寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

59 / 289
第59話 相談と密談

先程の妖精の声で、カナさんが目的を達したのは理解しました。間違いなく博麗の巫女と茨華仙が人里へ向かうのを確認できましたが…同時にカナさんもここに向かっています。予定では、豹さんの隠れ家に移動することになっていたはず――何か問題があったのでしょうか。すぐにメルランさんと合流せず、カナさんを待った方が良さそうですね。

 

「アリスさん、カナさんが何故かこちらに戻って来ているので、一度合流します」

『わかったわ。私は夢幻館らしき洋館が見えて来たところ、迎撃があったら反応できないかもしれない。リリカに渡す場合は伝えておいて』

「わかりました!」

 

―――しばらくは、アリスさんとの連絡は控えるべきですか。迎撃が無くても隠密行動、こちらから声を掛けることで敵に察知される可能性があります。出来れば、アリスさんの方から連絡してほしいですね。

 

人里に向かった博麗の巫女と茨華仙はそのまま人里に降りました。こうなると遮蔽物で監視を続けることが出来ません。素直にカナさんと合流して状況を聞きましょうか。

 

「カナさん、何か問題が?」

「うん、お昼までは大丈夫だと思うけど、成功とは言えないわ。陽動組で一度ミーティングしましょ」

 

 

 

 

 

「―――って結果に終わっちゃったわ。お昼過ぎまでは人里から動かないと思うけど、それからどう動くかはわからないわね」

「そうなると姉さんたちの状況次第かしら~。昼までに済ませてもらえれば問題ないんだけど…」

「交戦になっている場合を考えると、こちらから呼び掛けて集中を切らせてしまうのも避けたいところです。出来ればアリスさんからの連絡を待ちたいところですが」

「私たちから声掛けるほどの状況ではないもんねえ…連絡用の人形、もう一体貰っておけばよかったか」

「お人形さんは一人だけですよー。アリスさんが呼び掛けてくれるまで、リリーたちは別れずにいた方がいいですか?」

「それが一番堅実ではあるのですが…お昼までに終わらないと私が力になれなくなってしまいます」

「椛さんは既に一番重要な役目を果たしてくれたから、そこは気にしなくていいんだけど。

でも、椛さん抜きだと博麗の巫女が人里から帰るのを確認出来ないのよね」

「でも~、お昼ご飯を食べ終わるまでは戻らないとなると椛は間に合わないわ~。空振りに終わるとしても、リリーに準備しておいてもらう方がいいとは思うのよ~」

「問題は人里に移動しちゃった以上、博麗神社に誘導しても肝心の巫女が把握できない可能性が出来ちゃったことじゃん。むしろルナ姉とアリスには分散して脱出してもらえば援護無しで逃げ切れたりしないかな?」

「それだとリリーが役立たずのまま終わってしまうのですよー」

 

リリーは本当に妖精とは思えないですね。精神がしっかり成長しています。

 

「リリーが気にする必要はありません。今日リリーの助力が必要なくなったとしても、明日以降必要になることがあるかもしれない。次の機会に温存できたと考えればいいのです」

「そうよ~、豹の立場を考えると姉さんたちが今日捕まえたとしても、表立って連れ帰るわけにはいかないもの」

「だよね、魔界からも博麗の巫女からも隠れようとしてるじゃん豹は。残せる手段は残しときたいって」

「…みなさんありがとうなのですよー。リリーにこんな優しくしてくれたのは豹さん以来ですよー」

「あれ、わたしは入れてくれないの?」

「あっ!カナさんごめんなさいなのですよー!」

「ふふ、謝らなくて大丈夫よ。わたしこそ話し相手としてリリーには助けられてるからね~」

 

カナさんとリリーは姉妹のように仲が良いですね。昨日一晩泊めてもらった時点で思っていましたが、見ていて微笑ましいです。

 

「とりあえず、豹の隠れ家にみんなで移動しない?ここより人里に近いから、博麗の巫女が動いた時に追いつきやすいと思うのよ。その途中でアリスから連絡があると楽だし」

「そうですね…私がここから監視してたのには感付かれていますし、ここに突撃されるとアリスさんの関与が否定できなくなります」

「そうね~、時間は少し余裕があるみたいだし。行きましょうか」

「ほ~い、私は行ったことないからね、案内よろしく」

「リリーもそれでいいと思うのですよー」

 

移動が終わるまでにアリスさんからの連絡が無ければ、こちらから一度呼び掛けてみましょう。私が同行できるのは、もう僅かですからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

枯れた湖の底で、騒霊と吸血鬼の密談は続く。

 

「…豹は、どうしてサリエルなんて桁外れの相手に狙われてるの?」

「そこが困ってるところでねー…サリエルはむしろ豹さんの味方になってくれそうなんだけど、使い魔の幽玄魔眼ってのが独断で襲ってきたみたいなのよ。だからサリエルに理解してもらった後で幽玄魔眼を排除しなきゃならないから、その時間を稼ぐためにも力を貸してほしいわ」

 

―――本当に、私に対して敵意は無いようね。それなら、私が聞くべきは。

 

「豹はどこに行ってしまったのかは聞いている?」

「明羅っていう女侍を頼るって言ってたけど…ルナサには心当たりある?」

「…ごめんなさい。初めて聞く名前だわ」

 

信用しても良さそうだわ。こんな簡単に豹の行き先を教えてくれるということは、彼女―――くるみにも余裕が無いということなのでしょう。それなら、私たちはここで情報共有するべき…!

アリスは、豹にとって不確定要素なのだから。

 

「私は八雲の駒として今まで動いていたけれど、その援護をもらえるのは今日限りなのよ。豹と八雲の繋がりが無いように見せるためにね。だから、私としても協力してほしい。何を話せばいいのかしら?」

「とりあえず、アリスはどこまで豹さんと八雲のことを感付いてるのか教えて」

「八雲紫が豹を保護しようとしているということ、豹が八雲紫・八雲藍と親しい仲だったことは確信を持っているわ。さっきの人形…上海に宿った意思によってね。ただ、私が八雲側に立って動いていることには気付いてない…とはいっても、私に出来たことなんてアリスが魔界に連絡を取るのを二日遅らせた程度だったのだけれど」

「あれ?八雲紫が豹さんを保護しようとしているのが魔界側にバレちゃまずくない?」

「たぶん、そこは八雲紫本人が魔界神に向けて否定するつもりじゃないかしら。直接手助けが出来なくなると私にわざわざ伝えてきたのは、魔界神が乗り込んできた時点で何一つ介入する気が無いということなのだと思うわ」

「あ、そういうことね。八雲藍の言葉とも一致する…私たち4名には支援できるってそういうことか」

「…4名?あなたとエリーのほかに協力者がいるの?」

「そうよ、幻月さんと夢月さんが豹さんの力になってくれてる。今日も早速魔界に乗り込んでくれてたし」

「…え?」

 

夢月って、風見幽香の言ってた危険な悪魔よね?豹の力になってるって…どういうこと?

 

「あ、もしかして幻月さんと夢月さんが豹さんの力になってくれてるってのが信じられない?」

「ええ…風見幽香から夢月という危険な悪魔の話は聞いて来たわ」

「ここの場所を教えたのは幽香なのね。たまには手伝いに来てもいいのになあ…

とりあえず、二人とも豹さんのことを気に入ってくれたから大丈夫。…交戦にはなったけどね」

「………豹は無事だったのよね?」

「い、一応回復魔法でなんとかなってたから大丈夫のはず…」

 

不安は残るけれど、それはアリスと合流してからでも聞ける話。先に共有すべき話は…

 

「魔界に向かったのは、サリエルと接触するためかしら?」

「それが理想ではあるんだけど、先に豹さんが追われることになった件で情報を集めてもらってるわ。これをハッキリさせておかないと、サリエルに力を貸してもらうのはマズいって豹さんが判断しちゃったから。この辺りは八雲と関係ないから、ここで話さなくても大丈夫よ」

「そう。なら…私は何を話せばいい?」

「八雲と繋がってるのを知ってるのは、豹さんと八雲一派以外に誰かいる?」

「一人だけいる…けれど私も顔を合わせたことが無い相手だから味方だとは判断しきれない。冴月麟って名前だけ聞いてるけど」

「…!麟、か。思い出せなくなってるけど、彼女は味方よ。信じていい」

「――っ!もしかして、彼女のことを!?」

「名前しか思い出せないけど、豹さんから聞いたことは覚えてる…だから豹さんの味方ってことだけは間違いないわ」

 

八雲以外からも裏付けが取れた。忘れてるのに味方だと言い切るってことは、おそらく豹がここに来てから会っていたということなのでしょう。直接会えた時に、くるみのことを私から聞いてみればいい。

 

「彼女以外には妹たちにすら話してないわ。もっとも、何か隠してると感付かれてはいるけれど…

少なくともメルラン…上の妹は私と同じで豹の味方。だからバレても大丈夫なはず」

「うん、それだけ聞ければ大丈夫かな?後はエリーとアリスも加えて話したいから…ルナサからはアリス抜きで聞いておきたいことってある?」

「私は知らないことの方が多すぎるから、下手に聞き過ぎるとボロが出ると思う。だからこれぐらいでいいわ。

ただ、エリーというあなたの仲間は大丈夫なの?」

「私より聞き上手だし空気も読めるから、余計な口は出さないでくれると思う。だから主に私がアリスを相手すれば大丈夫よ」

「そう、信じるわ。それじゃ、豹のために…これからよろしく、くるみ」

「うん!豹さんのために、お願いね、ルナサ!」

 

握手を交わして、夢幻館へ向かう。アリスとエリーを、止めないとね…!

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――エリー…アリスとやり合うのか。無理はしないでくれよ)

 

夢幻館付近でエリーとアリスの魔力を感知した。博麗神社の方は手持ち無沙汰になった明羅が様子を見に行ってくれたが、夢幻館には幽玄魔眼が乗り込んでくる可能性がある以上偵察を出せない。

 

「…豹、そうやって魔力制限状態なのに状況の変化に気付くから只者じゃないと見抜かれるのです。潜伏する気なら他人を見捨てることを覚えるべきなのです」

「悪かったな…」

 

言われてみればそうだよな…どれだけ魔力を抑えてようが、誰よりも早く交戦状態を把握すれば見抜かれて当然だ。把握しても気にしていないように取り繕えないのが最大の問題か。

 

だが、くるみの魔力反応が無いのはどういうことだ?アリス一人で夢幻館に行くこともないだろうし、スペルカードルールに則ったということだろうか?エリーもくるみも弾幕ごっこ慣れなんてしていない気がするんだが…

まあ、生命の危険が無いのであればその方がありがたい。アリスも魔界人、本来であれば俺が護るべき相手なんだからな。

 

「それで、改良は出来るのです?」

「いや、案の定打ち消し合うな。増幅術式と俺の術式を併用するのであれば、間に反作用を遮断する何かを噛ませる必要がある。このサイズの砲じゃどうにもならないが…」

「主砲と魔力タンクの間に嚙ませればいいのではないです?」

「魔力タンクに俺の術式を組み込むということか。たしかにそれなら距離は出来るが…遮断する方法に何か当てはあるのか?」

「無いのです!廃材から同じような状態の試験用の砲を作るので、その間に豹が新しく編み出すのです!」

「無茶言うな!せめて里香も使えそうな資材を探せ!」

 

予想以上にこき使う気だな!拳銃一丁で引き受けたのは失敗だったか…?

そんなことを思うと明羅が戻って来た。

 

「どうやら博麗の巫女と茨華仙が本気の手合わせを始めたらしい。近付き過ぎると私も見つかりかねないほどだ」

「茨華仙か…警戒するべき相手ではあるが、俺個人に悪感情は持っていないだろう。放っておいていいな」

「当たり前だ。まったく…豹の性格だと索敵範囲が広すぎるのも問題だな。余計な火種を認識できてしまう上に関係者を見捨てられない。どんな理由があるかは聞かないが、逃げるぐらいなら正面から戦う方が豹の負担にならないと思うぞ。豹ほどの男なら命を取るのが惜し過ぎるからな」

「そう簡単に割り切れるものじゃないんだよ…」

 

しかし、アリスが夢幻館に辿り着いたか。本当に絶妙なタイミングで襲撃してきたんだな幽玄魔眼は…

夢幻館からの脱出に緊急避難用の魔法具を使わずに済んだだけでも幸運だったか。

 

(…無事でいてくれよ、エリー)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。