とうとうガッツリ出番のあるオリキャラ(男)が登場。
カタマサに呼ばれた先…会季の研究所。魔界では珍しい武器・防具等の開発・製造をも行っている複合施設だ。魔法の扱いに長ける魔界人からすれば、購入や手入れに労力と資金がかかる道具を使うより魔法で済ませる方が安上がりになる。ゆえに優秀な魔法使いになるほど道具に頼ることが少なくなるため、製造業を本業にする者は少ない。
ここの所長、会季はそういう意味では変わり者だ。魔法の代用として使える道具の製造をメインに研究している魔界人は、魔導士を名乗れるレベルだと会季ぐらいしか知らない。もっとも本人からすれば「競合相手がいないからこそ第一人者になれる」とのことだが。魔界人としては珍しく野心が強いタイプなのである。
「お、やっと来たかヒョウ。呼び出すまで来なかったってことは、別の奴に譲る気だっただろ?」
「魔界のことを考えるとその方がいいさ。ま、マイに頼んでまで呼ばせたってことは俺以外に使い手が見当たらなかったってことなんだろうが」
「おう、その通りだぜ。一応使いたがった奴らに試させてみたんだがよ、結局欠陥品って評価に落ち着いたってわけだ」
「フン、欠陥ではなく奴らが未熟だっただけです。そうでなくては完成品として報告しません」
マイの案内で研究所に入ると、ロビーでカタマサと会季が待ち構えていた。カタマサはともかく、会季が研究室を離れてここまで出てくるのは珍しい。
「だからヒョウさん、使いこなしてください。これは欠陥品ではない。ヒョウさんのような強者にしか使いこなせないだけ…ヒョウさんならそれを証明できる」
「いやー…使い手を選ぶ道具は欠陥品呼ばわりされても仕方ないんじゃないかな。少なくとも魔界人にとっては」
「ユキの言う通り。魔界人は強者ほど武器を必要としない」
「……」
…会季がユキとマイのストレートな評価に凹んでいるが、俺は数少ない武器に価値を見出せる魔界人だ。それに会季が完成させたと言い切るのであれば、少なくとも俺にとっては有用なのは間違いない。
俺だけは、攻撃手段を喉から手が出るほど求める魔界人なのだから。
「それで、そのハルバートがそうか?そりゃ長柄武器を使いこなせる魔界人なんてそう簡単に見つからないだろうな…」
「あくまで物理的な武器としての用途は副次的です。これの本領は石突側…放出口」
俺にあまり見慣れない形状の刃をしたハルバートを手渡しながら会季が説明を始める。
「そして刃側に装填口があります。長柄武器になった理由は単純、装弾数を増やすため。
本質はハルバートではなく、石突側から装弾された魔法を放てる砲撃武器」
「…なるほどな。不得意な属性の魔法を仕込むことによって、フレキシブルに対応できるようにするための万能武器というコンセプトか」
「はい。試射であればこの魔法で十分でしょう…外に出てお試し下さい」
会季が弾らしき小さな球体を差し出してきたが、これは…
「相変わらず凄まじい凝縮技術だな。再利用された宝珠にこれほどの魔法を仕込むか」
「ご謙遜を。ヒョウさんの助言があったからこそ実用化できた魔法です…上級魔法の術式を威力を減衰させず縮小するなんて、並の魔導士では思い付きません」
「…ヒョウぐらいなもんだろ、上級魔法を停止させて持ち運ぶなんて発想が出来るのは」
ん…?カタマサにしては歯切れの悪い言い方だが、何かあったのか?
違和感を覚えたが、会季が早く披露したいというのを隠せていないので宝珠を受け取って外に出る。研究だけでなく製造も行うこの研究所は騒音・爆発による近隣からのクレームを避けるため広々とした敷地を有しているため、隠匿したい技術でなければ外部からも視認できる位置で実験を行っている。
むしろ近隣にあえて見せることによって危険地帯と認識させ、余計な野次馬を寄り付かせないための示威行為も兼ねているのだろうが。
「さて…こうか?」
受け取った宝珠を刃側から装弾するが…案の定というか量産する必要は皆無な武器だなこれ。俺だから普通に装弾して構えを取れるが、一般的な魔界人じゃまず重量的に装弾するのだけで一苦労するだろう。俺とカタマサが基準になっているせいで、会季の作品は重量がそれなりにあるものばかりなのだ。
魔法による遠距離攻撃手段が豊富な魔界人は、接近戦を考慮した鍛錬を続ける者などごく少数。つまり重量のある武防具を扱うためだけに自己強化魔法を行使する必要がある者が大多数なのである。そして俺とカタマサは肉弾戦に限定すれば魔界において最強…そこらの魔法使いなら強化魔法無しで渡り合えるレベルまで肉体を鍛え上げた身だ。単純な腕力が魔界人の中で群を抜いている。
すなわち、俺とカタマサを基準にしている時点で重量オーバーにより使いこなせる魔界人が皆無に近くなるのだ。何度も会季に言ってるのだが、典型的な技術者気質の会季は自分が決めた到達点を下方修正するのが苦手なせいで完成品は機能のために大型・重量化することがほとんどなのである。
「それに、発射のトリガーも癖のある魔法だな――行け!」
装填した弾が発射口から落ちないよう止める停止術式と、狙いまで届く距離を出すための加速術式。正反対の作用を持つ術式を相互に打ち消さず固定しているのは流石会季だが、この状態で固定している術式を同時に解除・発動する必要があるわけだ。俺は問題なく行使できたが、これも時間系魔法が不得手な奴じゃ即座に行使できるか怪しい難度だ。使い手を選ぶどころか使い手が厳選されるぞこれ。
だが、欠陥品呼ばわりされるのは不本意という会季の言葉も理解できる…!上空に射出された宝珠に凝縮された氷魔法が発動し、空に氷塊が乱れ飛ぶ。
「うわ、ここまで威力を維持できるの!?たしかに使いこなせれば強力な術具ね!」
「そうでしょう!?使い手に恵まれなかっただけなのです!」
「………その使い手が見つからないから不良在庫行きになったわ」
俺もユキと同じ感想だ。使いこなせれば戦闘における手札が何枚も増える。不良在庫として武器庫に飾られるのは惜しい逸品なのは間違いない。
「だけど完っ全に会季の作品なんだよこれ。まず重量的にハルバートとして扱うには重すぎてフツーの魔界人じゃ強化魔法がいるし、そこを妥協して使うにしても砲撃武器として扱うには時間系魔法も使う。この2系統の魔法を低燃費で扱えない奴じゃムダな魔力消費が多すぎる」
「………砲撃を諦めて武器として使うにしても、ハルバートなんて代物を接近戦で有効に扱うには修練が必須。魔界人ならその時間を魔法の研究に費やした方が合理的だわ」
「おまけに強力な魔法を仕込むには、各系統と相性の良い貴重な物質が必要よね。使い捨ての弾にするぐらいなら研究用によこせ!って騒ぐ奴が絶対に出てくるだろうし」
「それに装弾数を増やすための長柄だが、戦闘中に装弾するという隙は無くすべき。となると戦闘開始前に最大限装弾しておくのが理想だが、その場合発動する順番を記憶する必要がある。逆にいかなる相手にも柔軟に対応できるという汎用性に主眼を置くのであれば、その都度有効な魔法弾を装填する隙を無くすことが出来なくなる。汎用性に優れる万能武器というコンセプトに嘘は無いが、一度の戦闘で最大限に活かすのは現実的ではない」
要するに、結論としては。
「使いこなせる奴の専用武器としては有用だが、一般的に普及させる道具として量産する価値はない…いかにも会季の作品だな」
「………」
俺含めた四人からの評価にぐうの音も出ない会季である。
「だが、カタマサが呼び出すわけだ…俺にとっては有用も有用。強化魔法無しでの接近戦の得物として使うには修練が必要だが、俺が遠距離戦を行えるようになるのは大き過ぎる…いくらやっても攻撃魔法が習得できない以上、攻撃魔法を疑似的にでも使えるようになるこれは使わせてもらいたい。
―――今度は俺に何を頼みたいんだ?」
カタマサと会季がこのハルバートを俺に回すつもりなのはよくわかった。だが、これだけ高性能な武器を無償で譲るほど会季の研究所に予算の余裕は無いだろう。ここに直接呼び出したということは、報酬の先払いとして俺に使わせる程度には厄介なことを持ち込んできたということだ。
「価値は理解してくれたみたいだな。そして使う気も満々…それならユキも協力してくれねえか?」
「え、わたし?知ってると思うけど魔力が半分も回復してないから、あまり役に立たないと思うよ?」
「………別に禁呪レベルの魔法を弾に仕込めというわけじゃないわ。先払いの報酬として、格安で購入したり再利用するために回収して集めた装弾用の宝珠や鉱石を集めてあるのよ。その仕分けを手伝いなさい」
「あ、それなら手伝えそう!兄さんも乗り気なんだよね?」
「ああ、これを不良在庫として腐らせるのは勿体なさすぎる。ユキも力を貸してくれるのか?」
「当たり前でしょ!わたしは兄さんの妹なんだから!」
「そうか。なら頼む…俺もこれで、強くなれそうだ」
月で思い知らされた俺の弱さ。それを克服するための鍛錬の中で、俺の努力だけで強くなることは頭打ちだと感じ始めていたが。
ユキにカタマサ、マイに会季。頼れる弟妹のおかげで、前に進めそうで。
「―――それでは、ユキさんとマイさんはこちらに」
「ん?俺はどうすればいいんだ?」
「…流石のヒョウもぶっつけ本番でそいつを使うつもりはないだろ?軽く相手してやるからよ、地下の実験場まで付き合えや。頼み事もそこで話すからよ」
――まただ。カタマサに何か違和感が…
とはいえ、地下で話すのであればその時に聞けばいい。それだけ厄介な案件を持って来たってことかもな。
「そうだな…ハルバートを使ったことが無いわけじゃないが、俺は格闘がメイン。カタマサが相手してくれるなら、これ以上ない訓練になるか」
「おうよ、月から帰って来てから手合わせなんてする余裕なかっただろ?鈍らないためにもだぜ」
「ああ、助かる」
この時点で、俺の退路は既に断たれていた。
一応、オリキャラの軽い紹介をここで。
カタマサ
ヒョウを兄貴分でなく親友として見ていた唯一の魔界人。ヒョウの鍛錬に付き合い続けた結果、彼も魔界人とは思えない肉弾戦の強さを得た。ヒョウと違い攻撃魔法も扱えるが、空間魔法や時間魔法はほとんど使えない。そのためハルバートは燃費面の都合で不要と判断している。
見た目のイメージは某タイムマシンに飛行機能を付けた古代の新王。
名前の元ネタは有名な裏切りを行った戦国武将。
会季(かいき)
技術者気質の魔界人。攻撃魔法を使えないヒョウにとって彼の製作する道具は実用的であり、率先して研究や制作に協力していた。なおハルバートの形状は青龍戟(方天画戟と書けばそれなりに伝わるはず)をイメージしてます。
見た目のイメージはA.W.政府再建委員会の諜報部のトップ。
名前の元ネタは有能だが野心が強すぎる三國志武将。