぎでしたら、すぐに追いかけた方がいいですよ」

 

う…あの説教好きな閻魔に捕まるのは避けたいわ。お言葉に甘えましょうか。でもこうなると、メルランとも合流した方が良さそうね。八雲紫の思惑通りに進むのであれば…ここから先、アリスとは距離を置くべき。そうなると――私の後を任せるという意味でも、メルランにもある程度の情報は持っておいてもらいたい。

 

「アリス、先に人里へ向かって貰える?こうなったならメルランにも話を聞かせたいから、私は一度家に戻ってから人里に向かうわ」

「そう、なら残りは先行して人里に行きましょうか」

「あ、それなら私はここでお別れしようかしら。人里には昨日行ったのですもの」

 

本当、ルイズはマイペースね…アリスも苦労してそうだわ。

 

「相変わらずねルイズは…別にいいけど。母さんとユキにはしっかり伝えておいてよ?」

「わかってるわよー。それじゃ、いってらっしゃーい」

「じゃあルナサ、わたしたちは先にあの死神さん捕まえとくから」

「メルランさんも一緒に、ですね。お待ちします」

「ええ、私も急ぐわ」

 

一時別行動ね。先に話を進めれるのも困るし、急がないと。

 

 

 

 

 

「それじゃ久侘歌さん、家まで送るからこのあたりのお話を聞かせてもらえないかしら―?」

「えっ?わざわざ私についてくる必要なんてないと思いますが」

「そのひよこさん雨に濡れるの嫌がってるじゃない。私の傘でも二人は入れるし、送りますわ。

私の目的は旅行ですから、この景色を見ながらお話してもらえるだけで楽しめるのですもの」

「そうですか。ではお言葉に甘えますね…もう少し早い時期でしたら、ここ妖怪の山の美しい紅葉を堪能してもらえたのですが。そこは惜しいですね」

 

私が辿り着く直前に、アリスさんたちは人里の方に向かってしまいました。ルナサさんだけ単独行動していますが…合流は間に合わずです。残っているお二人に話を聞くことしか出来ないみたいですね…

 

「庭渡様、お久しぶりです。私にもお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

「あら、貴方はたしか…犬走椛。白狼天狗のあなたが職務放棄はあまり良くないのではないですか?」

「良くはないです。ですが、アリスさんたちがお話していたのを見つけてしまいましたので。豹さんについて、なにか進展があったのでしょうか?」

「あ、アリスの知り合いだったの!ごめんなさいねー、アリスが話を聞こうとしてた相手は人里に行っちゃったの。エリーと名乗った相手と面識があるみたいだからって」

「――!そうですか。少しでも、豹さんに近付ければいいのですが…」

 

一応、この辺りも警備範囲に入っています。魔法の森方面から中有の道に入る者は少ないですが、職務の一環として押し通せなくはない。だからこそ急いで向かってきたのですが。

 

「ヒョウもエリーも聞かない名前ですね。椛は二人と面識があるのですか?」

「エリーは知りませんが、豹さんはお世話になっています。手の空いた時に戦闘訓練をしていただいて。私のような下っ端天狗にも穏やかに接してくれましたので助かっていました」

「あ、丁度いいわ!あなたの知るヒョウについて聞かせてもらえるかしら?ユキの判断材料が増えるでしょうし」

「…アリスさんの知り合いであれば、構いませんが。どちら様でしょう?」

「ルイズよ。魔界から旅行に来たアリスの姉ですわ」

 

 

 

私の知る豹さんをルイズさんと庭渡様にお話ししましたが。ルイズさんはともかく庭渡様は警戒するべき相手と認識してしまったようで。

 

「それだけの使い手である魔界人が、つい先週までは隠棲出来ていたのですか。八雲の庇護下にあったのだとしても、私すら把握できていないというのは危険視せざるを得ませんね」

「あら、久侘歌さんも私が思ってるより高い立場の方なのかしら?」

「一応、それなりに偉い立場ではあります。地獄に着任しているのも私であれば鬼を止められるゆえですから。地獄で過ごしている鬼の四天王と交友がある程度には立場も実力も持っていますよ」

「そっか、魔界で考えるとサラの立場になるのね。異界への門番なんて、厚い忠誠心と確かな実力が無ければ任せられない」

 

サラという方は全く知りませんが、地獄の鬼の四天王というのは星熊勇儀様のことでしょう。もしかして私は、庭渡様に対してとんでもない不敬な態度だったのでは…?

 

「椛、気にしなくて構わないですよ。神とはいえ、私の力は決して強くないのですから。元々椛の立ち振る舞いは丁寧ですからね」

「あ、申し訳ありません。ですが、私の知る豹さんは問題行動を起こすようなことはしないと思うのです」

「椛の言葉は信じますが、彼本人に問題は無くともその立場が危険なのです。今まさに、あれだけの実力者たちが協調して捜索している時点で博麗の巫女あたりに睨まれてもおかしくない。

…ですので、私も個人的に四季様に当たってみましょう。椛にも伝えて問題なさそうな情報は渡します」

「え、よろしいのですか?」

「今日のような騒ぎを起こされるのであれば、早く見つけてもらいたいですからね」

「あー…ごめんなさーい」

 

…ルイズさんがばつが悪そうに謝罪していますが、何かあったのでしょうか。

ですが、私でも少しはアリスさんたちと情報交換は出来そうです。役立たずのまま終わるのは悔しいですから、一安心ですか。

 

「では、申し訳ありませんがお願いします庭渡様」

「はい、なにか四季様が知っていたら伝えましょう」

「あ、私からもありがとね!結構ユキの判断材料になりそうな特徴があったから助かったわ」

「いえ、ルイズさんも良い旅を」

 

任務に戻りましょう。私の次のお休みは…いつだったでしょうか。

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