寂しがりやな魔界人の幻想郷逃亡録   作:影就

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推薦を書いてくださった読者様がいらっしゃいました!ありがとうございます!
そしてこちらは気付くのが遅れましたが、捜索において紹介してくださっていた読者様もいらっしゃいました!遅くなりましたがありがとうございます!
年明けから更新ペースを戻しますので、引き続きこの作品にお付き合いいただけると嬉しいです。


第72話 落ち着く追手と悪霊の弟子たち

追い付いて来たメルランを連れて夢子の方へ向かう。上海と合流してしばらくしたらあちらも私たちに向けて移動し始めたわ。そして、もうすぐ会えそうなところでそれに気付く。

 

「―――っ!ルナサが戻って来た…八雲紫で当たりの様ね」

「えっ!?無事だよね!?」

 

足を止めて急に探知できるようになったルナサの反応を追う。豹の隠れ家からそれほど離れていない森の中に現れたルナサはそのまま人里に向かっている。指示通りリリカが人里で慧音のところへ向かってるし、危険は無いと判断していいでしょう。

 

「豹の隠れ家の近くに戻って来て、そのまま人里に向かってるわ。リリカと問題なく合流できるはず」

「よかった~…でも何があったかは聞かないとね~」

「ええ、合流したら確認しましょう。後はユキだけど…ここまで来たら夢子に聞いた方が早いわね」

 

私たちが足を止めていた間も、夢子は減速せずこちらに飛んできてたから。

 

「ご主人様、戻りました!」

「久しぶりね、アリス。先輩と正面衝突する前で助かったわ」

「夢子が幻想郷に足を延ばしてくれるなんて思いもしなかったけどね…先輩というのが豹のこと?」

「ええ、話すと長くなるから先にユキと合流したいのだけど――っと、丁度いいタイミングね」

「は?―――っ!?」

 

ユキの魔力も急に探知できるようになったんだけど、この位置は…!?

 

「豹の隠れ家!?なんでユキがあそこに!?」

「えぇっ!?それはつまり豹がもう!?」

 

私の言葉でメルランも驚いてるけれど、夢子は至って冷静で。

 

「慌てる必要は無いわよ。先輩は魔界に帰ってくる気が無いのが確定しただけ…でも、先輩の隠れ家というのは興味深いわ。情報交換もしたいし、そこまで案内してくれる?」

「…信じていいの、アリス?」

「ええ、夢子は信用して大丈夫よ。今の魔界の実質的なNo.2だから、幻想郷に対しても余計なことはしない…だからこそ、さっき交戦に入ったのに驚いたんだけど。いったい何があったのよ?」

「先輩が雇った明羅って剣士に足止めされたのよ。先輩は私たちが幻想郷に来ることを完全に把握していたようね」

「明羅!?そこに豹は居なかったってことなの!?」

 

再度メルランが叫ぶけれど、私も声が出そうになってしまったわ。次の行き先から、豹はもう離れてしまったということ。つまり、手掛かりが完全に途絶えてしまったことになる…!

でも、夢子が続けた言葉で私もメルランも落ち着きを取り戻した。

 

「居たのだけど、逃げられたわ。どこに逃げたかはわからないけれど、それはユキが知っている。

 だから、まずはユキと合流するわよ。―――私は夢子、アリスの姉の一人…あなたは?」

「メルラン・プリズムリバーよ。豹には姉妹共々お世話になってたから、後を追っているわ」

「そう。先輩は……いえ、後にしましょう。アリス、上海の魔力が心許ないから、補充してあげなさい」

「あっ、そうだったわ!上海、チルノを相手にしたようだけど試したいことは出来たのかしら?」

「あ、問題なく発動出来ました!魔力枯渇にさえ気を付ければ、氷精程度の相手でしたら私単独で撃退できそうです」

「そう、なら良かったけれど…過信はしないようにしなさい。特に、魔力の補充が出来ない状況においては」

「もちろんです。私がメディのように活動することは出来ないのは、しっかり理解しています」

 

忠告はいらない心配だったかもしれないわね。このあたりの慎重さは私に似ているわ…魔理沙の向こう見ずを反面教師に出来ているからかもしれないけれど。

上海に魔力を補充しつつ、夢子に向き直る。

 

「そういえば、上海が夢子と合流する少し前に二つの魔力がそこから人里に向かったわよね?あれの片方が明羅だったということ?」

「そうよ。もう一人は戦車技師の里香と名乗っていたけれど…アリスは知っている相手?」

「明羅も含めて知らない相手よ。彼女の情報を人里で集める予定だったのだけれど…そこで夢子とユキが来たのに気付いた結果が今の状況」

「あ、そうなると人里で明羅のことを聞く必要ないわよね~?姉さんとリリカも呼び戻した方がいいんじゃないかしら~?」

「そうね…お願いしてもいいかしらメルラン?ユキが隠れ家にいるのだし、2人を連れて豹の隠れ家に再度集合の形で」

「OK!それじゃ、私は先に動くわね~」

「ただ、まだ霊夢の反応は人里にあるわ。もし絡まれたり追われて振り切れ無さそうなら、一度プリズムリバー邸に戻って撒いてから来て頂戴」

「わかったわ、また後で!」

 

そう言ってメルランは人里に向かう。霊夢に対する陽動になるうちに、私たちは豹の隠れ家に向かうべき。

 

「それじゃ、私たちもユキのところに向かいましょう」

「ええ。先輩を追うために」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

明羅と並んで人里に向かう途中で、見つかってしまったようなのです。

 

「おい待てよ!無視することないだろ!」

 

…追いかけて来たのです。豹が潜伏と言い張ってる以上、一番相手にしたくなかったので気付かないフリをして人里に抜けるつもりだったのですが…相変わらず利益になりそうなことに関しては勘のいい魔理沙なのです。

 

「やれやれ…魔理沙に構う時間が惜しいんだがな。私たちに何か用か?」

「冷たいぜ明羅!かわいい妹弟子より優先すべき用なんて無いだろ?」

「明羅はともかくあたいにはあるし。というわけで明羅、よろしくなのです」

「待て待て待て!里香も来いっての!せっかく魅魔様が顔出してくれたんだからよ!」

「「え?」」

 

その言葉に、思わず明羅と顔を見合わせてしまったのです。

魅魔様が、動いた?

 

「…成程な。師匠が来ているのなら、挨拶はしなければ」

「むぅ…付き合わざるを得ないようなのです。ついでですし魅魔様にも聞いてみるのです」

「ん、聞いてみる?」

「何でもないのです。しかし、なんで今になって魅魔様が?」

「隠居生活も退屈らしくてなー、なんか野暮用が終わったついでだとかで私のとこに来てくれたんだよ。一昨日から私の家で修行と研究の相手してくれてるぜ」

「泊まり込みだと?…何かあるな

 

吸血鬼異変が片付いてから表に出ることのなかった魅魔様ですが、幻想郷指折りの実力者として管理者達とも面識がある―――その伝手で豹の行き先を探れないか頼るというのは悪くない手段なのです。

…ただ、明羅は何か気になることがあるようなのです。明羅は魅魔様の隠し事すら見抜く洞察力を持っていますが…今の話だけで何を感付いたのでしょうか?私にはわからないのです。

 

「まあとりあえず今日は付き合えよ!師匠との再会を祝して一飲みしようぜ!」

「…それが主目的か。まったく…酒はほどほどにしておけよ?魔理沙の身体的な成長が止まったのはその年で飲み過ぎたからだと私は思ってるのだからな?」

「その作り話は聞き飽きたぜ!私にはまだ未来があるから問題なし!」

「あたいよりお子様体型なのにその自信はどこから来るのか…幸せな奴なのです」

「うるせえ!」

 

はぁ…昨日も飲んだのですが仕方ないのです。魔理沙を酔い潰してから魅魔様に豹のことを聞くことにするのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さんって…もしかしてあなたがユキさん?」

「あれ、どうして名前を知ってるの?」

「アリスから聞いたわ。それより…」

 

豹との違いが全くわからない魔力だったから、そうだとは思ってたけど…アリスは「ユキがいきなり手を出した」って言ってたよね?

 

「どうやってここに辿り着いたのよ?」

「兄さんが空間魔法で送ってくれたんだけど」

「送ってくれた!?直接顔を合わせてきたの!?」

「魔界に帰るのは断られちゃったけどね…兄さんは変わってなかった。だから、一度退いたのよ。

 わたし一人じゃ、力尽くで連れ帰るなんてできないから」

 

ど、どういうこと…?まさか手を出すどころかすぐに倒して豹に会ってきたってこと!?いくら妹だからって、そんな短時間で豹を見つけられるものなの!?

 

「あ、もしかしてわたしがここに来てすぐやり合ってたのバレてる?」

「ッ!?」

「そっか、それは混乱するよね。どうするかなー…あまり明かしたくない奥の手なんだけど、兄さんのために協力してもらうには教えないと信用してもらえないかー…」

「…奥の手?何の話なの?」

 

どうして豹の妹(ユキ)がここに来たのか、そもそもどうやって豹と会ってきたのか…状況が全くわからなくて混乱しちゃったわたしだけど、彼女は敵対する気は無いみたいで。

 

「わたしと兄さんはお互いを呼び出す召喚魔法を使えるの。ただお互いに会いたいって想わなきゃ発動しないから、昨日までは兄さんがわたしと会う気が無かったから使えなかった。

でも…ついさっき兄さんから『来てくれ』って呼んでくれた。

もうずっとずーっとわたしから呼び掛けても応えてくれなかったのに、わたしが幻想郷に乗り込んだ途端に兄さんはわたしを呼んでくれた…魔界と幻想郷の関係を、これ以上悪化させないために」

「…そっか。本物の【妹】だけはあるのね」

 

豹のことを話すその表情は、わたしから見てもとっても綺麗だったから。

少なくとも今この時は、わたしとユキが戦う必要はないのがわかったわ。

 

「兄さんについて聞きたいことがたくさんあるんだけど、夢子とアリスも合流してからでもいいかな?二人一緒にこっちに向かってるから」

「え、そうなの?わたしの探知魔法じゃ範囲外だから状況がわかってないのよ」

「あ、それなら二人が来るまでに軽く教えちゃうよ!兄さんの家でお留守番してるってことは、兄さんから教わったんでしょ?」

「教わったんじゃなくて、残してった資料から真似してみただけなの。だからちゃんと再現出来てるのかどうかすら怪しいかな~」

「大丈夫、兄さんの使う魔法ならわたしも8割は教えられるから!とりあえず行使してもらえる?」

「うん、え~っと…こうだっけ?」

 

言われるがままに探知魔法を展開する。うん、やっぱり人里の中までは届いてないからアリスやルナサの位置はわからない。

 

「真似しただけでここまで出来るのは凄いよ!カナちゃん魔法使いの才能あるわ!」

「アリスにもそう言われたけど、とてもそうは思えないなあ…上海ちゃんはもっと広範囲をカバーできてたからね」

「上海ちゃん?もしかしてアリスの上海人形のこと?」

「ユキさんも知ってるんだ。アリスのお姉さんなら当たり前なのかな?」

「さんなんて付けずにユキでいいよ。わたしたち姉妹はみんなアリスが好きだからね、上海のこともよく知ってるけど…とうとう魔法を自分で行使するだけの自立意思を持てたんだ」

「あ~…正確に言うとちょっと違うのそれ。直接会えばユキさ…ユキなら気付けると思う」

「――?よくわからないけど…会えばわかるならいっかー。それで展開した術式だけど、ここをこうして、こっちもこうすれば」

「……あっ!そういうことなのね!」

 

ユキに言われた通りに術式を組み替えてみたら、一気に探知範囲を広げられた!

 

「相変わらず兄さんの術式は凄いなあ…無駄のない最低限の魔力で効率を高めることに関しては、わたしじゃとてもかなわない」

「なるほどね、魔力消費を抑える術式を重ね過ぎて効果範囲まで抑えちゃってたのかあ。でも、これでわたしにもアリスと上海ちゃんの位置が捕捉できたわ!ありがとうユキ!」

「お礼なんていらないよー。兄さんの魔法を活用してくれるのはわたしも嬉しいからね」

 

すごい、さっきと比べて探知範囲が倍どころか3倍以上にまで広がった…って、あれ?

 

「メルランが人里に向かってる?アリスと合流するはずだったのに…なんでだろ?」

「え?わたしがアリスと顔を合わせた時は上海も連れずにアリス一人だったよ?」

 

う~ん…人里でルナサとリリカはもう合流してるから、そのままここに戻ってくると思うんだよね。そうなると今度はメルランが入れ違いになっちゃうな~。

 

「ユキ、悪いけどここでアリスを待っててもらえるかな?ユキともう一人来てたんだよね?その対応でわたしたち分散しちゃってるから、単独行動になってるメルランを迎えてくるわ」

「あ、わたしがやらかしちゃったからか…わかった。アリスと夢子のほかにここに来るお友達の名前だけ教えてくれる?」

「ルナサとリリカがあっちの方から来るわ。たぶん距離的にアリスたちより先に戻ってくると思うから、わたしの名前とユキの名前を出せば察してくれるはず」

「ルナサ…か。ふふ、ちょっと楽しみだなあ」

「へ?」

 

ルナサの名前を聞いてユキが不思議な顔をした。ま、敵視してるわけじゃないみたいから、大丈夫よね。

 

「なんでもないよ!それじゃ、また後でゆっくり話しましょ!」

「そうだね!お話はみんな集まってから!」

 

メルランを迎えにわたしも飛び立つ。なんとか一安心できる状況にはなったよね。




次の更新は1/3(火)になります。
皆様良いお年を。
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