メイドです、仕事辞めたい 作:ブラック企業ナザリック
もしよろしければ、ご協力をお願いします。
――明日、リザードマンに再び戦争を仕掛ける。
とは言っても、ナザリックの力を示す為のちょっとした余興をするくらいで、あとはコキュートスに全てを任せる手筈だ。
準備も各守護者達に任せているし、正直に言って明日までにアインズがしなくてはならない仕事はない。
しかし何もしないというのは、落ち着かない。
それに部下である守護者達が動いている中、主人である自分だけ何もしないのも如何なものか。
そうしてアインズは、簡単な書類仕事を始めた。
といっても、大体が判子を押すだけのものだが――
(って言っても、今出来るのはこれくらいしかないしな……いや、待てよ? そういえば以前ファースというメイドに頼んでいた件があったな)
アインズは骨の手だけを動かして、思考を進める。
以前外の世界で冒険者として活動する為、ナザリックを出立する前。
ファースという一般メイドとのやり取りの事をアインズはここで思い出した。
(すっかり忘れてた……シャルティアの件とかで色々と慌ただしかったからな)
ファースに頼んだ件は、一般メイドに絞った軽い意識改革。
いつの日か導入するであろう休暇制度の為に、おそらく不満の声を上げるであろうメイド達の反発を少しでも抑えられたら良いなー、程度に考えていた件だ。
あれからそれなりの日数が経っているわけだし、何か変化があるかもしれない。
それならばと、アインズは早速行動に移した。
先ずは人払い。
ナザリックに休暇制度を設けようと企んでいるアインズの計画を、不必要に漏出させるのは良くない。
"あちらに手を打たれる前に、直前で勢い良く押し切れ"
これもまた戦術の一つでもあると、『ぷにっと萌え』というかつてのギルドメンバーの言葉を思い出すアインズ。
自身の部屋と、部屋の周囲にいるシモベ全てに暫くの間離れるように――もちろん不測の事態にはすぐに呼び出す事を約束して――指示をする。
それと、これから来るであろうメイドを1人通すことも伝えておく。
次に
――"色々と立て込んでて忘れてた"
なんて言えないので、ちょっとカッコよく"時間が惜しい"などという言い回しに変えて。
――間も無くして、ファースがアインズの前に現れ跪いた。
「忙しい中――いや、もしくは休憩中だったかな? とにかく来てくれて感謝しよう」
「い、いえ……御身の為ならば他の何よりも優先します」
アインズは目の前で跪くファースに、微かな違和感を感じる。
声が若干震えているというか、呼吸も聞いてわかるほど乱れている。
「――顔を上げよ」
「はっ……」
アインズが許可を出すとファースが顔を上げる。
――その顔には若干の赤みがあった。
もしや走ってきたのだろうか?
一般メイドである彼女は、転移のような魔法やアイテムも持ち得ない。
必然的にアインズの部屋までくるには、その足で来るしかない。
同じ階層とはいえ、もしかしたらアインズの部屋から遠くの場所から急いで来たのかもしれない。
アインズは少しばかりの罪悪感を感じ、先ずは彼女を労う事にした。
「先ずは落ち着いて腰を据えて話そう――あそこに座ると良い」
アインズは骨の指で、部屋の片隅――執務机とは違う横長の机とソファのような椅子を指差した。
例えるなら社長室にある、来客と打ち合わせする為にあるやつだ。
「しかし私如きが――」
「よい、私は座れと許可を出した。ならば遠慮する方が私を不快にさせるとは思わないか?」
「し、失礼致しました! それでは御言葉に甘えさせて頂きます……」
ほらこれだ。
アインズは心の中で愚痴をこぼす。
ナザリックの者はどうしてこう、忠誠心が高いのだろうか。
いや、良い事なのかもしれないが、リアルでは単なるサラリーマンだったアインズにとっては苦痛でしかないし、面倒でもある。
だがここで支配者を演じるのを止めてしまえば、何が起こるか予想できない。
下手をしたら、忠誠心が無くなったNPC達に――
なんて事もあるかもしれないから、アインズは支配者を続けるしかない。
「……何か飲むか?」
「だ、大丈夫です」
アインズの一押しもあり、おっかなびっくりな様子でソファに腰を落としたファース。
その対面に、アインズが座る。
リラックスさせる為に座らせたのだが、何故か彼女の緊張は解れないどころか、プルプルと体が若干震えている。
「…………」
「…………」
――どうしたものか。
誰かこの空気を何とかしてと、助けを求めるアインズだが、自分で人払いをさせたのだから当然ここにはアインズとファースしか居ない。
故にアインズがどうにかせねばならない。
そこでアインズは一つ、魔法を唱えた。
すると長机の中心に、黒曜石で出来たような黒い
最近練習して椅子とかを創り出せるようになった魔法だが、まだ精度がイマイチだ。
しかし目の前に出来た灰皿は、高級品のような気品を感じさせる出来栄えだった。
アインズは灰皿の出来栄えに納得しつつ、それを骨の手で押し出し、ファースの目の前まで滑らせた。
「使うと良い」
アインズの行動とその言葉で察したのか、ファースが慌てた様子で喋り出す。
「お、御身のお部屋で吸うなんて事は――」
「構わん、それでお前の心が安らぐのなら、部屋が煙草の臭いに包まれるくらいなんて事ない――とはいえ、吸い過ぎには注意するのだぞ」
何度か似たようなやり取りを繰り返し、やがて折れたのはファースだった。
やはり彼女にとって煙草は抗い難いもののようだ。
"本当に良いのかな?"みたいな様子で、おそるおそる煙草を吸い始めるファース。
アインズはその様子を黙って見守る。
(しかし……幸せそうに吸うな。そんなに夢中になれるものだったか?)
吸う時は目を細めキリッとした表情で吸い、煙を吐き出した後は美味しい食べ物でも食べた後のような、悦に浸る表情をするファース。
アインズとて、リアルで職場の付き合いの一環として一時期吸っていた時期があった。
しかしすぐに止めた。
あまりリラックスにならなかったし、この煙草一つでガチャが何回分だろうか――
そんな計算を考えてしまうようになってから、何だかどうでも良くなってしまいすぐに手放したアインズにとって、煙草の良さはよく分からない。
(そういえば煙草って、ユグドラシルではどういうアイテムだったかな……確か、使用するとHPを少量犠牲にして、ほんの少しステータスにバフを掛けるだったっけ?)
ユグドラシルにおいて、煙草というアイテムは所謂
ポーションや魔法で回復できるHPを犠牲に、バフが貰えるのは確かに利点だが、バフが掛かるステータスはランダムな上に、本当に雀の涙ほどのバフしか貰えない。
レベルが低い初心者が使えばまぁ、助かる場面があるかもしれないが、レベルが高いプレイヤーが使っても大したバフにはならない。
使用した瞬間強制的に発生するモーションも隙になるし、それだったら他のもので代用した方が良いレベルだ。
だから基本的に、ダンジョン攻略前の験担ぎや、ロールプレイの一環で使うプレイヤーが居たくらいだ。
うちのギルドにも確か、PK戦で余裕の勝利を収めた時、相手にトドメを刺す直前で使い、カッコ良い台詞を吐くようなロールプレイをしていた者がいた。
まぁ、相手によっては煽り行為だと捉えられてしまう事もあったが……
(しかしこっちの世界だとどうなんだろう? 流石にレベル1とはいえ、煙草の吸い過ぎでHPが全損するような事はないとは思うけど……ユグドラシルでもHPが1未満にはならないっていう検証結果出てたし)
だがもしもがある。
念のためファースにはもう少し煙草の本数を減らすように言うべきだろうか?
「……何か御座いましたでしょうか?」
ジッと見ていたせいか、視線に気が付いたファースが不安そうに聞いてきた。
「……いや、何でもない。幸せそうに煙草を吸うお前を見て――そう、和んでいただけだ」
「お、お戯れを……」
――まぁ、今すぐに言うことでもないだろう。
アインズはファースの幸せそうな顔を見てそれ以上言う事は出来なかった。
「……そういえば、何処で煙草を仕入れているのだ?」
ナザリックに煙草の生産施設のようなものは無かった筈だ。
であれば、ファースの吸う煙草は一体何処から?
「はい、第九階層にある『錬金工房』にて、
「ふむ……あれか」
確か錬金術系のスキルやクラスを取っていなくても、簡単なアイテムなら
もちろん、錬金術系統のスキルやクラスを持つ者が使えば強力な錬金や、材料の節約、効果の増幅などが出来るものだが。
「つまり煙草は、スキルが無くとも作れるカテゴリーなのか――材料は?」
「温室にて取れる材料を使っております。1日あれば元通りに成長するので、尽きた事は今のところないですね」
なるほど、無くなることはないというわけか。
「
「私の創造主であられる『ホワイトブリム』様です。あ、でも錬金工房への行き方などはヘロヘロ様ですし――」
アインズが訊ねると、嬉しそうに自らの創造主を語り始めるファース。
かつての仲間たちの話も聞けて、アインズも懐かしさを感じるが、一定の感情を感じた為か抑制される。
(――それにしても、本当に
気が付けば、緊張が解れたファースは思い出の蓋も一緒に開けてしまったのか、マシンガンのようにナザリックでの記憶をアインズに話す。
それを聞いて嬉し懐かしい想いと、
(そもそも何で彼女にだけ、他の一般メイドに無い設定とルーチン――プログラムが施されているんだ? しまったな……ヘロヘロさん達にその辺聞いておけば良かったか)
一般メイドに関して――もちろんファースも――アインズは完全にノータッチだった。
気が付けば新しいメイドがまた増えているな。
くらいの認識だった。
どうしてファースだけが、煙草を吸って喫煙所に通うようになっているのかは、アインズは知る術はない。
その結果、ギルメンが喫煙所で話してきた様々な内容がファースの中で生きている。
それは嬉しい事でもあるし、危険でもあるのだろう。
「――あ、申し訳ございません。1人で喋ってしまい……」
「構わないとも、私も聞いていて懐かしい気持ちにさせてもらった――さて、そろそろ本題に入るとしようか」
本当はもう少し、ファースから昔話を聞いていたい気持ちもあったが、時間が惜しいと言った手前そろそろ本題に入らないと不味いだろう。
「…………えと、この場で、でしょうか?」
「うん? まぁ柔らかいソファの上の方が(話し)し易いだろう?」
「お、仰る通りで御座います……」
謎の問答。
すると、さっきまで楽しそうな様子を見せていたファースが再び体をガチガチにさせた。
喉を鳴らす音がアインズにまで聞こえてくる。
それはまるで覚悟を決めた戦士――なのかはアインズには分からないが――のようだった。
何が彼女をそんなに緊張させるのか。
"この前頼んでいた件、どんな感じ?"
かなり砕けて言うとこれだけだ。
それなのに、ここまで緊張するのは何か良からぬ事があったのだろうか?
アインズがファースの言葉を待っていると、やがて決心したかのように彼女が口を開いた――
「――は、初めてですが、その……誠心誠意
「……は?」
アインズが"何が?"と言う前に、ファースが行動を始めてしまう。
リボンを解いて、胸元をはだけさせる。
下着に包まれた豊満な果実が2つ。
そして男を誘惑させるかのように、スカートをたくし上げ股を開く――
「――ぇ?」
アインズは困惑する。
擬音はどれが良い?
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ゆさっゆさっ
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たわんたわん
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むちっむちっ
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ぽよよん