メイドです、仕事辞めたい 作:ブラック企業ナザリック
気紛れ投稿なので続きがあるか不明です。
追記
主人公の素敵なイラストを頂きました。作者様より許可を頂けたので、挿絵として使わせてもらっています。
メイド服を纏った、毛先に若干のウェーブが掛かった茶髪ロング。
服の上からでもかなりの大きさなのが見て分かる程の、胸部の双丘。
顔立ちはかなり整っていて、異性だけでなく同性すらも誘惑してしまいそうな小悪魔フェイス。
そんな美少女メイドが、とある場所にいた。
――脚を大きく広げ股を全く隠さない姿勢で床に座り込み、片手に火の灯った煙草を片手に。
「――仕事だるい、辞めたい」
自分以外誰も居ない小さな
そのような愚痴を、ここ『ナザリック地下大墳墓』で漏らし、誰かの耳に入れば自分は間違いなく何かしらの処分を受けるだろう。
だがこの小さな
『一般メイド』の中で煙草を吸うのは自分だけだからだ。
「……そういえば、『守護者』の方たちは吸ったりするのか? いや、今の今までここでバッティングしてないって事は違うか。そもそもイメージに合わないし」
自分とは違い、
「あ、でも遠見とか盗聴の魔法があるらしいし――いや、こんな場所誰が盗み見するんだって話。それに仮にバレたとしても……うん、最悪死ななきゃセーフだよな」
美少女フェイスに反して、言動や仕草はやけに男勝りだが、彼女は間違いなく女性だ。
そう、『ホムンクルス』という異形種ではあるが。
「……そろそろ仕事に戻るか。あぁ、心底めんどい――大体ここ広すぎる。掃除だけでもかなり時間掛かるし……まぁ、最初の地獄のワンオペの頃に比べたら、
そう最後に愚痴を溢してから、メイドは煙草を灰皿に押し付け処理をしてから、喫煙所を去った。
「やべっ、口臭ケアしないと」
――彼女の名前は『ファース』。
ナザリック地下大墳墓において、至高の四十一人の中の三柱によって生み出された
ナザリックの第九階層及び第十階層。
この二つが一般メイドと呼ばれる者たちの主な活動場所だ。
清掃業をメインに、あとは細かい雑務や作業を仕事としている。
「――『ファース』さん!」
「……シクスス? どうかしたのか?」
清掃道具を片手に、小休憩(自主的)から戻ってきたファースに近寄ってきたのは一般メイドの内の一人。
名前はシクスス。
金色の髪が特徴のメイドだ。
「もう、どこに行ってたんですか? さっきのお部屋の掃除はもう終わっちゃいましたよ」
「あぁ、さすが。頼りになるな――私は……そう、どうしても見逃せない汚れを発見してしまって――それで時間を取られていた」
「成る程、そうだったんですね!」
純粋か。
思わずそう突っ込んでしまうほど、ファースの出鱈目に騙されるシクスス。
「後残っているのは?」
「はい、南ブロックの方と、ヘロヘロ様、ブルー・プラネット様、たっち・みー様のお部屋です」
「じゃあ南ブロックと――そうだな、ヘロヘロ様のお部屋の掃除をみんなに任せる。ブルー・プラネット様とたっち・みー様のお部屋は私がやるよ」
「ヘロヘロ様のお部屋……! はい、任せてください!」
そうして、シクススは辺りにいる他のメイド達に声を掛けながら、南ブロックの方へ向かった。
「……やれやれ、何でみんな私なんかに従うのかな? 私メイド長じゃないんだが?」
小さくファースは呟いた。
一般メイド達は、ある意味
グループはある程度分かれてはいるが、基本一般メイド同士は友達のように仲良しで、タメ口で話す。
しかし何故かファースは、他の一般メイド達からさん付けで呼ばれ、敬語で話しかけられる。
自分からそうしろと強要したわけでもないし、守護者や『戦闘メイド』の方達のように能力に優れているわけでもない。
ファースのレベルや能力は、他の一般メイドと同じだ。
違いがあるとすれば、
ファースは至高の四十一人が創造したNPCの中で、最初期に創造された存在だ。
一言で表すなら、『先輩』。
たったそれだけだ。
「……こんな不真面目な先輩だって知ったら、がっかりするだろうな」
ファースは疎外感を感じる。
自分以外の一般メイドは、仕事が好きなようだ。
一日中、食事時間を除いてずっと働こうとする。
至高の四十一人の為に仕える事が、何よりも大切、生き甲斐、報酬なんだと。
――誤解がないように説明すると、ファースにその気持ちが無いわけではない。
自分を生み出してくれた方達――特に三柱の方々が喜ぶのであれば、自分も嬉しい。
例え自分達の為に死んでくれと頼まれたら、迷いはすれど最終的には死を選ぶだろう。
しかし、どうにも『仕事』というものに対して、嫌悪感を抱いてしまう。
サボれるならサボりたい、辞めたい、ずっと煙草吸ってたい。
体を動かし、疲労を感じるのが嫌だ。
精神的に摩耗するあの感覚が嫌だ。
ファースは他のメイドよりも欲が強いのかもしれない。
「……やば、トラウマを思い出しそう」
――もしくは、ファース自身のトラウマのようなものに起因するのかもしれない。
あれはそう、ファースが生み出されて間も無い頃。
他のメイドはおろか、守護者などの方達もまだ創造されていない頃。
ファースは
具体的に言うと、地獄のワンオペ作業。
働けるメイドはファースたった一人、そんな状況下で命じられたのは、第九階層と第十階層の『清掃』。
今現在四十一人のメイドを増員してやっと何とか出来る様になっている清掃業務を、
ファースは来る日も来る日も、延々と終わらない、いつまでも続く掃除を一人でやっていた。
「……まぁ、御方々が他のメイドをお造りになられてから楽になったけどさ」
最初はたった一人でも、至高の御方々の為になるなら!
と意気込んでいたものだ。
しかしそれでも辛いものは辛い。
初めて自分以外のメイドが三柱の方々によって創造され、共に掃除をしてくれるようになった日は、思わず泣いてしまったような気がする。
「どうせなら夜枷用とかにお造りになさってくれれば……それならこんな『女性』の体に創造されたのにも納得いくんだけどな……」
――ちなみに、ファースの性別は女性だ。
しかし
言葉遣いや仕草に所々男性っぽいところが混じっているのはこの為だった。
その理由は本人にも分からない長年の謎だったりする。
「……まぁ良いか、私は『メイド』。それ以上でも以下でもないってね」
せめて肩凝りどうにかならないかなぁ。
そう最後に呟いて、ファースは自身の仕事場に向かった。
「ねぇシクスス、ファースさんと話したって本当?」
「うん、やっぱりいつ話しても
「あー羨ましい。あのクールな雰囲気、淡々とこなす仕事振り。それでいてとても洗練された動き……流石ナザリックを遥か昔から見てきた方よね!」
「ね、憧れる……きっと私達の知らない、昔の至高の四十一人の方達のお話とかいっぱい知ってるんだろうなぁ……」
「私も食事の時にお話ししようと思ったんだけど、いつもお一人で食べられて――何だか話し掛け辛いのですよね」
「今日も至高の御方のお部屋を一人で清掃に? 凄いですね、きっと信頼されているのでしょう……」
「私は時折匂う、あのツンとした香りが好きですわ……」
――そんな会話が、ファースの居ない場所で行われていた。
ちなみに最新刊まだ読んでない上に、現在少しずつ一巻から読み返している途中なので、何か設定の変なところあったらごめんなさい。