寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第48話 そして魔界も動き出す

ルナちゃんに頼まれてついてきましたが、リリーを探してた本人が留守なんて聞いてないですよー!ただでさえこの時期は妖怪どころか人間にすらかなわないのです。豹さんのおかげで緊急脱出できるようになりましたが、何回も使える魔法じゃないのでこの時期に外へ出るのが危険なことにかわりはないのです。

 

そう思ってたら、ドアの脇に置かれた小さな椅子に座るお人形さんがリリーとルナちゃんの方に顔を向けました。びっくりですよ!

 

「…ルナチャイルドね?春告精を見つけてくれたのかしら」

「あ、アリスさん?後ろにいるけど何を聞きたいの?」

「―――いえ、そうね。とりあえず報酬は先に渡すけど、あなたこれから時間取れるかしら」

「え、別に用は無いけど…」

「なら中に入って待ってて頂戴。ただ案内した部屋以外に入ったら人形たちが攻撃するから下手に動かないことね」

「なにそれ!?ちょっとアリスさん!?」

 

あのー、とっても怖そうなお話をしてませんでしたかルナちゃん。リリーは何をされるんでしょうか?

ドアが開いてお人形さんが手招きしてますが、入りたくないですよー?

でも、この状況でリリー一人で帰るのは危ないです。大人しく家に入って待つしかないみたいですね…

 

「ルナちゃん、入るしかなさそうですよー」

「ううー、サニーとスターも付き合わせるべきだったわ…」

 

 

 

 

 

「―――春告精を捉まえてくれたわ。都合がいいことに博麗神社の大木に住んでる妖精だから、霊夢をおびき出す手も打てるかもしれない。私の家で策を練りましょう」

「すごいタイミングじゃない!わたしたちに運が向いてきたのかな?」

 

カナが嬉しそうに反応したわ。私にとっても最高のタイミング。本当に豹が夢幻館にいるかどうかはまだわからないけど、明日以降はアリスと距離を置くことも考えなければいけない以上、今日の時点で春告精と接触できるのは大きい。これで当初の捜索対象ほぼ全員と接触できたことになるわ。となれば、最後の一人も。

 

「アリス、丁度いいから命蓮寺にも後で寄りましょう。寺にとっての週末がずれている可能性はあるけど、私たちにとって今日はもう週末だわ。もし夢幻館に豹がいなかった場合、今日ナズーリンと話しておければ魔界からの情報待ちで待機できるようになる」

「そうね…突入を明日にする前提ならその方が効率的か。となるとあまりゆっくりとしていられないわ、行きましょう」

「は~い、でも私はアリスの家知らないから、案内よろしくね~」

 

確証は無いけれど、豹の足取りに近付いている実感はある。さっきの風見幽香の話みたいに不安要素もあるけれど、八雲紫の話からすれば豹はまだ無事。それを私から言うわけにはいかないけれど、上海のおかげで皆焦りはない。

 

「…私は事情が分からないんだけど、上海を傷付けたら怒るからね。上海の力になりなさいよ」

「大丈夫です、メディ。また今度、ゆっくりお話ししましょう!」

「そうね、それじゃ私は帰るわ」

 

そう言ってメディスンは太陽の畑を後にしたわ。上海の説得に応じてくれただけでも良しとするべきでしょうね。彼女を協力者として扱うことは不可能に近い…それこそ、メディスンを味方に付けられるのはこの中で上海だけでしょう。

 

「じゃ、付いてきなさい。待たせてる間に悪戯されるのも嫌だし急ぐわよ」

 

 

 

 

 

 

(ヒョウさん、ね。私が知ってるはずはない。でも、上海のお手伝いはしてあげるべきよね。人形同士、仲良くしたいし)

 

今度毒を持っていくときに、永琳にでも聞いてみようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日は無礼なザコ悪魔共のせいで姉さんが本気でキレたからマイとやらを探すどころじゃなくなった。今日も魔界に来る前にヒョウの救出があったから魔界に出てくるのが遅くなった。停滞した日々を退屈と感じる私にとっては、暇つぶしになって悪くないけど。

 

「出口を普段と違う位置に開いてみたけど…ここは誰が使ってるのかしら?ここまで整理された境界点は珍しいわね」

「…たしかに。異界と繋ぎやすい不安定な空間点が、監視不在の屋内で小綺麗にされてるなんて。そんな頻繁に魔界から出る必要のある住人には覚えがない」

 

昨日と同じ騒ぎを起こさないために夢幻世界から魔界につなぐ出口を変えてみたら、別の誰かが利用していたらしい小部屋に繋がった。というか、これは…

 

「むしろこれ、入り口として使うための補助祭壇?」

「あ、そうかも。ということは密航業者のアジトにでも出ちゃったかしら」

 

昨日とは別の意味で面倒になるかもしれないわね。さすがに二日続けて魔界で騒ぎを起こしたら神綺から文句言われるだろうし。素直に通してくれる連中だといいけど。

――と思ってたのに、いきなり力技で押し通りたい状況になったわ。

 

「…どうして向こうから鍵かかってるのよ。しかも魔力による施錠じゃないから物理的に開錠が必要だし」

「む…困りましたね。今日は穏当に過ごさないといけないのに…って、あら?」

 

扉一枚ぐらい破壊してもいいかと考え始めた矢先に、私たちと別の侵入者が来たようね。ちょうどいい、責任はすべて押し付けさせてもらいましょ。

 

「ふぅ、里帰りも久しぶりですね…―――って、えええっ!?夢幻世界の主様がどうしてこんなところに!?」

 

赤髪黒翼の下級悪魔が空間魔法のゲートから降り立ち、私たちを見て驚愕した。

 

 

 

「は、はあ。そんなことが…とりあえずここの鍵は持ってますので、ちょっと待ってくださいね。カムさんいると助かるんですが」

「居ない方が良くないですか?不法侵入した私たちに協力したことがバレたら問題になるでしょう?」

「あの方ギャングと思えないぐらい温和な方ですから、事情を説明すれば通り道に使うぐらい許してくれます。そもそも事業を異界にも進出させられないかと考えて作ったこの祭壇を、私みたいな個人の用事に使わせてくれるんですから」

「異界に事業を展開しようとしてる温和なギャング?姉さん、もしかして…」

「…たぶん、エリーとくるみが巻き込んだあのおじさんね…」

 

こんなところで繋がるなんてね。妙な縁もあるものだわ。

 

「失礼します…って、誰もいないですね。うーん…となると鍵は閉めていきたいんですが…」

「帰りはいつもの転移地点から戻るから閉めていいですよ」

「あ、いいんですか!助かります。高位の空間魔法を使えるとパチュリー様のところまで空間移動出来てしまうので…」

「へえ、つまりあなたは使い魔として使役されているのに、魔界へ戻ることを許されたわけ?随分と不用意な主に仕えているのね」

「あはは…私はちょっと特殊な契約してまして。少なくとも逃げたいと思うような待遇ではないですから、家族にちょっと顔出ししたら仕事を済ませて帰ります」

「家族がいるのに使い魔として異界に出てるなんて本当にめずらしいですね。ギャングと繋がりがあるのもそのあたりの事情ですか」

「いえ、ギャングと繋がりがあるのはお嬢様なのですが…あまり魔界に広まってほしくないんです。できれば夢幻の主様だけで止めておいていただけると…」

 

なかなか気になる境遇だけど、今日はそれほど時間に余裕が無い。長話するほどでもないか。

 

「そうね、そのカムってのに心当たりあるから直接聞いてみるわ。騒ぎを起こさず外に出してくれてありがと」

「いえいえ!私なんかにそこまで気を使ってくれては恐縮してしまいますよ!私はこれで失礼しますね!」

「はい、あなたも気を付けて」

 

そう返して赤髪黒翼の下級悪魔は飛び去った…って、名前聞き忘れた。まあカムってギャングに聞けばいいか。

 

「それじゃ姉さん、今日はどう動く?」

「ヒョウと藍の話を聞いた限り、明日になったら一気に動きそうなのよね。だから今日はマイの居場所だけ突き止めればいいわ。本格的に動くのはユキと夢子が幻想郷に向かってから―――そうすれば神綺の動向にだけ気を付ければいい」

「わかった」

 

 

 

 

 

(はーーーっ、見逃してくれて良かったぁ…巫女と魔法使いが入り込んできたとき以来ですね、ここまで生命の危機を感じたのは…)

 

紅魔館に帰ったらお嬢様とパチュリー様にお休み貰います…疲れました精神的に。

 

 

 

 

 

 

 

 

(…あれは)

 

買い出しのため人里に出ると、太陽の畑の方から上空を飛び去る人影がありました。

カナさん、ルナサさん、メルランさん、アリスさん…豹さんを追っている皆様です。

 

(あの方角ですと、夢幻館に向かっているわけではないようですね。太陽の畑から来たということは、風見幽香さんと接触したのだと思うのですが…)

 

エリーさんとくるみさんのことを教えてもらえなかったのでしょうか?ですが当たりを付けた上で太陽の畑に出向いたというのに戦闘した形跡が何方にも見られません。となると…風見幽香さんが留守だった、でしょうか。

 

(通り過ぎてくれた以上、私に気付くことはなかったはずですが…やはり長居しない方が良さそうですね。今日一日で済ませようとせず、明日もう一度来るべきですか)

 

消耗品は今日既に揃えました。なので荷物が重いのですが…保存のきく食料は明日にしましょう。

…私が昨日も人里に来たなんてことに気付く人は、ほとんど居ませんからね。

 

大荷物を抱えて人里を後にします。そんな私を興味深く眺めていた視線に、私はこの時気付くことが出来ませんでした。

 

 

 

「―――ふむ。力無き小娘というわけではないようじゃが、それはそれで気になるのう」

「ん、どうしたのさ狸の旦那?」

「妹紅殿よ、金髪に赤リボンで二胡を携えた、それなりの力を持っている人間の少女に心当たりはないかの?」

「……なんだ、何処かで聞いた覚えがある気がするが…思い出せない。ちょっと待ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「おかえり、ルイズ。今回はいつもより早い時間に戻って来たのね」

 

やっぱり旅行は楽しいわね。アリスが幻想郷でもうまくやってるのも見れたし、雷鼓にリリカ、久侘歌さんに椛。次に行くときに一飲みしたい相手も作れたし!

 

「相変わらずお気楽で羨ましいわね。幻想郷ってだけでハイリスクなのに、神綺様に直接許可を取ってまで旅行なんて普通はしないわ」

「むしろ神綺様がよく行き来してるからこそ幻想郷に旅行なのよ♪別の異世界じゃさすがに神綺様でも許可出してくれないもの」

「…夢子さんの苦労がよくわかる返答だわ」

 

まあ迷惑かけてる自覚はあるけれど、今日はますます迷惑かけちゃいそうなのよねー。

 

「ところで、アリスがヒョウって魔界人を幻想郷で追ってるんだけど、たしかユキのお兄ちゃんの名前よね?サラは何か知ってるかしら」

「――ヒョウ、ですって!?ルイズ、今すぐ詳しい話を神綺様に話しなさい!」

「ちょ、ちょっと待って!そんな勢いで引っ張らないで!」

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