寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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誤字報告により55話の文字位置ミスを修正してます。毎回助かっております、ありがとうございます。


第56話 追跡者集結:幻想郷側

寝起きの悪いメルランがようやく外に出る準備を整えたから、早速アリスの家に向かおうとしたのだけれど。

 

「―――っ!?」

「えっ、なにあれ!?」

「うわ!2発目!?」

 

私たちですら感知できる強大な魔力反応と同時に、遠くの森深くでレーザーが発射されたわ。

 

「2発ともレーザーかしら。だとしても弾幕ごっこで撃つような威力じゃない…」

「ここからはっきり見えたってことは、とっても太い…私なんかじゃ撃てない強力なレーザー」

「とりあえず、早くアリスの家行こーよ。ここからじゃ遠すぎるし、私たちでも反応できたんだからアリスに聞いた方が良さそうじゃん?」

「…そうね。急ぎましょうか」

 

今日は私たちにとって事態が大きく動くであろう日。その始まりから不穏なものを見てしまったけれど…怖気づいてなんていられない。私たちがやらなければならないことを早く始めないと。

 

 

 

 

 

「なんだったの?」

「…びっくりなのですよー」

「―――あれは、文様?どういうことでしょうか…」

 

アリスの家に向かってる途中で、視認できるサイズのビームを2発確認。流石に気になって足を止めちゃったんだけど、椛さんは冷静に千里眼で調べてくれたみたい。

 

「え~っと、何か見えたのかな椛さん?」

「発射地点の辺りは消し飛んだ木々ぐらいしか確認できませんでしたが、その辺りから妖怪の山へ物凄い速さで飛ぶ文様の妖力を確認できました。

…本当に、豹さんの魔法は凄いですね。千里眼による視界を核に探査・感知魔法を派生させるなんて、私だけでなく白狼天狗の同僚たち誰一人思い付かなかった。誰から教授されたのかを伏せなければならないので皆と共有できないのが惜しいです」

「豹はそのあたりの魔法を空間魔法と同じぐらい重要視して研究してたからね…いざ追いかける側に回ると本当に厄介だわ」

「でも、ここからじゃたぶん間に合わないですよー?アリスさんのお家に急いだほうがいいと思うのですよー」

「そうですね。私はずっと同行することが出来ないので…急ぎましょう」

 

そうだった。もう椛さんに思いっきり頼ってるけど、時間制限があったんだ。ちょっと気になるけど、まずはアリスと合流しないとね。

 

 

 

 

 

「ええ、私も感知したわ。だけど調べるのならあの二発ではなく初弾の方よ」

「初弾?さっきの二発以外にもあったの?」

「早朝に別地点から撃たれた初弾があったわ。その魔力は私とカナが利用した豹の魔力に近かったのよ」

「間違いないです。私が今朝待機モードから復旧したのはそちらの魔力…豹さんの魔力を感じたからです。

…屋内から感じただけで、位置の特定が出来ないのが問題なのですが」

 

私は視認できなかったからそれほど強力な光線だったと気付けなかったのよね。しかもそれを連射している…なかなかの魔法使いの仕業だとは思えるけれど、私たちが追うべきは豹なのだから追うべきは豹本人が放った可能性のある初弾の方。

ただ、どちらも情報が少なすぎるから調査に時間がかかりそうなのよね。夢幻館を後回しにして向かうほどの価値があるとは考え辛いわ。

 

「…ところで、椛はどういう経緯で合流してくれたのかしら?」

「昨日妖怪の山の哨戒範囲に入るカナさんとリリーを見つけられましたので。事情を聞かせてもらい昨晩から山を抜けています。今日の哨戒任務は昼過ぎからですので、午前中までは協力できます」

「助かるわ。もし天狗の上層部から何か言われたら、私の名前は出していいわよ。ユキを呼んだ以上私は幻想郷の有力者から睨まれるでしょうし、敵対するのは時間の問題だわ」

「私からもお礼を言わせてください。ありがとうございます椛さん…!」

「いえ、お気になさらず。豹さんと会いたいのは私も同じですので」

 

椛の千里眼は今日のような状況だととても有用。であれば、午前のうちには夢幻館に辿り着きたいわね。

 

「優先すべきは夢幻館への進入…これは皆異存は無いわよね?さっきの光線は情報が少なすぎるわ」

「そうだね~、位置すら特定できてないんじゃ時間がもったいないわ」

「それじゃ手早く計画を調整するわよ。椛はカナたちと動いてもらうけど…この子を連れて行って頂戴」

「…この人形は?」

「声を掛けてもらえれば私と会話できるわ。ただ距離が離れるほど魔力の使用量が増えて探知される可能性も上がるから、なるべく会話時間は短くお願い。もし霊夢が私たち突入組を追う動きを見せたらすぐ連絡してほしいのよ。その場合、私が霊夢の相手をする間に上海とルナサだけで夢幻館に向かってもらうから」

「ちょっと、それはルナ姉が危なくない?夢月ってやばい奴がいたらどうしようもないじゃん」

「リリカ、それぐらいのリスクは背負うわよ。少しは姉を信用しなさい」

「そうね~。でも姉さん、無事に帰ってこなかったら冥界の主に頼んででも文句言うからね?」

「好きにしなさい」

「ルナサさんも、ありがとうございます。その時は、私も全力で抗いますので力を貸してください…!」

 

そんな状況に陥らないのが理想ではあるけれど、霊夢が追ってくるようなら他の選択肢が無い。豹と会う理由が薄い私が足止めに回って上海とルナサが夢幻館に向かう…豹がいる可能性がある以上、これが一番正しい分担。

夢月がいた時は、私のところまで後退できればいい。私と夢月であれば、博麗の巫女として霊夢は夢月を止めることを優先せざるを得ないはずだから。

 

「最初に確認したいのだけれど、椛の千里眼で博麗神社を監視するにはどのあたりまで近づけばいいのかしら?」

「距離自体はこの家からでも問題ないですが、あの神社は高地に位置するので高度が必要になります。監視をしようとするなら上空で待機しなければならないのですが、遮蔽物が無いので私の方が見つかる可能性を捨てきれないです。少なくとも同じ千里眼を持つ私の同僚数名からは視認されるでしょう」

「となると天狗に目を付けられるか…組ませ方の余地が無いわね。基本的にはメルランと椛、リリカとリリーで行動して頂戴。カナは霊夢に魅魔の情報を渡したら豹の隠れ家に一度戻って、リリーが動き始めたら霊夢に察知されないように動きつつリリーをフォローして」

「は~い」

「椛はカナが博麗神社に向かった時点で上空で待機していてもらえる?カナの情報だけで霊夢が動いたらその人形に霊夢が動いたと伝えて。そのタイミングで隠形魔法を私と上海、ルナサに行使するわ。まずこの時点でルナサは解除するまで孤立する状況になる…私と上海は魔力のパスでお互い認識できるけど、ルナサにはそれが無いから私たちにも姿を隠すことになるのよ。全速力で突っ切ることになるから速度差で距離が開くでしょうけど、途中で解除されても気にせず夢幻館まで突っ切って。霊夢が追ってきたとしても上海は先行させるから、夢幻館至近に先に着いても上海と合流するまでは内部に踏み込むのは待って頂戴」

「…わかってる。私の方が足を引っ張る側なのは理解してるから、独断で先行したりはしない」

「頼むわよ。逆にカナの情報だけで霊夢が動かなければ、椛とメルランは私たち三人と合流して博麗神社と人里の中間にある森へ移動。この場合連絡用の人形はリリカに渡すわ。この流れの中で余計な邪魔が入りそうな場合は、椛とメルランで相手して頂戴。その騒ぎで霊夢が釣れれば突入組はそのまま強行突破よ」

「わかりました。メルランさん、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく~」

 

椛とメルランは霊夢以外に釣れた邪魔者の排除役。椛が居なければメルラン単独かリスクを承知でカナと合流させるつもりだった。はっきり言ってこの点でも椛の増援は助かるのよね。

 

「リリーはどのタイミングで動けばいいのですか?」

「リリカとリリーに動いてもらう状況になったら、人形を使ってリリカに私が合図を送るわ。合図が来たらリリカはリリーを人里まで守って頂戴。そのタイミングで私たち3人に隠形魔法を行使して、メルランと椛は人里側に森に身を潜めて移動。リリーが人里の人間を誘導してる最中に邪魔が入ったら二人で潰してほしい」

「あ、その場合は椛には離脱してもらいましょ~。下手すると昼過ぎに間に合わなくなるもの~」

「ちょっとメル姉、それも相当損な役回り…」

「いいのよ~、姉さんに比べれば命の危険は少ないはずよ」

「…気を遣わせてしまっていますね。申し訳ありません、メルランさん」

 

メルランもかなり本気なのね。むしろリリカだけ豹に興味ないってことかしら。

 

「リリーが人里の人間の誘導に成功したらリリカはメルランと合流して、人形で私に合図。椛はそのタイミングで妖怪の山に戻るといいわ。合図と同時に私たちも夢幻館へ向かう…これで霊夢に勘付かれたらさっき言った通り私が霊夢の足止めをするわ。メルランとリリカはリリーが無事に離脱したらそのまま香霖堂に向かってもらって、カナも役目を終えたリリーを保護したら香霖堂でメルラン・リリカと合流。この流れでリリカも文句は無いわね?」

「私に拒否権はないからさー。まあ一番見つかる危険性が少ない役回りだしOKよ」

「リリカさん、ご迷惑おかけしますがよろしくなのですよー」

 

椛のおかげでルナチャイルドを頼る必要性が薄くなったのが一番大きな点。霊夢が博麗神社を離れたのを椛が目視できるというのは本当に助かる。ルナチャイルドからの連絡だと本当に出て行ったのかの確認作業が入る分、どうしてもタイムラグが出来てしまう。そのわずかな時間でも勘の良い霊夢なら直線距離で私たちを捕捉しかねないのよね。

 

「あらためて、皆様。よろしくお願いします…!」

 

上海が深々と皆に向けて頭を下げる。本当に良い子になったわね…

 

「気にしないでいいわよ~、上海ちゃんも気を付けてね?なんか危ないのがいるかもしれないんだから」

「豹さんによろしくなのですよー」

「私からもお願いします。豹さんを、どうか連れ戻してください」

「ま、この流れで不平言うわけにもいかないじゃん?手は貸すからそっちもちゃんとやってよ!」

 

私が一番縁が薄いのだけど、ここにいる皆が豹との再会を願っている。

 

「わたしがある意味一番楽な役だから申し訳なさもあるんだけどね~…みんな、よろしく!」

「ええ、譲ってくれた役回りだもの。豹と会えたなら、ここにいる皆の気持ちはしっかり伝えるわ」

 

これから先、魔界と幻想郷のいざこざに巻き込んでしまうだろうから。

そんな大きな借りを返すためにも、豹を連れ帰ってこないとね。

 

「それじゃ、行きましょう。午前中で終わらせるわよ」

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