寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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勢いで投稿し始めたこの作品を楽しんで頂いている皆様に、あらためて感謝を。

ありがとうございます!ご期待を活力に変えて頑張っていきます!!


第52話 繰り返す甘さと弱者の決意

「むー、さすがにこのあたりの部品は新規製造すべきですか。メインエンジン至近は爆発でもう駄目なのです」

 

一飲み終えて修復作業に戻る。酒に弱いというわけでは無いが、護衛という立場だった関係で俺はあまり酒を飲まない。さらに言えば酒よりコーヒーの方が好みだ。

 

「しかし、攻撃魔法がロクに使えない俺からすると率直に言って羨ましい。遠距離攻撃の手段を複数備え、強化魔法無しに肉体を保護できる戦車…これが兵器として量産されれば俺でもまともな戦力になれる」

「むしろこれだけの高位魔法の使い手である豹が攻撃魔法を使えないというのがおかしいのです。逆に言えば攻撃魔法の研究に時間を割かなかった結果がこれほどの修復魔法である以上、わたしにとっては何も問題ないのですが…今後、自衛のためにもわたしと行動を共にするべきなのです!」

「豹、本当に良かったのか?こうなると里香は逃がそうとしないぞ」

 

まあ、それは反応を見ればわかるが。

 

「逃げるだけならなんとかなるさ。明羅も知っての通り俺の得意魔法は空間魔法だからな」

「むぅー!わたしが匿ってやると言っているのに何が不満なのです!?」

「匿った先で馬車馬のようにこき使おうとするのを隠さないからだろう」

「失礼なのです!わたしがいつ豹を奴隷のように扱ったというのです!?」

「今まさに修復奴隷として見てるだろうが」

「奴隷とまでは行かずとも、回復薬分が帳消しになるぐらいには修復したぞ…」

 

里香の辞書に配慮や遠慮なんて言葉は存在しないんだろうな。明日からは極力魔法の行使を控えたいから今日やれるだけ片付けようとした俺にも非はあるが、それを差し引いてもせっかく修復した部品が雨ざらしになる状況だ。明らかに持ち帰ることを考えていない、というかあれだけ山積みだった残骸の七割方を修復もしくは廃棄処分行きに仕分け終えたのだ。魔力回復薬4本分で働き過ぎた気が今更してきた。

 

「とりあえず、今日はここまでだ。優先順位の高い方から里香が持ってきたのなら、残りはそのまま廃棄処分でもいい程度の残骸だろ?」

「それはたしかにそうなのです。ですが、豹を逃がすわけにはいかないのです…どうしますか」

「いや十分だろ、見逃してくれ」

「駄目なのです。燃費向上の件がまだ残っているのです」

「それを無償でやらせようという考えが傲慢ということに気付け、里香」

 

…いや、明羅も大変だな。里香は天才だが人付き合いに難のあるタイプの典型例だ。その里香を相手にして常識的なツッコミを入れるのは心労が酷いだろう。

―――アイツを思い出すな。義理を果たすのも間近だが、神綺様は納得してくれるだろうか。

 

「なるほど、追加報酬を出せばいいのですね!少し待つのです!」

「………すまない、豹。余計なことを言ったようだ」

「気にするな、天才と呼ばれる存在はこんなものだ」

 

里香が修復し終えた部品の山に埋もれていった。そういえばこれ、どうやって牽引車に積み込む気だ?里香が意外と腕力があるのは部品の重さから理解してるが、修復済みの部品はまとまった分重量が増加してるはず。

…これ、次は力仕事を押し付けられるな。明羅、すまないがたぶん巻き込む。

 

「む、うむぅ……重い。豹!手伝うのです!」

 

ほら見ろ。

 

 

 

「それで、これをどうする気だ?」

「ふらわー戦車の主砲を新型戦車の副砲に転用できるように、この小型戦車用副砲のサイズなら手持ちの兵器に改造できるのです。攻撃魔法が使えない豹なら、間違いなく欲しがるのです!一晩待ちなさい、私から逃げる気をなくさせてやるのです!」

「…まあ明日か明後日までは明羅に世話になるから構わんが、状況が整ったら俺はすぐにでもここを離れるからな。無駄骨になっても俺は責任持たないぞ?」

「ふふっ、天才戦車技師のあたいを嘗め過ぎなのです。明日目覚めた時にはもう豹は逃げられません!」

 

…あたいを使うのはなんだ、単に格好を付けたいだけか?よくわからないが…

まあ、好きにさせるか。とりあえず…

 

「明羅、さっき取ってきてもらった資材の余りも使い切っていいか?」

「別に構わないが、何に使う気だ?」

「大したことじゃない」

 

修復し直しとか言われるのは流石に御免被りたいからな。

 

「里香、雨曝しになってる修復済みの部品を先に纏めるぞ。やっつけ仕事の雨避けだが無いよりはマシだろう」

「気が利くのです!なら牽引車に乗せてそれに蓋をするようにするのです!」

「里香もそれを先に手伝え。明羅、頼んでもいいか?」

「やれやれ…それは構わないが。

豹、その気遣いは逃亡者に不要ということを自覚しておけ」

「同じようなことをつい最近言われたな…」

 

直す気が無いんだよ、これは。俺が俺のままであるために、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

命蓮寺を後にして、一度豹の隠れ家に寄ることにしたわ。地理的に解散前の打ち合わせ地点として最適なのよね。

 

「それじゃ、明日の予定を詰めましょうか」

「…まず、潜入メンバーは私とアリスと上海。流石に明日はリリカも動いてくれるでしょうし、陽動に回るのがメルランとリリカにカナ」

「わたしは巫女に魅魔の情報を伝えに行くけど、それで動かなかった場合メルランたちと何処で合流するかは決めなくちゃならないわね」

「その場合はどう動かせるかも考えなきゃならないわ~。出来ればカナを前面に出さない方向で」

「そうね、短時間でカナと二回顔を合わせたら霊夢は何かしら勘付くでしょう。となるとメルランとリリカに相当負担をかけることになるけど…」

「リリカは嫌がるかもしれないけど私は覚悟の上よ。豹は私にとっても大切な聴き手だわ」

「…ありがとうございます、メルランさん」

 

現状最大の問題はそこなのよね。異変時以外の霊夢はとにかく気分屋、どう動くか全く読めない…だからこそある程度の強硬策も選択肢に入ってくる。

 

「あの巫女を確実に釣り出す手だよね、理想は。わたしは本当に顔見知り程度でしかないから、こういったことだと本当に役立たずだわ…ごめんね」

「それは仕方ないわ、カナが気にすることじゃない。でも私たちも親しいわけじゃない…宴会やお酒、お茶には食いつくイメージはあるけれど」

「見事に食品ばかりですね…人形の私には理解できないので何とも言えないです…ごめんなさい」

「上海が謝ることなんてないわよ~。私たちもこれぐらいしか知らないのが悪いんだから~」

「ほかに私の知る限りだと…霊夢、食事というか最低限の生活費は八雲紫から援助があるって聞いてるけど、お賽銭お賽銭とよくボヤいてるのよね。たぶん神社の経営は厳しいってことだわ。儲け話でもあれば食いつくかしら…?」

「…私たちはライブで赤字になることが無くなってから、儲け話とは無縁だわ。それにアリスも魔法使いとしてあまり必要ないわよね?」

「ええ、こういった話だと私の当ては魔理沙ぐらいね。その魔理沙も関わってほしくない…手詰まりかしら」

 

そこまで話して、結局ここまでついて来たリリーが話に入ってきた。

 

「もしかしたら、リリーがお役に立てるかもですよー」

「えっ!?何かいい方法があるのリリー!?」

「先に教えてほしいのですが、【黒い春告精】の噂ってまだ人里に流れてますか?」

「…そういえば、人里で耳にしたことがあるわ。でも今も興味を持ってるかどうかはわからない」

「でも、それほど大きな話になっていないのでしたら、リリーが着替えただけってことも広まってないですよね?」

「そうでしょうね。私もカナから聞いた時、ああそうなのって思ったわ」

「それなら、リリーが着替えて人里近くを飛べば注目を集められると思うのですよー。

この時期のリリーは子供にすら捕まえられたことがあるので、儲け話と考える人は追いかけてくると思うんです。そんな人に博麗神社までついてきてもらえば、巫女さんも出てこなきゃならなくなると思うんですよー」

「――リリー、それなかなかいい考えだわ。でもあなたにも危険があるわよ?いいのかしら」

「そうなったときのためにリリーのテレポート先として皆さんの誰かに手伝ってもらいたいのですよー!豹さんに教えてもらった空間魔法ですが、手伝ってもらえればとっても遠くまでテレポートできるようになるのです。思ったとおりにいかなかったときに、リリーを助けてほしいのですよー!」

「それはわたしに任せて!リリーが動かなきゃならなくなった場合わたしは手持ち無沙汰になっちゃうから、リリーのフォローに集中できるわ!」

「逆に人里までは私とリリカが一緒に居ればいいわ~!リリー、手を貸してちょうだい!」

「リリーからお願いしたいぐらいなのですよー!リリーだけじゃ豹さんのためにできることなんて何もないのです。でもリリーもまた豹さんに会いたいです。ですので豹さんにリリーのところにも来るように伝えてほしいのですよー!豹さんはリリーのお家知ってますので!」

「約束します。ご主人様と皆様は、私を豹さんに会わせるために力を尽くしてくれているんです。

だから私が、リリーさんと約束します。豹さんに、リリーさんに会いに行くようにお伝えします」

「ありがとうなのですよー!ですので、リリーも今日はカナさんと一緒にこのお家にお泊りさせてもらいます。ごめんなさいカナさん、リリーのお家まで服を取りに帰るので、一緒に来てもらいたいのですよー」

「わかった、この打ち合わせ終わったら行きましょう!」

 

人里を巻き込むような大事にするのは避けたくもあるけれど…中心になるのが妖精のリリーと隠れ家からあまり外に出ないカナになるならリスクは最低限でしょう。最後の手段としては悪くないわ…!

 

「決まりね。ここまでやって霊夢が動かなければ仕方がないわ。隠形魔法を行使して強行突破。この方針で行きましょう」

「…それと、今日新しく拾った豹の情報。霧の湖の大妖精は上海のことがあるから後回しにするとして、香霖堂の店主。カナとリリー、メルランとリリカの合流地点は香霖堂にしたらいいんじゃないかしら?

ナズーリンの口振りだと、豹が頼ったとしても長期間居座らせることは無さそうだった。ここ数日来たかどうかだけ確認すればいいと思うわ」

「あ、それいい考え…なんだけど。わたしがそのお店の場所知らない…」

「そこって、魔法の森のはずれにある眼鏡の人のお店ですよね?リリーが春を告げに行ったことがあるのでわかるのですよー」

「あ、それなら大丈夫ね!」

「じゃあ、私たちで話を聞くことにして~。姉さんたちとの合流はどこにする?」

「ここでいいわ。リリーに頼ることになったら、私の家かルナサたちの洋館に集合したのを見られると問題になるわ。存在をあまり知られていないこの家がベストよ。

明日は準備出来次第私の家に集合にしましょう。そうすればルナチャイルドに渡した人形も囮として使える…あの人形を家に戻すタイミングで私たちも行動を起こすわよ」

「―――あらためて、皆様。明日もよろしくお願いします…!」

 

明日は、霊夢から異変と判断されるかもしれない。でも、そうなっても仕方ない。

ユキが来る前に上海と豹を会わせるのが理想だけど、夢幻館に豹が居なければ無理だわ。

 

―――その時は…ユキと上海が対立しないことを、祈りましょう。




里香の改造は多くの読者様がピンと来たと思います。要はマゼラトップ砲です。
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