寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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第51話 再会を求めて

置いてかれるのも怖いですよー!とリリーも命蓮寺までついてくることになったわ。春以外の季節では弱体化するのを自覚していて、考え無しに行動せず自重できている…妖精の中では屈指の知能を持っていると言っていいでしょう。

 

「そういえばリリー、豹のお家に来るつもりって言ってたけど今日は黒服じゃないのね?」

「水汲みに出たところをルナちゃんに捕まってそのまま連れてこられたのですよー。魔法の森まで来ちゃったら豹さんにお願いして一緒に帰ってもらう方が安心ですので、会いに行こうとしたのですよー」

「黒服なんて着たら、豹と姉さんの子供に見えるかしら~」

「…メルラン、流石にそれは暴論よ。髪と服の色だけじゃない」

 

まったくもう…隙あらば私の色恋に絡めようとするんだから。

 

「でもそういえば、豹は金髪が好みなのかしら?一昨日も妹紅から私・ルナサ・カナで姉妹と言われたわよね?」

「ユキさんも金髪ですね。親近感を覚えているのでしょうか?」

 

言われてみれば…金髪率高いわね私たち。ここにいる皆はメルラン以外皆金髪だったわ。

 

「八雲紫と八雲藍もそうだし、エリーも金髪って言ってたよね。偶然で片付けるには多いかな~?」

「今までお会いしてきた皆様だと、メルランさんとリリカさんに、妹紅さん、雛さん、椛さんだけでしょうか?豹さんをお慕いしてる皆様で金髪でないのは」

「そんなにいるんですか!?もっとリリーに構ってほしいのにー!」

「リリカはちょっと微妙かしら~、妹として上手く甘えようとはしてるけど♪」

「あと、私をそこに混ぜるのは止めて頂戴」

 

アリスは豹と言葉を交わしたことすらないものね。豹のことだから、敵と認識しなければまた兄として振舞って妹分を増やすのだろうけれど。

それに、メルラン自身は否定しない―――私を面白がってるけど、なにかきっかけがあればそんなこと言っていられなくなる…それに気付いてるのかしら?メルランは私やリリカより、ある意味ずっと鈍い。

 

「まったく…豹がスケコマシに思えてくるわ。上海も気を付けなさいよ?

流石にこの雨だとあの寺も人は少ないはず。山門までは飛んで行きましょう」

 

…豹に自覚は無いだろうけど、アリスの予想は当たってるわね。豹がこのまま姿を消したら、平静ではいられなくなる【妹分】がどれだけいるのか…豹はわかってないのでしょう。

 

 

 

 

 

命蓮寺の山門をくぐると、待っていたかのように目的の相手が私たちを迎えたわ。

 

「ふむ、本当にわざわざ足を延ばしてくるとはね。豹は予想以上の大物ということか」

「そちらから豹の名を出してくれるということは、用件は伝わっているようね」

 

小柄な妖怪鼠…ナズーリンが私たちを出迎えた。でも…彼女だけね。聖白蓮か星は連れてくると思ってたけれど。

 

「あまり広めたくないと聞いているからね。聖とご主人にはここの妖怪を相手してもらっているよ」

「…私の顔に出てたかしら。まあ、特に情報が入っていないのであればあなただけでもいいけれど」

「そちらこそ聞いていたより実力者が一人増えているだろう?お互い様だ」

「あら~、別に戦力としてついて来たわけじゃないのにね~」

 

…どうやら星以外の妖怪たちにはまだ警戒されているようね。仕方ないことだわ…相手してくれるだけ良しとするべき。

 

「そう、手短に済ませた方がいいようね。なら早速聞くけれど…三日前に人里を出てすぐ、森が見えてくるぐらいの草原で何をしていたのかしら?」

「ここに向かう途中で、不自然な地面の陥没を見つけたからな。軽くダウジングしていただけだぞ。

もっとも、収穫は魔力の付与された指輪だけだったが」

「魔力付与済みの指輪!?それたぶん豹のだわ。今どこにある!?」

「魔法使いでもある聖に調べてもらうためにこの寺で保管しているが…持ってこさせた方がいいようだな」

 

尻尾に下げたバスケットから子ネズミが飛び出して本堂に向かっていった。…あの子ネズミだけで用件が通じるのかしら?

 

「随分と素直に渡すのね。見つけたのは貴方なのだからもう少し渋るかと思ったけど」

「私一人じゃ君一人の相手になるかすらわからない以上、この戦力差で火種を作る気は無い。それこそ敵対する気は無いという意思表示として見てほしいのだが?」

「…私たちは最初からそのつもりなのだけれど、そこまで信用できないかしら」

「君たちは信用できても、今ここに居ない豹は信用できないからな。この寺は代表と本尊代理が善良過ぎるからね。周囲がこういった案件に警戒しなければならないのさ」

 

…それはそうね。一度話しただけの私ですら納得できるわ。

 

「戻ってくるまでにもう一つ情報を渡してあげよう。エリーは知らないが豹であれば、香霖堂の店主と面識があるはずだ」

「えっ、霖之助さん?」

「ああ。あの男の店だが、定期的に魔力の枯渇した魔法具が入荷することがあるのは知っているな?」

「もちろん。私が気が向いた時に訪ねる理由の一つよ」

「それらはほとんどが豹という男から引き取っているものだそうだ。金銭でやり取りすることも無いわけでは無いようだが、基本的には魔力と相性の良い鉱石や装飾品と交換していくらしい」

「あ、それ間違いなく豹ね。実験で魔力を使い切った魔法具は定期的にお家からなくなってたけど、捨てたんじゃなくてその店に押し付けてたのか~」

「霖之助さんは体よく利用されてたと。それを買い取って再利用したりする私が言えたことじゃないでしょうけどね…」

 

香霖堂…魔法の森の外れにある古道具屋。古い楽器が仕入れられることもあるから私もたまに足を向ける店だけど…ちょっとこれは確認しなければいけない点がある。

 

「店主はどこまで信用できるのよ?豹なら他者に引き渡すときに名前を出さないといった条件を付けるはず。それを破っているとなれば信用できないわ」

「安心したまえ。これは私が正当な取引の上で聞き出した話とはいえ、脅迫に近い形だったからな。私の鼠なら店主の私室に入り込むことなどわけないからね」

「信用しきれないのはあなたの方なのね~。でもなんでそんなこと聞き出したのよ~」

「ダウザーとしてどこから魔法具などを手に入れているのかが気になったからだ。まさか拾い集めたのではなく個人との取引とは思わなかったが」

 

…彼女もなかなかのやり手のようね。腹芸に向かない私はあまり前に出るべきじゃない、か。

 

「ですがご主人様、再利用していた魔法具は十分に利用価値のあるものばかりでしたよね?」

「ええ、それこそよくここまで完全に魔力を使い切ったと思えるほど――完全に空にしてあったのよ。だから私が再充填して使うことが簡単にできた。

…豹の恐ろしいところは、魔力の使い方ね。効果に対する対魔力消費効率に関しては、下手すると母さんに並ぶんじゃないかしら。少なくとも私と魔理沙よりは数段上。一段落したら研究資料を持ち出してパチュリーにも確認してほしいぐらいだわ」

「さっきも言いましたが、豹さんはどれだけ少ない魔力で空間魔法を行使するかを研究してたのですよー。リリーですらそれなりの魔法を使えるようになったのは、間違いなくその研究の成果だと思います」

 

私は魔法に詳しいわけじゃないけれど。妖精でも使いこなせる程度にまで魔力消費量を抑えるような研究成果ということね…よく考えなくても利用価値の高さは理解できる。魔法使いにとって、魔力消費の軽減による継戦能力の向上はとても大きい。

 

「…私が思っていた以上に重要人物のようだな。だが、私の持つ情報はこれだけだ。

後は見つけた指輪なんだが―――って、ご主人?…まさか」

 

星が本堂からこちらに出て来たけれど…どうしたのかしら?傍から見ても落ち込んだ様子だけれど。

 

「……ご主人、私は今凄まじく嫌な予感がしている。この予感が外れることを期待するが、何の用だい?」

「―――っ…ごめんなさい!!ナズの置いていった指輪、なくしてしまいました!」

 

………ええー。

 

「何をしてくれてるんだこのダメ虎ァ!!」

 

暗くなった妖怪寺に、怒号が響き渡った。

 

 

 

 

 

「まったく…彼女たちも大事にしたくないからこそ見逃してくれたが、あの巫女や魔法使いだったら洒落になっていなかった。猛省しろよ、ご主人」

「はい…」

「それで…聖なら聞こえていたな。これからどうするつもりだ?今回は私だけで対応することで凌いだが、次はそうもいかないぞ」

「…わかっています。ですが、もう少し情報が欲しい…何が起きているのか、何も見えてきません」

「―――ふむ。豹とやらの情報なら少々仕入れてきたが、欲しいかの?」

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

兄さんの足取りを掴んできてくれたルイズを置き去りにする勢いでパンデモニウムに飛び込む。すぐにでも幻想郷に向かいたいけど、勢いだけで動いて取り返しのつかないミスをしたからこそ独りでは動かない。

わたしも兄さんも、それを忘れたことで離ればなれになってしまったから。

 

謁見の間に神綺様と夢子が揃ってる。話がスムーズに進むから助かるわ。

 

「神綺様!兄さんが…ルイズが兄さんの手掛かりを見つけてくれたって!」

「えっ!ヒョウくんの!?」

「先輩が…!?」

 

 

 

「はあ、はあ…サラもユキも全力出しすぎですわ…旅行帰りの私のことを少し気遣っても…」

「それどころじゃないわ!兄さんは本当に幻想郷に…」

「ユキ、気持ちはわかるけど少し落ち着いて」

「………神綺様も」

「わ、私は落ち着いてるわよー!…でも本当にヒョウくんなの!?」

「…神綺様、ルイズは逃げませんから落ち着いてください」

 

夢子だけじゃなくマイもサラも私と神綺様に落ち着いてと言ってるけど、ハッキリ言って無理。やっと、やっと見つかった手掛かりなんだから…!

 

「ふう、ふう…そんなに期待されても困ってしまうけれど…アリスが幻想郷でヒョウって魔界人を追ってましたわ。白狼天狗の椛って子に聞いた特徴をまとめると、『金髪長身で格闘に長けた空間魔法使い』だそうですけれど」

「間違いない…!兄さんだわ…!」

「ユキちゃん、夢子ちゃん。私が引き継げる仕事は私に振っていいから、二人じゃないと出来ない仕事だけ片付けちゃって。それで、幻想郷には二人揃ってから向かいなさい。

お互いに暴走しないよう、一休みして二人一緒に向かってね。私もなるべく急いで追いかけるから」

「「はい!!」」

 

うん、もう暴走はしない。夢子にもさせない。また兄さんが離れてしまわないように。

 

「サラちゃんは、しばらくここでマイちゃんを手伝ってあげて。私がやらなきゃならない仕事は終わらせてから幻想郷に行くから、扉はユキちゃんと夢子ちゃんが入ったらしばらく封鎖しちゃっていい」

「わかりました!」

「………神綺様、つまり私は…」

「ごめんねマイちゃん、私が幻想郷に出てからのお留守番よろしく!

―――マイちゃんは、ヒョウくんとあんまり顔合わせたくないでしょ?」

「…そうですね」

 

マイには悪いけど、今回ばかりはわたしと夢子と、神綺様。

あの時から続く後悔を、終わらせるために。

 

「ルイズちゃんも、少し休んだらマイちゃんを手伝ってあげて。私たちが戻って来たら、また幻想郷に旅行に行っていいから!」

「え、いいんですか!それじゃ手伝いますね!」

「今回ばかりは私も許可するわ。しばらく魔界をお願い」

「夢子さんのお墨付き!?やったー!なるべく早く戻って来てくださいねー」

 

やらなきゃいけないことを、終わらせて。兄さんを連れ戻す。

 

マイだけが一人、不満気だったけど。

 

 

 

(あのスケコマシ…今更また私に迷惑かけるのか)

 

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